横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

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地震予知に関する特許について

2020年09月06日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)

意外と思われるかも知れませんが、幾つかの団体や個人が、地震予知の方法についての特許出願を行い、そのうちの多くが審査を経て既に特許を取得しています

ためしに、特許検索サービス「J-PlatPat」で、適当なキーワードで検索してみるだけで、以下のとおり、登録された特許が幾つもヒットします。



  (J-PlatPatより作成)


たとえば、本ブログでもたびたび取り上げている村井俊治・東大名誉教授ら地震科学探査機構(JESEA)は、地殻変動の監視による地震予測法についての特許を取得しており(特許番号3763130「地震・噴火予知方法」)、「自らの地震予測方法は特許を受けた方法である」と強調して、サービスを展開しています。彼らの特許は、上のリストでは10番目のものです(※なお、この特許については、明細書に不備がある点などについて、以前の記事でもご紹介しています)。

このように特許として認められた方法ですと、多くの方が「地震の予測実績がある、信頼できる方法なのだろう」と思ってしまうのではないかと危惧しています。そこで、改めて強調したいのですが、実はこのような考えは全くの誤解です。

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一般的に言って、特許出願は、同じような内容の発明が他者によって公開されていなければ、たとえ何の役に立たなくても、特許登録されるのです(もちろん、特許明細書に意味がわからない記載がある等の不備がある場合も拒絶されますが)。

言い換えますと、特許登録されているからといって、信頼できる技術というわけでは全くなく、デタラメの理論であるかも知れないわけです。特許明細書に書かれているとおりに実際に発明が作用するかなんてことまでは、特許庁の審査官が個々に審査できないからです。また、明細書に書かれているとおりのことをやっても、絶対に地震がひとつも予測できない、と断言できなければ、審査官は地震予知方法の発明を拒絶できません。100万個の地震のうち1個でも予測できるかも知れないのであれば、審査官としては拒絶できないのです。

このように考えますと、「特許技術」とか「特許取得済み」などという宣伝文句は、商品やサービスの信頼性を全く保証しないことが、お分かり頂けるかと思います。実際、一流企業の商品などには、最近はこうした宣伝文句は使われなくなっています。こうした宣伝文句は、無名の二流企業の商品に付けられることのほうが多いのです(私などは、こうした宣伝文句があると、逆に商品の信頼性を疑ってしまいます)。


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ところで上述の村井俊治・東大名誉教授は、著書『地震は必ず予測できる!』のなかで、自らの地震予測方法の特許出願について、以下のように記述しています。


 もちろん、特許出願もあきらめずに続けていた。一回、二回、三回と意見補正をしたが、すべて拒絶が来た。その拒絶理由の一つは、…(中略)…「地球物理学で有名な学者の本に、…(中略)…隆起して次に沈降する反転現象がすでに書かれている」というものだった。我々はその理解の浅さに閉口しながらも、根気よく説得した。…(中略)…

 しかし特許庁の拒絶は続いた。先方の拒絶はもはや難癖に近いものだった。二度目など、「三角網を使った地震予測など誰でも考えられる」という横柄なものであった。…(中略)…

 …(中略)…さすがに心ない三度目の拒絶が来たときは、私は…(中略)…敗北感に満たされた。おそらく地震の専門家が審査員なのであろう。それは大いに予想できた。…(中略)…私は地震学者と張り合うつもりはまったくなかったが、このときばかりはその料簡の狭さにため息が出た


(村井俊治著『地震は必ず予測できる!』(集英社新書)35~37ページ)

      
…いかにも、「権威にイジメられてきた異端の自分の武勇談」として書かれていますが、あまりにも的外れで、ため息が出るのはこっちだと言いたくなります。

まず、審査官が地震学者であることは、ほぼあり得ません。特許庁の審査は、審査専門の特許庁審査官が、基本的に1人で行います。地震学者たちが研究の合間に行うようなものではありません。地震学者が転職して特許庁の審査官になった、という話も聞いたことがありません。そういった実情を全く無視し、いかにも「異端な自分が、無能な正統派の地震学者たちにイジメられた」とでも言いたげな文章で、こういうのを読まされると本当にうんざりします()。


※実は、上記の特許情報プラットフォームでは審査記録も参照することができますので、村井氏らによる特許出願を担当した審査官の名前もわかります。1回目と2回目の拒絶理由通知は本郷徹審査官、3回目の拒絶理由通知は高見重雄審査官です。いずれも、特許審査第1部材料分析(当時)所属のようですので、地震学者とは全く関係ない審査官です。こうした情報は、そもそも拒絶理由通知書にきちんと記載されているのですが…。なお、村井氏の記述のなかにある「地球物理学で有名な学者の本」とは、審査記録をみると、力武常次先生の「破壊防止と安全の確保 地殻歪と地震発生予測」という非破壊検査学会(当時)の論文のようです。


また、おおむね半分以上の特許出願は、少なくとも1回は拒絶理由通知を受けるのです。それに対して意見を主張して、特許として登録される、という過程を踏むのは、ごくごく普通のことです。つまり、村井氏による特許出願のように、何度か拒絶されて、それに対して意見を主張して、ようやく特許登録される、というのは、極めて普通のことに過ぎません。なのに、いかにも「権力と戦って権利を勝ち取った」という書き方になっていて、本当にイヤラしいなと思います。

いずれにしましても、上記した2名の審査官による拒絶理由通知を、「難癖に近い」とか「横柄なものであった」とか「心ない」とか「料簡が狭い」などと、著しく不適切に誹謗中傷していることは見逃せません。彼らの名誉のためにも、村井氏の著書における上述の記載が極めて的外れであることを、ここで強調しておきたいと思います。そして、村井氏らの特許出願が登録されているからと言って、彼らの地震予測が信頼できるという証拠には全くならないのだということも、繰り返しておきます。
 
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2 コメント

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スターリングエンジンとは違う (伊牟田勝美)
2019-10-09 18:38:07
リストの中に、見覚えがある名前がありました。
氏の主張を見たことがありますが、根拠が薄いように思いました。

特許の性質として、その時点では実用化できなくても、将来的に実用化ができる場合があります。
スターリングエンジンは、19世紀初頭の発明でしたが、本格的に使われるようになったのは20世紀終わりごろからだったはずです。
ただ、スターリングエンジンの場合、理論的に正しいことが分かっていましたが、気密性の問題が当時の技術では解決が難しく、実用レベルに達しなかったと聞いています。

地震予知の特許は、そもそも理論面で怪しく、スターリングエンジンとは次元が違うように思えます。
ですので、ここにチェックが必要ではありますが、将来的にも地震を予知できる可能性があるものが存在するのか、期待は薄いように感じています。
Unknown (Unknown)
2019-12-12 00:31:14
細かいことは知らないけど村井教授の地震予測に月額払ってましたが、
日本の半分以上が危険マークみたいなのが半年以上続いているのを見て退会しました。
情報を買う側としては、ピンポイントで危ないと分かればと思い加入しましたが
結局常に危ないと言い続けるだけのアプリ
常に全国危ないって言ってるならアプリに月額払うのバカバカしくて辞めました
月額分を防災に回した方がいいと思いました

特許という言葉やテレビ報道に消費者も惑わされないようにしないといけないですね汗

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