未知との遭遇・宇宙線の起源・宇宙の進化
地球に到達するほとんどの宇宙線が太陽系内の強力な磁場によって進路を曲げられるのに対して、100㎢あたり年1回しか降ってこない最高エネルギーの宇宙線は宇宙空間の磁場に
よって進路をほとんど曲げられることなく地球に到達するため、特定の場所にある宇宙空間の高エネルギー天体現象の解明に大きく役立つ。粒子加速器などで人間が作り出せるエネル
ギーは、最大1017 eVのオーダー(CERN-LHC)であり、それに対し、宇宙線のエネルギーは最大 1020 eVに達する。このため、宇宙線によって超高エネルギー領域での素粒子反応について重要な知見を得ることができる。 実際に、様々な新粒子が素粒子実験より先に宇宙線中から見つかった。
宇宙空間から地球上に降り注ぐ宇宙線を解析することで、はるか遠くで起こった天体現象のメカニズムを理解でき、究極的には宇宙進化の謎を明らかにできると考えられている。
(補足:出典 大平 豊、青山学院大、宇宙線の起源と加速と伝搬、Web)
発見以来100年がたつが未だ宇宙線の起源と加速機構は謎であるが現在の理論の主流は: エネルギーが10の17.5乗まで、または10の18.5乗までは、銀河系内のSNRが起源、
それ以上は銀河系外のGBR,AGN,銀河団やマグネターが起源と考えられる。
GBR:太陽系近傍での超新星爆発に伴うガンマ線バースト(short Gamma-Ray Bursts, short GRBs)
AGN:ブラックホールの周りが明るく光っている天体を活動銀河核(AGN:Active Galactic Nuclei)と呼ぶ。AGNのX線放射は宇宙X線背景放射の主成分であることが分かっている。
マグネター(magnetar)とは極端に強い磁場を持ち、その磁場の減衰を
エネルギー源として大量の高エネルギー電磁波、特にX線やガンマ線を放射す
る中性子星である。マグネターの理論は1992年にロバート・ダンカンとクリス
トファー・トンプソンによって定式化された。この説が提唱された後の約10年
間で、過去に観測されている軟ガンマ線リピーターや異常X線パルサーなどの
さまざまな天体に対する有望な物理的説明として、広く受け入れられるように
なった。