時空人 goo blog「脳トレ宇宙論ー人類の見果てぬ夢」

時は過ぎ 空は広がり 人は考える 宇宙を語る、地球を語る、生命を語る、人類を語る、世界を語る、人生を語る、何でも語る、

脳トレ宇宙論 第34話 人類の見果てぬ夢-宇宙 《結びに代えて)

2020-08-12 19:38:07 | 脳トレ宇宙論

脳トレ宇宙論 第34話 人類の見果てぬ夢-宇宙

星空は美しい

星空は文句なく美しい そして 宇宙は神秘に満ちている。

星空は理屈抜きに美しく 純粋に魂を揺さぶり高揚するものがあり 未知なる宇宙への夢や憧れが重なっている。

さらに理屈を知ることが出来れば その美しさをもっと楽しめる。

宇宙はこんなに精緻にできている。宇宙は正確無比にして完璧である。自然の法則は素晴らしい。そして法則を理解できる理性を持った人間もまた素晴らしい。

・驚くほど良く見える天体望遠鏡には、人を感動させる力がある。

「見える」ではなく、「本格的に見える」から感動する。月の切り立ったクレーター、土星の見事な輪、木星のきれいな縞模様、・・・それらを見て、子供たちが走って伝えまわり、大人ですら声を上げて驚く。この反応は、中途半端な 「見える」 望遠鏡とは全く違う。

・見たものだけが語れることー宇宙飛行士の世界の手触り

宇宙飛行士が月にたどり着いたとき、窓から見えた地球を「マーブルの大きさ」と表現する。はじめはその美しさ、生命観に目を奪われていたが、やがて、その弱弱しさ、もろさを感じるようになる。感動する。宇宙の暗黒の中の小さな青い宝石。それが地球だ。その美しさは写真とは異なり、実際に見た者でなければ絶対に分からない、と彼らは口を揃える。

科学の発展

科学は思索だけで成立することはない。

科学の強みは理論が事実によって保証される。

極微の世界、極限の世界では、それを知るのはもはや日常的な感覚や知性では不十分で、数学的表現のみがそれを精確に表しうることは明らかである。

科学にとって大切なことは理論を作るよりも、まず事実を観測することである。

事実の観察には鋭い感受性、精密な感覚が必要なほか、道具を作る、機械を作るという物質的な条件も必要である。

学問、科学の伝統、知識の成果、蓄積がないと研究は始まらない。加えて、常識、通説、通念に疑問を持ち、違うのではないかという批判をもち続けることが大切である。

先人の発見した科学を学ばずに自分の頭だけで考えることには限界がある。

専門の研究者の長い年月の思索と体験を通して学問は進歩する。

天文学の発展ー未知との遭遇、宇宙の神秘へ、そして神秘から科学へ

天文学の魅力は天体現象の多様性、不思議さ・神秘性・超越性、無限の可能性があるからである。太古の昔から、人は夜空を見上げ、きらめく星々に神秘を感じ、宇宙の秘密を解く手掛かりを探し求めてきた。古代、神話や伝説に結びつけられていた宇宙の姿を天才たちの登場により徐々に宇宙の謎が解明されていく。

天文学はその起源をたどると、はるか紀元前から星々の観測が行われている、極めて古い学問である。人類史においても、その発展が人類全体の認識を大きく変えてきた。

事実は小説よりも奇なりと言われるが、現代宇宙論で展開されている理論の多くは想像以上に突飛なものであり、SFよりも奇なりといえるものさえある。

宇宙とは常識的に想像できる範囲を超えたものであり、宇宙を想像することは壮大で常識を超えた宇宙の視点で思考をすることでもある。

 20世紀に入って、宇宙の基本的構成要素は銀河であること、つまり「銀河からなる宇宙」という描像が確立してまもなく、アインシュタインにより一般相対性理論が提出された。一般相対性理論は科学者に宇宙全体を探る理論を提供したと言える。宇宙がビッグバンによって138億年前に誕生し、現在も膨張を続けていると言われる現代の宇宙像は、一般相対性理論を使って宇宙を探求することから生まれてきた。一般相対性理論を直接証明するブラックホールの存在が今まで理論上「あるだろう」ということだったが、一般相対性理論誕生から100年以上が経過して初めてその「実在」が証明された。

 ブラックホールの成果は宇宙の始まりの解明にも繋がり、銀河の形成に影響を与えるなど、天文学において大変重要かつ画期的なものである。このように天文学は壮大な学問で我々人類共通の謎にアプローチし続けており、常にホットな学問である。また同時に、なぜ自分たちが今という時代に生きているのかについても思いを馳せさせる。

若い頃の夢-相対性理論を数式で理解したいという夢。物理学を勉強した者は誰でも、いつか自分もこの偉大な理論を数式で理解できるようになれればと夢見る。自分には無理だと最初から諦めてしまう人が殆どだろう。しかし必ずしも物理そのものは決して難しくない。 ただ理解に達するために資料を調べ、考える時間が異常に長いことはよくある。

現在でも「宇宙」「ブラックホール」「重力波」など知らなくても生きていける。社会に出て直接これらを使うことはないかも知れない。しかしこれらを知らないで生きるのと、知って生きるのとではその人の活動、ひいては人生が違ったものになる。というのは宇宙進化の軌跡及び未来についての人類文明の曙から現代に至るまでの思考過程は、科学を含むあらゆる人間活動における複雑困難な問題解決の強力な指標となり参考になり得るものが豊富に存在するからである。

時間・空間・人間

時は過ぎ去り、空は広がり、人は考える、時間とは何か 空間とは何か。哲学的に思索し、科学的に考え 文字で書き 芸術で表現し、音楽を奏で、疑問は次から次へと続き、解き明かすべく解答が次々とよせられ永遠に続く人類の見果てぬ夢である。

さて天文学や宇宙論に限らずあらゆる学問、自然科学も社会科学も数学も、さらに宗教は勿論、哲学や文学、芸術は、その根本にこの人類最大の謎を解き明かしたいという衝動、願望、情熱が憧憬のように息づいている。

その典型的かつ衝撃的な作品を残した画家ポール・ゴーギャンは1897年、作品《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》を描いた。ゴーギャンが晩年に問いかけたこの疑問はすべ ての人間に問いかけている。そして、天文学もそのことを追求してきて、同じ問いに 辿り着いているともいえる。

「なぜ宇宙があるのか?(Why is there a universe?)」

「なぜ世界があるのか?(Why is there a world?)」

「なぜ無ではないのか?(Why not nothing?)」

存在とは何か。宇宙はどのようにして出来上がり、どのような構造をしているのか。そして自分は何者なのか、どこから来てどこへ行くのか。 また生命とは何か。生きる意味はどこにあるのか。 この命題に対する答えを、あなたは持っているだろうか? 答えを持たなくても、人は生きていくことが出来る。忙しくしていれば、これらの問いに心をくだくことさえも忘れてしまうことだろう。けれども、ふと立ち止まった時に沸き上がってくる生きる上での根本的問いかけでもある。

 我々はどこへ行くのか

現代は科学や機械文明の進展や成果によって、皆が上を向いた生活に明け暮れているようある。世界中は刻苦精励の根性や気概が薄らいでいくようであり、人間所在の影が薄くなっている。いわゆる近代化が急速度に進む中で、気が付いてみると人間不在の仕組みの中に我々みんなが落ち込んでいるということになりかねない。今の不安はそこにある。近代的に合理化された機械や仕組みの社会に埋没してしまった人間をもう一度救い出す理念が必要ではなかろうか。

科学と科学技術の発展は、杜会を科学技術に向かってさらに加速させる。好むと好まざるとに拘わらず、その知識と技術は実在し、我々はそれを積極的に吸収し利用するか、あるいは無知のまま留まるかの二者択一に迫られることになる。

・科学技術が人間社会において単なる増幅器だとすると、テクノロジーは人類の貧困を救わない、何を増幅すのかを問わざるをえないし、技術以外に必要なものを問う。ミシガン大、外山健太郎。

・現代に響く思考停止へ警鐘ードイツ出身の政治哲学者ハンナ・アーレント
自分がやっていることの意味を深く考えない行為、自分のやっていることの意味を考えない普通の人が、途方もない災厄を引き起こす。アーレントが「悪の陳腐さ」と呼ぶ考え方は現代の様々な社会事件を捉える上でも有効だ。これに対抗するには、個人個人が自分と対話しながら、行いの意味を問い続けるしかない。

・アポリア・思考を放棄して袋小路へー米の社会学者、ウオーラーステイン
現代文明は深刻なアポリア(袋小路、難問)に入り込んだと見る。グローバル化が進めば進むほど、狭くなった地球上での富の格差が広がるばかりだ。科学は核のように環境を後戻りできない形で変えてしまう力を持つ技術を生み出し、一方では生命は大切だと言う人類が共有してきた価値観や規範は大きく揺らいでいる。
事態を一層複雑にしているのは、そうした今日的な問題に取り組む哲学や思想も袋小路に迷い込んでしまった事だという。哲学や思考の無力が実感され、社会の中に一種の思考の放棄ともいえる現象が広がっている。
個人が脳を鍛えれば何か問題が解決するというのは幻想である。人間を部分ごとに考えていては、いつまでも袋小路からは抜け出せない。生きる喜びを持つ本来の人間を取り戻すためには、立ち止まって全体を振り返ることが大切なはずだ。

・大きな物語、冬の精神が次の時代開くーポストモダン思想を代表するフランスの哲学者レオタール
もう大きな物語の時代は終わった。今の時代の顕著な変化は歴史の進歩や人間の解放という近代が目指してきた大きな物語を人々が信じなくなったことなのだ。大きな物語が消えるとともに、その担い手だった知識人の時代は終わった。正義や理想といった、人類にとって共通の目標や普遍的な価値観
も失われたという。これからは人々は断片化した自分たちだけの小さな物語の中で生きるしかなくなった。
大切なのは物事をただありのまま見るのではなく、それはいかにしてそうなったかを見ることだ。春が近づく気配を予感しながら希望の季節をただ待ち続けるだけでなく、あえて寒風に身を晒す。今が困難な冬の時代だからこそ、厳しい冬の精神を持たなければならない、とサイードは考えた。
21世紀のいま、人類共通の大きな理想ではなく自分たちだけの閉ざされた物語を美化する動きが広がっている。無意識のうちに集団志向に流れる空気もある。孤立を恐れずに逆風に向かい、熱狂や集団思考から遠ざかる。冬の精神が受け継がれた時に初めて、次の時代の新しい物語は見えてくる。

・ブッダの声ー「世界は美しいもの、人の命は甘美なもの」
今や文明の発達は、人間の寿命を引き延ばし、一人ひとりが自分の余生と終の生をいかに過ごすかを真剣に考えねばならない時代となった。自分の一生をどのように生きればよいか、その問いかけは無限の答えがあり、過去の賢者の言葉や神託なども思い浮かばれよう。
仏教を開いたブッダは、人生は苦である、と説いた。生老病死のすべてが苦である、すべては移ろいゆく、よって精進努力せよと。

やがて悟りを得たブッダは最晩年「世界は美しいもので、人の命は甘美なものだ」と表現したとある。なぜか安堵感を与える言葉である。

(宇宙は精緻にできている。宇宙は正確無比にして完璧である。自然の法則は素晴らしい。そして法則を理解できる理性を持った人間もまた素晴らしい。ーーーこれに通じるブッダの言葉である)

・世界は意味があるわけでもないし不条理であるわけでもない。ただ単にそれは存在するだけだ。仏作家、ロブ・グリエ。


脳トレ宇宙論 番外「宇宙の鐘を鳴らすのはあなた」

2020-08-08 10:45:46 | 脳トレ宇宙論

脳トレ宇宙論 番外「宇宙の鐘を鳴らすのはあなた」

(1972年にレコード大賞を受賞した和田アキ子さんのヒット曲にならって、あなたに捧げるCatch Copy) 

「宇宙の鐘を鳴らすのは あなた」歌詞

天文学に 会えて よかった
あなたには 夢と希望の匂いがする

つまずいて へまして 途方に暮れても
爽やかな 愛の匂いがする

はやぶさは 日本の星 宇宙の鐘を鳴らすのはあなた
世界も皆  無我夢中  あの鐘を鳴らすのはあなた

世界は今  コロナの中 あの鐘を鳴らすのはあなた
人はみな  孤独の中  あの鐘を鳴らすのはあなた

日本は今  眠りの中  あの鐘を鳴らすのはあなた
世界は皆  悩みの中  あの鐘を鳴らすのはあなた

 


脳トレ宇宙論 第33話 宇宙観の歴史

2020-08-07 14:27:37 | 脳トレ宇宙論

脳トレ宇宙論 第33話 宇宙観の歴史

・宇宙論 〔cosmology〕    From Wikipedia et al.
宇宙の起源・構造・終末などについての理論の総称。宇宙を対象とした自然学として哲学や宗教の重要部門をなすが、現在では現代物理学的・天文学的研究をいう。
また、私たちの住む宇宙について、私たちがいかに認識し、どのように理解をしているか、ものの見方と考え方である宇宙観とも言える。
この歴史的発展は宇宙を対象として、観測および科学的・論理的考察をとおして確認立証して築き上げてきた体系である。これは恰もジグソウパズルの切片を適切に集め並べ直して一つの主題を完成させる作業に似ていて、宇宙Jigsaw Puzzle と言える。この主題とは天文(宇宙)の観測技術や装置、計算手法を始めとして、その時代の社会的関心事や要請などのほか研究施設、組織、人的構成などにも関連する研究課題である。宇宙論の歩みは人類の歴史とともにあったと言っても過言ではない。 

宇宙観の中心的テーマは宇宙における人間の位置、つまり宇宙において我々は何者かという課題に収斂する。

 

1.古代・中世の宇宙観―地球中心の天動説

昔の人々は、日常生活で得られる情報・感覚から類推して宇宙観を形作っていった。確かに、素朴な視点でみると大地が動いているとは感じられないし、太陽や星は自分のいるところを中心に回っているように見える。このように大地は静止していて、太陽や星の方が動いているとことが前提となっている。

つまり、古代人は自分たちのいるところが世界の中心であり、宇宙の中心だと考えていた。これはどの地域でも同じで、考え方は共通している。

かくして、古代・中世における宇宙像は人間中心・地球中心の宇宙観であった。そして宇宙の主要な空間は太陽系であり、太陽、月、惑星などであった。

そして古代からケプラーの時代までは、肉眼以外に天体観測手段のない時代で、宇宙は創造力溢れる神話の世界でもあった。

 

・ギリシアの宇宙観・幾何学的宇宙・天体座標の発明

天体の位置を座標で表すことに思い至ったのもギリシア人である。紀元前350年ごろ、ギリシアのユードクスは世界地図を作成した。次に、世界で初めて世界地図に相当する星図を作り始めた。ユードクスが優れていたのは基準となる座標を北極星にとり、北極星から全ての方向に広がる放射状の線(赤経)とこれに直交する線(赤緯)を考案したことである。これにより、正確な星図を作成する基礎ができた。

また天体の運動の様子や軌道の考察が詳しく論ぜられるようになった。


2.中世ルネサンス期(約1300-1600年)の宇宙観
16世紀、ルネサンスが勃興し再びヨーロッパが天文学の中心となっていく。ギリシア時代に提唱されていた地動説が再提唱されて議論されるようになった。また17世紀初頭には望遠鏡が発明され、今まで肉眼では見えなかった天体の観測が可能となり、飛躍的な観測データの蓄積が行われていった。ケプラーは観測結果に基づいてケプラーの法則を導き、ニュートンはそれを説明する万有引力を提唱した。 

 

3.1600年代​から1800年代―太陽中心説から恒星の世界へ
・地動説の検証から恒星天文学の誕生

・太陽中心説とコペルニクス革命
・精密観測にもとづく真の惑星運動の発見―ティコとケプラー
・宇宙像の拡大―望遠鏡の発明と万有引力の法則の発見

望遠鏡の発明とニュートン力学の成立が18世紀から19世紀にかけての天文学の発展の原動力となった。1727年には光行差、1838年には年周視差が発見され、地動説が観測的に証明された。イギリスのハーシェルは妹カロラインともに望遠鏡を制作。1781年には天王星を発見し、1800年頃には赤外線放射を発見した。天王星の運動のずれから計算によって新たな惑星の位置が予言され、その予言の通り1846年に海王星が発見された。

19世紀には写真術が発明され、肉眼で観測できないような暗い天体でも、長時間露光の写真撮影によって観測できるようになった。これにより、太陽系天体と恒星に限られていた天文学の対象が星雲や銀河に拡大していった。

19世紀中期には分光学が興り、それまで単に望遠鏡で天体の位置・形状・明るさを観測するだけだった天文学に、天体からの光を分光してスペクトルを観測するという画期的手法がもたらされた。スペクトルを観測すると、天体に含まれる元素についての情報を得ることができる。また、天体のスペクトルを実験室でのスペクトルと比較することで、ドップラー効果によるスペクトルのずれが分かり、その天体が持つ速度に関する情報を得ることができる。このように天文学に分光学の手法が取り入れられることによって、天文学から天体物理学という分野が発展するようになった。ちなみに、太陽系は星雲から生成されるというカント・ラプラスの星雲説が現れていた。

 

4.1900年代から2000年代―新天文学の台頭と発展(天体物理学と銀河宇宙、太陽・星の物質の解明、銀河系と銀河の発見)

・一般相対性理論とフリードマン宇宙モデル

1905年に特殊相対性理論を発表したアインシュタインはその後加速度運動を含む一般的な場合にも理論を拡張し1916年までに一般相対性理論の枠組みを完成した。この一般相対性理論は物体の運動や質量を時間および空間と結びつけて理解する時空の物理学である。空間や時間は物体の運動とは独立に存在することを前提とする古典物理学と際立って異なる体系であった

アインシュタインは物質を含む宇宙に一般相対性理論を適用すると万有引力のために宇宙が潰れてしまうことに戸惑った。相対論はアインシュタインの論文が発表されたドイツ以外では当初はあまり評価されなかったが1919年の皆既日食の際に一般相対性理論が予測する太陽の重力場による光線の曲がりが検出されて一躍注目の的となり宇宙モデルの研究にも関心が高まった。1922年にロシアの数学者フリードマンが膨張や収縮をするアインシュタインの方程式の解を見出した。これはフリードマン宇宙モデルとして知られている。

さて、アインシュタインの相対性理論によって近代的天文学の考察が始められた。20世紀に入ると宇宙の様々な天体から電波が放出されていることが発見され、電波天文学が始まった。これにより、可視光での観測に限られていた我々の宇宙に関する知識はさらに広がることとなった。20世紀後半には人工衛星が打ち上げられるようになり、地上からは大気の吸収によって観測できないγ線、X線、紫外線、赤外線など、様々な波長の電磁波で宇宙を観測できるようになった。

 

宇宙の基本的構成要素は銀河であること、すなわち銀河からなる宇宙という描像が確立して間もなく、遠方の銀河ほど速い速度で私たちから遠ざかるというハッブルの法則が発見された。この法則は宇宙全体が一様等方的に膨張していることを示すもので、それまでの静止宇宙という概念からの大転換となった。

膨張を過去に辿れば、必然的に宇宙の大きさは小さくなり密度は高くなる。初期宇宙の高密度状態における物質の研究に欠かせない原子核物理学と量子力学の発展の中からビッグバン宇宙論が提唱され、1965年の宇宙マイクロ波背景放射の発見により新たなパラダイムとして確立した。ビッグバン宇宙では、素粒子の性質が宇宙の進化に深く関わっている。 

その後インフレーション理論が登場し宇宙の進化のみならず宇宙の起源についても科学的に考察する基礎ができた。 

・ビッグバン宇宙論(宇宙膨張の発見とビックバン)

現在、精密な天文観測によって、 宇宙の始まりは過去にビッグバンと呼ばれる現象によって引き起こされたと考えられている。その瞬間に時間と空間が発生し、点のような小さ い領域で始まった宇宙は爆発的に膨張し、その膨張は現在でも続いている。 最初期の宇宙は、想像を絶する高温、高密度、高エネルギーの状態にあり、物質はすべてバラバラの素粒子として存在した。 その後、宇宙は膨張とともに冷却していき、バラバラだった素粒子が反応し結合して、やがて元素が合成され、原子ができ、それらが万有引力で集まってさらに星などになり、それらが集まって銀河になり、星の中ではあらたに重元素が生成され、超新星爆発でそれら重元素がバラまかれ新たな星の材料になり、このようにして宇宙が現在のような形態になった。(宇宙の大規模構造の形成:宇宙の再電離・恒星の形成・銀河の形成・銀河群、銀河団、超銀河団の形成)

(出典 WEB 嶋作一大(東大)TMT 時代のサイエンス 銀河の形成と進化 )

 

5.21世紀における宇宙論の展望 

20世紀末1980年代以降に急速に進展した天体物理学から宇宙の起源の理論的解明の時代へ、そして量子宇宙論・素粒子論の進展。宇宙の誕生とその進化発展は量子力学・素粒子物理学で解明される。

(暗黒物質の存在、 マイクロ波背景輻射の温度ゆらぎ発見、 ハッブル定数が10%の精度で決定、 銀河系内ダークマターの検出、 暗黒エネルギー存在可能性)

一般相対性理論は重力場の古典論として確立されたが、電磁場の存在の必然性を何ら説明しないものであった。アインシュタインはこれを不満足と考え、全てを統一的に説明できるような理論を建設することを後半生の目標としたが成功しなかった。

現在、自然界には基本的な力として重力と電磁気力の他に強い相互作用と弱い相互作用が知られている。それらも包含した統一場理論はとても難しく、その試みは一時廃れてしまった。湯川秀樹によって扉が開かれた素粒子物理学においては1950年代に坂田昌一グループがハドロン(強い相互作用をする素粒子)と中間子をそれより下位のもっと小さな微粒子―基本粒子―からなると考え数学的に解明してクォーク模型を提唱した。

    弱い相互作用と電磁相互作用しかしない粒子をレプトンと呼び、1967年にワインバーグとサラムはレプトンとクォークの電磁および弱い相互作用を対称性を持つゲージ場(ヤンーミルズ場)とヒッグス機構という観点から定式化した、繰り込み可能な場の理論を提唱した。これを弱電磁相互作用の統一理論と呼ぶ。グラショウは1974年にジョージとともに非可換ゲージ理論によって、強い相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用を統一的に記述する大統一理論を提唱した。アインシュタインの統一場理論の構想が思わぬ形で進展したわけである。しかし重力相互作用まで統一することには成功していない。

ところで1960年代の終わり頃、南部陽一郎はハドロンが振動する弦から構成されており、振動のそれぞれのモードが別々の粒子に当たると考えたストリング(弦)理論を提唱した。この始まりからその後1984年にシュワーツとグリーンは超弦と呼ばれる特別な弦理論を発見した。超弦理論は量子力学と相対論が融合された上に成り立ち、重力に関する量子論の最初のものだと考えられている。

最後に、現在では宇宙は絶えず膨張を続けているという膨張宇宙論が有力であるが、この他に周期的に膨張・収縮を繰り返すという振動宇宙論、膨張とともに新しく物質が創成されるという定常宇宙論などが提唱されている。

宇宙誕生と進化は理論の想像力と実験技術で辿り着いた世界であり、今後もさらに新しい理論と実験技術が宇宙論の進展を促すであろう。

・年表

1606年  ケプラー、「惑星の運動の法則」を発表。
1632   ガリレオ、地動説を完成させる。
1666   ニュートン、万有引力の法則を考案(ニュートン力学)。
1781   ハーシェルが天王星を発見。
1800頃  ハーシェルが赤外線放射を発見。
1846   ガレが海王星発見。

1900    量子仮説(プランク)
1903   原子崩壊説を提唱(ラザフォードとソッディ)
1904   原子模型の理論を発表(長岡半太郎)
1905   特殊相対性理論、光量子仮説、運動物体の電気力学(アインシュタイン)
1911   原子構造(有核原子模型)の研究(ラザフォード、ボーア)
1912   宇宙線の確認(ヘス)
1913   原子構造の量子論(ボーア)
1915   重力場方程式、一般相対性理論の提唱(アインシュタイン)
1919   人工原子核変換(原子核崩壊の実験)(ラザフォード)
1923   コンプトン効果の発見(コンプトン)
1923      物質波説(ド・ブロイ)
1925   量子力学の創始(ド・ブロイ)

1925   行列力学(ハイゼンベルグ、ボーア):
1925   星の内的組成の研究(エディントン、ラッセル)
1926   シュレデンガー:波動方程式
1926   赤方変位発見(ハッブル)
1927   トムソン、デヴィンソン:電子の干渉効果
1927       ハイゼンベルグ:不確定性関係
1927―28 デラック:電磁場の量子論
1928   α崩壊の理論(ガモフ)
1929   宇宙膨張法則(ハッブル)
1930   サイクロトロンの建設(ローレンス、リビングストン)
1931   宇宙電波の発見(ジャンスキー)
1931   ニュートリノ仮説(パウリ)
1932   陽電子の発見(アンダーソン)
1932   中性子の発見(チャドウィック)
1935   中間子理論(湯川秀樹)
1937   中間子の発見(アンダーソン、ネッダーマイヤー)
1938   ウランの核分裂の発見(ハーン、シュトラスマン)
1939   核反応による星の熱源の説明(ベーテ)
1942   核の連鎖反応(フェルミ)
1945   原子爆弾(米国)
1945   シンクロトロンの発明(マクミランほか)
1947     パウエル:パイ中間子発見
1948     朝永、シュヴィンガー:くりこみ理論
1948   パロマー山5メートル反射望遠鏡完成(米国)
1949   宇宙のビッグバン理論の提唱(ガモフ)
1957     リー、ヤン:弱相互作用でのパリテー非保存の理論
1957   初の人工衛星 スプートニク1号(ソ連)
1964     ゲルマン、ツヴァイク:クオーク模型
1965   宇宙の3K背景輻射を発見(ペンジアス、ウイルソン)
1967   ワインバーグ、サラム:弱電統一ゲージ理論発表
1969   人類が初めて月面に立つ アポロ11号(米国)
1977   惑星探査機 ボイジャー1、2号打ち上げ(米国)
1981   最初のスペースシャトル・コロンビア打ち上げ(米国)
1987   超新星1987Aからニュートリノ検出(日本)
2012   ヒッグス粒子の発見
2015   米国の観測装置LIGO(2基のマイケルソン干渉計)で重力波を検出
2019   国際研究プロジェクト(EHT):ブラックホールシャドウを世界で初めて撮影

 

(出典 WEB 嶋作一大(東大)TMT 時代のサイエンス 銀河の形成と進化 )