未知との遭遇・宇宙線
宇宙のあらゆる方向から高エネルギー粒子が地球に降りそそいでいる。それは放射線の一種で宇宙線といわれている。宇宙線の大部分は陽子であり、α粒子やさらに重い原子核も含まれている。
宇宙線は20世紀の初め頃、電離箱(検電器の一種)の電荷が徐々に放電していく原因の究明の過程でその存在が明らかになってきた。V.ヘス(1883-1964,写真)は、気球を用いた放射線の計測実験を1911年から1912年に行い、地球外から飛来する放射線を発見した。この業績により、彼は1936年にノーベル物理学賞を受賞している。
また1927年、スコベルツィン(ソ連)は初めて霧箱を使用して宇宙線の観測を行った。この観測は霧箱に磁場をかけた状態で行われたが、撮影された宇宙線の飛跡はほぼ真っ直ぐであった。そのため、宇宙線は磁場に影響されないだけの高いエネルギーを持っていることが明らかになった。
さらに1929年には、飛跡が霧箱中の1点からシャワーのように分散する現象、宇宙線(空気)シャワーを観測した。
宇宙線の起源については、殆ど大部分は銀河系内で起きた超新星爆発によって生じた銀河宇宙線である。その外に太陽のフレア(爆発的なエネルギー放出)による太陽宇宙線がある。
すなわち、宇宙線は主に銀河系でおきた超新星爆発の爆風のなごりである。というのは宇宙線の殆ど光速に近い加速には激しい爆発現象が必要になるが、太陽系の中にはそこまで激しい現象は見つかっていないからである。
宇宙線は非常に高いエネルギーを持っていて大気に突入すると、多くの粒子を作る。それらがパイ中間子であり、またその崩壊したミュー粒子であり、電子であり、V 粒子である。