新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

パラティーナ美術館にはルーベンスやムリーリョも。

2018-11-02 | イタリア・パラティーナ美術館
 パラティーナ美術館でラファエロ以外の画家の作品も見て行こう。

 ルーベンス「戦争の惨禍」。

 赤いマント姿の軍神マルスが、ヴィーナスの制止を振り切って戦場に向かう姿が描かれている。その足元では、平和と学問の象徴である書物が踏みにじられている。
 当時繰り返されていたヨーロッパ各地での戦争を嘆いた大作。反戦の意味が込められている。

 ムリーリョ「聖母像」。

 スペインの画家だが、彼もまた優しさに溢れる聖母子像が評判をとった画家だ。

 フィリッポ・リッピ「聖母子と聖アンナの生涯」。
 
 ボッティチェリの師であり、無類の女性好きだったリッピ。それだけに女性である聖母の描写は卓越していた。「好きこそものの上手なれ」ということだろうか。

 ティツィアーノ「マグダラのマリア」

 ヴェネツィアルネサンスの代表的な画家が描いたマグダラのマリア。それまでの半生を悔い改めてキリストを深く慕った女性を、敬虔な姿で表現している。

 カラヴァッジョ「眠れるキューピッド」。

 幼子のキューピッドを描いた静かな絵だが、さすがカラヴァッジョ、光の明暗は実に劇的だ。

 ピッティ宮殿内の豪華な部屋。ここには「イタリアのヴィーナス」とも呼ばれるアントニオ・カノーヴァの彫刻が置かれていた。

 本当はじっくりと作品群を眺めたいところだったが、何しろフィレンツェ日帰りの強行軍。後ろ髪を引かれる思いで美術館を後にした。



 
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パラティーナ美術館でラファエロ三昧。若くして逝った母のイメージが聖母像に?

2018-10-30 | イタリア・パラティーナ美術館

 ウフィツィ美術館の次はヴェッキオ橋を渡った先にあるピッティ宮殿のパラティーナ美術館へ。宮殿の美術品を現在の区画に集めた時の展示方法そのまま。縦に何列も重なった形で展示してある。

 ここではラファエロの作品を中心に見て行こう。

 ラファエロが生まれたのはイタリア中部のウルビーノという都市。宮廷画家だった父のもとで育った。

 生家は領主ウルビーノ公の館にほど近い場所。ここで子供のころからその才能を発揮し出して、15歳の頃当時の一流画家ペルジーノの工房に入って修行を始めた。

 そして1504年、21歳でフィレンツェへと向かった。

 フィレンツェでほぼ最初に完成させたのが「大公の聖母」。後にトスカーナ公がこの絵を気に入り、常に手元に置いていたことから名前が付けられた。

 伏し目がちな優しい聖母の表情や子供の仕草には、大公ならずとも一瞬で気に入ってしまう。

 「小椅子の聖母」。「大公の聖母」の10年後の作品。実はラファエロはフィレンツェに1508年までしかいなかったために、完成させたのはローマに移ってからのことだった。

 慈しみに満ちた中にも、鋭いまなざしを感じさせる聖母は、数あるラファエロの聖母子像の中でも白眉の出来栄えだ。

 フィレンツェ滞在中には、S・M・ノヴェッラ教会でモナリザを制作中のレオナルドをしばしば訪れては彼の画法を学んでいった。その中でモナリザと似たポーズをとる女性像のスケッチや肖像画も製作した。

 その中の1つ「マッダレーナ・ドーニの肖像」は、まさにモナリザと同じポーズだ。遠目で見れば落ち着いた中年女性のたたずまいと見える。

 だがその表情は、レオナルドは神秘的に仕上げたのに対し、ラファエロの女性は冷淡で辛辣な表情を垣間見せる。一癖も二癖もあるといわれるフィレンツェ女性の性格までもリアルに描写している。

 また「ヴェールの女」はラファエロの恋人、ローマのパン屋の娘フォルナリーナを描いたとされている
が、彼は「美しい女性を描くには多くの美しい女性を見なくてはならない。私はそこから1つの女性像を引き出すのです」とし、モデルをそのまま写し取ってはいないと語っている。
 
 一方でラファエロは幼くして母の死を経験している。瑞々しさを保ったまま永遠に彼の前から消えてしまった母のイメージを、常に聖母像に抱き続けていたのでは、とも考えたくなってしまう。

 ラファエロの師匠であったペルジーノの作品もこの美術館にある。

 彼の代表作の1つ「袋の聖母」。

 聖母の柔らかい慈愛を思わせる横顔は、ラファエロにも引き継がれていったことを思わせる。

 ラファエロの聖母像の多くはフィレンツェ滞在中に着手されており、25歳前後という若々しい感性の中で、聖母の画家としての画風を確立していったということのようだ。

 
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