横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

早川正士・電通大名誉教授の地震予測は全く当たっていません

2017年08月08日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
 
昨年2016年の9月から、早川正士・電通大名誉教授という方が、予知するアンテナという有料地震予測サービスを開始しています。サービス開始以降、「予知するアンテナ」は色々な夕刊紙や週刊誌などで取り上げられ、「地震予測の的中率は7割ほど」だと宣伝し、次々と地震予測を披露してきました。

この早川正士氏がこれらのメディアで発表した地震予測を、以前の記事で検証した結果(こちら)、今年2017年の1月までの14件の地震予測は、「的中率7割」どころか、なんと全てがハズレでした。

ところが、『夕刊フジ』という媒体が、その後も「早川正士氏の地震予測はゾッとするほど当たる」などと宣伝を繰り返し、早川氏の地震予測を発表し続けています。では、それらの地震予測は、果たしてどれくらい的中しているのでしょうか。検証した結果を、以下に示します。


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2月14日の夕刊フジでの地震予測
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20170214/dms1702141130006-n1.htm

2月16日までに東北M5.5 →ハズレ
2月18日までに東北~関東でM5.0 →ハズレ
2月18日までに九州M5.0 →ハズレ


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2月21日の夕刊フジでの地震予測
http://news.goo.ne.jp/article/fuji/nation/fuji-dms1702210006.html

2月27日までに東北地方でM5・0最大震度3 →ハズレ
2月27日までに東北地方の南側から千葉北部でM5・0~M5・5 →ハズレ
2月27日までに福島、茨城、千葉で最大震度4 →的中(※)
2月27日までに九州、沖縄で最大震度4 →ハズレ

 ※2月27日に福島県沖でM4.9(最大震度4)が発生しました。


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4月16日の夕刊フジでの地震予測
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20170416/dms1704161000002-n1.htm

4月17日までに福島、茨城、千葉で最大震度4前後 →ハズレ
4月19日までに北海道の道東で最大震度3前後 →ハズレ
4月19日までに東北地方の太平洋側で最大震度3前後 →ハズレ
4月19日までに九州で最大震度3前後 →ハズレ


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6月25日の夕刊フジでの地震予測
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/170625/soc1706250004-n1.html

6月25日までに北海道、青森、岩手で最大震度3前後 →ハズレ
6月30日までに宮城、福島、茨城で最大震度4前後 →ハズレ


 ■

…以上のとおり、今年2月から6月まで、早川正士氏は夕刊フジで地震予測を13件発表していますが、そのうち的中はわずかに1件だけです。

昨年2016年の9月からの通算で言いますと、早川正士氏がメディアで発表した27個の地震予測のうち、的中は1件。的中率は、わずかに3.7%となります。

これだけ地震の多い日本で、東北や関東など地震が多い場所ばかりに地震予測を出し、たった3.7%しか当たらない…これは控えめに言っても、「ほとんどデタラメ」と言って良いのではないかと思います。

率直に言って「サイコロを振って予測したほうが当たるのではないか」とも思えるくらいの地震予測を、「ゾッとするほど当たる」とか「的中率は7割」などと宣伝し、地震予測を発表し続け、外れた予測については事後に何も言わずに黙殺するというのは、研究者としてもメディアとしても、決して褒められた態度ではないと思います。早川氏と夕刊フジには、改善を強く願いたいと思います。


なお、過去に発生した地震は気象庁のホームページで検索できます。興味のある方や、私の検証が信じられないという方は、ぜひ早川氏が発表した予測とご自分で照らし合わせてみてください。

 
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早川正士・電通大名誉教授の地震予測「予知するアンテナ」は当たるのか?

2017年02月02日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
 
昨年2016年の9月から、早川正士・電通大名誉教授という方が、予知するアンテナという有料地震予測サービスを開始しています。

早川正士氏といえば、かつて電波を観測して地震を予測する「地震解析ラボ」という団体を立ち上げて有料地震予測をしていましたが、なぜか「地震解析ラボ」から離脱して、独立した格好です。

サービス開始以降、「予知するアンテナ」は色々な夕刊紙や週刊誌などで取り上げられ、「地震予測の的中率は7割ほど」だと宣伝し、次々と地震予測を披露してきました。では、それらの地震予測は、果たしてどれくらい的中していたのでしょうか。以下に検証してみましょう。


 ■

2016年9月のサービス開始から、2017年1月まで、早川正士氏の「予知するアンテナ」が、週刊誌や夕刊紙に発表してきた地震予測は、以下のとおりです。


「2016年9月10日までに北海道~東北で大きな地震が起きて津波が発生する」
 (夕刊フジ 2016年9月7日)

「北海道・東北太平洋岸で9月中に震度5!」
 (FRIDAY 2016年9月16日)

「2016年10月12日までに岩手を中心に最大震度5弱」
「2016年10月12日までに熊本から沖縄で最大震度5弱」
「2016年10月15日までに福島~千葉でM5台」

 (いずれも夕刊フジ 2016年10月11日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161011/dms1610111550004-n2.htm

「2016年12月20日までに道東からオホーツク海にかけて内陸ならM5・0前後、海底ならM5・5前後」
「2016年12月25日までに宮城から岩手にかけて内陸ならM5・0前後、海底ならM5・5前後、最大震度は青森、福島も含めて4程度」
「2016年12月25日までに東北地方の南側から房総半島にかけて内陸ならM5・5前後、海底ならM6・0前後。福島、茨城で最大震度5弱程度」
「2016年12月20日までに北信越を中心に東海や北陸にかけての内陸でM5・0前後。岐阜と長野で最大震度4程度」
「2016年12月22日までに中国、四国、九州、沖縄で内陸海底ともにM5・5前後、最大震度4程度」

 (いずれも夕刊フジ 2016年12月20日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161220/dms1612201700011-n1.htm

「2017年1月7日までに南九州から南西諸島にかけてM5・5前後」
「2017年1月9日までに中国、四国、九州にかけてM5・5前後」
「2017年1月9日までに小笠原諸島の海底でM6クラス以上」

 (いずれも夕刊フジ 2017年1月6日)
 http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20170106/dms1701060830006-n1.htm

「2017年1月中に、福島が2度大揺れする」

 (FRIDAY 2017年1月13日)


以上、ざっと数えますと14件の地震予測を発表してきたことになります。では、そのうち、的中したものはどれくらいあるのでしょうか。

…なんと、以上の14件の地震予測のうち、1件たりとも的中がありません

強いて言えば、夕刊フジの2016年12月20日号で発表した「2016年12月25日までに東北地方の南側から房総半島にかけて内陸ならM5・5前後、海底ならM6・0前後、最大震度は5弱程度」という予測に対して、同12月24日に福島沖でM5.1の地震が発生したケースがあります。しかし、M6.0という予測に対して実際はM5.1であり、規模は大きく外れています。また、「最大震度は5弱程度」という予測に対して、実際の最大震度は3でした(しかも郡山市の観測点1点だけ)。さらに言えば、この12月24日の地震は、同11月22日の福島沖M7.4の余震に過ぎず、大きな地震の後には余震が起きることは誰でも知っていることですので、仮に的中させたのだとしても全く驚くべきものではありません。

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このように、自分では「的中率は7割ほど」だと宣伝して有料地震予測サービスを行っておきながら、実際に検証してみると「14件予測して1件も的中しなかった」わけです。7割どころか、地震予測能力はほぼゼロであるようにしか思えません。こうした宣伝文句と実績との大きな乖離は、強い批判を浴びてもさすがに文句は言えないのではないでしょうか。

ぜひ早川正士・電通大名誉教授には、ご自身の地震予測の精度をいまいちど客観的に振り返って頂き、真摯な態度で研究及び事業を見直して頂きたいと、切に願っています。

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地震解析ラボは、熊本地震を予測できていたのか?

2016年07月14日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
 
VLF/LF電離層擾乱に基づいて有料地震予測サービスを行っている、「地震解析ラボ」(所長:早川正士・電通大名誉教授)という団体があります(運営会社はインフォメーションシステムズ株式会社)。

当サイトでは以前より、地震解析ラボの地震予測を検証し、有意な予測能力は全くみられないと指摘してきました。しかしながら、彼らは依然として有料地震予測サービスを継続しており、メディアでもしばしば「精度が高い」などと紹介されているようです。

そこで今回は、地震解析ラボが、2016年4月14日に発生した熊本地震(4月16日に本震とされるM7.3、最大震度7)を事前に予測できていたのか、検証してみましょう。


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地震解析ラボの過去の予測実績は、彼らのサイトで公開されています(こちら)。このなかから、熊本地震の発生直前である、4月11日に地震解析ラボが発表していた地震予測を、以下に抜粋します。


     



…いかがでしょうか。北海道東部から千島列島、関東の太平洋側、伊豆諸島から小笠原諸島、伊予灘から日向灘、そして南西諸島に地震予測が出ています。しかし、熊本県は全域が、予測領域から外れていることが分かります。

熊本に近い場所では、伊予灘~豊後水道~日向灘にかけて、青く示された予測領域(識別番号028)が出されていますが、青は予測規模「M5.0前後」(M4.7~M5.3)を意味しており、熊本地震の規模M7.3とは全くかけ離れています。熊本県も全くカバーしていません。

以上から、かなり甘く判断しても、熊本地震は予測失敗したと言うべきでしょう。


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熊本に近い伊予灘から日向灘にかけて地震予測を出していたのだから、「惜しかった」「かすっていた」と擁護される方もおられるかも知れません。

ですが、地震解析ラボは、伊予灘から日向灘にかけては定期的に地震予測を出しており、熊本地震直前のこの時にだけ予測を出していた訳ではない点に、留意が必要です。

熊本地震発生前の1年間で、地震解析ラボは8回、伊予灘から日向灘に地震予測を出しています。それぞれが1週間の予測期間ですので、単純計算で6.5週間のうち1週間の頻度で、この領域に予測を出し続けていた計算になります。

そして、そもそもこの予測領域は熊本県を全く含んでもいないので、熊本地震当日に地震解析ラボが当該領域に予測を出していた事は、評価に値しないと思います。


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以上のとおり、「地震解析ラボは熊本地震を予測できなかった」と結論して良さそうです。ただ、ほぼ日本中に地震予測を出しながら九州だけが完全にノーマークだった、MEGA地震予測に比べれば、近隣の伊予灘~日向灘に予測を出していただけ、評価のガタ落ちを運よく避けられた感があります。

だからと言って「熊本地震を予測できた」などと誇張した宣伝をせず、真摯な自己検証にもとづいた、誠実な研究と事業運営を、地震解析ラボには望みたいと思います。
 
 
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早川正士氏ら地震解析ラボの地震予測の検証(2015年11月)

2016年03月10日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)
 
VLF/LF電離層擾乱に基づいて有料地震予測サービスを行っている、「地震解析ラボ」(所長:早川正士・電通大名誉教授)という団体があります(運営会社はインフォメーションシステムズ株式会社)。

当サイトでは以前より、地震解析ラボの地震予測を検証し、有意な予測能力は全くみられないと指摘してきました。しかしながら、彼らは依然として有料地震予測サービスを継続しており、メディアでもしばしば「精度が高い」などと紹介されているようです。そこで今回は、地震解析ラボが昨年発表した予測の一部を、また検証してみることにします。


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以下に、現時点で地震解析ラボが公開している中で最新の地震予測である、2015年11月30日に発表された予測を示します(地震解析ラボのサイトで公開されています)。6ヶ所の予測エリアが、いずれも青色で示されており、「M5.0±」(M4.7~M5.3)の規模の地震予測であることを意味しています。予測期間は、発表日である11月30日から12月10日までとなっています。



    



…ところが、この期間には、M4.7以上の地震が、国内では1件も発生しなかったのです! したがって、的中率は0%です。これでは面白くありませんので、おおまけにまけて、下限をM4.5まで下げて差し上げますと、この期間には以下の2件の地震が発生しています。


 ・2015/12/02 07:48:06.3 宮城県沖 38°40.7′N 142°16.2′E 深さ39km M4.6 最大震度3
 ・2015/12/02 13:41:19.7 宮城県沖 38°20.6′N 141°51.0′E 深さ63km M4.6 最大震度3



この2つの地震の震源を、上に示した図にプロット(赤丸)してみましょう。



    



…もう、目も当てられません。いかにも地震が起きそうな6ヶ所に地震予測を出しながら、その間を縫う様に実際の地震が起きています。


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ご覧のとおり、地震解析ラボの地震予測は、最新の2015年の予測を見ても全然向上しておらず、デタラメのままであるようです。こうしたハズレの山は顧みられることがなく、メディアでも黙殺され、無かったことにされます。そして、たまに的中した予測だけが宣伝され、さも予測精度が高いかのように錯覚させられる訳です。ぜひ、皆様はご注意いただきたいと思います。

彼らをはじめ、地震学界の一部では、「地震の前兆で電離層が乱れるのではないか」「電磁波を観測すれば地震の前兆が分かるのではないか」と論じられています。ですが、こうした早川正士氏の地震予測実績、さらには森谷武男氏や串田嘉男氏ら同様の研究者の全く芳しくない実績をみますと、そうした言説は「デタラメであろう」とバッサリ切って捨てても良い段階なのではないかと思います。
 
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早川正士氏(地震解析ラボ)による地震予測の実態

2015年06月05日 | 地震予知研究(早川正士氏・地震解析ラボ)

ここのところ、電離層擾乱に基づいて地震予測を行っている早川正士氏(地震解析ラボ所長、電通大名誉教授)が、5月30日の小笠原での地震(M8.1)や、6月4日の釧路地方での地震(M5.0)などを、連続して的中させたとして、話題になっているようです。

ですが、よく調べてみますと、数々のハズレ予測を無視して、当たった(ように見える)ものだけを取り上げている、というだけに過ぎません。つまり、「下手な鉄砲」が当たっただけにしか見えません。以下に説明しましょう。


 ■

実は、早川正士氏ら地震解析ラボは、小笠原と釧路地方をはじめ、国内において地震が起きる可能性が高いエリアに対して、あちこちにずっと予測を出しているのです。

以下に、昨年9月から彼らが発表してきた地震予測を抜粋してみます(地震解析ラボのサイト内「予測情報アーカイブ」より引用)。いずれの予測も、予測期間は1週間程度ですが、当たらないともう1週間延長することが多いです。


↓昨年9月29日発表の予測

  


↓昨年10月23日発表の予測

  


↓昨年11月27日発表の予測

  


↓昨年12月8日発表の予測

 


↓今年1月15日発表の予測
 
  


↓今年3月9日発表の予測

  


(※今年の4月以降は未公開)


…いかがでしょうか。ほとんど毎月、釧路付近や小笠原を含め、日本中のあちこちに同時に予測が出ていることがわかります。このように、ほぼ常に予測を出し続け、ほとんどがハズレているのですが、今回の小笠原や釧路地方での地震のように、下手な鉄砲が功を奏してごくたまに当たったように見えることがあり、そのときだけメディアが取り上げるので、読者や視聴者は的中率が高いように錯覚してしまうだけなのです。

そもそも、今回の小笠原諸島付近の地震はM8でしたが、早川氏らの予測は「M6前後」ですから、規模の予測は全くハズレています。また、釧路地方の地震については、震源は阿寒湖よりもさらに北の位置でしたが、早川氏らの予測エリアは釧路・根室の海岸線をかすめているだけで、阿寒湖は完全に予測エリア外です。しかも、「6月6日以降」との予測よりも早く6月4日に地震が発生しています(詳しくは彼らの予測情報アーカイブを参照ください)。したがって、いま「的中した」と話題になっている小笠原や釧路地方に対する地震予測も、よくみると実はハズレているのです。


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早川正士氏ら地震解析ラボによる地震予測は、ほとんどがハズレの山で、デタラメを有意に超えるような予測能力が見受けられないことは、既に何度か指摘しています。よろしければ、たとえば以下のエントリなどをご覧ください。

「地震解析ラボ、126件の地震予測のうち、震度5弱以上の地震発生は2件のみ」

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