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新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 北中部イタリア編⑦ トリエステの夜 季節風の前兆にコートが翻った

2025-04-05 | 心ふるえる風景 北中部イタリア編

 夕刻レストランを探して街を歩くうち 大運河に突き当たった

 周辺はハプスブルク帝国女王マリア・テレジアの都市計画で整備された

 新古典主義の 堂々とした建築が華麗に並んでいる

 

 通りを1つ裏に入って よさげな店を見つけた

 注文したのはエビのフリット 海辺の街だけあってエビはプリプリで最高

 白ワインもすっきりとした味で 大満足だった

 店を出るともう街はすっかり夜の装い 8時を過ぎたばかりなのに街を歩く人は少ない

 風が出てきた 急に勢いを増してボタンをはずしていたコートが引きずられるよう

 気の早いクリスマスイルミネーションがバタバタと揺れ 急速な気温の低下を感じる

 そういえば須賀敦子のエッセイに トリエステの季節風「ボーラ」のことが書いてあったっけ

 大運河のさざ波が一層激しさを加え 係留してあるボートを左右に揺らし始めた

 突き当りにあるサンジョヴァンニ教会の姿さえ 霞みがちに見えて来始めた

 赤信号で一緒になった老紳士に 声をかけてみた

 

 「これが ボーラという風でしょうか?」

 老紳士はニヤリと笑って答えた

 「ボーラはねこんなもんじゃないよ 本当のボーラならあなたのように細い人はすぐ飛ばされちゃうよ」

 別れ際の彼のしわがれ声が 風に乗って闇に舞った

 

 

 

 



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