横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

『ブレイン地震予報』は北海道胆振東部地震を予知したのか

2018年10月18日 | 地震予知研究(その他)
 
有料で地震予測をメールで配信する『ブレイン地震予報』というサービスがあります。

地電流、低周波音、地震活動の推移などで地震予測を行っていると主張し、『予知するアンテナ』というサービスにも地震予測を提供しています。つまり、事実上『ブレイン地震予報』と『予知するアンテナ』は、現在同じ地震予測を提供しています。

※なお、『予知するアンテナ』は当初、早川正士・電通大名誉教授による地震予測を有料で提供していましたが、なぜか早川正士氏が途中で『予知するアンテナ』に地震予測を提供するのをやめてしまっています。

ところで、この『ブレイン地震予報』(『予知するアンテナ』)が、9月6日に北海道で発生した胆振東部地震(M6.7)を予測成功していたのではないかと、一部で話題になっているようです(たとえばこちら)。それでは、実際のところどうだったのか、検証してみましょう。

 ■


『ブレイン地震予報』(『予知するアンテナ』)が、9月6日の胆振地方東部地震の発生直前までに発表していた地震予測は、以下のとおりです。


  
  (『予知するアンテナ』サイトより引用、青矢印は当ブログで描き込み)


…確かに、8月17日に「北海道南部で危険度「中」」という予測を発表していた(青矢印)ことがわかります。

しかしながら良くみますと、実はほぼ同じ時期に、中国地方西部や東北地方北部などに対しても、同じ規模の地震を予測しており、北海道南部だけを言い当てたわけではないことが分かります。

また時期についても、1ヶ月に2~4件のペースで、年がら年中「危険度「中」」という地震予測を次々と乱発していることが分かります。そして、そのような乱発にもかかわらず、6月18日に大阪府北部で発生したM6.1の地震(最大震度6弱)については、全く予測できていません

そもそも、彼らの言う「北海道南部」とは、下図に示すように実に広い領域であり、胆振地方東部をピンポイントに予測したわけでも何でもないことも分かります。つまり『ブレイン地震予報』は、このような広い予測円で、常に日本の2~4箇所を覆っているということです。

  
  (10月5日「MAG2ニュース」より引用)

以上のことから、『ブレイン地震予報』に有意な地震予測能力があると言うのは極めて疑わしく、常日頃から連発している地震予測のひとつがたまたま当たっただけ、のように見えます。


 ■

また、『ブレイン地震予報』は、自己検証の結果として「予知成功率80%」と宣伝しています(下図)が、これも極めて疑わしい数字です。


  
  (『ブレイン地震予報』ホームページより引用)


『ブレイン地震予報』がどのように自己検証を行っているかは、こちら(もともとの提供元名である静岡地震防災研究会のブログ)で見ることができます。これを見ますと、危険度「中」(M5以上)として発表した予測に対して、気象庁マグニチュードがM5未満の地震しか起きなかった場合には、MwやMbという計算方法が異なる別のマグニチュードを持ってきて無理やりM5に到達させて、「予知成功!」とカウントしていることがわかります。非常に不自然な自己検証であると言えます。

また、上述のとおり、ひとつひとつの予測領域が極めて広いため、「北海道南部に中規模地震」と発表した予測に対して、浦河沖で地震が起きようが、色丹島で地震が起きようが、「予知成功」とカウントしていることも分かります。要するに、胆振東部地震のような大きな地震が仮に起きず、たとえば色丹島でM5に届かないような小地震しか起きなかったとしても、彼らは「予知成功」と主張していたという事です。

こういう人達が言う「予知成功率80%」という自己検証は、率直に言って何の当てにもならないと思います。


 ■

以上のとおり、『ブレイン地震予報』には有意な地震予測能力は今のところみられず、「地震予測を乱発し、当たったものだけを後から選んで取り上げて宣伝し、自己検証も極めて甘い」という、世の中にはびこっている典型的な地震予測サービスのひとつに過ぎないと思われます。

 

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29 コメント

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ブレイン地震予報の自己検証が甘いのはわかるのですが・・ (伊牟田勝美)
2018-10-25 21:57:14
ブレイン地震予報は、成功率の自己検証が甘いのはよくわかりました.。
でも、肝心な予知ですが、予知できているのか、できていないのか、わかりません。
分かるのは、マグレ当たりかもしれないことくらいです。
問題は、対象地域の面積が広いことですか?
ならば、面積が半分なら、どうでしょうか?
10分の1だったら、どうなのでしょう?

成功率をチェックするなら、基準を明確にすべきだと思います。


まあ、ブレイン地震予報の手法では、永久に地震を予知できないことは分かっているのですが・・・
返信する
はじめまして (伊与原新)
2018-10-28 21:55:02
伊与原新と申します。いつも勉強させていただいております。

先日、講談社ブルーバックスのWEB連載の中で上川さんのご活動を紹介させていただいた折には、拙著『磁極反転の日』のことまでツイートしていただき、ありがとうございました。

その後、宏観現象としての動物の異常行動についてのお考えをツイートされていましたが、それを読んで、自分の理解が浅かったことを認識いたしました。いずれこのことに改めて言及する機会があれば、反映させていきたいと思っております。

ところで先ほど、インドネシア津波に関連して、「地滑りや火山による津波に対して警報を出す方法があるのだろうか」という趣旨のツイートをされているのを拝見しましたが、2016年に出しました『ブルーネス』(文藝春秋)という小説では、まさにそれが可能な津波予測システム(もちろんフィクションですが)を題材にしております。そちらも手にとっていただける機会がありましたら、幸甚です。

突然コメント蘭に失礼いたしました。これからも上川さんのブログやツイッター、楽しみにしております。
返信する
Re:はじめまして (横浜地球物理学研究所/上川瀬名)
2018-10-29 08:37:30
>伊与原新さま

コメント、誠にありがとうございます。恐縮です…。
『ブルーネス』はまだ読んでおりませんでした、すみません。気になっていた作品ですので、早速参考にさせていただきます!
返信する
Unknown (Unknown)
2019-03-14 20:27:26
すいません!ブレインに入っているものですが
北海道の地震は完璧に当てられていますよ!
会員だけにピンポイントで届いた通達が北海道南部で10日以内に巨大地震が起こるとのこと、それだけの配信でしたから‼︎
返信する
いつ巨大地震が起きたって? (下総太郎)
2019-03-18 19:21:55
2019-03-14 20:27:26の「Unknown」さん

いったいいつ巨大地震が起きたって?
まさか先日の地震がまさか巨大地震だっていうのかい。
あれが巨大なら、東日本大震災は何になるんだろうね。

あなたにぜひ教えてほしいね。
東日本大震災の0.03%程度の規模でしかない地震を、巨大地震を完璧に当てたと判断されて理由をね。
返信する
Unknown (Unknown)
2019-03-20 18:59:51
下総太郎さん

自分の研究が未熟だからと私に八つ当たりはやめてもらいませんか?

ブレイン地震予報2018.08.27第211号
現在、大地震(7≦マグニチュード)発生の可能性がある地域は、北海道南部(同沖)、根室半島沖~色丹島・択捉島沖、
マグニチュード7.0±0.5、最大震度5弱~6弱、最大津波波高1mです(予報期間10日間)。

今後、この地震予報に関連する情報につきましては、随時お知らせします。

これが配信されましたが?
返信する
だからどこが巨大地震なんだよ (下総太郎)
2019-03-21 16:33:58
2019-03-20 18:59:51の「Unknown」さん

>自分の研究が未熟だからと私に八つ当たりはやめてもらいませんか?

誰が地震の研究してるんだ? 俺は自分が研究しているなんて、一言も書いたことないぞ(失笑) やってもいないしな。
まともな反論できないからって、妄想こじらせるなよ見苦しい。

>マグニチュード7.0±0.5、最大震度5弱~6弱、最大津波波高1mです(予報期間10日間)。

これを見て予測だ、見事当たったと考えられることが、地震に無知な証拠なんだよね。
身も蓋ももないこと言えば、予測自体、「巨大地震」を予測しているものではないしね。
鵜呑みにしている側が、かってに「巨大地震を当てた」と、脳内変換しているだけのものだしな。

実際の地震はマグニチュード6.7だったよな、7.0と両者のエネルギー量がどれだけ違うか、理解しているかい? マグニチュード6.7は7.0の1/3ぐらいの規模だ。
 7.0±0.5と予測の範囲内だから問題ないか? この想定範囲は6.5から7.5の間ということだ。
マグニチュード1のエネルギー量の差は32倍だ。わかりやすくお金に置き換えてみよう。1万円と32万円の金額的な差だ。
あなたは何か物を買いたいと思った時、「価格は1万円から32万円までの間になります」といわれて、どう思いかい?
俺は売り手がまともな相手とは思わんよ。なんでこんなに変動が大きいんだと疑問に思うね。商品の価値も再考するだろうね。
「よかった、想定内で買える」と考えるのはただの個人の主観、感想にすぎんよ。
震度も地盤によってマグニチュードが小さい地震でも大きく揺れることもあるし、地震予測としての尺度として使用するのは不正確、いくらでもあてずっぼ出来るしね。
なにせ10段階しか 表記がないんだからな。
それと津波も起きていないな。
当たったとされる地震でこのファジーさ。とても科学とはいえんよ。

でだ。俺が尋ねた「東日本大震災の0.03%程度の規模でしかない地震を、巨大地震を完璧に当てたと判断されて理由」は答えてくれないのかい? 北海道の地震のどのへんに、「巨大地震」であったかをね。
配信があったって? 会員だけのピンポイント通知というのは、それ一回だけなんだな? 今まで一度もなかったんだな? もし何度もあったなら、『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』ってやつだ。

あと管理人さんも上で書いているけど、北海道と同時期に起きた地震が当たっていない理由、少しは考えてみたらどうだい。
同じ地震の兆候とやらが観測されているのに、一つしか当たらない。その意味をね。
返信する
Unknown (Unknown)
2019-03-21 23:50:15
いや〜本当に八つ当たりもいいとこだな下ネタさんよww
北海道をピンポイントで当てた以外はまとめて配信されてるんですよ
巨大地震は言い過ぎたわ
大地震かww
東北の震災はブレインが出来る前のことで
俺は去年からブレインに入会し1年たってねえから、そんな8年前の話なんぞ分かっちゃいねーからww
返信する
Unknown (Unknown)
2019-03-22 00:48:03
ちなみに批判してる奴らは勘違いしているようだけど
北海道で起こった地震の詳細に関してはweekly地震予測ではねーからな
weeklyが来た次の日配信だったからな
もうこれ以上言ってもらちあかねーから以上
返信する
採点結果は0.016点でした (伊牟田勝美)
2019-03-22 18:27:25
ブレイン地震予報は、北海道南部から択捉島まで含めていたのですね。
差し渡しは、900kmくらいですね。これは、東京-福岡間に相当します。これくらい広い範囲なら、マグレ当たりもありますね。
この地震予知を採点したところ、0.016点になりました。(1.0以上を実用的な地震予知とするので0.016は話になりません)

本当に地震予知を目指すなら、当たった予知はどうでも良く、外れた予知を検証しなければなりません。
外れた地震予知を検証しなければ、改善は望めません。
ですので、3月20日のUnknown様には、外れた地震予知を公開して頂ければと思います。
返信する

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