キャスト:リチャード・ギア、テレンス・ハワード、ジェシー・アイゼンバーグ、ダイアン・クルーガー
評価:☆
コメント:ユーゴ紛争の最中に起こったセルビア人によるイスラム教徒虐殺事件「のみ」をクローズアップする。というよりもクローズアップせざるをえない事情というものもあり、この紛争、過去にさかのぼればどこの民族の何が正しいのかといった「基軸」がまったく見えなくなってくるからで、其の点、虐殺行為を働いたセルビア人のボスへの取材という形であれば、国際的非難も受けにくい…という事情もあっただろう。
クロアチア人は第二次世界大戦ではナチスドイツに協力的だったし、セルビア人には秘密組織チェトニックの歴史がある。ボスニアでのイスラム政権は急進的イスラム主義の支援を受けていたし、この映画の舞台設定である1994年というのは既存の価値観から多様な価値観へ転換を図ろうという世界的な流れの時代だった。死の恐怖でアドレナリンが流れ出すという主役のセリフは地域紛争が激化したこの時代にはまさにふさわしい感じがする。1994年といえば、ルワンダで内戦が勃発、南アフリカ共和国でマンデラが大統領に就任、北朝鮮で金日成が死亡、ロシア軍がチェチェンに侵入している。日本国内では日本社会党と自由民主党の連立政権が発足。年金改革法がこの年に成立している。そして実際に「戦争犯罪人」を追い詰めていく2000年。NATOとCIAが追う戦争犯罪人という実際の設定でしかもモンテネグロに入るとNATOは手が出せない…という生生しい話になる。「地雷でスキーができない」というのは今からわずか9年前のエピソードだ。
「実話」はかなり面白い。しかもこれが10年前から15年前という「今」につながる直前の歴史だ。ただ映画そのものはなんだかな、っていう感じ。二次元で歴史や民族を語るには、ちと無理があるし、ジャーナリストもまたひとつの「立場」を演じなくてはならない…というむなしさも感じる。テレンス・ハワードのわりと落ち着いたカメラマン役が救いか。
ストーリー:ソマリア紛争、エルサルバドルそしてボスニアとスクープをとばしてきたジャーナリスト、サイモン・ハントとカメラマンのダック。しかし生放送中の失言がもとでサイモン・ハントは更迭されて表舞台から消えた。その後、イスラムの殲滅を試みたとされるセルビア軍の首謀者フォックスをめぐり、サイモンは特種をダックのもとへ運んでくる…
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