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豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

5か月と2週間の宇宙滞在

2010-03-04 18:00:00 | 宇宙
国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の野口宇宙飛行士の地球への帰還が3週間延期になったことが発表されました。これで、宇宙滞在は約5月半となりそうです。日本人初の宇宙長期滞在をした若田宇宙飛行士は4カ月でしたので、それを1カ月半程更新するものです。ただ、再度延長される可能性も残されており、6カ月(半年)になるかもしれません。若田宇宙飛行士は宇宙滞在期間中、プログラムされた以上にトレーニングに励み、その結果地球帰還直後の記者会見に歩いて登場するなど、宇宙滞在により大幅に低下することが予想されている運動機能がかなり保たれていましたが、野口宇宙飛行士はどうでしょうか。国際宇宙ステーション内部は無重量状態(無重力ではありません)となっているために、骨格筋が大きな力を発生する必要がなくなります。そのために、骨格筋が細く弱くなってしまうのです。骨格筋が細くなってしまうと、骨格筋に含まれている毛細血管も少なくなり、その結果として骨格筋に含まれる血液量が少なくなります。また、別の適応として、血液に重さがなくなってしまうので、下半身かた上半身に血液のシフトが起きます。この血液のシフトは頭部の血圧上昇を招くことから、血圧を下げる仕組みが働きます。この仕組みは、血液の主たる構成成分である水を体外へ排出するものです。つまり、尿量が多くなります。その結果、血液量が低下し、頭部の血圧が正常値まで下がります。この時、からだ全体としての血液量が低下しています。こうした適応により、身体の血液量が大きく減少してしまうのです。地球に戻った時には、血液は重さを持ちますので、血液は下半身にシフトしがちになります。すると、上半身つまり頭部への血液量が減りますので、いわゆる脳貧血状態になります。また、血液は酸素を運搬する働きを持っていますので、酸素が不足がちなります。こうして、血液量や筋肉の機能からだけでも、運動能力が大きく低下してしまうので明らかだと思います。もちろん、これ以外にも様々な適応現象が起きることが知られています。こうした適応の多くは、老化現象に伴うものと極似しています。
さて、野口宇宙飛行士の地球帰還はいつになるでしょうか。あまり長くならない方がよいかもしれませんし、記録を伸ばしてほしいという気持ちもあり複雑な思いです。
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