朝の通勤時間帯の後半戦… あるバス停で一人のお爺さんが乗ってきて「あの… もう一人、もうすぐ来るで… ちょっと待っとったって!」と言った。私は「えっ!? 気付かなかったけど…」と思いながらグルッと見回したけれど、道路反対側の歩道を一人の女子学生が歩いているだけだった…
お爺さんが「あ、やっぱりいいわ…」と言いながら優先席に座ったので、私は「きっと、お爺さんは“彼女もバスに乗るんだ”と勘違いしたのだろう」と思って扉を閉め… その時! お爺さんがすっくと立ち上がり「やっぱりもうちょっと待って!」と言いながら、前扉のすぐ内側までやって来たのである。
お爺さんが立ったままでは発車できないので、私は「とりあえず扉を開ければ気が済むかもしれない」と思ったのだが… お爺さんが扉にへばり付くように立ったことによりセンサーが働き、扉は開閉不能となっていた。そこでもう一度、私は周囲を見回したけれど、先程の学生が後方へ向かって歩いているだけだった…
私が「どなたもいらっしゃらないようですが…」と小声で言ったけれど、お爺さんの耳に入ったかどうか… そのまま何も言わずに席に戻った。私は「なんだ、言いっぱなしかよ!」とツッコミを入れたい気持ちを抑えて、静かにバスを発車させたのだが…
その間、お爺さんの方を覗き込むように見ていた乗客がチラホラ… そりゃそうだろう。私も昼間だったらともかく、通勤時間帯はバスの本数も多いので、そんなにノンビリやるつもりはないのだ。が、お爺さんの若い女の子に対する気持ちは分かるような… ん? まさか… 私には見えない何かが見てていたとか??? おいおい…