菅官房長官2月1日午前記者会見発言は、人質2邦人救出に最初から真剣ではなかったことの傍証

2015-02-02 08:52:40 | 政治
 


 菅官房長官2月1日(2015年)午前記者会見発言は次の記事を参考にする。《【イスラム国後藤さん殺害映像】菅義偉官房長官の午前の記者会見全文》産経ニュース/22015.2.1 14:21) 

 全文は直接アクセスして頂くとして、大体の遣り取りを言うと、既に多くの記事が報道しているように「イスラム国」が後藤さんを殺害したとする2月1日に配信した動画は、信憑性が高いと判断したということ、政府の今後の対応は海外邦人への注意喚起等による安全確保、日本人学校との連携強化と各国治安当局に対して日本人学校への警備強化の要請を取るよう在外公館への指示の徹底、トルコ国境地域の危険情報を一番高い『避難勧告』に引き上げたこと、改めて全在外公館に邦人社会の安全に万全を期すよう改めて指示したことなどとなっている。

 では、関係個所の発言だけ拾って、人質2邦人救出に最初から真剣ではなかったことの傍証となる発言を見てみる。



 記者「殺人事件としての警察当局の対応は」

 菅官房長官「この事案が発生してから、内閣危機管理監、内閣情報官、国家安全保障局長、警察庁、外務省で情報収集会議を連日開いて対策を講じてきている」

 記者「湯川遥菜(はるな)さん、後藤さんの殺害予告動画が最初に公開されて以降、イスラム国から日本政府への直接的な接触は」

 菅官房長官「ありませんでした」

 記者「(イスラム国は)交渉にもともと応じる考えはなかったように見える。政府としてどう見ているか」

 菅官房長官「まだそこまで分析は至っていないが、一方的なプロパガンダという色彩があったことは事実だろう」

 記者「一連の事件対応で、政府の情報収集、対外交渉力など課題を感じたことは」

 菅官房長官「この事案発生以来、これまで『人命第一』で、可能な限り、ありとあらゆる手段を行使しながら、全力で取り組んできた。そういう中で、湯川さんに続いて後藤さんが殺害されたとみられる映像が配信された。ご親族のご心痛を思えば、言葉もない。誠に残念で、無念だ」

 記者「ヨルダン人パイロットの安否確認は」

 菅官房長官「わが国は承知していない。この事案が発生してから、ヨルダン国はわが国に対して、非常に連携を進めてきた。ご協力に感謝したい」

 記者「ヨルダン政府とイスラム国側の人質交換に向けた交渉が決裂したという認識か」

 菅官房長官「よく分かりません。ただ、ヨルダン政府は誠意をもって日本のために取り組んでいただいた」

(人質交換の1人に加えずに、日本人の釈放に関しては抽象的な表現にとどまっていた。)

 記者「日本政府からイスラム国への接触は。試みていないとすれば、なぜか」

 菅官房長官「今度の事案について、何が最も効果的であるか、そういう観点から対応してきた。関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者とか、ありとあらゆる方の中で、日本としては協力を要請してきた」

 記者「日本から接触していないという理解でいいか」

 菅官房長官「接触もなかったし、接触することはどうかということも含め、一番効果的なことを政府としては考えて対応してきた」

 記者「得られた教訓や再発防止策は」

 菅官房長官「この事案が発生してから、わが国としてはできる限りの最大限の努力をしてきた。しかし、残念ながら湯川さんに引き続いて後藤さんが殺害されたとみられる映像が配信され、特に家族のご心痛を思うときに政府としても誠に残念、無念だ。対応については、これから部内の中で、どういうことが必要だったのか、どうすればよかったかも含め、検証していきたい」



 日本時間1月20日午後の2邦人拘束と72時間以内の身代金2億ドル支払要求、要求に応じない場合の殺害警告の動画がネット上に公表されて以来、「イスラム国」から日本政府に接触もなかったし、日本政府も「イスラム国」に接触していなかった。

 だが、「何が最も効果的であるか、そういう観点から」、「関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者」等に協力要請してきた。

 菅官房長官は言っていることの矛盾に気づいていない。

 これらの協力要請はいずれかの協力要請対象者に「イスラム国」と接触を図って貰い、その接触を成功させて、日本政府の代理人として間接的に交渉に当たらせることにあるはずだ。

 当然、「イスラム国」から接触がなければ、上記の接触を日本政府としての人質救出のための第一義的に必要な責任事項としなければならなかったことになる。

 湯川さん殺害の動画と後藤さん解放の条件にヨルダンで収監中の女死刑囚の釈放を要求した日本時間1月24日深夜に「イスラム国」の交渉相手は日本政府からヨルダン政府に移ったとしても、日本政府として「イスラム国」に対して何らかの方法で何らかの接触を試み続けなければならなかったはずだ。

 当たり前のことをわざわざ言うが、このような事案で「接触する」ということは、女性の体にこっそりと触れることではなく、話を通じさせることを言う。話を通じさせて初めて交渉や取引が可能となる。

 もし人質解放を言うなら、何が何でも第一義的な必要責任事項として接触から始めなければならなかったはずで、そういったことぐらい自国民保護の責任を最高責任者の立場で担う安倍晋三にしてもナンバー2の菅官房長官にしても承知しているはずだし、承知していなければならなかったはずだが、「日本から接触していないという理解でいいか」という記者の問いに「接触もなかった」と、いともあっさりと簡単に答えている。

 人質解放に心底から真剣な気持でいたなら、このような場合に第一番に必要とする自国民保護の責任事項を履行することができなかったのだから、いともあっさりと答えることはできないだろう。

 先ずは自分たちの無能を恥じるところから入るべきだった。「関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者等を通して色々と接触を試みたが、実現させることができなかった。遺憾の極みです」と自らの無能力を正直に告白すべきだった。

 「接触もなかった」という言い方は、接触できなかったのだから、仕方がないといったニュアンスを含む。

 要するに「イスラム国」に対する接触の成功を第一義的な必要責任事項としていなかった。

 到底、人質2邦人救出に最初から真剣であったとすることはできない。

 何らかのパイプを通して接触を実現させ、交渉する機会を手にすることができなかったにも関わらず、あるいは2邦人とも殺害という最悪の結果を受けていながら、「この事案が発生してから、わが国としてはできる限りの最大限の努力をしてきた」と政府対応の正当化を言い切る。「接触することはどうかということも含め、一番効果的なことを政府としては考えて対応してきた」と、同じく政府対応の正当化を訴える。

 最後に「対応については、これから部内の中で、どういうことが必要だったのか、どうすればよかったかも含め、検証していきたい」とは言っているものの、政府対応の正当化を最初に持ってきているのだから、どれ程の検証ができるか甚だ疑わしい。

 少なくとも結果に対する政府対応の正当化というこの矛盾は如何ともし難い。責任回避は真剣ではなかった対応から往々にして発する。真剣であった場合は、自分の力の至らなさを恥じたり、詫びたりするところから入る。

 この何ら恥じることもなく日本政府の対応の正当化に終始している点にも最初から救出が真剣であったとはとても考えることはできない。

 このことは、記者が「殺人事件としての警察当局の対応は」と問われて、「この事案が発生してから、内閣危機管理監、内閣情報官、国家安全保障局長、警察庁、外務省で情報収集会議を連日開いて対策を講じてきている」と正当化しているところにも現れている。

 どのような御大層な面々を集めて連日会議を開いて対策を講じようとも、「イスラム国」に対して接触を実現させることもできずに2邦人共殺害を結果としている以上、雁首を揃えるだけで終わっていたのであり、これからも終わることになるはずだ。

 対応を正当化する前に無策で終わった責任不履行を先ずは恥じるべきだろう。安倍晋三は関係閣僚会議で「政府として全力をあげて対応してきたが、誠に無念、痛恨の極みだ。このような結果になり、本当に残念でならない」と発言しているが、政府対応の個々の反省点を述べたわけではなく、やはり「政府として全力をあげて対応してきた」ことに重点を置いて政府対応を正当化するニュアンスを漂わせている。

 只々、政府対応の正当化だけで終わらせている。もし最初から2邦人救出に真剣であったなら、救出の第一義的必要責任事項としなければならない「イスラム国」との接触を、例え果たせなかったとしても、何が何でも実現させようと真剣に行動していただろうから、真剣であった分、そのことを実現させることができなかった責任と、2邦人救出失敗の結果を受けた以後は、全面的な不履行で終わった自国民保護の責任を恥じていいはずだ。

 救出に真剣ではなかったからこそ、失敗の意識も無能力の反省も持たずに済むために何ら恥じることなく政府対応の自己正当化に走ることができる。


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