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青い血の女(怪奇大作戦第7話)

2008-12-06 19:52:33 | 特撮:怪奇大作戦
●「青い血の女」昭和43年10月27日放映
 制作第7話 放映第7話 脚本:若槻文三 監督:鈴木俊継

 『ウルトラセブン』を牽引していた若槻脚本と鈴木演出が『怪奇大作戦』に初登場です。夜の「闇」を絶妙に使った鈴木監督の演出は、子どもならではのアニミズムによって「フランス人形が襲ってくる」というシチュエーションが増幅され、身近な恐怖を感じさせてくれました。

 スケさんの旧友・鬼島として、山中紘さんが出演されています。山中さんは『ウルトラマン』第5話「ミロガンダの秘密」ではグリーンモンスの最初の被害者、『ウルトラセブン』第7話「宇宙囚人303」ではステーションV3のミズノ隊員として出演されています。
 「殺人人形」が鬼島と間違われてスケさんを襲いますが、山中さんと勝呂さんって顔立ちの雰囲気が似ています。私も間違えそう(^^ゞ
 鬼島の父役は浜村純さん。『悪魔くん』第1話に登場するファウスト博士や、大映映画『妖怪百物語』でお見かけします。

 「門のところでお父さんを見た」というスケさんに対して、電話で父親が田園調布の家にいることを確認する鬼島。シルエットの「アレ」がベッドから起き上がり、電話に近付く後姿が不気味です。「受話器を持ち上げる手」のシーンが無いことで、「アレ」の造形物のチープさや、子役の生身の手を見せられることなく、想像力が刺激されます。都合によって「見せられない」ということもあるのでしょうが、「見せない」ことで不気味さを増幅させてくれます

 フランス人形は、昔はけっこうあちらこちらのお宅にありました。日本人形ほどではありませんが、人形というのはどこか不気味さが感じられます。従姉の家にお泊りする時なんて、こういう人形があるとなかなか眠れないものです。「眠っている間に動き出すんじゃないか」とか、「さっきからずっとこっちを見ている」とか、妄想がどんどん膨らみました。そんな「人形」をモチーフにすることで、怖さもひとしお‥‥のハズなんですが、操演で歩き回ったりするのを実際に見せられると、ちょっと興醒めです^^; そして表情が変わって襲ってくるというのは、私には却って怖く感じられませんでした。人形は「無表情だから怖い」のだと思うのですが、それって私だけでしょうか‥‥(^^ゞ 同じようなことが、似たモチーフである映画『チャイルド・プレイ』でも感じられました。

 このエピソードは、この「殺人人形」と「アレ」の存在によって有名であり、『怪奇大作戦』というとこのエピソードを思い浮かべる人が多いそうですが、私にはそれほどのものには感じられません。
しかし、「核家族化と独居老人の孤独」というテーマは、非常に鋭い視点だと思います。その意味では、このエピソードの「時代の鋭い先取性」には感心します。そして「可愛さ余って憎さ百倍」を「人形による殺人」に絡めた若槻文三氏の脚本は、老人の歪んだ愛情を描出した力作だと思います。


 本エピソードで特殊技術を担当された高野宏一氏が、去る11月30日にご逝去されたそうです。謹んで故人のご冥福をお祈りします。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
怖いEPでした (こーじ)
2008-12-07 00:20:52
 人形が殺意を抱くと顔が変わるという演出が
不気味でした。 
 しかも しつこかったですからね。
 リアルでは見てなかったけど、リアルの頃は幼稚園だったのでトラウマになりそうな内容ですよね。

 若槻ー鈴木コンビは超兵器R1号が代表的ですが、この作品も怪奇大作戦を代表するEPでした。
 若槻作品では冷凍人間が登場する氷の死刑台もありますね。
 これらの作品を見ると怪奇の世界を上手く取り込めた若槻氏となじめなかった金城氏の違いが出ている感じがします。
 
 浜村さんは円谷作品ではコミカル系のイメージが強かったけど、この鬼島老人役は凄みがありましたね。
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怖い!甥や姪に見せたら (tanbada)
2008-12-07 09:31:27
10日ぐらい泣きあかしそうです

「アレ」の最後の能書き・独り言をアテた声優さんって

誰なんでしょ??

日曜の昼間っから鳥肌立ってきました。

恐怖劇場アンバランスより数段「恐怖」ですこれ

実物を見てない 牧さんが 最後に回顧するのが余計に不気味です


しかし 殺害された二人の親族には 警察やSRIはどう説明したんでしょ??

逆上されますよ確実に
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Unknown (自由人大佐)
2008-12-07 13:02:24
 こーじさん、tanbadaさん、お2人とも評価が高いですネ。テーマやモチーフの着眼点に比べると、映像的にはあまり成功していないと私は感じていて、世間での評価が理解できないんです‥‥。

>こーじさん

 私は逆に、「表情が変わる人形」に幻滅してしまって‥‥。電波で操作されている以上、人形に感情があるとは思えず、では何のために表情が変わるのか‥‥。それに、普通は疑似科学に疑問を持たないのですが、なぜかこの『青い血の女」では、「表情が変わる」というのはどういうメカニズムなのか考えてしまうんです‥‥。それによって作品世界に今ひとつ入り込めない‥‥。


>tanbadaさん

 「アレ」の声は、大人の女性が子どもっぽい声を出していますよネ。どなたなんでしょう。
返信する
すべては「アレ」の謎へ (オタクイーン)
2008-12-08 23:18:00
大佐さんのおっしゃる「人形に表情が宿る事への違和感」は、私も感じます。
研究書によるとあの殺人人形、台本上では「不気味なほど表情豊か」と表現されていたようです。
おそらく人形についても、今ならモーフィングやCGIの技術でリアルに表情が表現できるのかもしれませんが、当時の技術ではあれが限界だったのでしょう。
もし人間のように、絶えず表情を変えながら襲ってくる人形が表現できたら、また違ったテイストとなったのかもしれませんね。
まあそれでも、確かにそのメカニズムには違和感がありますし、私も「無表情」に不気味さを覚える派ですが

私がこのエピソードで不思議に思うのは、鬼島老人と「アレ」の関係についてです。
殺人人形を作った鬼島老人本人は、勝手に息子を狙う「アレ」を止めようとしているわけですよね。「もうやめよう」「私だってあいつが憎い。しかし」と。
「アレ」は、鬼島老人の表面上の意思に背いた行動をとっているわけです。

息子への怒りが、殺人人形を作った動機であったかもしれませんが、老人が「アレ」を止めている所から考えれば、そもそも老人は、息子に当初抱いた殺意を封印したという事になります。

鬼島老人が抱いた息子への殺意を「アレ」が代行しているという事なのでしょうが、それを望まない老人がなぜ殺人人形のコントロール装置を「アレ」の手の届く所に置いているのでしょうか。
「アレ」が勝手に操作しているのなら、気づいた老人が取り上げればいいわけですから。
「アレ」の特殊能力で人形が動く、とかの設定ならまだ納得もできますが、それでは「怪奇大作戦」になりませんものね

鬼島老人本人が殺人人形を操る描写が無い為、そのあたりがちょっと理解しにくい構造なのかもしれません。

その謎をさらに深めるのがクライマックスの「アレ」のセリフ、「老人を捨てた老人の子供たちを殺さなきゃ」です。
で、自我に目覚めた「アレ」は「自分も殺して」しまう。
では、それまで息子を狙っていた「アレ」は、何をきっかけに自我に目覚めたのでしょうか?

「アレ」は『禁断の惑星』のイドの怪物のように、鬼島老人の深層心理に潜む息子への殺意を具現化した存在ではあったでしょうが、あちらこちらでドラマの整合性がやや弱い。惜しいところです。
そのあたりの詰めがもうちょっとしっかりしていれば、それなりの評価も得られたと思うのですが・・・

まー私は頭が悪いゆえ、そんな細かい所にひっかかってしまうのでした
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引っかかりますよネ (自由人大佐)
2008-12-08 23:52:59
 私もあちらこちらに引っかかってしまい、なかなか作品世界に没頭できません。
 このあとに控えている「散歩する首」も、ドラマの構造上、いくつか整合性、というか筋があちらこちらに飛んでしまう印象があります。しかし、終始一貫して重苦しい雰囲気が漂い、「怖さ」という点では充分に楽しめるエピソードです。(「散歩する首」についてはまた後日。)
 こちらの「青い血の女」もそういう「怖さ」を楽しめるかというと、私には「怖い形相をした殺人人形」が「可愛く」見えてしまうのです‥‥。

 鬼島老人が「息子殺し」を「もうやめよう」というシーンに、私も「コントロール装置か殺人人形を壊してしまえばいいのに」と思いました。でも、老人はそれをしない。スケさんが巻き込まれ、無関係な人々が殺されることへの罪悪感から、「殺人計画の一時中止」という程度の「やめよう」というセリフなのかもしれません。そしてほとぼりが冷めた頃、再び計画を実行するためには、装置も人形も壊さずに保管しようとしている、と解釈しました。息子への憎悪はそんなに簡単には消えないと‥‥。

 「アレ」がどうやって自我を持ったのかは、永遠の謎ですネ。そもそも、エンディングで牧さんが言ったように、「『アレ』は何だったんだろう‥‥」というのがSRIの捜査の限界であり、劇中世界でも答えが見つかっていませんし。
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何度もすいません。 (ウルトラファンレオ)
2011-08-15 14:13:52
「アレ:の声は栗葉子さんです。殺人人形のアップ(浜村純さん演じる鬼島竹彦に襲いかかる場面)と、「アレ」の『殺さなきゃ…、殺さなきゃ…」のアップが不気味でした。

ノムがラストで、『世の中が崩れると皆アレになる』というのが切ない気がしました。

三沢の手の甲の傷から出た血が床に垂れて『青い血の女』とタイトルに行くのがうまいと思いました。

人形に殺される男性と女性は、鈴木治夫さんと、夏海千佳子さんです。
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栗葉子さん (自由人大佐)
2011-08-16 02:06:19
 あの『ど根性ガエル』の京子ちゃんの? あぁ、なるほど、言われてみればそうですネ。
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Unknown (ウルトラファンレオ)
2011-11-12 17:43:01
私にとっての、こんなに悲しい話は「死神の子守唄」、「霧の童話」、「氷の死刑台」、「オヤスミナサイ」、「24年目の復讐」、「死者がささやく」、「美女と花粉」、「京都買います」くらいです。
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私のベストは‥‥ (自由人大佐)
2011-11-16 20:41:48
 「怖い」という観点なら、初期制作の「人喰い蛾」「恐怖の電話」「白い顔」「光る通り魔」や「呪いの壺」「かまいたち」あたりでしょうか。
しかし、もっとも衝撃的で印象深いのは「霧の童話」です。ほのぼのとした田園風景と、あのラスト‥‥。救いがありません。悲しい話です。
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Unknown (ウルトラファンレオ(兼アバレファン))
2012-08-13 18:31:19
また私にとっての悲しい話が増えました。「壁ぬけ男」「白い顔」「吸血地獄」「散歩する首」「死を呼ぶ電波」です。
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