2018年8月24日付で各マスコミがほぼ右へ倣えで記事題名に“内閣府の世論調査生活満足度74.7%”と書き入れて、2年連続で過去最高だと伝えていた。と言うことは、安倍晋三のアベノミクスがあってこその国民広範囲の生活満足度と言うことになる。
安倍晋三が様々な統計を上げて、アベノミクスの成果をジェスチャーたっぷりに得々と大宣伝するだけのことはある。どういった内容となっているのか、このことを報道した「NHK NEWS WEB」記事が既にリンク切れしているから、ここに全文を記してみる。
「生活に満足」74.7% 2年連続で過去最高 内閣府調査(NHK NEWS WEB/2018年8月24日 17時23分) 内閣府が行った「国民生活に関する世論調査」で、現在の生活に満足していると答えた人は74.7%で2年連続で過去最高を更新し、内閣府は景気や雇用状況が緩やかに回復していることなどが背景にあるのではないかと分析しています。 内閣府は、国民の生活に関する意識などを調べるため、ことし6月から7月にかけて、全国の18歳以上の男女1万人を対象に世論調査を行い、59.7%に当たる5969人から回答を得ました。 それによりますと、現在の生活に「満足」が12.2%、「まあ満足」が62.5%で、合わせて74.7%の人が満足していると答え、同様の質問を始めた昭和38年以降で、最も高かった去年を0.8ポイント上回り、2年連続で過去最高を更新しました。 満足していると答えた人を年代別に見てみますと、18歳から29歳が83.2%で最も多く、30歳から39歳が78.9%、70歳以上が75%などという順になりました。 また政府が力を入れるべき政策を複数回答で尋ねたところ、社会保障の整備が64.6%で最も多く、次いで高齢社会対策が52.4%、景気対策が50.6%でした。 これについて、内閣府の担当者は「景気や雇用状況が緩やかに回復しているため、生活への満足度が高くなっているのではないか」と話しています。 |
この記事は「満足」・「まあ満足」に対置させているであろう「不満」・「まあ不満」の数値は示していないが、100から引けば、自ずと大した数字ではない答を見通すことができるからだろう。他の記事は所得や収入についての満足度を取り上げているが、やはり「満足」の方が上回っている。「不満」の方が上回っていたら、生活満足度の「満足」+「まあ満足」=74.7%の高さに整合性が取れなくなる。
但し「生活に満足」74.7%と言っても、「満足」12.2%+「まあ満足」62.5%という内訳で、全部が「満足」ではなく、「まあ満足」が「満足」の5倍以上も占めている。
あるいは「満足」は全体74.7%の16%に過ぎないのに対して「まあ満足」は同じく全体74.7%の84%にものぼっていて、圧倒的に後者が大多数と占め、全体で見た場合「満足」の色合いがかなり薄い74.7%ということになり、アベノミクスに対する満足度は「満足」一辺倒ではなく、かなり色合いが薄い「満足」となっていると見なければならない。
では、この色合いの薄さが具体的にどの程度なのか、「まあ満足」の「まあ」の言葉の意味を先ずは知る必要がある。
【まあ】(副詞)「十分ではないが、一応は我慢できる程度であるさま」「goo辞書」
一応は我慢できる程度の「満足」とは、ギリギリの満足を言うはずである。アベノミクス5年8カ月間も取り組んでいて、大企業は軒並み最高益を上げて大いなる満足を得ているのに対して国民の生活の満足度が「満足」とまではいかないギリギリの満足を示す「まあ満足」が圧倒的に多数派であるという状況は、上の利益の増加に応じて下の利益もそれなりに増加していかなければならないトリクルダウンの所得分配方式が満足に機能していないことを示すもので、上だけが存分に増えて下が殆んど増えないという相対的には格差が拡大していることの証明以外の何ものでもない。
他の質問と回答との兼ね合いで「満足」と「まあ満足」の具体像を知るために、《「国民生活に関する世論調査」の概要》(内閣府政府広報室/平成30年8月)にアクセス、記事をダウンロードした。文飾は当方。
1 現在の生活について
(1)去年と比べた生活の向上感
問1 お宅の生活は、去年の今頃と比べてどうでしょうか。この中から1つお答えください。
平成29 年6 月 30 年6月
・向上している 6.6% → 7.2%
・同じようなもの 78.4% → 78.7%
・低下している 14.7% → 13.8%
「向上している」は7.2%の少数派で、前年比僅か+0.6ポイント、「同じようなもの」が78.7%の大勢、前年から0.3ポイントしかプラスされていない。その反面、「低下している」は前年の14.7%から13.8%へと0.9ポイント減っているものの、「向上している」の7.2%に対して1.9倍、約2倍近くも占めている。現状維持派が多数を占める中で、「向上」に対して「低下」が2倍近くも占めるということは安倍晋三がアベノミクスの成果を言い立てる割には底辺の底上げが満足に機能していないと同時に見る程の進展はないということであろう。
(2)現在の生活に対する満足度
問2 あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか。この中から1つお答えください。
平成29 年6月 30 年6月
満 足(小計) 73.9% → 74.7%
満足している 12.2% → 12.2%
まあ満足している 61.7% → 62.5%
不 満(小計) 25.0% → 24.3%
・やや不満だ 19.9% → 19.5%
・不満だ 5.1% → 4.8%
NHK NEWS WEB記事は「満足」+「まあ満足」が「去年を0.8ポイント上回り、2年連続で過去最高を更新しました」と伝えていたが、「満足」自体は前年と変わらない12.2%で、ギリギリ満足の「まあ満足」が0.8ポイント増えただけのことであって、アベノミクスに対する積極的評価かと言うと、かなり様相が違ってくる。
但し「不満」について見ると、「やや不満だ」も「不満」も前年比で僅かに減ってはいるが、各状況を多い順に比較してみると、「まあ満足」 62.5%>「やや不満」19.5%>「満足」12.2%>「不満」 4.8%>となって、「やや不満」が「満足」を上回っている点が明らかになり、アベノミクスに対する積極的評価はどこからも見えてこない。
僅かな底上げがあるから、相対的な格差拡大を見えにくくしていることから、安倍晋三の「我々は最低賃金も100円以上上げ、パートの時給も過去最高になり、その結果、80%で頭打ちだった生活保護世帯の子どもの高校進学率は90%になった。一人親世帯の子どもの大学進学率も政権を取る前は24%だったが42%に上がってきた」といったアベノミクスの自慢を許すことになるのだろう。
単に格差拡大の修正を図っているのに過ぎないのだが、トリクルダウンの所得分配を機能させることができずに単に政策で手当しているだけだから、その修正にしても、アベノミクスの好循環にしても中途半端に終わることになっている。
(3)現在の生活の各面での満足度
ア 所得・収入
問3-①あなたは、所得・収入の面では、どの程度満足していますか。この中から1つお答えください。
平成29 年6月 30年6月
満 足(小計) 51.3% → 51.5%
・満足している 7.9% → 8.6%
・まあ満足している 43.4% → 42.8%
不 満(小計) 46.9% → 46.4%
・やや不満だ 34.1% → 34.6%
・不満だ 12.8% → 11.8%
生活の満足度と同じ傾向が現れているが、所得・収入が生活の満足の大きな要素を占めることから当然なのだろう。「満足」の今年51.5%のうち、「満足」が僅かに 8.6%、ギリギリ満足の「まあ満足」が51.5%のうち42.8%も占めていて、前年よりも0.6ポイント減少しているだけではなく、アベノミクスに対する積極的評価に当たる「満足」が前年比で+0.7ポイントのたったの 8.6%しかない。
対してギリギリ満足の消極的評価が42.8%と最大多数派を占めている。
「まあ満足」前年比-0.6ポイントが「やや不満」の前年比+0.5ポイントとなって現れているのかもしれない。但し「不満」は1ポイント減っているが、全体で見た場合、「満足」 51.5%に対して「不満」46.4%で、5.1ポイントの差しかない上に5.1ポイントのうち、ギリギリ満足の「まあ満足」が半分近くの2.2ポイントも占めている悲劇的状況にある。
アベノミクスを5年も続けて積極的に評価するに至っていないだけではなく、借金だけを増やしている予算状況を見た場合、そろそろ首相の交代時期をこの内閣府の世論調査から読み取るべきではないだろうか
以上の傾向は「資産・貯蓄」の調査となると、さらに悪化するのは生活満足度調査でギリギリ満足の「まあ満足」が多数派を占めている以上、当然の結果値と見なければならない。
イ 資産・貯蓄
問3-② あなたは、資産・貯蓄の面では、どの程度満足していますか。この中から1つお答えください。
平成29 年6月 30年6月
満 足(小計) 44.4% → 44.6%
・満足している 5.6% → 5.8%
・まあ満足している 38.7% → 38.9%
不 満(小計) 52.4% → 52.2%
・やや不満だ 37.3% → 38.1%
・不満だ 15.1% → 14.1%
「不満」以外、他の全ての項目で僅かずつだが、前年よりも悪化している。全体の「満足」に対して全体の「不満が」7.6ポイントも逆転することになっている。「満足」の5.8%に対してギリギリ満足の「まあ満足」が6.7倍の38.9%。これは現状維持派と見るべきだろう。そして「まあ満足」の38.9%に対して「やや不満」が38.1%と接近し、「満足」の5.8%に対して前年よりもわずかに改善されているとは言え、「不満」が14.1%と2.5倍に近い値となっている。
ここからは格差縮小は見えてこない。実質的には格差が拡大していることからの存在するはずはない格差縮小ということなのだろう。
他の調査の項目もアベノミクスに対する積極的評価ではなく、消極的評価としか映らない。否定的評価とならないのは、やはり現実には起きている相対的な格差拡大が見えにくいことによって安倍晋三を助けているからだろう。
最後に関連する2つの調査を取り上げてみる。
問5 あなたは、日頃の生活の中で、悩みや不安を感じていますか、それとも、悩みや不安を感じていませんか。
平成29年6 月 30 年6月
・悩みや不安を感じている 63.1% → 63.0%
・悩みや不安を感じていない 36.4% → 36.2%
半数以上の生活者に対してアベノミクスは悩みや不安を解消する特効薬とはなっていないようだ。
イ 悩みや不安の内容
更問 (問5で「悩みや不安を感じている」と答えた方(3,762 人)に)
悩みや不安を感じているのはどのようなことについてですか。この中からいくつでもあげてください。(複数回答)
(上位4項目)
平成29年6月 → 30年6月
・老後の生活設計について 53.5% → 55.4%
・自分の健康について 52.1% → 54.5% ↑
・家族の健康について 42.1% → 42.2%
・今後の収入や資産の見通しについて 39.7% → 40.4%
更問(さらとい)と読みを当て、追加の質問を意味する役人言葉らしい。追問(ついもん)とでも当てれば、意味も読みも簡単に察しがつくと思うのだが、自分たちだけの理解にしておきたいらしい。
この調査は要するにアベノミクスは老後の生活を保障するまでには至っていないことの証明となっている。全世代型社会保障をあれ程言っていながら、悩みや不安の解消どころか、勇ましい宣伝だけで終わっている。
どうも首相としての賞味期限は切れかかっているようだ。この調査が示すことになっている国民の生活意識から今後、好転への期待が読み取れない以上、安倍晋三の交代時期と見なければならない。