なすがままに

あくせく生きるのはもう沢山、何があってもゆっくり時の流れに身をまかせ、なすがままに生きよう。

自転車でツーリング

2005-05-12 18:20:09 | 昭和
僕が初めて自転車に乗ったのは小学5年生の時だった。引越しのため会社まで遠くなった父が通勤用に中古自転車を譲りうけたのだ。現在の自転車と違って材質は全て鉄である、だから重い自転車だった。だが、びくともしない頑丈な自転車であった。その自転車に乗れるのは父の休みの日曜日だけだった。僕は近くの広場で父から自転車の乗り方を教えてもらった、父は職業運転手である、右折や左折をする時の合図の仕方まで厳しく教えこまれた。ある日僕は自転車に乗って遠くに行きたくなった。目的地は小倉に決めた。僕は天籟寺まで下ると、鞘ヶ谷の製鉄所の社宅前の道路を抜けて八幡市(現在は八幡東区)の七条まで出た。そこは西鉄の路面電車が走っており、その線路に沿って東へ東へと自転車を走らせた。僕はその時の気持ちを今でも忘れない。歩くよりずっと早いスピードでドンドン目的地まで行ける、しかも自分の足でペダルをこいでいるのだ。風を肌で感じる爽快感、未知の世界への期待、僕は夢中だった。そして、目的地に着いた。小倉井筒屋前だった、あのオムライスの井筒屋だ。僕の心は充実感と達成感でいっぱいだった。この自転車での遠出がきっかけで僕はあらゆる所を自転車で放浪した。今と違って車など殆ど通らない時代である。上の写真は自転車に乗る僕の姿である。のんびりと風を肌で感じながらひなびた昭和の街を自転車で行く、そして時は昭和30年代後半にさしかかろうとしていた、時代は高度成長時代に向けて加速し始めた頃だ。日本人はそれから猛スピードで繁栄の時代に突入することになる。思えば僕が小学5、6年生の頃が日本人にとって最後のノンビリツーリングの時代だったのかもしれない。