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バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

久々のお恵み

2012年07月29日 22時02分36秒 | バス運転士

終点に到着して両扉を開けると、4~5名が降りて行き… いつものように、それを私が車内ミラーで見ていると、助手席に座っていたお婆さんが「どうもありがとうございました」と言いながら降りて行った。私も「ありがとうございました」と答えた。

私はバスの待機場所へ移動しなければならなかったので、“まだ乗っている人の有無”を確認するために、運転席から身を乗り出して車内を見回した。万が一、座席の陰で横になって寝ている人がいるのに気が付かなくても、待機場所でしっかりと確認するので問題ないと私は思っている。

終点のバス停から、そのまま営業所へ回送で帰ってしまうならば話は別だが、路上での車内チェックは「早く行かなくては迷惑だ!」と焦ってしまうので、できればやりたくないのである。

さて、車内には誰もいなかったのだが、助手席に黒い帽子が忘れられていた… 私は「え~っと… 今、誰か座ってたっけ? ならば、今すぐ呼び掛ければ戻って来るかも…」と思った。ついさっき「ありがとう」と言ってくれたお婆さんの存在を忘れて…

すぐに車外スピーカーに切り替えて、私は「すいませ~ん! どなたか帽子を忘れていませんかぁ~!」と叫んだ。すると、お婆さんが戻って来て「あぁ、ごめんなさい。また忘れるところだった… この前、忘れた帽子は出て来なかったから… ありがとう」と言った。

私が待機場所へ移動して、車内チェックを終えたところへ、先程のお婆さんが自転車でやって来て「さっきはありがとうね。これ、良かったら食べて!」と言いながら、どら焼き2個とフルーツゼリー5個の入ったビニール袋をくれた。私は有り難く頂戴した。

お婆さんは「去年、足の怪我で入院してから、物忘れが酷くなって…」と話し始め、二言三言の会話が終わると自転車に跨がって走り去った… なるほど、物忘れがねぇ… この私も、助手席の黒い帽子を見た時に“僅か十数秒前に「ありがとう」と言ってくれたお婆さん”を忘れて… でも、どら焼きとゼリーは忘れずに頂きます! ありがとうございました…