横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

吾妻山の噴火警戒レベル引き上げについて

2014年12月12日 | 火山情報
12月12日、気象庁は吾妻山(福島・山形県境、福島市~猪苗代町~米沢市)の噴火警戒レベルを、「1(平常)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げました。

主な理由は、34分間というやや長い継続時間の火山性微動が観測されたこと、および傾斜計が山体隆起を一時示唆したことのようです。

それでは、最近の吾妻山の火山活動はどのような推移を辿ってきているのか、少し詳細にみてみましょう(以下の表はいずれも気象庁発表の解説資料より抜粋)。なお、吾妻山は、1977年の小規模な水蒸気噴火以来、噴火は起こしていません。

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まず、火山性地震の月別回数の推移を以下に示します。
確かに、ここ数ヶ月間で火山性地震の回数がやや増加しているものと思われます。ただし、火山性地震はこれまでに継続的に発生しており、今月に入って急に発生しだした等といったわけではないことも分かります。特に、2001年や2004年には、むしろ現在よりも活発な活動がうかがえます。この間、吾妻山は噴火をしていません。







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次に、火山性地震の震源移動を以下に示します。
こちらのほうも、特段、震源が浅くなってきている傾向を示しているわけではないようです。




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つづいて、今回の噴火警報レベル引き上げの直接的な理由となった火山性微動の発生履歴をみてみます。



こちらも、これまでの14年ほどの間、火山性微動は断続的に観測されてきたことがわかります。特に2011年には、今回観測された34分(=2040秒)よりも長い継続時間の微動もありました。繰り返しますが、これら火山性微動の発生後も、吾妻山は噴火していないわけです。


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以上をまとめますと、吾妻火山はこれまでも、現在の状況に匹敵するほどの火山活動を、非常に継続的にしてきたことがわかります。そして、その間、吾妻山は噴火をしていません。

このように考えますと、ことさらに今、噴火が差し迫ってきたという状況には見えない感があります。9月に御嶽山が噴火していなければ、気象庁が噴火警戒レベルを引き上げるような判断をしなかったかも知れません。また、磐梯吾妻スカイラインが11月から既に冬季閉鎖されており、観光への影響が比較的小さいという考えも働いたかも知れません。

もちろん、吾妻山の火山活動は数年来活発ですので、噴火が起こってもおかしくないことも、また間違いありません。念のため、警戒レベルを引き上げたという状況でしょう。

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吾妻山では、近年の火山活動は一切経山付近、特に大穴火口から、3kmほど南までの範囲に限られています。



噴火が発生するとすると、特にこの領域が警戒域となります。

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