防災ブログ Let's Design with Nature

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土石流の歴史も繰り返す

2009年08月03日 | 災害の記憶と想像力

活断層の調査では、過去の活動履歴を調べるために、トレンチ調査が行われます。細長い溝をほって、地層の年代を特定できる試料を採取したり、地層のずれ、断層の有無などを確認する調査です。これによって、活断層が過去繰り返し活動してきたことを証明できるわけです。

今回山口県の土石流災害では、過去の土石流堆積物に対する天然のトレンチ調査が行われたようなものでした。過去の土石流の堆砂断面が現われていたのです。年代決定試料は得られていませんが、現在の渓流から10n程度高い平坦面を作っている古い段丘堆積物も同じような土石流堆積物で構成されていることがわかりました。すなわち、最終氷期から同じような土石流が繰り返されて形成されてきた土地であるということができます。このあたりに住む方にとっては、”こんな災害はじめて”だったのかも知れませんが、土石流は繰り返し発生します。

また、今回の災害に関する報道で、老人ホーム、いわゆる災害弱者施設があったのだから、優先的に砂防ダムを整備すべきであったという意見もありました。しかし、それはいたちごっこです。そこに老人ホームを建設するという計画を立てた時点で、周辺の環境を調査して、砂防だけでなく必要な防災対策を老人ホームの建設と同時に行うのが筋だったのではないでしょうか。これも縦割りの弊害のひとつです。

今回の土石流災害では、国が直轄事業として砂防に乗り出すようです。国の直轄砂防事業地域とそうでない地域の砂防ダムには、その高規格さにおいて歴然たる差があります。ところが、土石流が繰り返し発生するといっても数十年に一度のことです。過去に大きな災害を契機として直轄砂防事業化された地域は何箇所もありますが、その後何十年も災害が起こらずだらだらと惰性的に事業費を垂れ流しているところがなんと多いことか。

崩壊したところ、土石流の発生したところは、いわゆる抜け殻なんです。そこに今後災害の予備物質となる土砂がたまるには、また数十年~数百年の時間がかかります。このようなことを考えれば、防災に関わる投資バランスは自ずと見えてこようというものですが、、、、