安倍晋三の「安倍政権で格差拡大というのは誤りだ」は事実か、アベノミクスの不都合隠蔽の言い逃れか

2018-08-30 12:03:49 | 政治

 
 「NHK政治マガジン」(2018年8月27日)

 福井市で開かれた会合での講演。いつものように有能な政治家を演出するために思わせぶりな顔の表情を殊更につくり、手を左右に大袈裟に広げたり、指を上に突き立てたり、つくったジェスチャーで人目を惹こうとしたに違いない。

 安倍晋三「『安倍政権で格差が広がった』というのは誤りだ。我々は最低賃金も100円以上上げ、パートの時給も過去最高になり、その結果、80%で頭打ちだった生活保護世帯の子どもの高校進学率は90%になった。一人親世帯の子どもの大学進学率も政権を取る前は24%だったが42%に上がってきた」

 発言していることは例の如くに既に披露した成果の繰返しとなっている。安倍政権5年余で「我々は最低賃金も100円以上上げた」と言っても、2018年10月初めにまで上げる最低賃金の全国平均額は昨年度から平均26円引上げの874円であって、民主党の鳩山由紀夫政権当時の2010年6月に当時713円だった最低賃金の全国平均を2020年までに1000円に引き上げる目標を決めていたが、2020年までの残す2年間で1年平均30円ずつ上げるとしても、60円+874円=934円で民主党政権の2020年1000円には66円追いつかない金額となって、2011年まで待たなければならない。

 「パートの時給も過去最高」と言っているが、パートの時給以上に正規社員の給与は上がっている。「平成28年分民間給与実態統計調査結果報告」(国税庁/平成29年9月)を見てみる。

 正規年平均給与487 万円(対前年比0.4%増、20千円の増加)
 非正規年平均給与172 万円(対前年比0.9%増、16 千円の増加)

 増加率は非正規の方が0.5%多いが、母数の差額315万円の大差から見たら、焼け石に水にもならない。しかも安倍政権の人口政策の無策が招いた人手不足で特に非正規対しても賃金を上げざるを得なかった正規と比較した非正規の賃金増加率0.5%で、これらのことを以って格差拡大は「誤りだ」とすることはできない。

 その根拠を次に挙げる。

 先ず2012年から2016年までの安倍政権下の企業の内部留保(利益剰余金)の推移をネット上から探し出してみた。国税庁の企業統計を覗いてみたが、適当な記事を探し当てることができなかった。

 2012年 304兆円
 2013年 327兆円 +7.6% 
 2014年 354兆円 +8.3%
 2015年 378兆円 +6.8%
 2016年 406兆円 +7.4%

 企業の収益がどれだけ労働者に配分されたかを示す「労働分配率」は2017年10~12月の大企業のそれは43%台だマスコミが伝えていた。

 但し中小企業程労働分配率が高いということは、低ければ退職されてしまう恐れからだろうが、労働分配率が高くても、大企業と中小企業の賃金格差を縮めるまでに至っていない。

 では、いくつかある公的な統計から算出した2012年から2016年までの民間給与者の平均年収を、「平均年収.jp」から見てみる。

 2012年 409万円
 2013年 414万円 +1.2% 
 2014年 415万円 +0.2%
 2015年 420万円 +1.2%
 2016年 422万円 +0.5%

 前出の国税庁の統計でも、2016年の正規の年平均給与が対前年比で+0.4%、非正規年平均給与が対前年比で+0.9%だから、さして遠くない数字ということになる。

 アベノミクスから最大の恩恵を受けた頂上の利益が企業の内部留保(利益剰余金)だとすると、民間給与者の年収は頂上とは正反対に位置した利益とすることができる。

 内部留保(利益剰余金)の伸び率と平均年収の伸び率が目に見えて縮まっていれば、格差は縮小傾向にあり、伸び率に大きな差を維持した状況であるなら、格差に変わりはなく、内部留保(利益剰余金)のみが大きな伸び率を確保しているようなら、格差は拡大傾向を示しているとすることができる。

 確かに平均年収は僅かずつだが増えてはいるが、増加率が1%前後の範囲でうずくまった状況にあるのに対して内部留保(利益剰余金)を年々増やしていき、その伸び率は平均年収の伸び率の5倍から7倍、6%台から8%台の間を確保している。

 全ての企業が「労働分配率」を上げることで民間給与の現状以上の大幅アップを図って内部留保(利益剰余金)を少しでも減らせば、両者の伸び率はほんの僅かづつでも接近していくはずだが、いわば格差は縮小していくはずだが、内部留保(利益剰余金)のみが大きな伸び率を確保している状況は格差縮小とは逆の格差が拡大している状況を示すものだろう。

 と同時に両者の伸び率に大きな差があるということは、社会保障や高校授業料無償化制度等の様々な政策手当を除いてアベノミクス本体が担うべき国民の収入そのものの伸びという点では見るべき程の成果を上げていないことの何よりの提示となる。

 いわばアベノミクス本体の力によって企業の内部留保(利益剰余金)を労働分配率を上げさせて下への配分をより厚くする所得再分配のトリクルダウンを満足に機能させることができないままに、その不足を社会保障や高校授業料無償化制度等の様々な政策手当で所得の再分配を図っているが、その程度で「80%で頭打ちだった生活保護世帯の子どもの高校進学率は90%になった」だ、「一人親世帯の子どもの大学進学率も政権を取る前は24%だったが42%に上がってきた」と自慢しているが、アベノミクスの最大の受益者である企業の大儲けから見たら、雀の涙程度の底上げでしかない。

 企業の内部留保(利益剰余金)だけが大幅に増えて、国民の給与は大幅とは無縁のほんの少ししか増えていない。少なくとも格差は相対的に拡大していると言うことができる。企業の業績活況に比較して「アベノミクスで景気の実感は感じられない」という多くの街の声は自ずとそこに格差を指している。

 安倍晋三が「『安倍政権で格差が広がった』というのは誤りだ」と言っていることはアベノミクスの不都合を隠す例の如くの恥ずかしげもない言い逃れに過ぎない。

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