このようなお手紙をお渡しするのは礼儀知らずな女と思われても仕方ありません。でも、私の思いをどうしても伝えたくて、恥を忍んで、そして、お叱りを覚悟で申し上げます。あなたと初めてお会いした時から、私の恋心に淡い炎が灯ったこと感じておりました。
あなたは特別なお方、私も夫を持つ身、この思いは人の道に外れる禁断の恋だ、初めは諦めようと、自分に強く言い聞かせてまいりました。でも、あなたとお会いする度、感情のコントロールが失われ、あなたの魅力に日々、強く惹かれていく自分の姿を鏡の中に見出しては、ひとり悲しみ、泣き崩れ、このままではどうしょうもない、涙の海で荒波にもまれ、命まで失われてしまいそうなほど辛い日々を過ごしてまいりました。もう、この苦しみから逃れるためには、告白するしか道はありません。一言申し上げます。
愛しています。
お願いです、哀れな女を助けると思って、一夜のお情けを下されますよう。
えいこ
ここ何か月か思い悩んだが、思い切って一気に「恋文」を書き上げた、えいこは心が軽くなり、禁断の恋のドアノブに手を掛けた事の重大さを帰り見ることなく、サッパリとした気持ちで、さあ、後は、あの人の行き付けの店「妖怪の館天井桟敷」でチャンスを伺い、あの人の鞄にそっと手紙を入れるだけね、と、ひとり微笑む。
わはは、このブログをお読みの皆様には「オチ」が判りますよね。手違いで手紙を受け取る事になったのは根が真面目な「常連さんのともさん」
「う~昨日は呑み過ぎたね、記憶が所々途切れているし、途中で寝たかもしれん、まあ、かみさんの明日香(ヒント・今日の次は?)も一緒だったし・・・、あれ、何か殺気を感じるんですけど~」寝ぼけ眼の向こうに見えるは鬼の形相、鬼?「あ、おはよう」妻の明日香であった。
「なにがお早うよ、あなた、私に隠し事あるでしょ?、素直に白状なさい」
と言われてしまうと男は身に覚えのないことでも、もしかしてあれか?、それとも、あの一件かと、脛に傷もつわが身を振り返り、狼狽えてしまう悲しい生き物です。答えに窮していれば、それは認めたも同じ事。この先、3分の2殺しの描写は残酷なので勝手に想像して下さい。ちなみに作者(ハチ公)の友人2名、それぞれ年齢,40台、50台の頃、何を血迷ったか自宅に女性を連れ込み、いざ挿入のタイミングで奥様、帰宅し、ふたりとも「玄関に有った傘」でボコボコにされたという、シンクロナイズドリンチの経験を聞かせてくれました。アホです。
身に覚えのない罪で死刑じゃなかった、蛸殴りの刑を執行された、ともさん、この不幸の原因それは「天井桟敷」に間違いない、リンチの後、勘違いって解ってくれた明日香が本当に、本当に御免なさいって謝ってくれてあれから、夫婦仲はかえって良くなったが、心の痛手は治せても体の傷は癒せはしない、一言妖怪ママのマリリンに意見具申申し上げないと気が済まないとお店を訪ねる。
ピンポーンのチャイムと共に中のカメラが作動して、こちらを映し出す為の白いライトが点灯する。ところがいつもならハーイとか言いながら出迎えてくれるマリリンの気配が無い。何度やっても結果は同じ。胸騒ぎを感じた、ともさんが大家から受け取った合鍵で、入店し、人気のない店内で発見したのは、猟奇的な方法で惨殺されたマリリンの死体であった。
続く。