ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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寄付税制

2008年10月28日 | カ行
 「新市民伝」という連載を土曜の「青いbe」で今年(2007年)02月まで約1年半続けた。福祉やまちづくりなど、さまざまな社会の問題を解決しようと自発的に活動する「新市民」を毎週1人、計70人紹介した。

 行政からも企業からも独立した民間の非営利活動の担い手だ。日本でも欧米のように社会で重要な役割を果たしつつあるのに、どこも深刻な資金難に悩まされていた。

 給料が安いから人材を雇えない。行政の「下請け」の委託事業に追われる。

 外国の資金を頼りにする例もある。覚せい剤など薬物依存者の自助施設「ダルク」はカトリックのメリノール宣教会が立ち上げの資金を出した。炭素税などを提言するNPO法人「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は、費用の約半分を米国の財団からの助成で賄う。

 日本の団体が貧しいのは寄付が少ないからだ。日本の寄付は2002年で7000億円余と米国の25兆円の30分の1以下。英国の約2兆円(2004年度)にも遠く及ばない。これは寄付文化の差だけではない。

 寄付税制の影響が大きい。個人や企業が寄付をすると税金が軽くなる税制だ。寄付額が課税所得から差し引かれ、寄付控除と呼ばれる。控除の対象となる寄付を受け入れる資格は社会の役に立つと認められた団体に与えられる。資格のない団体に寄付をしても税金は軽くならない。

 税金に着目すると、自分の払う税金の一部を、共感した団体に振り向ける仕組みとも言える。つまり、税金の使い方を政府ではなく、市民が直接決められるわけだ。

 「税金は政府が集めて分配するもの」という考え方が強い日本では、寄付を促すような税制にはなっていない。

 寄付控除の対象団体がわずかしか認められていない。NPO法人約3万2000のうち約70、公益法人(社団、財団法人)約2万5000のうち約900だ。しかも、個人が寄付したときに税が軽くなるのは所得税〔だけ〕で住民税はほとんど対象外。サラリーマンが寄付控除を受けるには確定申告せねばならない。年末調整で手続きできるよう見直しが必要だ。

 英国のブレア政権の目玉は寄付を奨励する税制改革だった。制度を簡素にし、寄付に財政資金で上乗せもした。サッチャー改革で低下した公共サービスを民間の団体(チャリティー)の力で引き上げる狙いだった。寄付控除の対象団体は約19万にのぼる。

 来月の税制改正では公益法人改革に伴って寄付税制も見直される見通しだ。NPO法人を含めて寄付控除の対象団体を大幅に増やし、国民が寄付をしやすくする。「民から民へ」の資金の流れを太くし、市民が寄付によって社会を変えられるようにすべきだと思う。

  (朝日、2007年11月18日。編集委員 辻陽明)