安倍晋三のトランプの対ロ核戦略無視の日露平和条約無締結状況に「私とプーチンが終止符を打つ」のハッタリ

2018-02-09 11:09:35 | 政治

 安倍晋三が2月7日、北方領土返還要求全国大会に出席、「挨拶」(首相官邸/平成30年2月7日)している。

 安倍晋三「戦後72年が経過してもなお、日本とロシアの間には平和条約がないのは、異常な状態です。何とか、この状況を打開しなければならない。戦後ずっと残されてきたこの課題に私とプーチン大統領が、終止符を打つ」

 参加者の多くが安倍晋三のこの決意を頼もしく感じたに違いない。

 続けての発言。

 安倍晋三「これまで20回の首脳会談を行い、その強い決意を両者で共有しております。事情が許せば、本年5月にロシアを訪問し、日露首脳会談を行い平和条約締結問題も取り上げる考えです」
 
 平和条約がない異常な状態に終止符を打つ「強い決意を両者で共有」と締結前進の雰囲気を感じさせるが、このことが日本側と一致する思惑の「共有」であるかどうかについては一度も突き詰めた説明はない。ただ単に「異常な状態」だから、その「終止符を打つ」と双方それぞれの思惑(=それぞれが国益としている具体性)を抜きに勇ましいことを言っているに過ぎない。

 要するに領土の帰属問題で双方の国益を一致させることができるかどうかが平和条約締結に進む最難関となるはずだし、最難関となっているはずだが、それには触れずに平和条約の締結のみに焦点を当てた発言に終止している。

 まるで交渉進展の障害となっている双方それぞれの国益など存在しないかのようだ。当然、首脳会談は交渉の障害となる国益の違いを克服する最大の機会であり、機会とすることに意味はあるはずだが、それを20回も積み上げながら、平和条約締結に何ら進展がないということは、裏を返すと、安倍晋三が20回に亘る克服の機会を活かすことができなかった証明としかならない。

 にも関わらず、「20回の首脳会談」を行ったと回数に意味を持たせている。

 現在、北方四島で進展を見ているのは共同経済活動のみであろう。

 安倍晋三「先ほど御紹介された一昨年の長門における日露首脳会談において、新しいアプローチにのっとってこの問題を解決していくということで合意をいたしました。今、四島においては既にロシア人が生活をし、代を重ねています。その中で現在住んでいるこの方々も含めてロシア人と日本人がこの問題を解決していくことによって、両国に新しい未来が開かれていく。この四島に新しい未来が開かれていくということをお互いに理解しあうことこそ、この問題の解決につながっていくとの考え方におけるアプローチであります。

    ・・・・・・・・・・・

 また、北方四島における共同経済活動については、昨年、地元の関係者の方々の参加も得て現地調査を実施し、早期に取り組むプロジェクト候補が特定されました。今後、プロジェクトを具体化するための作業を、隣接地域の発展を念頭において加速させてまいります。

 これらの取組は、平和条約の締結に向けた重要な歩みとなると確信しています。今後とも、地元への裨益(ひえき)の観点や皆さんの御意見を踏まえつつ、精力的に取り組んでまいります」

 安倍晋三は共同経済活動は「平和条約の締結に向けた重要な歩みとなると確信しています」と言っているが、事実「重要な歩みとなる」なら、共同経済活動自体が領土の帰属問題での国益一致へと進展していく国益一致の体裁を取らなければならない。

 つまり共同経済活動の国益一致と領土帰属問題の国益一致は対応し合わなければならない。事実、対応し合うなら、共同経済活動の基盤とすべく安倍晋三が提案した“双方の法的立場を害さない「特別な制度」”をロシア側が何らかの妥協の上に許容しなければならないが、「特別な制度」は自国主権を基盤とした共同経済活動に拘るロシア側の反対で暗礁に乗り上げたままで、共同経済活動の事業の選定のみが進んでいる。

 何のことはない、領土の帰属問題での国益一致へと進展していく共同経済活動に於ける国益一致の体裁を取っていない。当然、「平和条約の締結に向けた重要な歩みとなる」保証はどこにもない共同経済活動という状況に置かれていることになる。

 このことはロシア側が自国主権に拘っているところにも現れている。ロシア側はそれを共同経済活動での自国国益と看做している。当然、その国益を領土の帰属問題、そして平和条約締結に向けた自らの国益と対応させていることになる。

 安倍晋三は「20回の首脳会談」をプーチンとの信頼関係構築に役立っていると見ているが、信頼関係が国益を凌ぐわけではない。首脳会談の回数だけを虚しく積み上げている可能性は高いのだが、そういった感覚に浸るのはプライドが許さないから、アベノミクスに都合の悪い統計は遠ざけるように遠ざけているのかもしれない。
 米国防総省は2018年2月2日、新たな核戦略の指針となる「核態勢の見直し(NPR)」を発表した。〈主にロシアに対する核抑止力を刷新するため、数10億ドルを投じることが主眼。〉だと、2月3日付「CNN」記事は伝えている。

 〈報告書は、「ロシアは米国と北大西洋条約機構(NATO)を自国の地政学的な野心に対する主要な脅威とみなしている」と指摘。米国防情報局(DIA)の現在の推計として、ロシアが短距離弾道ミサイルや、中距離爆撃機に搭載可能な無誘導爆弾、爆雷など2000発の「非戦略」核兵器を保有していると指摘した。
 報告書はまた、ロシアが新たに大陸間の海中を進む核武装した原子力推進の魚雷を開発中との認識を示した。この計画は「ステータス6」として知られ、米当局者によると、水中発射のドローンタイプの装置で、数千マイルを進み米国沿岸の軍基地や都市を狙う可能性があるという。爆発後は広範な地域で核汚染が発生するように設計されている。〉――

 〈NPR(核態勢の見直し)はまた、米国が確かな抑止力を備えているとロシアに印象づけるため、「低出力」の核兵器を重視するよう要求。潜水艦発射弾道ミサイルに搭載された既存の弾頭を改良を求めた。5000万ドル(約55億円)規模の5年計画になるという。〉――

 「核態勢の見直し(NPR)」は対ロシアのみならず、中国や北朝鮮向けも含まれているが、トランプは改めてプーチン・ロシアを軍事的に要注意の仮想敵国に位置づけたことになる。

 翌2月3日、ロシア外務省はこのトランプの新たな核戦略を批判した声明を発表。

 ロシア外務省声明「深く失望した。敵対的で反ロシア的な態度が明白だ。アメリカはロシアが核戦力を近代化させていることに関連づけることで、大幅に核兵器を増強することを正当化している。

 ロシアが核兵器を使用できるのは、ロシアと同盟国に対して核兵器や大量破壊兵器が用いられた場合などに限られている。

 我々の自衛のための権利に対して疑問を投げかける試みだ。我々も必要な措置を取らざるを得ないだろう」(NHK NEWS WEB/2018年2月4日 5時32分)

 トランプはロシアに向けて核軍拡競争の引き金をあからさまに引いた。

 安倍晋三が北方領土返還要求全国大会に出席して挨拶する前日の2018年2月6日、北方領土の国後島などで2000人以上の兵士が参加する軍事演習を開始した。1月30日にはメドベージェフ首相が択捉島にある空港を軍民共用とする政令に署名までしている。

 元々ロシア太平洋艦隊所属の原子力潜水艦基地ヴィリュチンスクがあるロシア領東端カムチャツカ半島の先端から北海道まで南下しているロシア実効支配の北方四島を含む千島列島(ロシア名クリル諸島)をロシアは自国防衛の戦略的要衝としていた。

 そこへ来て、トランプ政権が対ロシア向けを主要とする新たな核戦略を公表した。当然、この演習は自国領土と主権は断固として守るという日本向けのみならず、米国向けの意思表示となる。

 なぜなら、日本政府はトランプのこの新たな核戦略 「核態勢の見直し(NPR)」を強力に支持したからである。外相の河野太郎が2月2日、米国の「核態勢の見直し(NPR)」の公表に関する「談話」(外務省/平成30年2月3日)を発表している。

 1.2月2日(米国東部時間,日本時間3日未明),米国防省は,「核態勢の見直し(NPR: Nuclear Posture Review)」を公表しました。
 2.今回のNPRは,前回のNPRが公表された2010年以降,北朝鮮による核・ミサイル開発の進展等,安全保障環境が急速に悪化していることを受け,米国による抑止力の実効性の確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしています。我が国は,このような厳しい安全保障認識を共有するとともに,米国のこのような方針を示した今回のNPRを高く評価します。(以上一部引用)

 これは安倍晋三の支持をも意味する。支持していなければ、閣内不一致となる。事実、安倍晋三は2月7日に米副大統領ペンスと首相官邸で会談した際、NPRについて「高く評価する」と伝えている。

 プーチン・ロシアを軍事的に要注意の仮想敵国に位置づけることになるトランプ政権の「核態勢の見直し(NPR)」を首相、外相共々「高く評価する」――

 日本政府のこの高評価はプーチンをして米国に対してのみならず、米国と軍事同盟を通して深い絆で揺るぎなく結ばれている日本に対する自国防衛の戦略的要衝としての価値付けを北方四島に改めて付与したはずである。

 要するに安倍晋三は北方四島の帰属問題と平和条約締結に向けた交渉を手繰り寄せるのとは逆の、プーチンにロシア領として維持する必要性を改めて確信的に与える距離にまでなお遠ざける行動を取った。

 にも関わらず、2月7日に北方領土返還要求全国大会に出席して、「戦後72年が経過してもなお、日本とロシアの間には平和条約がないのは、異常な状態です。何とか、この状況を打開しなければならない。戦後ずっと残されてきたこの課題に私とプーチン大統領が終止符を打つ」と、さもそれが可能であるかのように宣言した。

 要するに安倍晋三は何も気づいていないだろうが、「私とプーチン大統領が終止符を打つ」とハッタリをかましたに過ぎない。当然、「20回の首脳会談」は意味もない回数に成り下がる。
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安倍晋三の整備点検後の試験飛行墜落に対して安全性を保障しなかった整備・点検全ヘリ徹底指示の逆説

2018-02-08 11:58:46 | 政治

 2018年2月5日午後4時36分頃、佐賀県神埼市の陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地を飛び立った陸自のAH64D戦闘ヘリコプターが離陸から約7分後の同午後4時43分頃に南約4キロの住宅に墜落、火災を引き起こした。乗員2名は死亡、住宅の室内にいた11歳の女児が逃げる際、膝に怪我を負ったという。

 墜落までの経緯については2月6日付「時事ドットコム」記事によると、ヘリは50飛行時間ごとの定期整備と4枚の回転翼をつなぐ「メインローターヘッド」の交換を実施、それらの具合を見る点検飛行中の出来事で、管制官との交信に異常を示す内容は確認されていないという。

 他の記事によると、駐屯地内を一定距離試験飛行してから、異常なしを認めたのだろう、駐屯地外に飛び立っていったという。いわば突然の墜落と言うことになる。

 マスコミは複数の目撃者談も伝えていて、水平方向に移動していたヘリからメインローターが脱落、いきなり機首から突っ込む状態になって住宅に墜落したと伝えている。

 と言うことは、考えられる墜落の主原因は「メインローターヘッド」の交換にどこか不具合があったことになる。

 この交換は整備点検のうちに入る。例え「メインローターヘッド」の交換に不具合がなかったとしても、50飛行時間ごとの定期整備を終えたのちの墜落だから、いずれにしても墜落の問題点は整備点検と言うことになる。

 沖縄で米軍ヘリの墜落、緊急着陸(=不時着)が相次いでいる。アメリカ軍のヘリコプターの基地以外の場所への緊急着陸が2018年1月だけで3回も発生した。10日間で1回の異常事態そのものである。

 結果、墜落や緊急着陸を起こしては調査のための飛行停止、原因は機体の構造上の問題は確認されず、パイロットが決められた手順を守らなかったことによる人為的なミスが原因、いわば機体のトラブルではなく人為的ミスだとして程なくして飛行再開、再び事故、飛行停止、短い日数を置いて飛行再開の繰返しを常態化させることになっている。

 要するに整備点検して機体のトラブルでないと判明すれば、大したことではない、飛行停止の間に全機体の再整備、整備士やパイロットに対しては再教育を行えばそれで良しと片付けてきた。

 ところが、機体のトラブルを原因としない緊急着陸が特に繰返されるということは整備と再教育が機能していないことを意味させている。

 2017年10月30日付の毎日新聞インターネット記事が米海兵隊運用垂直離着陸輸送機オスプレイ2017年8月末時点の重大事故率が5年前米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)配備前の日本政府公表事故率の約1.5倍となり、海兵隊機全体の事故率を上回ったことが海兵隊への取材で分かったと報じたことに対する官房長官菅義偉の記者会見発言。

 菅義偉「整備ミス、操作ミスなど機体以外の要因で発生する事故もある。事故率のみをもって機体の安全性を評価することは適当でなく、あくまでも目安の一つだろう」

 確かに「機体の安全性」は整備ミス、操作ミス以外の決められた機械・機器が決められたとおりに動く機体上の体系的作動性によって保たれる。

 但し“飛行の安全性”はいくら機体に問題がなくても、整備や操作のパーフェクトな実施なくして保障されないのだから、機体上の体系的作動性は整備や操作のパーフェクトな実施こそが第一重大要件となる。

 いわば機体に何のトラブルがないことのみを以って“飛行の安全性”を保障することはできないということである。だが、菅義偉は保証できるかのような態度を取った。沖縄県民に対する尊大な侮辱以外の何ものでもない。

 今回の自衛隊ヘリ墜落は決められた機械・機器が決められたとおりに動く機体上の体系的稼働性――“機体の安全性”が整備士の整備やパイロットの操縦技術のパーフェクトな実施が生み出し、そのような実施が何よりも保障することを教えている。あるいは機体のトラブルではなく、整備士の整備やパイロット操作上の人為的ミスで片付けてはいけないことを教えている。

 防衛相の小野寺五典が2月5日夕、安倍晋三と官邸で面会したと、「朝日デジタル」(2018年2月5日21時03分)記事が伝えている。

 記事は小野寺五典が安倍晋三から、〈人命救助の徹底と、自衛隊機の全てのヘリコプターについて徹底的な整備点検を確実に実施するとともに、事故を起こしたAH64Dについては当面、飛行停止とし、徹底した原因究明を行うように指示があったという。〉と伝えている。

 そして小野寺五典はその指示通りに2月5日夜、陸自が保有するすべてのAH64D(全12機)の飛行停止と陸海空自衛隊のすべてのヘリコプターについて点検や整備を徹底するよう指示した。

 しかしこのような指示は米軍と同様にこういった事故に於ける場合の紋切り型となっている。

 ヘリが墜落したのは2月5日午後4時43分頃で、小野寺五典が安倍晋三に首相官邸で面会したのは首相動静記事によると、午後5時58分から同6時8分までの10分間。菅義偉が同席している。

 いわばヘリ墜落から約1時間は経過してから安倍晋三と会っている。小野寺五典は墜落ヘリが50飛行時間ごとの定期整備と4枚の回転翼をつなぐ「メインローターヘッド」の交換を実施、それらの具合を見る点検飛行中の出来事で、尚且つメインロータが脱落、いきなり機首から突っ込む状態になって住宅に墜落したといった目撃者談も情報収集して、それらの情報を安倍晋三に伝えた上で安倍晋三から上記指示を受けたはずである。

 安倍晋三は一国の首相であると同時に自衛隊の最高指揮官として米軍ヘリの相次ぐ緊急着陸から機体のトラブルがなくても、機体上の体系的作動性を保障することになる整備士による整備点検とパイロットのヘリ操縦のパーフェクトな実施がなければ、“飛行の安全性”は守られないということを読み取って、学習していなければならない。

 いわば“飛行の安全性”は機体上の体系的作動性とパーフェクトな整備点検とヘリ操縦こそが最前提となるということを自らの知識としていなけれならなかった。

 当然、小野寺五典に対して事故を起こしたAH64Dの当面の飛行停止や徹底した原因究明、そして徹底的な整備点検の確実な実施を単に外形的に指示するのではなく、相次ぐ米軍ヘリの墜落の経緯と併せて陸自ヘリの民家墜落原因が交換した「メインローターヘッド」の脱落の可能性によって機体上の体系的稼働性=機体の安全性と飛行の安全性は整備士の整備やパイロットの操縦のパーフェクトな実施こそが負っていることと、整備点検後の試験飛行中という安全性の保障とは逆説を取っていることを教えている以上、もし安倍晋三が飛行中の米軍のみならず自衛隊の戦闘機やヘリから国民を守ることを真に考えているなら、これらの経緯に特に注力した整備点検の確実な実施を指示していなければならなかったはずだ。
  
 だが、安倍晋三の指示は紋切り型で終わっている。真に「国民の命を守る」という気持があるのかどうか疑わしい。
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2/5衆院予算委江田憲司vs安倍晋三:対夫人危機管理無能と安倍昭恵のモラルと規律欠如、意志薄弱を窺う

2018-02-06 12:12:50 | 政治

 2018年2月5日の衆院予算委。無所属の会議員の江田憲司がいつもは政策論争を挑むのだが、今回は森友・加計問題を追及すると断って質問に立った。江田憲司と安倍晋三の発言の中から安倍晋三の自身の妻である安倍昭恵に対する危機管理無能と安倍昭恵が意志薄弱であることを間接的に指摘している箇所等を取り上げてみる。

 江田憲司「(自身の)首相秘書官の経験と(政務秘書官として)総理夫人担当も経験した。自身の経験に照らすと、総理の国会答弁に納得出来ない。理解し難いことがある。

 (森友問題が)ここまで大きくなった最大の要因は昭恵夫人が名誉校長を引き受けたこと。小学校と言えども一私学、私立(わたくしりつ)です。こういう所に本来であれば総理夫人と言えども、肩書を貸すことは厳に慎むべきで、総理は夫人が名誉校長に2015年の9月5日になり、昨年(2017年)の2月にこの間に問題が発覚、大きくなると同時に退任するまでの間、名誉校長であったのは事実だから、小学校のパンフレットには顔写真が載り、メッセージまである。

 籠池理事長の教育理念の感銘云々の記事がある。この問題の最大の要因が昭恵夫人の名誉校長に就任したことにあるという認識はありますか」

 安倍晋三「私の妻であると同時に一人の人間ですから、別人格でありますが、妻が名誉校長を引き受けたことによって疑念の目を向けられたのは事実なんだろうとこのように思います」

 江田憲司「総理夫人のところには夥しい色んな要請が来ますから、祝電をくれ、祝辞をくれ、講演に来てくれ、挨拶に来てくれ、果ては顧問になってくれ、事実として一杯来る。

 そんなときに安倍総理のご認識、ご夫人のことですから、どうされておられるのですか。 私は当時(首相)夫人担当をして現に戒めていたことは総理夫人と言えども、どうしても第三者、国民から見れば、総理の分身・代理と見られてしまう。

 総理夫人と言えども、信用力抜群ですから、それを目当てに寄ってくる方々も、全部とは言えないけど、いる。だから、メッセージをくれ、挨拶してくれ、顧問になってくれ、そういう人もいることは否定できない。

 そうしたときに総理夫人はご夫人だ、私人だと言う前にどうしても総理の分身・代理と見られる。総理夫人の立居振舞いにそういう要請を受けるか受けないかという裁きは、官邸の危機管理と言うか、私が戒めていたことはやはり総理大臣は全体の奉仕者、憲法に書いてある。一部の奉仕者であってはならないと書いてる(日本国憲法第15条2項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。)

 総理夫人には直接には当てはまらないけども、分身・代理と見られる以上、ある意味、ディシプリン(Discipline-規律)問題、モラルとして私は一私人、一私企業、一私学のために肩書を貸したり講演は行ったりはしない、こういうふうに一線を引いていた。

 安倍総理はどう考えて処してきたかお聞きしたい」

 安倍晋三「たくさんの依頼がございます。私は総理大臣でありますから、一切断っているわけであります。総理に就任する前は様々な顧問等を引き受けたことがあります。総理に就任すると同時に会長等々は他の方が代行を務めています。

 妻の場合はですね、何回か申し上げているが、名誉校長を引き受けてください、頼まれて、これは(平成)27年の9月5日でございます。これは講演の前の控室で頼まれて、その場で妻は断っています。『申し訳ないけど、それはお受け出来ない』と申し上げた。

 夫である私との関係でそれはできないと断っていたわけでありますが、その後、突然、講演の場で籠池さんから名誉校長を就任されたと紹介されたわけであります。父兄の前で拍手されましたので、そうなった関係がございまして、その場でお引き受けできないと言うことができなかったとのことであった。

 そういうことでございます。

 結果としては受けてしまったということでありまして、元々は受けないということになっていたのでございます。結果としてそうなってしまい、国民の皆様から疑念を招いたことは残念だと、こう思っているところでございます」

 江田憲司「今のご説明が多分そのとおりだったでしょう。ちょっとこのパネル(左傾画像)をご覧いた頂きたいんですが、これだけでとどまっていないんですよ。これまでの国会審議で(指摘された事柄の内)私も事実に限って列挙しました。

 安倍昭恵夫人はどういう関与をしていたのか。①、②は申し上げました。このパンフレットに基づいて森友学園は寄付募集・児童募集をしている。こういう魂胆なんですよ。

 それに加えてですね、何度でも、昭恵夫人、訪問しているんじゃないですか。テレビででも流れていたけども、児童たちの振る舞いに感動している動画が流れました。

 講演に二回から三回行かれている。複数回行かれて、その講演冒頭でこの小学校に何かお役に立てればということを明確に仰っている。

 ちょっと飛ばして、⑥、⑦を取り上げます。籠池さんと2014年4月には校地予定地まで一緒に視察をされている。その写真があります。それから大阪府の私学審会長と言えば、小学校の認可権限を持つ、この会長の教授、学長を務めている大学までわざわざご夫人行かれているんですね。この私学審の会長とも面談されているんですね。

 これは大学のホームページで見られます。

 全部事実ですよ。ですから、申し上げたいことはですね、確かに色んな経緯でこのように籠池さんにハメられた面があっても、名誉校長になられただけならまだしも、こうした形で会うことは能動的にあと行かれているじゃないですか。
 
 このことの本質はこういう外形をつくり出しているのが昭恵夫人だということなんですよ。外部的徴表(ある事物の特徴を表すもので、それによって他の事物から区別する性質)と言います。それを見た第三者、これ役人であれ、国民であれ、これは昭恵案件なんだなと、夫人案件なんだなと思うのは当たり前でしょう。

 ですから、私はね、価格交渉にまで口出ししたとは言いません。しかしトップたる者、大将たる者、昔、これが江戸時代なら殿様が良きに計らえと言うだけで、みんな忖度してできました。

 しかしそんなことで今の時代、部下は動きませんよ。しかし私に言わせれば、ここまで入れ込んでデモンストレーションを昭恵夫人がすればですね、森友問題のように普通は連絡の悪いタテワリ官庁も、財務書と(大阪)航空局が開学時期に合わせてトントン拍子で異例な手続きで例外的な要件まで認めて、進めるなどあり得ないですよ。

 中央官庁に20年間勤めましたよ。あの頭の硬い、他の役所のことなど歯牙にもかけない、ましてや民間の言うことなど門前払いを食らわせる、こういうところがですね、こんなトントン拍子で決めることなどあり得ないんですよ。

 そこに大きな政治的な力が働いているんではないかなと思うことはむしろ自然じゃありませんか。質問はですね、ここまで外形的徴表をつくり出した昭恵夫人に大きな道義的・政治的責任があるんじゃないですか。如何ですか」

 安倍晋三「先ずですね、ご指摘しておきたいことは私ではなくで、私の妻であるということであるということです。妻は基本的には別人格であり、名誉校長を引き受けた経緯については先程申し上げたとおりでございますが、しかし父兄の前で紹介された後ですね、『私は落ち着いてできません』ということを申し上げたとしても、これはもう父兄の前で紹介してしまったんですからということであります。 

 しかしここでは断ったつもりであったのですが、何回も何回も電話され、最終的に引き受けたということでございます。これは(江田憲司提示のパネルの文言を記したメモを手に)確かに事柄については事実なんですけども、これがどれか一つですね、例えば値引き交渉に関わっているものがあるんでしょうか。

 これは一つもないんですよね。一つもないんです。

 ですから、たしかに名誉校長に関わったことは事実でありますし、何回か訪問したことは事実ですが、それと値引き交渉そのものをですね、語り合わせるというのは、それは少し事実から一気に飛躍しているのではないかと、そう思う次第であります。

 何回も申し上げておりますように私も妻も事務所も国有地払い下げにも値引き交渉等の交渉自体に関わっていないということは申し上げたとおりでございます。

 関わっているということであれば、関わっている確証をぜひお示し頂きたい。そうであれば、こちらも気楽に反応できるところであります」

 安倍晋三のこの答弁で勝負が着いた。江田憲司は安倍昭恵の行動について事実を述べたが、江田憲司が言うように「連絡の悪いタテワリ官庁」が「トントン拍子で異例な手続きで例外的な要件まで認めて、進めるなどあり得ない」とする自らの考えが安倍昭恵の存在が役人たちの忖度という形を取った“確証”とはなり得ない。

 安倍晋三が言っているように安倍昭恵が「値引き交渉に関わっ」た“確証”とはなり得ない。

 確かに安倍晋三が指摘しているように安倍昭恵は「一人の人間」ではあり、厳密に言うと、「基本的には別人格」とすることができる。安倍晋三が選挙で各候補応援に全国を回っているとき、安倍昭恵が安倍晋三の地元選挙区で挨拶回りや時には遊説もするだろう場合は「分身・代理」の務めを果たすことになるが、江田憲司が言っているように安倍昭恵のすべての行動に於いて安倍晋三の「分身・代理」とすることができるわけではないはずだ。

 だとしても、安倍昭恵が首相夫人の肩書で行動するとき、夫が持っている首相として権威の何がしかをお裾分けされて、それが夫とは別途の人を従わせる力となって自ら備えることになっている。

 この人を従わせる力を利用しようとして大勢の人間が首相ばかりか、首相夫人に群がり、江田憲司の指摘通りに「祝電をくれ、祝辞をくれ、講演に来てくれ、挨拶に来てくれ、果ては顧問になってくれ」という事態が発生する。

 このような事態に虚栄心を満足させる首相夫人というのも存在するだろう。

 当然、夫の首相をバックにした首相夫人なりの人を従わせる力を常に身に付けて行動している以上、安倍晋三が答弁しているように「基本的には別人格」だだけで片付ける訳にはいかない。

 であるなら、安倍昭恵は常に自分の行動には気をつけなければならなかった。首相夫人の肩書がなければ、タダのオバサンに過ぎない。肩書がないままに誰か安倍昭恵に従う人間が現れたとしても、それは一国の首相が持っている人を従わせる力の影響を受けた権威とは明らかに性格を異にする。

 安倍晋三は安倍昭恵が名誉校長を引き受けた経緯について、「夫である私との関係でそれはできないと断っていた」が、籠池泰典から父兄を前にした講演の場で名誉校長就任の話をされ、「父兄の前で拍手された」ために断ることができなかったと説明している。

 つまり最優先しなければならない「夫である私との関係」を守ることができずに父兄が拍手したからと、その場の歓迎の雰囲気を優先させてしまった。

 何のことはない。江田憲司が総理夫人担当であった頃、総理夫人に対して「ディシプリン(Discipline-規律)問題、モラルとして私は一私人、一私企業、一私学のために肩書を貸したり講演は行ったりはしない、こういうふうに一線を引いていた」との文言で安倍晋三の夫人に対する危機管理を含めた安倍昭恵に対する批判を待つまでもなく、安倍昭恵の意志薄弱と、モラルと規律欠如を語って余りある安倍晋三の発言となっている。

 このような性格であることを考えると、自らの能力で身につけることになったのではない、首相夫人ということで与えられたに過ぎない人を従わせる力を講演だ、名誉何々に就任だと様々に発揮させては、あるいは何様に持ち上げられることで虚栄心を満足させる類いの女だと想像できる。

 安倍晋三は名誉校長就任を安倍昭恵の意志薄弱がそうさせたとは解釈せずに、「結果としては受けてしまった」、「結果としてそうなってしまい、国民の皆様から疑念を招いたことは残念だ」と名誉校長就任を結果論で片付けているが、安倍昭恵が「夫である私との関係でそれはできないと断っていた」にも関わらず、その関係を優先させることができずに断り切れなかったということなら、そのことを夫である安倍晋三に報告していたはずである。

 報告していなければ、「夫である私との関係」云々は真っ赤なウソになる。

 但し安倍昭恵が安倍晋三に報告していたとしても、逆に報告していなくても、名誉校長を続けさせていたことの安倍晋三の安倍昭恵に対する危機管理は無能以外の何ものでもない。

 要するに「国民の皆様から疑念を招いた」ことの危機管理欠如は安倍昭恵一人に負わせるべきではなく、安倍晋三自身も負わなければならない情けない危機管理欠如であろう。

 安倍晋三は「何回も申し上げておりますように私も妻も事務所も国有地払い下げにも値引き交渉等の交渉自体に関わっていないということは申し上げたとおりでございます」と言っているが、単に本人たちが言っているだけのことで、それが事実であるという“確証”は何もない。

 また、安倍昭恵の森友学園に関わる行動から、「値引き交渉に関わっているものがあるんでしょうか」と反論しているが、勿論、現在のところ“確証”はないものの、首相夫人として人を従わせる力を持たされている以上、その力が役人たちに対する忖度という形の影響力となって行使されなかった保証とはならない。

 江田憲司が安倍晋三の昭恵に対する数々の疑惑を招くことになった危機管理無能を指摘、その点に絞って追及すれば、もっと面白くなったと思うが、二人の遣り取りを聞いた後の感想に過ぎない。

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安倍晋三森友学園忖度疑惑:安倍昭恵証人喚問等はゴミの実際量熟知の杭打ち業者等の証人喚問を突破口とすべき

2018-02-05 11:15:09 | 政治

 森友国有地格安売却疑惑を改めて振り返ってみる。財務省が不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を森友学園側に瑞穂の国記念小学校建設用地として売却した際の価格が約1億3400万となったのは地中にゴミ(家庭ごみや廃材等)が1万9500トンも存在していることが分かって、その撤去・処理費用として近畿財務局が見積もった8億1900万円を差し引いたからである。

 この値引き額の余りの大きさに実際にそれだけの量のゴミが存在していたのか、不信と疑惑を招くことになり、野党が国会で厳しく追及したものの、国側の存在していたという主張が文書その他を確かな根拠としているわけではなく、今以って存在したかどうかを言葉以外の方法で明らかにできないでいる。

 さらにこの売却に安倍晋三夫人安倍昭恵が絡んでいることが判明、安倍昭恵を通して安倍晋三自身が直接関与したのか、あるいは安倍昭恵の森友学園に対するバックアップが安倍晋三の意を受けた森友側の利害に立った動きではないかと忖度した国側の動きと取れる経緯が浮上、これらのことが値引きの根拠に結びついたのではないかという疑惑を誘った。


 この根拠の理由が参院予算委員会の議員らが2017年3月16日に小学校の建設用地視察の際に籠池自身が安倍昭恵を通して安倍晋三から100万円の寄付を受けたと発言、2017年3月23日の国会証人喚問でも同じように証言していることである。

 勿論、安倍晋三は否定している。

 今年に入って1月29日から開始された通常国会でも、衆参で野党は不当な国有地売却ではないかと森友問題を取り上げ、疑惑解明のカギを握る人物として安倍昭恵とこれまでの国会で国側の主役として売却正当性を主張してきたものの、その主張とは整合性を欠く事実が次々と明らかになってきた前財務省理財局長の佐川 宣寿の国会証人喚問を求めているが、いずれも与党は拒否している。

 だが、何よりも問題なのは撤去・処理に金額8億1900万円も必要とするゴミが実際に存在していたかどうかである。量にすると、ダンプカー4000台分の1万9500トン、ゴミ混入率47.1%と推計している。ゴミ混入率47.1%と言うのは土とゴミが約半々ということで、相当にゴミが混じっていたことになる。

 この“撤去・処理”は重機で土地を掘削、その場で土とゴミを分別して、土は埋め戻しに使い、ゴミは廃棄処分場に運搬して処理費用を支払うか、土とゴミを混合状態のまま廃棄処分場に運搬、処理費用を支払って、埋戻しの土は新たに購入するかいずれかの方法を指していることになる。そしてその費用を8億1900万円と見積もった。

 実際にそれだけのゴミが存在していた場合は8億1900万円の値引き額は不当ではなく、ほぼ妥当性を獲ち得る。但しゴミの量と撤去・処理費用算出の適合性、計算が正しく行われたのかどうかの問題は残る。

 例えゴミ混入率が47.1%であったとしても、杭を打ち込むことさえできれば、“撤去・処理”の必要はなく、地中にゴミが残ることになっても、それは放置される。杭が建築物本体を支えるのであって、杭の間に残されることになるゴミは本体を支えるのに何ら障害とはならないからである。
 
 ゴミに邪魔されて杭を目的の深度にまで打ち込むことができない場合は、杭先端の深度にまで重機で土を掘削、ゴミを取り除いてから土を埋め戻して改めて杭を打ち込まなければならない。

 重機で土地を掘削する方法の“撤去・処理”が杭を打つ面積の全面に亘ってのことでなく、部分的でしかなかった場合、撤去・処理費用8億1900万円という見積もりはその面積に応じて妥当性を欠くことになる。

 この点に関しては2017年11月22日公表の対森友学園国有地売却を検証した「会計検査院報告書」が指摘している。        

 近畿財務局が見積もったゴミ量1万9500トン(実際は19,520t)は裏付ける文書が満足に残されていないために幾つかの仮定に立って算出している。

 ①廃棄物混合土の深度を過去の調査等において試掘した最大深度の平均値に修正した場合は9,344t
 ②混入率を北側区画の全試掘箇所42か所の混入率の平均値に修正した場合は13,120t
 ③処分量に含まれていた対策工事で掘削除去している土壌の量を控除した場合は19,108t

 これらの①~③の算定要素が全て組み合わされた場合は6,196tと算出。

 約3分の1のゴミの量ということになる。

 もう一つの仮定は廃棄物混合土が確認された最大深度の平均値2.0mと最小深度の平均値0.6mの差となる1.4mの範囲全てに廃棄物混合土が存在する層があるとみなして算定する層厚法を用いた場合。

 処分量は13,927t。

 これらの仮定算出に対する結論。

 〈大阪航空局が算定した本件土地における処分量19,520t及び地下埋設物撤去・処分概算額8億1974万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、また、仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえると、大阪航空局において、地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたと認められる。〉――

 要するに既に触れたように土中のゴミ量1万9500トンは杭を打つ面積の全面に亘って存在していたのではなく、部分的にしか存在していなかったことになる。しかも記録文書が満足に残されていないために幾つかの仮定を用いてゴミ量を算出しなければならなかった。

 それ程にも国は説明責任を果たしていない杜撰な状況下で国有地が森友学園に8億円超の値引きで売却された。

 地中に実際に存在していたゴミの量が闇となっている以上、安倍昭恵や前財務省理財局長の佐川 宣寿の国会証人喚問を求めるよりも、実際のゴミの量を熟知している立場にある主として杭打ち業者、あるいはゴミ処理に関わった工事関係者に国会証人喚問を求めて、先ずはゴミの具体的な存在量を闇の中から引きずり出すべきで、そのことによって不当な見積もりであったか、不当な値引きでなかったかを判定すべきだろう。

 不当な見積もりであり、不当な値引きと判定できたとき初めて、そのような不当な売却を国が行うことになった経緯の解明に関わる国側の説明責任の履行が否応もなしに必要不可欠となる。不当な国有地売却と判明しながら、政府側が言を左右にして必要不可欠となった説明責任の履行を無視することはできない。

 売却経緯の解明に関わる説明責任の履行は安倍昭恵と佐川 宣寿の国会証人喚問を機会とした証言が欠かすことのできない必須条件となる。果たして安倍昭恵の背後に控えている安倍晋三に対する国側の忖度があって佐川 宣寿等の国側が不当な値引きに走ったのかどうか。

 要するに安倍昭恵と佐川 宣寿の国会証人喚問は杭打ち業者や工事関係者の証人喚問を突破口として実現させる方法こそが急がば回れの近道となるはずだ。

 ところが、そういった方法を取らずに相変わらず安倍晋三や佐川 宣寿の過去の答弁と事実関係の整合性の欠如・矛盾を捉えて安倍昭恵や佐川 宣寿の証人喚問を求め、自民党から拒否される堂々巡りを演じている。

 例えば2018年2月1日参院予算委で日本共産党議員辰巳孝太郎が籠池泰典の音声データを新たに入手したと安倍晋三を追及、簡単に交わされている。

 2015年3月11日に国有地から新たなゴミが発見され、4日後の3月15日、籠池夫妻が財務省を訪問。大阪に戻って翌3月16日に学園側と近畿財務局等国の担当者が協議。さらに3月30日も再度協議している。

 辰巳孝太郎「安倍総理大臣夫人の昭恵氏の関与がはっきり表れた驚きの発言が録音されている。籠池氏は『きのう、われわれが財務省から出たとたんに安倍夫人から電話があり、「どうなりました。頑張ってください」と言った』としている。じか談判の中身を尋ねて応援の気持ちを伝えていたということだ」

 安倍晋三「今のは籠池氏の発言だ。ころころ言っていることを変える人物がそういう証言をしていると紹介されたのだろう。売買について、金額の交渉などに一切関わっていないというのは今までも答弁しているとおりだ」(NHK NEWS WEB//2018年2月1日 12時34分)   

 音声データーに安倍昭恵自身の発言が記録されているか、籠池のこの発言に対して近畿財務局の職員が「その辺は努力させて頂きます」、あるいは「色々配慮させて頂きます」とでも発言していたなら、安倍昭恵関与の決定的証拠となり得るが、籠池泰典が安倍昭恵の発言を紹介しているのみで、安倍昭恵自身の発言が記録されているわけではないし、別の「NHK NEWS WEB」記事が籠池泰典の発言に対して近畿財務局の職員からは安倍昭恵を意識したような返答はなかったと伝えている以上、辰巳孝太郎が「昭恵氏の関与がはっきり表れた驚きの発言だ」とすること自体、土台無理がある。   

 翌2月2日の衆院予算委で立憲民主党の阿部知子が発言の有無を「妻の昭恵に問い合わせると答弁していたが、問い合わせたのか』と尋ねたのに対して安倍晋三が「妻に確認したところ、『そのような電話はしていない』ということだ。そもそも私の妻は、籠池氏が財務省の室長と面会していることを全く知らないし、知りようもない。籠池氏が一方的に言っていることを前提に質問されても困る」と答弁したとさらに別の「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 だが、安倍昭恵の「そのような電話はしていない」という発言も安倍昭恵がそのように言っているだけのことか、聞きもせずに安倍晋三が勝手につくり出して否定しているだけの可能性は疑おうと思えばいくらでも疑うことができる。何しろ安倍昭恵も安倍晋三も国有地売却には関与していないという立場を取っている以上、否定は極々当然の答だからだ。

 野党は当然の答を引き出すために堂々巡りとなる追及を繰返している。

 同じ指摘となるが、杭打ちに地中廃棄物(=ゴミ)がどの程度に障害となったのか、その障害除去に重機による掘削がどれ程の範囲で必要となり、どれ程の量のゴミが出てきたのか、先ずは杭打ち業者と工事関係者を証人喚問して、正当な見積もりを反映させた正当な値引きであったかどうかの証言を得るべきで、正当な値引きでないという答が出たら、安倍晋三の直接の関与があったか、なくても役人側の何らかの忖度が存在していたことになり、それらの証言を突破口に安倍昭恵と佐川 宣寿の証人喚問へと進むべきだろう。

 安倍昭恵と佐川 宣寿の証人喚問を実現させることができなければ、いつまで経っても安倍晋三側の否定を基調とする堂々巡りが続くことになる。
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安倍晋三のアベノミクスで「景気回復全国津々浦々波及」は格差拡大に対する無自覚な開き直り

2018-02-02 11:17:22 | 政治

 1月31日(2018年)の参院予算委で民進党小川敏夫が「アベノミクスは失敗、厳然たる事実だ」と追及した。対して安倍晋三は政権発足後の雇用環境の改善こそが「厳然たる事実」と反論、「景気回復の波が全国各地に及んでいる」とアベノミクスの効用に胸を張った。

 実際は格差拡大に貢献しているだけのアベノミクスだから、無自覚なままに開き直ったといったところだが、両者の遣り取りの一端を2018年1月31日付「NHK NEWS WEB」から見てみる。       

 小川敏夫「『豊かになった実感を持てない』という声を聞く。明らかに言えることは、アベノミクスによって国民生活は苦しくなった。安倍総理大臣は、聞くたびに都合のいい数字を常々引っ張るが、厳然たる事実だ」

 安倍晋三「厳然たる事実の1つは、働く場所があるということだ。政権交代前は有効求人倍率が1倍もなかったが、今はすべての都道府県で1倍を超えている。景気回復の波が全国津々浦々に及んでいるということであり、みんなの稼ぎである総雇用者所得は確実に上がっている」

 アベノミクスの効用に総雇用者所得を持ち出すこと自体、無自覚なままに格差拡大の証明を自ら行っているに過ぎない。実質的には「アベノミクスは格差ミクス」と自分から言明しながら、そのことに気づきさえしないのだから、相当に無自覚な人間に仕上がっている。

 総雇用者所得とは雇用者1人当たりの賃金(現金給与総額)に雇用者総数を掛けた所得なのは断るまでもない。日産自動車会長だった時代のカルロス・ゴーンの年間所得10億以上等々、高額報酬受給者の所得も合算した、否応もなしに格差を構造としている総雇用者所得を用いて「みんなの稼ぎは確実に上がっている」とアベノミクスの成果とし、「景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」と結論づけて何ら恥じない。

 「有効求人倍率が1倍」と言っても、総務省統計局の「労働力調査(基本集計) 平成29年(2017年)12月分」(2018年1月30日公表)を見ると、働く意思と能力を持ち、求職活動を行っていながら、就職の機会を得られない完全失業者数は前年同月比19万人減となっているものの、174万人となっている。  

 「有効求人倍率が1倍」であり、尚且つ人手不足と騒ぎながら、174万人も完全失業者が存在する。望む仕事が見つかないという状況を示しているはずで、このことは2016年の大卒1年以内離職率は11.3%、高卒17.2%(「厚労省」)等の統計にも現れている。 

 完全失業者数や少なくない離職率は「有効求人倍率1倍」をある程度不完全とする。だが、安倍晋三は「有効求人倍率1倍」をアベノミクス効用の完全な証明に用いて揺るがない。

 総務省統計局の2人以上世帯の「家計調査」によると、2017年12月分の勤労者世帯の実収入は1世帯当たり 94万875円で、前年同月比実質0.4%の増加、名目1.7%の増加と記載されている。  

 要するに1年前の2016年12月分と比べて2017年12月分の手取り額は1.7%増加しているが、物価変動による購買力で計算した実質では0.4%しか増えていない計算になる。物価が高くなればなる程、手取りの金額は金額通りの価値を失う。

 実質賃金の0.4%の伸びということは2016年12月分の1世帯当たり勤労者世帯の実収入は67万2053円(×1.4=94万874円・検算)となり、1年間で94万875円-67万2053円=26万8822円と実質で伸びたことになる。

 各種生活物価の高騰を前にして実質賃金が1年間で26万8822円も伸びたと実感できる世帯がどのくらい存在するだろうか。高額所得者の収入も含めているから、統計上、昨年比26万8822円のプラスと出ているだけのことで、上記総務省統計局の2017年12月分消費支出調査は1世帯当たり32万2157円で、前年同月比実質0.1%の減少、前月比(季節調整値) 実質2.5%の減少となっているが、実質賃金が1年間で26万8822円も伸びていることに逆転したこの消費支出の減少は格差の存在の証明以外の何ものでもない。

 格差が小さければ小さい程、統計に表れる収入にしても、消費支出にしても、中低所得層の生活実態と大きく掛け離れていない統計上の平均値を取り、格差が大きければ大きい程、中低所得層の生活実態と統計上の平均値は大きくかけ離れることになり、尚且つ収入の伸びと家計支出の伸びがプラスマイナスの逆転状況を呈することになる。

 確かに安倍晋三がアベノミクスを誇るように各階層に満遍なく仕事は増えたし、賃金も大企業・中小企業共に増えているかもしれない。だが、安倍晋三がアベノミクスをどう誇ろうと、雇用増加や賃金増加以上に安倍政権下の円安と株高が「おいで、おいで」と招くことになった格差は拡大している。

 いわば進行形で格差を拡大させている中での安倍晋三の「景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」状況ということであって、ここに開き直りの精神構造を見ない訳にはいかない。

 しかも開き直りを無自覚なまま発揮しているのだから、余計に始末に悪い。
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茂木敏充の線香を配る側と受け取る側の間に生じる何らかの方法による意思疎通介在無視の論理破綻

2018-02-01 12:42:22 | 政治

 1月25日(2018年)発売の「週刊新潮」が経済再生担当相茂木敏充が自身の政党支部に寄付した線香を秘書が栃木県の選挙区の有権者に配布、公選法違反の寄付行為の疑いがあると報じたという。第196回通常国会一般質疑が1月29日から衆議院で開始され、野党がこの疑惑を早速取り上げた

 取り上げた議員は、承知しているところでは1月29日衆院予算委で立憲民主党逢坂誠二と希望の党の大西健介、1月31日参院予算委員会で民進党森本真治といったところ。

 前二者の遣り取りはマスコミ記事の紹介で済ます。

 立憲民主党の逢坂誠二氏への答弁。

 茂木敏充「政党支部の政治活動として配布している。個人の名前を記載してはいけないという規定にのっとって行っている」(朝日デジタル

 希望の党大西健介と茂木敏充の遣り取り。

 大西健介「改めて、何をどれぐらい配ったかお答え頂きたい」

 茂木敏充「私は行っておりません。私の支部で配布した手帳などに、私の氏名は入っていない。公職選挙法の規定にのっとり、政党支部の政治活動として行っているものだ」

 大西健介「秘書が持って行ったって、(政治家)本人が持って行ったことになるんですよ」(同朝日デジタル

 要するに贈った線香に茂木敏充の名前を記載していないし、秘書が配ったとしても、自分が直接配り歩いたわけではないから、公職選挙法違反にならないと主張していることになる。

 だとすると、例え線香に茂木敏充の名前を記していなくても、大西健介が「秘書が持って行ったって、(政治家)本人が持って行ったことになる」と言っていることが公職選挙法の禁止規定に該当する事実とすることができるのか、できるなら、該当の事実として茂木敏充に認めさせることができるかどうかにかかっていることになる。

 言い替えると、線香に茂木敏充という贈り主の名前が書いてなくても、秘書が持っていった場合、それは茂木敏充という政治家からの贈り物だと断定できるか断定できないかということになる。

 事実とすることができなければ、少なくとも国会質疑上は茂木敏充を無罪放免とすることになる。

 1月31日参院予算委員会で民進党の森本真治が同様の問題を取り上げたこと自体、前二者は「秘書が持って行ったって、(政治家)本人が持って行ったことになるんですよ」を公職選挙法禁止規定該当の事実として茂木敏充に認めさせることができなかったことになる。勿論、森本真治も認めさせることができなかった。

 追及側は公職選挙法の次の規定に違反しているとして追及している。

 (公職の候補者等の関係会社等の寄附の禁止)

第199条の3 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)がその役職員又は構成員である会社その他の法人又は団体は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、これらの者の氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない。ただし、政党その他の政治団体又はその支部に対し寄附をする場合は、この限りでない。

 公職の候補者等に対して氏名を表示、表示しなくても氏名が類推できる方法での選挙区の有権者への寄附を禁止している。但し当該人物による政党その他の政治団体又はその支部に対しての寄附は除いている。

 だから、茂木敏充を自身の政党支部に対して線香を寄付することができた。それを秘書などが配ったということは、法律に抵触するかどうかは別にして、寄付を迂回させたことになる。

 では、1月31日参院予算委員会での民進党森本真治と茂木敏充の支援者に対する線香配布の遣り取りを見てみる。

 森本真治「民進党・新緑風会の森本真治です。先ずは宜しくお願いします。先ずは茂木敏充大臣、ご自身が代表を務める政党支部の政治活動として秘書が線香を有権者に配布したと言うことを衆議院の方でご答弁されていました。

 (1月31日、最初の質問に立った)小川委員の方で質問を受けていましたけども、時間の関係で私の方から質問させて頂きます。茂木大臣はですね、衆議院の方で『私が配布したもので、私の氏名は入っておりません』と答弁されております。大臣自ら支援者に線香を持っていったことはありますか」

 茂木敏充「通告頂いておりませんが、ございません」

 森本真治「大臣自ら持っていって頂かないということでございます。大臣は9回連続当選でですね、大変選挙にお強い代議士で、地元秘書の教育指導もしっかりと行われていると思います。

 茂木事務所に於いて支持者などを訪問する際にどのような挨拶をしているのか、茂木事務所の誰々ですと、茂木大臣の秘書であることをきちんと述べるようにご指導されておりますか」


 茂木敏充「個別の政治活動についての、あの、コメントは差し控えさせて頂きます」

 森本真治「個別ではなくて、一般に政治活動をされるときにどのように秘書に挨拶、支援者に対してですね、全く名前を名乗らず訪問するということは有り得ませんから、どのように挨拶するようにということを指導されていますか」

 茂木敏充「政党の職員がおります。そして秘書がおります。丁寧に色んな形で支援者の方、地元の方と接するように、そのような話を致しております」

 森本真治「政党の職員が、その政党の職員であると名乗って挨拶をする。個人事務所の秘書は個人事務所の秘書ですということを名乗って挨拶をするという指導でよろしいですね」


 茂木敏充「一般的な社会常識に従って様々な接触をしていると考えております」

 森本真治「政党職員さんの名刺には政党支部誰々、後援会事務所であったり、個人事務所の秘書の名刺には茂木敏充事務所秘書という名刺を二つを分けるということでよろしいです」


 茂木敏充「個別の政治活動についてはですね、何らかの違法性があるということであれば、ご質問頂ければという話は(ヤジ)、あの、政治活動について、一般的な政治活動のですね、詳細については、あの、お答えすることは控えたいと思います」

 森本真治「大臣の政治活動ということで先刻の小川委員は質問されておりますので、当然、それについてお答え頂ければいけないというふうに思います。

 茂木大臣の秘書が線香を配った際にですね、茂木事務所の誰々ですという挨拶は一切行っていないということでいいのか、一枚の名刺も持っていっていないということでよろしいのか、お伺いします」

 茂木敏充「個別の活動について、私がですね、その場に居合わせているわけではありませんので、その点分かりません」

 森本真治「小野寺大臣、ちょっとお伺いしたいと思います。大変過去のことで恐縮なんですけど。小野寺大臣は以前に同じような案件ということで公民権停止と言うようなことがございました。

 お配りした線香には個人の名前は書いていらっしゃったんですか」

 小野寺五典「衆議院の方でお話を致しました。もう20年以上も前の話ですので、もういいんじゃないでしょうか」

 抗議でほんの短い間中断。

 金子原二郎委員長「小野寺防衛大臣」

 小野寺五典「衆議院の方でお答え致しました。同じようにお答え致します。平成・・・・、もう20年近くになったと思います。初当選して1年か2年ぐらいのときに初盆のときですね、線香を持って支援者のところに行ったということがあります。

 そのときは私自身が持っていきました。その後警察の方からそれは公職選挙法違反ではないかとご指摘があって、そしてその後、書類送検をされました。

 書類送検されたということでこれは違反になるんだなあと、そのとき恥ずかしながら初めて認識を致しまして、議員辞職をさせて頂き、その後公民権停止を経て地元の皆さんのご支援もあり、今こうして仕事をさせて頂いているということでございます」

 森本真治「あの、大臣、申し訳ございません。ご質問させて頂いたのは配布したものにご自身の名前が記載されていたかどうかということをお聞きしたかったんです」

 小野寺五典「要は、まあ、全て終わった件でありますが、そのとき線香に私は自分の『衆議院議員小野寺五典』と書いてあるものを私自身が持参していきましたので、それは明確に公職選挙法違反と私自身が後に検事さんが言われたので、自分は間違いを犯してしまったなあと、そう思っております」

 茂木敏充「ご自身でということでございましたけども、秘書がお持ちになられたということもあったのですか」

 小野寺五典「えー、私も持っていったということもありますし、私が回れない所で秘書が行ったこともあると思います。ただ、いずれにしても、私の場合には明確に『衆議院議員小野寺五典』と書いて、そして行きましたので、私が行こうが秘書が行こうが、それは公職選挙法違反ということで、私供として大きく反省すべき点だと思っています」

 森本真治「茂木大臣ですね、公職選挙法の解釈についてのお考えをお伺いしたいと思います。線香そのものにですね、茂木等の名称が記載されていなくても、これを持参した秘書がですね、茂木事務所の誰々ですと茂木大臣の秘書であることを挨拶や名刺で示せば、これは『公職選挙法の199条の3』で禁止する、政党支部の役員の氏名を表示し、またはこれらが類推されるような方法で寄付をしたことになるのではないかと私は思うんですけども、大臣はどのように思われるのでしょうか」

 茂木敏充「政党支部の政治活動で行われたものであるんですが、これは公職選挙法の199条の3に則っていると考えておりますが、公職選挙法の199条の3についての解釈等はですね、私は行う立場にないと思っております」

 森本真治「総務大臣、総務相の見解をお伺いしたいと思います。公職選挙法の199条の3で禁止する『氏名を表示し、またはこれらが類推されるような方法』にはですね、秘書が○○議員の、誰々議員の誰々ですとか、何々議員事務所の誰々ですなどと挨拶したり、名刺の提出などを寄付と一緒に行った場合はこれは該当しないのかどうか、総務相の見解をお伺いしたいと思います」 

 野田聖子「質問通告を頂いておりませんが、お答えを致します。総務相としては個別の事案について実質的調査権を有しておらず、具体的事実関係を承知する立場にはないので、一般論としてではありますが、公職選挙法では公職の候補者と政党支部、後援団体のそれぞれの寄付を行う主体別に関わる対応の形式制(?)が置かれておりまして、一般の政党支部は公職の候補者等と異なり、公職選挙法の199条の3に於いて候補者等の氏名を表示し、また氏名を類推させる場合に限って当該選挙法にある寄付を禁止されています。

 『氏名を表示し』とは、直接候補者の氏名を表示することであります。また氏名が類推される方法とは直接公職の候補者等の氏名の表示がなくても、その氏名が類推されるような場合にその団体等の名等を記載することを言います

 例えば、政党支部の職員または秘書等が氏名の表示のない政党支部からの寄付を持参することは直ちに氏名が類推される方法によるものとは言えないと考えております。

 いずれにしても具体の事例については個別の事案ごとに具体の事実に即して判断されるべきものだと考えております」

 森本真治「私の質問と少しご答弁が違ったんですけども、名刺、そのとき一緒に類推されるような名刺を持っていったりとか、口頭の挨拶の中で類推されるような発言をした場合はこの既定に抵触するかどうかということを聞いたんですが、もう一度お願いします」

 野田聖子「総務相の立場としてご答弁申し上げます。繰返しになりますけども、個別の事案について実質的調査権を有しておらず、具体的な事実関係をする立場にはないので、こうした具体の事例については具体の事案ごとに具体の事実に即して判断されるべきものだと考えております」

 森本真治「委員長にお願いであります。公職選挙法の199条の3で禁止する『氏名を表示し、またはそれらが類推されるような方法』にですね、例えば秘書が誰々議員の秘書であるということを名乗ったり、名刺を一緒に持っていくということが『これら類推される』ということに該当するかどうかと言うことを、氏名の表示とか類推ですね、その見解をこの委員会に提出して頂くよう、お願いします」

 金子原二郎委員長「後日、理事会で協議致します」

 森本真治は前二者の立憲民主党逢坂誠二や希望の党の大西健介と同様の質問を繰返し、同様の答弁を繰返させたことになる。野田聖子も逢坂誠二だか大西健介だかにほぼ同様の質問を受けて、ほぼ同様の答弁をしていたから、同じような場面を単に繰返させていたに過ぎないことになる。

 同じ場面の繰返しは時間のムダの証明でしかない。このよう体たらくでは野党にいくら質問時間を与えても、満足な追及は期待できない。

 繰返すが、茂木敏充は自身が自身の政党支部に寄付した線香を秘書、あるいは政党支部の職員が政治活動の一環として支援者に配った。但し線香には茂木敏充の名前は記載してなかった。
 
 国会議員の秘書や国会議員の政党支部職員はその国会議員の政治活動に関しては自律的に独立した一個の人格を有しているわけではない。常に国会議員の指示を受ける形か、国会議員の意思を反映させる形で行動する。秘書、あるいは職員が国会議員の指示ではなく、勝手に行動したことであっても、その行動を受け止める側は国会議員の指示か、その意志を反映させた政治活動の一環としての行動だと解釈する。

 当然、秘書や職員が茂木敏充の指示からではなく、自らの立場を忘れて自身の意志で線香を配ったとしても、受け取る側は政治活動の一環だと勘違いして茂木敏充からの線香だと認識することになるはずだ。否が応でも氏名を類推させる。

 また、茂木敏充が「政治活動としての配布」と断っている以上、秘書や職員が自身の贈り物として線香を配る謂れはどこにもない。

 森本真治は秘書や職員が線香を配る際、茂木事務所の名前か、あるいは茂木の政党支部名が書いてある名刺を示したか示さなかったか、あるいはそう名乗ったかどうかに拘っていたが、秘書もしくは職員が支援者と熟知の間柄である場合はそれぞれの顔が名刺の代わりの役割をする。当然、改めて名刺を渡すといった面倒はしない。
 
 面識がない場合は、名刺を渡すか、渡さない場合は名乗らなければ、線香を渡すことはできない。

 以上のことから、線香に茂木敏充の名前が書いてあろうがなかろうが、秘書あるいは職員が名刺を見せようが見せまいが、いずれの場合であっても、線香が誰々からの物かの何らかの方法による意思疎通がそこに介在していなければ、渡す方も渡すことができないし、受け取る方も受け取ることはできない。

 勿論、その意思疎通の中には名刺を改めて出す必要はない名刺代わりとなる、いわゆる“知っている顔”が果たす機能も含まれる。

 それが何であろうと、何らかの方法による意思疎通が介在した場合は氏名を類推させることになって、公職選挙法が禁止している「氏名を類推されるような方法」での寄附に該当することになるはずだ。

 このような意思疎通がないままに線香を渡そうとしたなら、渡された相手は気味が悪い思いをするはずだ。気味が悪い思いをせずに受け取ったなら、その人間の感覚が疑われることになる。

 要するに線香を配る側は受け取る側がそれが誰からの物か分かる方法で配る。そのことによって“氏名の類推”が発生する。

 これらのことを前提に野田聖子の次の発言を見てみる。

 「政党支部の職員または秘書等が氏名の表示のない政党支部からの寄付を持参することは直ちに氏名が類推される方法によるものとは言えないと考えております」――

 線香を配り、それを受け取る際に何らかの方法による意思疎通の介在の必要性を一切無視して、「氏名の表示」がないことを以ってのみ意思疎通の介在がなかったことと看做して、“氏名類推の方法とは言えない”としている。

 顔が何のためについているのか、それさえ無視した野田聖子の発言は論理破綻としか言いようがない。茂木敏充の秘書や職員が配ったのであって、自分が配ったわけではない、名前は記載していないが許されるとしたら、あるいは茂木敏充のこの主張を補強するすることになる野田聖子の論理破綻が罷り通るとしたら、名前さえ記載しなければ、秘書や政党支部職員を使っていくらでも寄付行為ができることになる。
 
 公平・公正であるべき選挙は無秩序を極めることになるだろう。

 ネットで調べてみたら、高級な線香は8束で1万円以上もする。後援会支援者に安物の線香を配るはずはない。高額であることによって感謝という見返りが大きくなり、その見返りは票への確実な結びつきを期待させることになる。

 なぜ線香の値段を追及しなかったのだろうか。何人の支援者に配ったのか、なぜ問い質さなかったのだろうか。金額や人数によってはその悪質性を炙り出すことができる。

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