「やあ、おふたりさん、お待ちしてました。これから司法解剖始めますが、今日は特別にハワイから日系3世のドクターHIROMI WATANABE氏にも参加してもらいます。なにしろ奇妙な死体なのでFBIも関心を寄せていますので」。ドクターハッチーがワタナベ医師をふたりに紹介しつつ、オスカル刑事&チビデカを同じようにワタナベ医師に紹介する。「わしは現場で一度は検証したし、折角だからドクター渡辺、執刀をお任せします」「ハーイ、判りました、私が切ります、見ます、確かめます」
前もって検視台に移動された死体を全員で取り囲み、検視が始まる。
「まずは外見の確認から行いましょう。男性、年齢50歳~身長160センチ、体重は不明、一見したところ,外傷、出血無し、髪は金髪に脱色され短く刈り込まれている。目は・・・全開し口元に薄ら笑いを浮かべている様に見える。不思議な事に3頭身で極端に頭が大きく、逆に足が短い?、あれ、ドクターハッチーこれってまともな人間?」
そばで立会中のチビデカ、小刻みに肩が揺れ、つられてオスカル刑事もぷぷぷと笑いをこらえるが、ワタナベ医師が「お~前が!!」と言いつつWAHAHA~と笑い出したのをきっかけに、全員基地外の様に3分間笑い転げる。お互いがそれぞれ拳骨パンチで頭を小突きあい、冷静になったところで再会。
「とってもソーリーです。検視で笑うなんて・・・」。少し間をおいてオスカル刑事がタンコブを押さえつつ真面目な表情で、「CSIなんか見ていると、ほとんど気が付かないぐらいの小さな注射痕とかが有って、そこから毒を注入されたとか有りますよね、ルーペ使用して確認してみては?」と提案する。負けず嫌いなワタナベ医師、「私、それ、やろうと思っていました」
死体の前部を一通りチェツクし、それらしき痕は見当たらないので、全員で裏返しにしようとするが、あまりの重さに警備の警察官3人の助っ人を合わせた7人でやっと裏返し完了。
だが、皮膚のどこにも注射痕は発見できず、一同困ってしまってワンワンワワン。
チビデカが閃いた。「頭髪の中は?」「そうだね、盲点でした」ワタナベ医師、素直に意見を聞き入れ後頭部の毛髪を丁寧にルーペで拡大しつつ確認する。
「あれ、ここのホクロ、不自然です、今、モニターに拡大して映します」全員がモニターを食い入るように見ると、真っ黒で,真ん丸なホクロの表面に文字らしきものが読み取れる。それは・・一部かすれてはいるが、
いりゅーじょん
と読み取れる。ワタナベ医師が細い検査用麺棒でホクロの表面をこすると、ホクロが引っ込んだ。
次の瞬間、ホクロを起点に背中に向けて亀裂が始まり、それは尾てい骨あたりで止まる。さらに、亀裂が左右に広がり始める。全員身の危険を感じ後ずさりをする。が、流石にプロである。観察する視線は揺るがない。
亀裂から茶色い毛皮のような盛り上がり、せせりだし、誰もがああ、これは脱皮だねと思い始めたころ、脱皮が終了し、現れたのは
ブースカ
「あ~苦しかった、でも僕、怪獣だから仮死状態とか当たり前に出来るんだよースカ」
事件の真相(告白者・ブースカ)
何日か前、マリリンに呼び出されて、マリリン具合が悪そうだったら、風邪だって。で、マリリンお店を休もうと思ったけど皆は「え、妖怪が風邪ひくか?」とか「ばっかじゃ~ねぇ~」とか絶対に信じてくれないし、笑われるのも辛いから、どうしようか?と相談されて、「僕達、双子の兄弟だし、イリュージョンの着ぐるみだって体型が合うから、で、マリリンが殺されたことにして僕が死体の役をやりますた。ブースカ」
その後、マリリンが警察、関係者、オトモダチ、などからコテンパンに説教されるも、「なんでかひゃ~」と開き直ったので耳を掴まえて宙吊りのお仕置きで一件落着。うぐぐ。
追伸 逃走中のマリリンは自宅で風で療養していた(真実)
長いお付き合いありがとうございました。
ところで、えいこの恋文の相手は誰か?(多分旦那でしょうね)