消費税増税で国民に負担を求めるなら、国家公務員宿舎賃料を民間相場と同等に値上げすべき

2012-01-07 09:48:35 | Weblog

 ――古川国家戦略担当相は野田首相の「隗より始めよ」を理解していない――

 古川国家戦略担当相の昨日1月6日(2012年)閣議後記者会見での発言。《“議員定数削減 前提条件でない”》NHK NEWS WEB/2011年1月6日 15時10分)

 記事は最初に与党内に国会議員定数削減等を消費税増税の前提とすべきだとする意見があることを伝えて、その一つとして下地国民新党幹事長の発言を取り上げている。

 下地幹事長「消費税率を引き上げるための法案の閣議決定は、国会議員の定数削減の法案などが成立していることが前提条件になるべきだ」

 このような声、動きが消費税増税の障害となることを前以って回避する予防策なのだろう。

 古川国家戦略担当相「政治改革や行政改革、それに経済再生は直ちに取り組み、具体的な成果を出していきたい。ただ、こっちができないと法案が出せないとか、そういうものだという認識は持っていない」

 絶対的前提ではなく、努力目標的な相対的前提に変えて逃げ道としている。

 このことを裏返すと、国会議員の定数削減や国家公務員人件費削減、あるいは国家公務員定数削減等政治改革や行政改革、さらに経済再生よりも消費税増税の成立を絶対前提としているということであろう。

 ブログに何度も書いてきていることで、繰返しになるが、上記記事は触れていないものの、2009年民主党マニフェストの消費税現行税率5%4年間維持の公約違反を犯して政治改革、行政改革を消費税増税の前提とするとしたのはそもそもからして野田首相自身である。

 民主党両院議員総会民主党代表選演説(2011年8月29日)

 野田首相先ずは隗より始めよ。議員定数の削減、そして公務員定数、あるいは公務員人件費の削減、それはみなさんにお約束したこと。全力で闘っていこうじゃありませんか。

 それでも、どうしてもおカネが足りないときには、国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」・・・・

 議員定数削減、公務員定数削減、公務員人件費削減を先ず行なって、「それでも、どうしてもおカネが足りないときには」消費税増税で「国民にご負担をお願いすることがあるかもしれません」という言い回しで、議員定数削減、公務員定数削減、公務員人件費削減を消費税増税の前提に位置づけている。

 野田首相記者会見(2011年12月1日)

 山根記者「共同通信の山根です、よろしくお願いします。歳出削減に向けた取り組みについて、お伺いします。消費税増税の話が先行しているように思えますけれども、先の所信表明演説でも総理は、政府全体での歳出削減に向けて決意示されました。ただ、党内外でですね、歳出削減の取り組みが不十分じゃないか、という指摘がずっとあると思います。現状でですね、国民に負担増を強いていく上で環境は整っている、というふうにお考えでしょうか。それと今後、歳出削減に向けて具体的にどう取り組んでいくのか、お考えを教えてください」

 野田首相「歳出削減については、これは今までは事業仕分けなどを踏まえて、22年度に確か2.3兆円、23年度に0.3兆円、2.6兆円の歳出削減をしてきました。

 そういうことなどを踏まえて、予算の組み替えも、今までの政権に比べれば額は全然違うくらいの組み替えはやってきていると思いますが、これは不断の努力をしていかなければなりません。一層行政改革、あるいは歳出削減に向けた努力をしていかなければならないと思っておりますし、例えば今も、公務員の給料をマイナス7.8%削減する法案を提出しています。こういう努力を常にしていくということ。

 特にまずは隗より始めよということで、特に政治の分野でも何ができるか、1票の格差の是正の話もしていますが、その先には選挙制度改革と併せて定数の削減もやっていかなければいけません。そういう議論もしていかなければいけないと思っておりますし、不断の努力でやっていくということでありますし、また来年の通常国会には特別会計法の改正案も提出をする予定でございますので、特会改革にも深堀をしたものを出さなければいけないと考えています」・・・・・

 記者が、いわば「歳出削減よりも消費税増税の話が先行しているが」という言い回しで前提が覆っているのではないのかと指摘し、「国民に負担増を強いていく上で環境は整ってはいないのではないのか」との疑問の文脈で問い質したのに対して、野田首相は今後共一層の歳出削減に取り組む、定数の削減も行わなければならない、その他取り組むべき課題を挙げることで、これら課題を消費税増税の前提とし、記者の疑問を否定した。

 野田首相年頭記者会見(2012年1月4日)
 
 江川紹子「よろしくお願いします。先ほど、社会保険と税の一体改革の前提条件の一つとして、政治改革、特に定数削減の問題をおっしゃいました。・・・・」

 野田首相まずは隗より始めよう、まず身を切れというのが国民世論だと思います。その世論を重く受け止めるならば併せて定数削減も、早急にしなければならないと思っています」・・・・・

 古川国家戦略担当相は野田首相の「隗より始めよ」を理解していないくても、野田首相が直々に議員定数削減、公務員定数削減、公務員人件費削減を消費増税の前提としていたことを理解しなければならないはずだ。

 【隗より始めよ】「遠大な事をするには、手近なことから始めよ。転じて、事を始めるには先ず自分自身が着手せよ」(『大辞林』三省堂)

 消費税増税という遠大なことを行うには、手近な議員定数削減、公務員定数削減、公務員人件費削減から取り掛かると言ったのである。

 あるいは消費税増税という事を始めるには先ず自分自身が議員定数削減、公務員定数削減、公務員人件費削減に着手すると宣言したのである。

 一国の総理大臣が自らの言葉を裏切っていいはずはない。自らの発言に対して結果責任を負う。忠実に実行・実現させて初めて「政治は結果責任」を果たすことができる。

 それを一閣僚に過ぎない古川国家戦略担当相が一国の総理大臣の果たすべき結果責任を蔑ろにしようとしている。

 野田首相は消費税増税の前提に様々な政治改革、行政改革を公約としたが、民主党の行政改革調査会(会長・岡田前幹事長)は消費税増税の前提として国家公務員の定員削減と共にさらに国有資産の売却を挙げている。

 《民主 公務員削減計画など義務化を》NHK NEWS WEB/2011年12月27日 15時33分)

 行政改革調査会総会には約30人の議員が出席。

 岡田克也会長「消費税率の引き上げに向けた議論が続いているが、国民からは、その前に政府がやるべきことがあるのではないかという声が多く、われわれも成果を出していかなければならない」

 いわば国家公務員の定員削減や国有資産売却を「やるべきこと」として消費税増税の前提とした。

 国有資産売却の中には国家公務員宿舎の売却も入っているはずだ。《公務員宿舎:25%削減、賃料引き上げも 財務省検討会》毎日jp/2011年12月1日 2時30分)

 記事は国家公務員宿舎の削減を協議してきた財務省の検討会(座長、藤田幸久副財務相)の報告書概要を紹介している。

●全国に約21.8万戸(09年9月現在)ある宿舎を今後5年間で5万戸超(25%前後)削減。順次売却・貸与し、東日本大震災の復興財源などに充てる。

●割安とされる宿舎使用料(賃料)の引き上げ。

 この賃料引き上げについて、〈「民間に比べ破格の安さ」と批判される家賃見直しも求める。財務省の資料によると、宿舎の賃料は東京23区内の広さ70平方メートル台で平均月5.9万円で「民間賃貸の半分以下」(民主党幹部)とされる。〉と解説している。

 記事は、「国家公務員宿舎の削減を協議してきた財務省の検討会」と紹介しているが、財務省HPで探してみたら、正式名称は「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」となっていて、《国家公務員宿舎の削減計画の概要》に売却や賃料の値上げについの記載があるが、賃料の値上げについてのみ見てみる。

〈9.宿舎使用料(駐車場の使用料を含む。)については、宿舎の建設、維持管理等に係る支出を賄えるよう引き上げる。.〉――

 大体が家賃を公務員宿舎に限って「使用料」としているところに狡猾なゴマカシが臭ってくる。

 「宿舎の建設、維持管理等に係る支出」とは、民間マンションの「維持管理費」に相当するはずである。どこにも周辺民間相場と同等にするとも、近づけるとも書いてない。

 民間マンションの「維持管理費」とはご存知のように部屋代とは別にマンション組合をつくって、各世帯が月々1万円とか2万円負担して、それを積み立て、改修や再建費用に当てる。

 〈東京23区内の広さ70平方メートル台で平均月5.9万円で「民間賃貸の半分以下」〉の相場を賄う賃上げとならないばかりか、他地域に於いても周辺の相場との差額を埋める金額とはならないに違いない。

 年金で「職域加算」という厚生年金にはない優遇を受け、給与で民間を上回る優遇を受け、国家公務員宿舎で民間相場の半分以下の家賃で優遇を受けてきた。まさに役人天国の境遇にあった。

 「職域加算」は年金の一元化で解消させることができるとしても、消費税増税で国民に負担を求めるなら、年金一元化の実現をも消費税増税の前提に加えなければ一般国民と負担という点で同等の立場に立ったことにはならない。

 さらに消費税増税は逆進性の問題があるにしても、一般国民も国家公務員もほぼ同等に負担を負う。だが、国家公務員宿舎「使用料」が民間相場と同等とならなければ、全体的には負担に差別が生じることになる。

 政治はこの差別を許すのだろうか。

 国家公務員宿舎賃料の民間相場並み値上げをも、消費税増税の前提とすべきではないだろうか。

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