新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

階段紀行・フランス パリ編④ ロダン美術館の作品群に囲まれた鉄の階段

2021-07-31 | 階段紀行・フランス

 彫刻の巨匠ロダンが晩年住まいとしていた邸宅が、今は美術館となっている。彼自身がこの建物を美術館とするよう計画したもので、ロダンの初期からの主要作品が一堂に会している。

 そうした作品群をつなぐ階段が美しい。

 白壁を背景として、黒々とした手すりが浮かび上がる印象的な設定に配置されている。

 壁面にも彫刻作品が飾られており、自然な流れの中で、階段を歩きながらの作品鑑賞も出来てしまう。

 ここには一時愛人関係にあったカミーユ・クローデルの作品も展示されていて、かつてロダンとカミーユの物語を取材するために何回もこの階段を上り下りしたことがあった。

 ここでは広い庭園にも作品が展示されている。この「カレーの市民」も見逃せない傑作だ。(同じ作品は上野の国立西洋美術館にもあるので、ご存知の方も多いはず)

 そうした作品をスケッチする若い女性たちの姿もあった。美術学校の生徒たちだった。

ロダンとカミーユの作品の中で、個人的に好きなものを1点ずつ紹介しよう。

まずは、ロダンの「大聖堂」。2つの手が合わさろうとしている。よく見ると。これは両方とも右手であることがわかる。つまり、2人の人間の手が組み合わさろうとしている、祈りの形だ。

 カミーユの作品「ワルツ」。タイトル通りワルツを踊る2人だが、女性の体は今にも崩れ落ちそうに傾いている。不安定な心の状態が全身で表現された作品だ。

 カミーユは愛したロダンの曖昧な態度に心を病み、数十年もの精神病院生活の後一人寂しくこの世から去って行った。

 

 

 

 

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階段紀行・フランス パリ編③ 神秘主義の画家ギュスターヴ・モローの館に残された、神秘の螺旋階段

2021-07-27 | 階段紀行・フランス

 

 象徴主義の画家であるギュスターヴ・モロー美術館に出かけた。

 モローが生前住んでいた館が、現在は美術館になっている。美術の国フランスでも初めての国立個人美術館としてオープンしたものだ。

 従って、館内にはモローが生活した部屋も残されていて、作品の展示スペースは晩年アトリエとして使っていた2階部分が使われていた。

 その2階から3階に通じる階段は、まるでモザイクのように複雑。

 繊細な装飾が施されたモニュメントのような工作物だ。

美術館として造られたものではないため、室内は少し薄暗いイメージだ。

 が、それだけに差し込む外光によってシルエットに形を変えた階段の姿は、まさにモローの作品群を象徴するかのように神秘的な香りが漂う。

 3階から見下ろすと、らせん状の階段が渦を巻くのが見える。

 この美術館の目玉は「出現」。聖書に登場する、サロメと彼女のリクエストによって首をはねられた洗礼者ヨハネ(の首)が対面するシーンだ。これを始めとしておびただしい肉筆のデッサンも所蔵されているので、是非じっくりと鑑賞されることをお勧めする。

 

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階段紀行・フランス パリ編② パリ・オペラ座の大階段。恍惚の高みに臨むような高揚感とともに。

2021-07-23 | 階段紀行・フランス

 パリ・オペラ座(オペラ・ガルニエ)。19世紀後半、ナポレオン3世指揮下オスマン知事が実践したパリ大改造の際、ランドマーク的建築として建造されたのがこのオペラ座だ。シャルル・ガルニエの設計で1875年に完成した。

 正面入口を入ると、大理石の双子柱に囲まれた高さ30mの大ホールに広々と設けられた階段が姿を現す。

 踏板は白大理石、手すりには赤と緑の大理石が使われ、豊かな色彩と豪華な装飾で形成されている。

 正面階段は、格別の幅を取っており、照明を受けてまぶしいくらいに光を跳ね返す。

 上り階段も1つだけではなく何か所か分かれて存在し、それぞれに気品を漂わせる。

 2階踊り場にもたっぷりスペースが設けられる。

 オペラ座の舞台には、パリを描いたシャガールの天井画「夢の花束」が掲げられ、バレリーナならば誰もが憧れるハレの場が用意されている。

 その栄光の場に向かって精進を続けてきたバレリーナたちの夢のステージが、この大階段のすぐ先に待ち構えている。

 そう、その1段1段毎に、あたかも私たち自身も、恍惚の高みに臨むかのような高揚感に胸をときめかせている自らに、気付くのかもしれない。

 また、2階には全面に金箔を施した壁面を持つ大広間がある。天井から吊り下げられたシャンデリアに照らされて室内全体が神々しく輝く様は、あの大階段を昇りつめた後に初めて味わうことの出来る幸福だ。

 

 

 

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階段紀行・フランス パリ編① ルーブル美術館入口。宙に舞う新体操のリボンのような軽やかな階段。

2021-07-20 | 階段紀行・フランス

「階段紀行」シリーズのフランス編を始めます。階段のバラエティではイタリアよりもフランスの方がより豊富です。まずはパリからスタートしましょう。

 第一弾はルーブル美術館。古代オリエント時代から18世紀にかけての所蔵美術工芸作品数は30万点以上。おそらく世界でも最も有名な美術館だろう。

 宮殿に1989年I・M・ペイによって造られたガラスのピラミッドから美術館のエントランスに入ることになるが、その入口に軽快な螺旋階段が存在する。

 柱や壁の支えを持たない、すっきりとしたデザイン。

 ガラスの天井から差し込む光の中を、美の殿堂へと誘う優雅な導入路になっている。

 下から見上げれば、新体操のリボンが舞いひるがえるような軽やかさを感じることが出来る。

 チケットを購入して美術品の宝庫へと足を踏み入れると、正面にどっしりとした階段が現れる。踊り場に見えるレリーフは、イタリアの彫刻家チェッリーニの作品だ。もしイタリア・フィレンツェに行かれたことのある方なら、シニョーリア広場のロッジアにあるメドゥーサの首を掲げた「ペルセウス」を思い出すかも。あの作品の作者でもある。

 鉄製の手すりで囲まれた幅広い階段。エントランスの軽快さと比較するなら、こちらは中世からの歴史を感じさせる伝統的な造形が際立つ。

館内の作品を紹介し出すときりがないので、超個人的な好みで絵画と彫刻作品を1点ずつ。

 絵画はラトゥール作「いかさま師」。あの狡猾そうなおばさんの表情が何とも素晴らしい。

彫刻はジェルマン・ピロン作「悲しみの聖母」。前の絵画とは対照的に全身から慈愛の香りがあふれ出るような聖母の姿に感動です。

 

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雲を見上げる③ まるで人を虜にするような魅惑的な雲が舞い踊る夕焼けの空

2021-07-17 | 雲を見上げる

 ニース。コートダジュールの海岸で夕陽の空を見ていると、飛行機が近づいてきた。なるべく機体を大きく撮ろうとズームにして狙ったところ、背景の空が何重にも変わった色彩になっていた。それも飛行機を停めた形で撮影したせいか、雲が横へ横へと逃げて行くように画面に収まり、面白い姿になってくれた。

 そんなコートダジュールの夕景。海を赤く染めた夕陽は次第に水面から消えて行ったが、残された雲はオレンジから紫へと変化していた。

 マジョルカ島からの帰り、バルセロナ港に近付いた頃、港の上空に赤味を帯びた鮮烈な形態の雲がたなびいていた。スペインはダリやピカソなどインパクトの強い画家や建築を生み出したが、空の雲もまた鮮やかなものだった。

 バチカン大聖堂の屋上に立つ聖人像を狙ったところ、その奥に浮かぶ夕焼雲がふんわりと空一面に沸き立つ様がカメラに収まってくれた。この写真の撮影日は12月21日。間もなくクリスマスということでローマの街ではあちこちにクリスマス市が開かれて賑わっている時期だった。

 地中海に浮かぶプロチダ島という小さな島。夕方の風景はとても美しかったが、その中で対岸にあるイスキア島の山を眺めていると、山の右側にイスキアの山とそっくりな形をした雲が浮かんでいて、次第にピンクに染まって行った。思いがけず自然の造形の面白さを味わった。

 お台場の夕方。海辺に並んだ港の運搬機材は遠くから見るとまるでキリンの集団がいるかのように見えて楽しい。その上空では、オレンジから青へと移り行く空の色。さらに高い高い秋空に、刷毛で掃いたかのような薄い雲が全面に広がっていた。

 こちらはローマ。サンタンジェロ橋上にはベルニーニの天使像がずらりと並ぶ。シルエットを楽しんでいたら、突然大砲から打ち出されたような雲が、天使めがけて飛び出した。一瞬眼を疑うような異形の雲だった。

 トスカーナの地方都市モンテプルチャーノに泊まった日。強い風が一日中吹いていたが、その影響か夕陽を浴びた雲たちも、おとなしくまとまることなく上下左右、自在に形を変えて踊り続けていた。

 富士山の山頂に夕日が沈み、それをシルエットにして空が光り輝く。ダイヤモンド富士を期待して出かけたが、あいにく雲が邪魔をして太陽はわずかのところで隠れてしまった。でも、こんな風にたなびく雲もまた面白い。

 ヴェネツィア本島からラグーナを渡って隣りにあるキオッジャの街に行った帰り、連絡船の甲板で海上を見ていると日没になってどんどん上空が青味を増していく中、上空の夕焼雲が墨絵のように模様を描き出した。周囲は何もない海。まるで別世界に一人佇んでその模様を眺めているかのような想いに囚われていた。

 

 

 

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