不知火という柑橘をご存じだろうか?
不知火にはデコポンという別名もあり、むしろそちらが一般化しているのではないかと思う。
wikiには「流通果実としての『デコポン』は熊本県果実農業協同組合連合会が所有する商標登録であり、全国の柑橘関係農協県連合会を通じて出荷された不知火のうち、高品質を保つ一定の基準(糖度13度以上、酸度1度以下)をクリアしたものだけがその名を使用することができる」
とあるので、つまりデコポンが正式な品種名と思っている人が多いのは熊本の農協がブランディングに成功した証なのである。
それは素晴らしいこと。優れた品種が広く知られるようになることは一柑橘生産者としても喜ばしい限りだ。
……ところが、だ。
そのユニークな形で広く知られるようになった不知火。すなわち、ヘタの周りがボコッと凸状に突起したその形状が、のちに柑橘業界に思わぬ誤算を招いた。
そもそも、一部の柑橘(晩柑類)は成長の過程で二次肥大を起こし、ヘタの周りがデコッと突起するのである。これは柑橘栽培に携わる者なら誰でも知っている常識だか、一般の消費者はそうではない。
厄介なことに「デコポンという名」は知っているが、「一部の柑橘が二次肥大によってデコがデコッと突起する」ことまでは知らない人が多すぎるのである。
その結果、柑橘初級者はデコッとした柑橘を見ると「あ、知ってる!これデコポンでしょ?」と得意げに言う。
彼らにとっては…
これも!
これも!
これも!
デコポンなのだ。
柑橘は形状よりも、果皮のキメや油胞のパターンなどで見分けるベシ!ということを知っていれば、これらが、『いよかん』や『はるみ』であることは一目瞭然なのだが……。
そんな初歩的なミステイクが日常茶飯事になっている昨今。
いよいよ怒り心頭に発したのは、柑橘生産者……ではなかった。
「俺が不知火だ!」と言葉で主張できぬ彼らは、なんとその身をもって、他の追随を許さない“高み”を目指した。
この堂々たる姿は、どうだ。
瓢箪に似た瓢柑という柑橘もあるが、この不知火はもはやだるまに近いレベル。
平均的にこの形になるなら、もうだるま柑という名で売ってもいいくらいだ。
「男なら、四の五の言わずに態度で示せ」という白州次郎ばりのダンディズムを、僕はこいつから教わったよ。
ありがとう!だるま柑!!