横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

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大涌谷の噴気孔(火口)について

2015年07月02日 | 火山情報

気象庁は、6月29日から30日にかけて、大涌谷でごく小規模な噴火があったとみられると発表しました。これまでなかった新しい噴気孔が開いたことが、6月29日に確認されています。

大涌谷は非常に人気の高い観光地であり、訪れた経験があって谷の地理に明るい方も多いのではないでしょうか。そこで、噴気活動がみられているのは具体的にどのあたりなのか、気象庁の発表や報道写真をもとに、以下に示してみます。

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大涌谷の地図を、以下に示します。図の下側が山で、図の上方向に向かって谷が流れ下っています。


 (※国土地理院の火山基本図(陰影段彩)より作成)

従来より噴気活動が多く、噴気孔や蒸気井が多いのは、上流側の①と下流側の②の、2つの領域です。①は駐車場に近いほうであり、②はやや下流側に離れたロープウェイの真下です。

今回(2015年5月以降)噴気活動が大きいのは、駐車場に近いほうである、①の領域です。特に、図中で赤丸で示した位置にある、「39号蒸気井」が、5月の活動活発化当初から非常に大きな蒸気を出しており、最も危険と言われてきました(たとえばこの報道画像)。

いちばん深い谷が左にカーブする外側(右岸)に、この39号蒸気井があります。大涌谷では主力の温泉造成施設のひとつです。6月29日に確認された「新しい噴気孔」は、この39号蒸気井からは、数十メートルほどでしょうか、南東の山側にずれた位置(図中の赤い十字のあたり)のようです。

※7月3日後記:7月2日に「さらに3つの新しい噴気孔」が確認されましたが、上記「新しい噴気孔」から北西に100mほどの場所とのことですので、はやり39号蒸気井のごく周辺ということになります。また、7月3日に報道された「火山泥流」は、本図において水色で描かれた谷(人工的に護岸されている)を流れ下ったもののようです。

※7月8日後記:気象庁は7月8日、上記の新しい噴気孔について、「今後は火口と呼称する」と発表しました。それに伴い、記事のタイトルを「噴気孔(火口)について」と改めました。


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以上の図を、今度は航空写真で示しますと、以下のようになります。陰影の見やすさの観点から、南北を逆転させてあります。


 (※国土地理院地図より作成)

中央の赤丸が上述した39号蒸気井で、黒い十字が新噴気孔の位置となります。

(※以上は報道画像等から当サイトで作成したものであり、気象庁等の発表と場所がややずれている場合があります)

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なお、注意したいのは、駐車場の西側の斜面(駐車場のすぐ西に木の生えていない箇所がみえる)や、玉子を運ぶリフトの往来先として有名な黒玉子茶屋付近、さらには航空写真の左側に噴気がみえる早雲地獄と呼ばれる谷部などおいても、従来から噴気活動が活発にみられているということです。御嶽山で地獄谷から尾根を越えた位置に大きな噴火口が開いたように、これらのような場所でも火孔が開いても不思議ではありません。

ただ、39号蒸気井や「新しい噴気孔」の位置は、干渉SARなどで観測されている地殻変動(隆起)の場所と、ほぼ整合しています(※特に強い隆起がみられていた領域の南端あたりのようです)。あくまで、噴火活動が起こる可能性が最も高いのは、この位置周辺であると言えるでしょう。
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過去の超巨大地震は必ず噴火を誘発した、というのは本当か?

2015年05月01日 | 火山情報
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マグニチュード9クラスの超巨大地震の後には、これまで例外なく、近隣の火山が噴火している」などという報道を、良く見かけます(たとえばこちらのニュース記事「大地震が噴火誘発?数年内に連動か」)。そして、2011年3月に巨大地震を経験した日本でも、近々大きな噴火が起きるだろう、という論調も目立ちます。

しかしながら、「巨大地震の後に火山が噴火した」というのが正しいとしても、「超巨大地震があったから近隣の火山が噴火した」というわけでは、必ずしもありません。とにかく火山というものは、世界中のあちこちで常に噴火していますので、たまたま超巨大地震の後に噴火が起こっても、何も不思議ではないわけです。

実際、少し調べてみますと、超巨大地震の後に噴火が誘発されたと思われるケースもありますが、そうとも言えないケースもあるようです。

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近代のM9クラスの超巨大地震といえば、以下の5つがあります(東北地方太平洋沖地震を除く)。

・カムチャッカ地震 Mw9.0 (1952年)
・アリューシャン地震 Mw9.1 (1957年)
・チリ地震 Mw9.5 (1960年)
・アラスカ地震 Mw9.2 (1964年)
・スマトラ島沖地震 Mw9.0 (2004年)

では、それぞれについて、その直後の近隣の火山活動をみてみます。


1.カムチャッカ地震(1952年)
 →カルピンスキ火山群が翌日に噴火。タオリュシルカルデラが1週間後に噴火。ベズイミアニ山が3年後に噴火。


カルピンスキ火山群は、このときの噴火しか噴火記録がないようです。また、地震から3年後のベズイミアニ山の噴火は、比較的大規模なものであったようです。ですので、このケースは、たしかに巨大地震がある程度の噴火活動を誘発したと考えられそうです。

ですが、カムチャッカ半島には、カムチャッカ火山群と呼ばれる活発な火山が密集しています。なかには、クリュチェフスカヤ山のように、日本でいえば桜島のようにほとんどいつも噴火活動をしている火山もあります。シベルチ山という火山は、1854年、1956年、2013年と大規模な噴火を繰り返しています。近年最大規模の噴火は、トルバチク山という別の火山によるものであり、1975年から1976年にかけて起きたものです。前述のベズイミアニ山も、2010年に再び噴火を起こしています。

こうしてみますと、カルピンスキ火山群などの噴火については巨大地震に誘発されたと言えそうだとしても、カムチャッカ火山群において、巨大地震直後に火山活動が特別に活発になったようには見えないという点にも、留意が必要と思われます。


2.アリューシャン地震(1957年)
 →ブセビドフ山が4日後に噴火。


よく調べてみますと、ブセビドフ山のこの1957年の噴火は「questionable eruption」、すなわち噴火したか否かが疑わしい活動だそうです。噴火があったのだとしても、翌日には完全に活動が収まっていたようです。ですので少なくとも、この巨大地震が大きな火山活動を誘発したとは言えないようです。

なお、大きな地震のあとに火山で噴火があったと「誤認」するケースは、これまで他にもあるのだそうです。地震による振動や鳴動、土砂崩れなどが火口周辺で起き、噴火と誤認することがあるようです。


3.チリ地震(1960年)
 →コルドンカウジェ山が2日後に噴火。


あくまで主観的な印象ですが、この噴火活動は地震と関係がありそうに思えます。コルドンカウジェ山が噴火を開始したのは、地震発生からわずか38時間後です。VEIが3と、比較的大きな噴火でもありました。また、この噴火以来、コルドンカウジェ山は2011年まで噴火していません。たしかにチリにも多くの火山がありますが、時間空間的にみても相関関係がありそうに思えます。


4.アラスカ地震(1964年)
 →トライデント山が2ヶ月後に噴火、リダウド山が2年後に噴火。


トライデント山というのは、実は非常に噴火が多い火山で、1913年、1949年、1950年、1953年、1964年、1966年~1968年、1974年~1975年、1983年…と噴火しています(このうち規模が大きかったのは1953年)。リダウド山も、1881年、1902年、1922年、1966年、1989年~1990年、2009年と大きな噴火を繰り返しています。

他にもアラスカには幾つか火山がありますから、このうち地震の2ヶ月後や2年後に噴火があったとしても、ほとんど偶然と言って良いレベルだと思われます。すなわち、このアラスカ地震の場合は、直後に噴火を誘発したとは結論できないと言えそうです。


5.スマトラ島沖地震(2004年12月)
 →タラン山が4ヶ月後に噴火、メラピ山が1年3ヶ月後に噴火、ケルート山が3年後に噴火。


そもそも、説明するまでもありませんが、インドネシアは日本と同じで、大地震の有無にかかわらず頻繁に大きな噴火が起きている国です。タラン山を含むスマトラ島のバリサーン山脈では、ここ15年ほどだけ見ても、

ペイットセイグ山(1998年4月)、カバ山(2000年8月)、ペイットセイグ山(2000年12月)、マラピ山(2001年)、タラン山(2001年)、クリンチ山(2001~2002年)、クリンチ山(2004年8月)、マラピ山(2004年8月)、タラン山(2005年4月)、クリンチ山(2007年)、クリンチ山(2009年6月)、シナブン山(2010年8月)、マラピ山(2011年)、クリンチ山(2013年6月)、シナブン山(2013年9月~2014年2月)

…と非常に多くの噴火が起きており、このうちのひとつがスマトラ島沖地震から4ヶ月後に起きたのだとしても、単に偶然である可能性が高いということが言えると思います。つまり、スマトラ島沖地震の場合も、噴火が地震によって誘発されたとは言えないと思われます。

メラピ山やケルート山にいたっては、そもそも震源のスマトラ島沖から離れたジャワ島の、しかも東部の火山です。しかも、ケルート山が大規模の噴火を起こしたのは、1919年、1951年、1966年、1990年、2014年と、地震の有無と関係なく何度もあります。少なくともジャワ島のメラピ山とケルート山の噴火に関してはコジツケと言って良いのではないかと思います。


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…以上のとおり、「これまでM9クラスの超巨大地震後には、必ず火山噴火が誘発されてきた」という説の真偽から、少々疑ってみたほうが良いと思われます。

特に火山列島日本の場合、近年だけをみても、大きな地震の発生とほとんど相関なく、多くの火山が噴火してきました。桜島は噴火し続けています。記憶に新しいところでは、大島三原山や三宅島などが噴火し、雲仙普賢岳も噴火し、浅間山も噴火し、有珠山の大噴火をはじめ北海道の各火山も噴火してきました。

震災からもう4年が経過していますので、ここで仮に今どこかで(たとえば東北の蔵王山や吾妻山で)大きな噴火が起きても、「巨大地震に誘発されたのだ!」と結論するのは、短絡的にすぎると思います。まずは「疑似相関かも知れない」と疑うことが真っ当な科学であり、地震予知詐欺に引っかからない秘訣にもなります。そもそも地震や火山噴火は、「地震があった、じゃあ噴火が誘発されるだろう」といったレベルの、単純なものではないとも思えるのです。


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十勝岳の噴火警戒レベル引き上げについて

2014年12月18日 | 火山情報
気象庁は12月16日、吾妻山に続いて十勝岳の噴火警戒レベルも、「1(平常)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げました。

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レベル引き上げの主な理由は、最も新しい62-2火口の周辺で山体膨張が示唆されており、7月頃から加速傾向にあること、及び、膨張が示唆される深さが浅くなってきていると考えられることです。


(札幌管区気象台の火山活動解説資料より抜粋)


62-2火口に近い前十勝の観測点でのみ、局所的に大きな西向きの移動がみられ、他の観測点では移動が見られないことから、山体膨張の駆動要因(マグマ)がごく浅くなっているのではないか、という判断のようです。


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また、定常的に観測されている常時微動の振幅が一時的に大きくなったことも、理由のひとつとされています。


(同上。2013年1月から現在までの推移を示す)


ただし、振幅の大きさ自体は、1.0μm/sに満たないレベルであり、それほど大きいものではありません。

火山性地震については、低レベルで推移しており、活動が特段大きくなっている兆候はないようです。


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前十勝観測点の(望岳台を固定点とした)西向きの移動は2006年頃から続いているので、特に最近になって始まったものではありません。率直に言って、今レベルを上げるなら、もう少し前から上げておくべきのようにも思えます。吾妻山のレベル引き上げとほぼ同時のタイミングであることからみても、御嶽山のレベルを噴火前に上げずに犠牲者を出してしまったことが、一連のレベル引き上げの判断に影響しているように思えます。

ただ、前十勝観測点の2006年からの累積移動量はすでに30センチに迫るほどですので、噴火がいつ起こってもおかしくないことは、また事実です。

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まったくの余談で恐縮ですが、私は子供のころ旭川市に住んでおり、登山が好きな家だったこともあって、十勝岳にも数えきれないほど登っています。このあたりの学校では、遠足や林間学校(登山学校)でも、十勝岳によく登っていました。個人的に、火山や地震といった地球物理学への興味を与えてくれた山だと思っています。早川由紀夫さんなどは、子供たちを火山に連れて行くことを推奨しておられるようですが、このご意見には本当に賛成します。ただ、火山ですから、危険は伴うのですが…。

三浦綾子さんの小説『泥流地帯』『続・泥流地帯』は、1923年の十勝岳の大正噴火による泥流(死者・行方不明者144人)を描いたものです。噴火は、上図の大正火口で起きました。やや大きな水蒸気爆発によって、岩屑なだれと融雪によって泥流が発生したものです。『泥流地帯』は、突然襲う泥流の怖さ、巻き込まれた住民たちの悲しい運命、そして何より復興への努力が(『続・泥流地帯』)描かれており、火山被害を語るには読んでおくべき、素晴らしい小説だと思います。未読の方には、おすすめしたいです。これからしばらくは積雪がありますので、十勝岳に限らず、火山活動による融雪に伴う泥流にも警戒が必要です。


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吾妻山の噴火警戒レベル引き上げについて

2014年12月12日 | 火山情報
12月12日、気象庁は吾妻山(福島・山形県境、福島市~猪苗代町~米沢市)の噴火警戒レベルを、「1(平常)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げました。

主な理由は、34分間というやや長い継続時間の火山性微動が観測されたこと、および傾斜計が山体隆起を一時示唆したことのようです。

それでは、最近の吾妻山の火山活動はどのような推移を辿ってきているのか、少し詳細にみてみましょう(以下の表はいずれも気象庁発表の解説資料より抜粋)。なお、吾妻山は、1977年の小規模な水蒸気噴火以来、噴火は起こしていません。

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まず、火山性地震の月別回数の推移を以下に示します。
確かに、ここ数ヶ月間で火山性地震の回数がやや増加しているものと思われます。ただし、火山性地震はこれまでに継続的に発生しており、今月に入って急に発生しだした等といったわけではないことも分かります。特に、2001年や2004年には、むしろ現在よりも活発な活動がうかがえます。この間、吾妻山は噴火をしていません。







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次に、火山性地震の震源移動を以下に示します。
こちらのほうも、特段、震源が浅くなってきている傾向を示しているわけではないようです。




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つづいて、今回の噴火警報レベル引き上げの直接的な理由となった火山性微動の発生履歴をみてみます。



こちらも、これまでの14年ほどの間、火山性微動は断続的に観測されてきたことがわかります。特に2011年には、今回観測された34分(=2040秒)よりも長い継続時間の微動もありました。繰り返しますが、これら火山性微動の発生後も、吾妻山は噴火していないわけです。


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以上をまとめますと、吾妻火山はこれまでも、現在の状況に匹敵するほどの火山活動を、非常に継続的にしてきたことがわかります。そして、その間、吾妻山は噴火をしていません。

このように考えますと、ことさらに今、噴火が差し迫ってきたという状況には見えない感があります。9月に御嶽山が噴火していなければ、気象庁が噴火警戒レベルを引き上げるような判断をしなかったかも知れません。また、磐梯吾妻スカイラインが11月から既に冬季閉鎖されており、観光への影響が比較的小さいという考えも働いたかも知れません。

もちろん、吾妻山の火山活動は数年来活発ですので、噴火が起こってもおかしくないことも、また間違いありません。念のため、警戒レベルを引き上げたという状況でしょう。

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吾妻山では、近年の火山活動は一切経山付近、特に大穴火口から、3kmほど南までの範囲に限られています。



噴火が発生するとすると、特にこの領域が警戒域となります。

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御嶽山の噴火と、雌阿寒岳の噴火(2006年)と、の前兆を比較する

2014年10月07日 | 火山情報
10月4日に放送された『NHKスペシャル』において、北海道大学名誉教授の岡田弘氏が、今回の御嶽山の噴火前にみられた兆候が、2006年の雌阿寒岳噴火のときと似ている(だから予知できたはずである)と指摘されました。ご覧になった方も多いかと思います。

ですが、具体的に何がどれだけ似ていたか、については全く触れられませんでした。そこで、ここで少し詳細に比較してみます。

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まず、今回の御嶽山噴火において、特徴的だった前兆は、1~2日間にわたる火山性地震の突発的増加と、その後の減少です。噴火の2週間前ほどに火山性地震が突発的に現れ、噴火当日までに減少したわけです。(以下の資料はいずれも気象庁発表の火山活動発表資料からの引用)




これに対し、2006年の雌阿寒岳噴火の前にも、火山性地震が1~2日間にわたって突発的に現れては減少する、という傾向がみられました(下図)。確かに、火山性地震の時系列傾向は似ていると言えます。




さらに、いずれのケースでも、増加した火山性地震の震源が、火口直下の深さ約1km(海面下深さ)に集中していたことも共通しています。これに加えて、山体膨張などといった地殻変動が噴火前にほぼ見られなかったことも、類似しています。そして、結果として現れた噴火の結果が小規模な水蒸気爆発であったことも、共通しています。

…これだけ見ますと、雌阿寒岳噴火と同じ傾向がみられたのだから噴火は予知できた、と言ってしまいそうになります。

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ですが、似ていない点も、実は多々あるのです。

まず、観測された火山性地震の数自体が、全く違うことがわかります。今回の御嶽山噴火の前には、最大でも1日で85回(9月11日)です。これに対し、雌阿寒岳の噴火前に観測された火山性地震の数は、2006年2月18日で516回、翌19日で351回です。さらに、3月7日には、鶴居村で震度1を観測するほどの大きな地震もありました。火山性地震の活動レベル自体が、大きく異なると言えそうです。

(※ただし、御嶽山については地震計の故障などで万全の体制ではなかったことも考慮すべきではあるでしょう)

また、火山性地震の突発的増加は、御嶽山噴火の前には1回だけでしたが、雌阿寒岳の場合には2006年2月18日ころと同3月11日ころの、2回もあったわけです。同様な傾向とはいえ、1回と2回とでは大違いと言えましょう。しかも、2回目の増加でも、火山性地震の数が非常に多い(1回目と同等)ことが分かります。

さらに、2006年の雌阿寒岳噴火(3月21日)の前には、火山性微動も観測されていたことがわかります(下表)。火山性微動は、岩石の破壊によって起こる地震とは異なり、マグマ等の流体移動に直接関連して起こるものと思われています(※ただし火山性微動の要因は非常に多岐にわたると考えられていますので、一概には言えません)。



雌阿寒岳では、2006年2月18日における火山性地震の観測と同時に、ある程度の規模の火山性微動も現れ、噴火の前に少なくとも6回観測されていたわけです。噴火を疑うのに十分なデータと言えます。このように、火山性地震の活動レベルや、火山性微動の兆候において、御嶽山の場合と雌阿寒岳の場合とでは、似ているようで全く違うことがわかります。

そして何より、これだけのレベルの火山性地震や火山性微動を見せながら、2006年の雌阿寒岳の噴火は、ごく小規模の水蒸気爆発でしかなく、総噴出量は約9000トンに過ぎないものでした。これに対し、今回の御嶽山の噴火においては、降灰量が100万トン前後と推定されています。

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以上のとおり、今回の御嶽山でみられた兆候と、雌阿寒岳でみられた兆候は、よくみてみると全く違うことが分かります。何より、今回の御嶽山の場合には、現れた活動のレベルが、噴火を予期させるほどのレベルとまでは言えないことが分かると思います。

そしてもちろん、このような火山性地震の推移がみられれば噴火が起こる、という相関関係が過去に蓄積して得られているわけでもありません。むしろ、火山性地震が増えていって(特に地下1kmより浅いB型火山性地震が増えていって)噴火にいたるケースのほうが、これまで多くみられているわけです。そして一方で、火山性地震があっても、噴火がないケースが多々あるわけで、それは近年の御嶽山についても雌阿寒岳についても言えることです。

噴火が起こったあとで、「予測できた」と言うのは簡単です。ですが、少なくとも今回の御嶽山については、「噴火は予測できたはずだ」と軽々しく言うべきではないと考えます。

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