宏観現象や電磁波異常による地震予知という似非科学に、なぜ、ひとびとは騙されてしまうのか。それを説明するのは、とても簡単なことです。
たとえば、ハーバード大の心理学者であるクリストファー・チャフリスおよびダニエル・シモンズ著の『錯覚の科学』(文藝春秋社)に、次のような例が挙げられています。
(1)「雨の日には関節リウマチが痛む」と訴える17人の患者を15ヶ月間にわたり実際に調べてみた結果、天候と関節リウマチの痛みとの間に、相関関係は全くなかった。
(2)「モーツァルトを聴いた後には頭の回転が良くなる」という俗説を否定するに十分な実験成果が数多く得られているのに、この説は未だに信じられている。「幼児期にモーツァルトを聴くと頭が良くなる」という説にいたっては、これを実証する検証例が皆無であるにもかかわらず、広く信じられている。
まず(1)は、実際には相関がないことを関連づけてしまう、人間の本能的な錯覚です。実際には雨が降っていないときにもリウマチは痛んでいるのに、雨が降ったときにリウマチが痛んだことが強く記憶に残ってしまい、雨と痛みを相関づけてしまうのです。このような錯覚を、「選択的マッチング」といいます。「赤い月をみた後に地震が起こった、だから地震の前には月が赤く見えるのだ」などと考えてしまうのは、まさにこの典型です。夕焼けと同じで、条件があえば月が(地震に関係なく)赤く見えることがよくあります。
そして(2)は、神秘的でかつ自分に都合のよい俗説を、人間はつい信じ込んでしまうのだということを示しています。モーツァルトを聴くだけで楽に頭が良くなる、そんなことが「あったら良いな」という思いが、「あるに違いない」という考えにすり替わるのです。宏観現象や電磁波異常で地震予知ができると信じてしまい、当サイトで紹介しているような否定的事実を見逃してしまうのです。
…これらの錯覚は、要するに、たとえば壁に3つのシミがついただけで、「神様の顔が浮かび上がった!」と騒いでしまうのと同じことです。電磁波を使う方法を含め、いま巷で話題にされている地震予知研究は、全てこの「壁のシミ」レベルなのです。
こうした錯覚は人間の本能に近いので、このような錯覚に陥ってしまうこと自体は、仕方のないことかも知れません。ですが、人間はもう少し、賢くなることもできるはずです。巷にはびこっている疑似科学的な地震予知を、盲信することなく疑うことができるひとが、増えてくれることを願っています。
たとえば、ハーバード大の心理学者であるクリストファー・チャフリスおよびダニエル・シモンズ著の『錯覚の科学』(文藝春秋社)に、次のような例が挙げられています。
(1)「雨の日には関節リウマチが痛む」と訴える17人の患者を15ヶ月間にわたり実際に調べてみた結果、天候と関節リウマチの痛みとの間に、相関関係は全くなかった。
(2)「モーツァルトを聴いた後には頭の回転が良くなる」という俗説を否定するに十分な実験成果が数多く得られているのに、この説は未だに信じられている。「幼児期にモーツァルトを聴くと頭が良くなる」という説にいたっては、これを実証する検証例が皆無であるにもかかわらず、広く信じられている。
まず(1)は、実際には相関がないことを関連づけてしまう、人間の本能的な錯覚です。実際には雨が降っていないときにもリウマチは痛んでいるのに、雨が降ったときにリウマチが痛んだことが強く記憶に残ってしまい、雨と痛みを相関づけてしまうのです。このような錯覚を、「選択的マッチング」といいます。「赤い月をみた後に地震が起こった、だから地震の前には月が赤く見えるのだ」などと考えてしまうのは、まさにこの典型です。夕焼けと同じで、条件があえば月が(地震に関係なく)赤く見えることがよくあります。
そして(2)は、神秘的でかつ自分に都合のよい俗説を、人間はつい信じ込んでしまうのだということを示しています。モーツァルトを聴くだけで楽に頭が良くなる、そんなことが「あったら良いな」という思いが、「あるに違いない」という考えにすり替わるのです。宏観現象や電磁波異常で地震予知ができると信じてしまい、当サイトで紹介しているような否定的事実を見逃してしまうのです。
…これらの錯覚は、要するに、たとえば壁に3つのシミがついただけで、「神様の顔が浮かび上がった!」と騒いでしまうのと同じことです。電磁波を使う方法を含め、いま巷で話題にされている地震予知研究は、全てこの「壁のシミ」レベルなのです。
こうした錯覚は人間の本能に近いので、このような錯覚に陥ってしまうこと自体は、仕方のないことかも知れません。ですが、人間はもう少し、賢くなることもできるはずです。巷にはびこっている疑似科学的な地震予知を、盲信することなく疑うことができるひとが、増えてくれることを願っています。