「私のしごと館」存続意向/桝添の正体見たり族議員

2008-07-08 08:30:16 | Weblog

 7月3日(08年)放送の11時30分からのTBS[ピンポン」が「私のしごと館」を取り上げていた。どのような施設なのか「私のしごと館 – Wikipedia」から主なところを箇条書きに拾ってみた。

 【概要】
1.1989年(平成元年)度より施策の必要性の議論が始まり、1992年(平成4年)度に政府が施設の
  設置構想をまとめた。
2.1995年(平成7年)の閣議決定(開館準備の推進)及び1999年(平成11年)の閣議決定(設置の
  推進)を経て、厚生労働省の重点施策「若年者雇用対策の推進」の一つとして国により設置が推進
  及び促進された。
3.厚生労働省所管の独立行政法人雇用・能力開発機構が設置・運営す
  る。
4.雇用保険法により定められている雇用保険事業のうちの能力開発事業として若年者の失業予防のため
  の事業を行っている。
5.私のしごと館の財源は雇用保険であるが、運営資金の全額は事業主が負担する保険料であり
  、個々の労働者が納めた保険料は使われない。


6.2003年(平成15年)3月30日にプレオープン、同年10月4日にグランドオープンした。

 【目的】

1.世界最大級の職業総合情報拠点として、業予防のための若年者への職業意識啓発(職業教育、キ
  ャリア教育)を目的とする各種事業を実施
する。
2.中学生や高校生などの時から、仕事というものに親しみを持つことができるよう、また、いろいろな
  職業を体験することができるように、それら各種仕事の展示体験コーナーや、職業情報の提供、
  発信等を実施する。
3.労働意欲衰退は今や国際的社会問題であり、早期キャリア学習が世界各国で求められている。博物館
  等の社会教育、心理学(キャリアカウンセリング)、職業訓練(職業能力開発)等の手法を組み合
  わせた方法により恒久的、継続的な問題解決をめざす。

4.建設費 581億円(以上)

 経営状況を言うと、毎年20億円の赤字(「ピンポンパン」では毎年15億の赤字としている)だという。

 運営目的に関わる能書きは立派過ぎるくらい立派である。建設費を581億円もかけたのだから、581億に見合う能書きが必要になる。但し能書きがそのまま成果につながる保証はない。つながれば赤字経営だ、倒産だといた事態は人間世界には存在しないことになる。

 尤も営利事業ではないのだから、「若年者への職業意識啓発」に十二分に力を発揮し、結果的に社会的な雇用状況に多大な貢献を果たしていて、その効用が毎年20億円の赤字(「ピンポンパン」では毎年15億の赤字)を補って余りあると言うなら存続させる価値があると言えるし、最終的には事業主の利益にもなることなのだから、現在のみならず将来的にも失業保険に於ける 「事業主が負担」分まで相殺してお釣りまでくることになる。

 「私のしごと館」は果して毎年20億円の赤字(「ピンポンパン」では毎年15億の赤字)を十分に上まわる「若年者への職業意識啓発」に大いなる力を発揮し社会的な雇用状況に多大な貢献を果たしていると断言できるだけの社会的な利用価値をトータルで生み出していると言えるのだろうか。

 だが、景気回復に伴ってフリーターは減少傾向にあるというものの、就職氷河期に学校を卒業、就職に関して割を食った35~44歳台では逆に増加しているという年長フリーターの問題、24歳以下の無業者は減少しているものの景気回復という局面に反して25歳以上では増加している就職傾向、アパートを借りる初期費用が賄えずにネットカフェを現住所としているその日暮らしの生活状況、あるいは社会的に一般化した「派遣残酷物語」、偽装請負等々の若者が抱え込んでいる労働状況を考えた場合、「私のしごと館」が毎年20億円の赤字(「ピンポンパン」では毎年15億の赤字)を出してもいい若者の職業に関する問題解決を果たしているとは到底思えない。

 赤字額を現在は非正社員の地位に甘んじていはいるが、将来的には正社員の地位を望んでいる若者向けの実際的な職業訓練の費用に回した方が有意義なカネの使い道と言えないだろうか。

 またここにきて石油高騰による原材料費の高騰、生活物資の高騰を受けた消費活動の収縮がもたらすことになる国内景気の減速が本格化した場合の企業の求人意欲減退に対抗する若者の就職活動に「私のしごと館」が何らかのプラスの影響を与えることができるかというと、非正社員が正社員の3人に1人といった状況が象徴しているこれまでの若者の雇用状況に何ら役に立っていなかったのだから、ノーと言わざる得ない。

 要するに企業が政治を動かして1986年に施行させた13業務に派遣を認める労働者派遣法をバブル崩壊後の失われた10年の羹(あつもの)に懲りてその規制緩和を暫時拡大させていき、失われた10年の後半の1999年に製造業などの一部を除き派遣の原則自由化、04年に製造現場労働者の人件費カットに利する製造業への派遣も解禁、既に1年~3年に拡大していた派遣期間を07年に製造業にも適用し、景気が回復しても人件費抑制の観点から派遣だ請負だの低賃金雇用を常態化させた膾を吹くが如き企業の経営の在り方が影響した若者の職業状況であって、「私のしごと館」は建設費 581億円に見合う高邁な能書きを掲げたものの、若者が見舞われている職業状況とは無関係のところで活動していたというのが実態であろう。

 大体が「私のしごと館」を訪れた若者がそこで博物館等の社会教育、心理学(キャリアカウンセリング)、職業訓練(職業能力開発)等の手法を組み合わせた方法で様々な職業体験を行ったことによって派遣だ請負だではなく正社員への道が開けた上に高い労働意欲を維持して企業活動に臨めたというなら、評判が評判を呼んでそのご利益にあやかろうと多くの若者が引きも切らずに押し寄せ商売繁盛ということになっていただろうから、その逆の毎年20億円の赤字(「ピンポンパン」では毎年15億の赤字)という状況自体がその活動価値が無意味であったことを証明して余りある。

 03年3月13日の『朝日』朝刊に次のような記事が掲載されている。≪455億円の保養施設が8億円 2800万円の武道場は1050円 厚労省の外郭団体「雇用・能力開発機構」 「施設投売り」の不思議≫

 04年から雇用・能力開発機構が独立行政法人に移行するのに伴い、05年度末までに自前で保養施設を持てない中小企業の福利厚生を目的に自治体から借地などして建設してきた全施設の売却・整理を決めたものの、全施設の建設費4498億円に対して、売却額は百数十億円に過ぎない、TBSの「ピンポン」も取り上げていたその「結構毛だらけ、猫灰だらけ」のバナナの叩き売り相当の安売りを批判した内容の記事となっている。

 記事中の「自治体に売却された主な施設」(※カッコ内は所在地と運営開始年、金額は建設費と売値)を見てみると、

追分勤労者体育センター(北海道追分町 82年)  7960万円  1万5千円
矢本勤労者体育センター(宮城県矢本町 85年)  8959万円  529万5150円
ホリゾンかみね(茨城県日立市 85年)     3億2843万円 10万 5千円
勝沼勤労者体育施設(山梨県勝沼町 90年)   1億 219万円 10万 5千円
藤岡勤労者体育施設(愛知県藤岡市 82年)     7750万円 740万2500円
伊勢志摩いこいの村大王(三重県大王朝 84年) 8億4343万円 10万 5千円
八千代農村教養文化体育施設(兵庫県八千代町77年)7600万円  1086万7500円
大佐勤労者野外活動施設(岡山県大佐町 83年) 1億3390万円 1万500円
阿南勤労者総合福祉センター(徳島県阿南市 83年)2億7500万円 1億699万円5千円
安芸勤労者体育施設(高知県安芸市 72年)     2821万円  641万250円
阿蘇いこいの村(熊本県阿蘇町 84年)     7億8240円  105万円
糸満勤労体育センター(沖縄県糸満市 79年)    7602万円   1万500円 

 この一覧表には載っていないが、「ピンポン」でも触れている神奈川県小田原市の1999年建設、機構保有の土地代・建設費455億円(財源は雇用保険料のうちの事業主負担分だとWikipedia)の「スパウザ小田原」(東京ドーム5個分の広大な敷地に、ホテル、温泉、テニスコート、ボウリング場などの施設が備わっている「Wikipedia」)は8億円の価格での売却を決定、小田原市が年4億3千万円以上の賃貸方式で民間経営委託を計画、受諾企業が現れたなら購入予定だと書いている。

 「自前で保養施設を持てない中小企業の福利厚生」が目的という建設趣旨を社会に生かしてこそ「趣旨」は意味を持つ。それを叩き売りのバナナ同然の素材としてしまったのは建設趣旨を社会に生かすことができなかったからなのは明らかである。ヒトとモノすべてに亘って民間の優れたサービスと比較した場合歴然たるものがあり、忌避されたといったところなのだろう。

 この福利厚生施設が目的とした趣旨をまったく生かせなかった「雇用・能力開発機構」の経営発想と経営手腕、それに続く独立法人化後の「私のしごと館」に於ける趣旨未消化の経営発想と経営手腕を並べた場合、前者を前科として後者は再犯の関係にあるとも言える構図を踏んでいる状況は「私のしごと館」の将来的な措置をどうすべきか示していないだろうか。

 「私のしごと館」を視察した渡辺喜美行政改革担当相の館内に入るなり開口一番「でっかい建物だなあ」であった。何のために天井を高くしているか、建設費を高くする目的としか考えようのない天井の高さであった。豪華さだけが目立ち、若者の職業に関わる生活感を窺うことができない。

 カネがかけてあるのは建物だけではなく、「ピンポン」は展示物コーナーに置かれている人形は79体で2億8千万円、1体356万円平均で多額の費用がかかっていると伝えていた。

 宇宙開発の仕事紹介は製作費5億8千万円。テレビニュースキャスターを体験できるスタジオ2億7800万円。消防士コーナーは2億8900万円等々・・・・。

 消防士の制服を着て消防に乗り込む中学生だか高校生を撮していたが、全国状況と比較したそれぞれの生徒が住む地域地域に於ける火災原因、火災規模、火災件数等の地域性の学習を省いた消防体験にどれ程の意味があるのだろうか。体験したという事実のみが残る行事で終わりはしないか疑った。

 地域の消防署がすべての小中高生の見学を受入れる余裕はないかもしれないが、あるグループは消防署、あるグループは警察署、あるグループは工場と見学箇所を分担させて、見学で得た情報とそれら情報から学んだ自身の情報を学校で分担箇所ごとに発表させて疑問点等の議論を行わせ、そのことを通して得た知識から見学しなかった職業について生徒それぞれに想像力を働かさせて職業観を膨らませることの方が生きた教育になると思うのだが、どんなものだろうか。

 教えられたなりの情報を教えられたなりに受け止める暗記形式の情報授受で終わらせる、あるいは体験して得た情報のそれ以外の情報や他者の情報との咀嚼を経ない最初の形なりの情報で推移させることは情報に込めるべき想像性(創造性)の介在を省くことを意味し、情報の発展的な解釈に期待は望めない。

 「私のしごと館」が見学者の体験して得た情報の発展的な解釈にまで寄与しているというなら、いわば単なる行事で終わっていないなら、やはり生きた学習になることとして多くの見学者を集めたに違いなく、赤字の道を辿ることはなかったのではないだろうか。

 民間委託した上、それでも採算が取れなければ廃止と去年12月に決まっていたと解説していたが、7月2日に同じく「私のしごと館」を視察した桝添厚労相は存続の意思を隠さなかった。

 桝添「もっといい方法はないのかなあと。もっと収益が上がって、投下した資本が回収できる道をまさに検討委員会が一生懸命反対派も入れてやっているわけですから。これを潰すというのは勿体ないですよ」

 どういった遣り取りの関連からか聞き逃したが、厚労省の省益、もしくは「雇用・能力開発能力機構」の利益代弁で動いているのではないかといった疑いを否定して、それがウソではないことの証明として言ったことなのか、「私のような人間に裏も表もありません。私は喋り過ぎて文句を言われている人間ですからね」といったことも言っていた。

 ウソつけであろう。裏表のない人間がいるかというんだ。「喋り過ぎ」と「裏表がない」とどういう関係があるというのだろう。否定の喋り過ぎは裏表のある証拠と大体が相場が決まっている。

 7月2日の「asahi.com記事」≪舛添厚労相が「私のしごと館」視察 存続の意向示す≫によると、「裏も表もある」桝添厚労相は地元の首長らとの意見交換で「こんな立派な施設を壊すという選択肢はありえないと思う。かえってお金の無駄遣いになる。今あるものをいかに生かすか、赤字幅をいかに減らすかという課題に取り組んでいきたい」と述べたそうだが、「雇用・能力開発機構」が厚労省の外郭団体であったときから現在の独立行政法人に至る経営発想と経営手腕を計算に入れない存続意向は「雇用・能力開発機構」の存在意義を認めることであると同時にそこに平成20年3月1日現在、理事5名のうち3名が労働省出身者(Wikipedia)だという天下りであることを考えると、族議員の立場からの発想としか言いようがない。

 まさに桝添の正体見たり、族議員と言えるのではないだろうか。

 TBS「ピンポン」は子供に職業体験できる施設で確実に収益を上げ、成功している場所があると2006年に東京にオープンした民間の子供向け体験施設「キッザニア」を紹介した。50社を超えるスポンサー企業の仕事を中心に80種類の職業体験ができるため、連日満員が続く盛況ぶり。当初の見込み年間入場者数の30万人を超え、80万人を集客しているとのこと。

 その上キッザニアは全国展開を検討していて、来年には関西に進出を計画。実現すると、「私のしごと館」と競合することになる。

 上記『朝日』記事で触れていた455億円で建設された小田原の温泉施設「スパウザ小田原」も建設費の約2%で小田原市が購入。小田原市はヒルトンに賃貸、ヒルトンが「ヒルトン小田原リゾート&スパ」として運営し、人気を博し、小田原市に年間4億3千万円の賃貸料が支払われていて、2年で元が取れたと官と民の経営手腕の違いを紹介していた。

 さらに追い討ちをかけるようにムダゼロに向けて政府与党がしていることとしてたくさんのムダゼロ会議を設置していると冷笑混じりに解説していた。

 ・自民党――「ムダ遣い撲滅プロジェクトチーム」
   主旨――随意契約全廃。
         公益法人への補助金を見直す。
 ・自民党――「税金のムダ遣いを1円たりとも許さない若手の会」
    主旨――議員の海外出張のファーストクラスは必要か?
 ・公明党――税金のムダ遣い対策検討プロジェクトチーム」
   主旨――省庁による事業委託の「半減」を目指す。
 ・政 府――有識者らによる「ムダゼロ臨時行政調査会」のようなものの設置を検討。
  
 ハコモノはなぜなくならないのだろうか。答は簡単である。ハコモノをつくる脳しかないからだ。ハコモノ建設の目的とした中身の趣旨を社会的に生かすだけの経営手腕――経営上の創造性を欠いているからに他ならない。大体が天下り人事の機会を設けることを含めて自分たちの仕事をつくるための仕事となっていて、それが目的だから、建設が終了することによって目的を果たすことになり、趣旨を生かすところまでいかない。結果的に中身の建設趣旨がタテマエとなることとなり、建設趣旨そのものが機能せずに完結することになる。

 そういったことまで考えない桝添の「私のしごと館」存続意向はまさしく族議員の発想と断罪すべきではないだろうか。 

コメント (8)
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