えん罪・布川事件 国賠を求めてたたかう夫の傍で

えん罪を晴らし、普通の一市民に戻った夫。二度と冤罪が繰り返されないようにと、新たな闘いに挑む夫との日々を綴ります・・・。

布川事件の論告求刑

2010-11-13 | 日記
「・・・犯行の態様が、残忍非道を極め、悪質極まりないものであること、被害者には何の落ち度も認められず、本件が惹起した結果は極めて重大であること、本件の社会的影響も極めて大きなものであったこと、加えて、被告人両名には全く改悛の情が認められないことなどからすれば・・・・」


「以上の情状を考慮し、相当法条を摘要の上、被告人両名をいずれも

 無期懲役

 に処するのが相当であると思料する」

法廷内に検察官の声が響いた。

 


70ページに及ぶ検察の論告は、午後1時半の開廷から3時過ぎまで延々と朗読された。
「今更何を言うのだろう」という思いで法廷に入った私は、必死にメモを取りながら聴いた。しかし、次第に読み上げられる検察官のことばが遠のいていく感じを味わっていた。内容なんて何もない。ただ、夫やSさんが真実を述べ、弁護団が全精力を傾けて提出して下さった新証拠を、ひとつひとつ『みとめられない』と読み上げているだけにしか聞こえなかったのだ。たくさんの矛盾点も「可能性がないとはいえない」といいきってしまう。まったく、何の反証もなく・・・。

 これほどまでに見事なストーリーを作り上げ、そこに夫とSさんの名前を組み入れて殺害行為に及ばせる・・・。そのことの恐ろしさが私の脳裏を走った。

 一見、成り立ってしまうかのような内容。しかし、そのストーリー通りに実際やってみたら本当にできるかどうか、

「ご自分でやってみてください?!」

と、大きな声で何度も声に出して言いたくなった。

 もともと「犯人先にありき」で作られたえん罪・布川事件。
夫たちの無実の証拠を隠したまま、43年間も無期懲役刑を背負わせている重大な誤判の責任を反省するどころか、
真実に背を向けたまま、なおも強行突破をしようとしている検察の姿勢が哀れにも見えて来て仕方がなかった。

目の前で行われているのは、現実の裁判。そして、夫とSさんに再度

 無期懲役

言い渡されたのだ。


想定内のことではあったけれど、あまりのひどさに言葉が見つからなかった。
怒りと、悔しさと、虚しさと失望と・・・

夫が長い朗読の終わった検察官に
ゆっくりと大きな拍手を送り、それが廷内に響いた。

皮肉と
怒りを込めた
夫の
精いっぱいの感情表現だった・・・。



でも、
でも、
検察官が何と言おうと、
夫と杉山さんの無実は明らかなこと。
地裁も、高裁も、最高裁までもが
「自白は誘導されたもの」と認定し、再審を決定したのだ。
そして、
たくさんの無実の証拠が
「第1審から提出されていたら、有罪判決に至ったろうか・・・」とも。


裁判官の皆さんに心からお願いしたい。

 真実はどこにあるか
 公正な判断をお願いします、と。