横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

「関東大震災の直前に異臭騒ぎがあった記録がある」というのはデマです

2020年10月14日 | 地震予知研究(高橋学・立命館大教授)
 
2020年の6月以降、神奈川県の三浦半島や横浜で異臭の通報が相次いでいます。それを受け、一部では「大地震の前兆ではないか」という声が上がっています。なかでも、立命館大の高橋学特任教授は、異臭は大地震の前兆だと断定し、「内務省がまとめた文書に、関東大震災の直前に、三浦半島の城ヶ島と浦賀で異臭騒ぎがあったと記録されている」といったことを、週刊誌で何度も繰り返しコメントしています。

 地震頻発と異臭騒ぎに関連…“異常事態”の日本列島で何が?(日刊ゲンダイ 2020年9月28日)
 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/279216
 「戦前の内務省の記録によると、1923年の関東大震災の直前、浦賀(横須賀市)や三浦半島南端の城ケ島で異臭がしたといいます」(高橋学教授)

 小泉環境相も関心、神奈川県内での異臭騒ぎの正体は(夕刊フジ 2020年10月6日)
 https://www.zakzak.co.jp/soc/news/201006/dom2010060009-n1.html
 「1923年の関東大震災の記録にも地震の前に三浦半島付近から異臭がしたという記述がある」(高橋学教授)

…しかし、実際にはそのような記録はなく、デマだと思われます。以下に説明します。

 


実は、今回の異臭騒ぎの前から、「関東大震災の発生後(発生前ではない)に、海底からガスが出ているのが観測された」という話は、よく言われていたのです。

内務省社会局が編纂した『大正震災志』という資料の附図に、「大正十二年九月一日大震後相模灘水深変化調査図」というものがあり、城ヶ島や浦賀の付近に「瓦斯噴出」「一時瓦斯噴出ス」と記載があるのです(下図、赤丸参照)。






…ここで注意すべきことは、まずこの資料は、「大震」という資料名からも分かるように、関東大震災が発生したに、地震による地殻変動を調査するために出した測量船による観測であるということです。1923年9月1日の地震発生から翌年の1月中旬までの測量成果であることも、きちんと明記されています。つまり、地震の「前兆」としてガスが噴出していたわけでは全くないということです。

また、この記録には「瓦斯噴出」とあるだけで、「異臭」がしたとは全く記載されていないですし、異臭「騒ぎ」があったなどということもどこにも記載されていないのです。


 ■

高橋学教授は週刊誌で、「内務省の記録によると」と「城ヶ島や浦賀で」異臭騒ぎがあった、と言っていますので、ほぼ間違いなくこの資料のことを言っていると思われるのですが、「地震の直前に異臭騒ぎがあった」と勝手に思い違いをして、よく確かめもせずに各週刊誌に吹聴しているようです。

つまりは、「関東大震災の前に異臭騒ぎがあったという記録がある」という高橋学教授の話は、デマだと思われます。本ブログでも何度も紹介しているとおり、高橋学教授はこれまでも週刊誌などでデタラメな話を繰り返しておりますので、少なくとも高橋学教授が別の何らかの一次資料をきちんと引用して提示しない限りは、「関東大震災の前に異臭騒ぎがあった」という話を信じる理由は何もないと思います。

なお、この高橋学教授は、立命館の文学部の教授で、災害リスクマネージメントがご専門であり、地震学が専門ではまったくないということも、付け加えておきます。


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高橋学・立命館大学教授の巨大地震予測、やはりまたハズレました

2019年05月14日 | 地震予知研究(高橋学・立命館大教授)
 
最近、高橋学・立命館大学教授という方が、「地震や火山の専門家」として週刊誌に取り上げられ、地震予測や噴火予測を次々と披露しています。これまでに、日刊ゲンダイ、週刊ポスト、週刊プレイボーイ、週刊女性、夕刊フジ、IWJ…といった雑誌や媒体が、高橋学教授の地震予測を取り上げ、すぐにでも巨大地震や大噴火が日本で起きるかのような不安感を煽る記事を、繰り返し紹介しています。

この高橋学教授は、さきごろ4月に日刊ゲンダイで、「ゴールデンウィークに南海トラフで巨大地震が起きる」と予測し、世間に恐怖感を煽りました。

  GW10連休が危険と専門家 「令和」は巨大地震で始まるのか(日刊ゲンダイ 2019年4月12日)
  https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/251687
   

   
この地震予測の根拠は、「地震の静穏期が六十数日続くと巨大地震が起きる」という彼独自の理論であり、和歌山や三重の周辺で小さな地震があってから六十数日後がちょうど2019年のゴールデンウィークに当たる、というものでした。

しかしながら、お気づきのとおり、高橋教授が予測した2019年のゴールデンウィークには、和歌山や三重沖で巨大地震は起きませんでした。またもや、予測ハズレです。


 ■

この高橋学・立命館大学教授という方は、これまでも週刊誌や夕刊紙にメールを送りつけて、「もうすぐ大地震が起きる」とか「大噴火が迫っている」といった予測を何度も発表してきましたが、ことごとくハズレています。

予測が外れているだけでなく、明らかに地震や火山について間違った知識を披露しています(※高橋教授のご専門は災害リスクマネジメントで、地震学や火山学ではありません)。この方の地震予測や噴火予測は、全く信用に値しないと言って良いと思います。以下のエントリもご覧ください。


  高橋学・立命館大学教授の地震・噴火予測は信用できるのか(2017年1月)
  http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/b7902d584591d5b4cd47789dac7d9976

  高橋学・立命館大学教授の「福岡で大地震」との予測、やはりハズレました(2017年5月)
  https://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/e8916a1ed0d3420ebcf0c775c4e38a24

 
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高橋学・立命館大教授の火山噴火予測は当たったか?

2017年10月06日 | 地震予知研究(高橋学・立命館大教授)
最近、高橋学・立命館大学教授という方が、「地震や火山の専門家」として週刊誌に取り上げられ、地震予測や噴火予測を次々と披露しています。これまでに、IWJ、日刊ゲンダイ、週刊ポスト、週刊プレイボーイ、週刊女性といった雑誌が、この高橋学教授を取り上げ、すぐにでも巨大地震や大噴火が日本で起きるかのような不安感を煽る予測を、繰り返し紹介しています。

しかしながら、そのほとんど全てが、見事に大ハズレしています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。


 高橋学・立命館大学教授の地震・噴火予測は信用できるのか(2017年01月27日)
 http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/b7902d584591d5b4cd47789dac7d9976

 高橋学・立命館大学教授の「福岡で大地震」との予測、やはりハズレました(2017年05月23日)
 http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/c/6af27bdd0e9dc3badfc1c5716c2a16e1


 ■

ところで、この高橋学教授は、2年前に発売された『週刊女性』2015年10月6日号において、「1~2年のうちに大噴火が起きそうな10火山」を挙げています。今回は、この噴火予測が的中したのかどうか、検証してみましょう。

高橋学教授が「大噴火が起きそう」だと列挙したのは、以下の10火山です。

  
  (『週刊女性』2015年10月6日号より)

…この噴火予測の発表から2年が経ちましたが、高橋教授の予測どおりに実際に噴火した火山は、なんと1つもありません。「大噴火」どころか、小噴火さえも、これらの火山では1回も観測されていないのです。

この噴火予測も、「大ハズレ」であったと言って良いでしょう。


 ■

以前から指摘しておりますように、この立命館大の高橋学教授という方は、週刊誌や夕刊紙に電話やメールで大地震や大噴火の予測を送りつけ続けていますが、全く予測が当たりません。つまり、根拠も実績も全くない地震予測や噴火予測で、いたずらに読者の不安を煽っていると言わざるを得ません。このような行為は、少なくとも全く褒められたものではないと思います。ご本人ならびに立命館大学には、ただちに改善をお願いしたいと思います。

 
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高橋学・立命館大学教授の「福岡で大地震」との予測、やはりハズレました

2017年05月23日 | 地震予知研究(高橋学・立命館大教授)
 
最近、高橋学・立命館大学教授という方が、「地震や火山の専門家」として週刊誌に取り上げられ、地震予測や噴火予測を次々と披露しています。これまでに、IWJ、日刊ゲンダイ、週刊ポスト、週刊プレイボーイ、週刊女性といった雑誌が、この高橋学教授を取り上げ、すぐにでも巨大地震や大噴火が日本で起きるかのような不安感を煽る予測を、繰り返し紹介しています。

この5月には、日刊ゲンダイと週刊女性で、「5月13日前後に福岡で大地震が起きる」と予測し、世間を騒がせました。


  3月連続地震は兆候か 九州北部「GW明け大地震」に要警戒(日刊ゲンダイ 2017年5月6日)
  https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/204889

   

  大地震を連続的中させた高橋教授から「5・13博多に警戒」とメールが届いた(週刊女性 2017年5月11日)
  http://www.jprime.jp/articles/-/9635


…しかしながら、お気づきのとおり、高橋教授が予測した5月13日前後には、福岡に大地震は起きませんでした。このエントリを書いている5月23日現在、M6を超えるような地震は、日本のどこでも発生していません。予測ハズレです


 ■

この高橋学・立命館大学教授という方は、これまでも週刊誌や夕刊紙にメールを送りつけて、「すぐにでも大地震が起きる」とか「大噴火が迫っている」といった予測を発表し、ことごとくハズレています。

予測が外れているだけでなく、明らかに地震や火山について間違った知識を披露しています。この方の地震予測や噴火予測は、全く信用に値しないと言って良いと思います。以下のエントリもご覧ください。


  高橋学・立命館大学教授の地震・噴火予測は信用できるのか
  http://blog.goo.ne.jp/geophysics_lab/e/b7902d584591d5b4cd47789dac7d9976
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高橋学・立命館大学教授の地震・噴火予測は信用できるのか

2017年01月27日 | 地震予知研究(高橋学・立命館大教授)
 
最近、高橋学・立命館大学教授という方が、「地震や火山の専門家」として週刊誌に取り上げられ、地震予測や噴火予測を次々と披露しています。これまでに、IWJ、日刊ゲンダイ、週刊ポスト、週刊プレイボーイ、週刊女性といった雑誌が、高橋学教授を取り上げ、すぐにでも巨大地震や大噴火が日本で起きるかのような予測を、繰り返し紹介しています。

ですが、高橋学教授の地震予測や噴火予測は、本当に信用できるものなのでしょうか。これまでの高橋教授の予測が当たっているのか、以下に検証してみましょう。

 ■

高橋学教授は、2016年の6月4日と7月31日に、ジャーナリストの岩上安身氏らにメールを送り、地震予測を披露しています。このメールの内容は、岩上氏によって以下に公開されています。

  「大地震の予兆あり!東日本でマグニチュード7に警戒を!」(IWJ 2016年8月12日)
  http://iwj.co.jp/wj/open/archives/325357

少々分かり難い文面ですが、この地震予測をまとめると、

 ・千葉・茨城で、2ヶ月後を中心に1ヶ月の前後幅で、M7以上(6月4日のメール)
 ・長野北部~新潟上越地方でM5以上、1週間~1ヶ月が危ない(7月31日のメール)


…という2つの予測をしていることが分かります。では、この予測期間に、国内で実際に発生した主な地震をみてみましょう。

  
   (気象庁データベース検索結果)


…ご覧のように、高橋学教授が予測したような地震は、全く起きていません。そもそも、M7以上の地震が全く起きていません。長野北部~新潟上越地方でも、M5以上の地震がこの期間内に1件も起きなかったばかりか、この記事を書いている2017年1月27日現在まで、M5以上の地震は1件も起きていません。


 ■

また、『週刊女性』2016年3月1日号では、2015年12月26日に東京湾でM2~3の小地震が連続したことを受け、「この小地震の2ヶ月後(つまり2016年2~3月頃)に東京湾直下大地震がくる」と予測し、「地震発生の5分後には津波が湾岸エリアを襲う」と危機感を煽りましたが、該当するような大地震も津波も起きませんでした。

  東京湾直下大地震の可能性「発生5分後、湾岸エリアに津波」(週刊女性 2016年3月1日号)
  http://www.jprime.jp/articles/-/6723


 ■

さらに、高橋学教授は、『週刊女性』2015年10月6日号において、「1~2年のうちに大噴火が起きそうな10火山」を挙げています。

  
   (『週刊女性』2015年10月6日号より)


…この予測発表から既に1年4ヶ月ほどが経過しましたが、このうち実際に噴火した火山は、1つもありません。「大噴火」どころか、小噴火さえも1つも起きていないのです。

ただ、2015年10月6日から2年後といいますと今年2017年の10月ですから、まだ時間はあります。高橋学教授の噴火予測が当たるのか、今後も見守ってみることにしましょう。

(※追記: 結局、2017年の10月まで、以上の10火山の全てが小噴火すらしませんでした)


 ■

なお、高橋学教授は、「西之島新島の巨大化から、太平洋プレートがフィリピン海プレートにももぐり込もうとしていることが新たにわかった」週刊女性2016年3月1日号)、「噴煙が1万1000m以上のものを、大噴火と呼ぶ」IWJ 2016年10月10日)など、およそ地震や火山の専門家とは思えない奇妙な発言も繰り返しています。そもそも高橋学教授を「地震や火山の専門家」と呼んで良いのか、おおいに疑問です。


 ■

高橋学教授は、実に積極的に週刊誌に電話やメールを送りつけ、ご自身の地震予測を披露されているようです。言い換えると、週刊誌に自分を「売り込む」タイプの方のようです。そして、売り込まれた側の週刊誌が、以上のハズレ予測には全く触れずに、また大きな地震や噴火を予測した実績もないにもかかわらず、専門的にみておかしな発言を繰り返していることにも目を瞑り、「地震や火山の専門家が大地震や大噴火を予測している」などと危機感を無意味に煽るような記事を、繰り返し書いているのです。かなりの無理を感じますし、メディアとしてあまり褒められた行為だとは思えません。

いずれにしても、高橋学教授がこれまでに、大きな地震や噴火の発生を、事前に精度高く予測したという実績は、全く無いと言って良いようです。週刊誌が危機感を煽るべく次々と紹介する、高橋学教授の地震予測や噴火予測に、不必要に怯えてしまう必要は全くないと思います。
 
 
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