少数派シリーズ/東京オリンピックの危うさVOL.96
ROUND7 国民の命を守るため東京オリンピックの中止を!編 21
元博報堂・本間龍氏コラム◇五輪中止は莫大な賠償金が掛かるからできないは嘘!
■本間龍氏へのインタビュー記事|開催都市契約では中止の際の違約金についての条項がない
―IOC(国際オリンピック委員会)委員から「菅首相が『中止』を求めたとしても大会は開催される」など、開催国を軽視した発信が目立ちます。
IOCと東京都、JOC(日本オリンピック委員会)が結んだ開催都市契約では、大会を中止する権利はIOCが有しています。しかし、だからといって、都や大会組織委員会、政府が大会返上や中止の意向を示しても意味がないという話ではありません。菅首相は「開催はIOCが権限を持っている」と繰り返してきました。しかし、開催国が中止を決めればIOCは追認するしかないでしょう。
開催国の意向を突っぱねて、軍隊を送ってまで無理やり開催させるなんてことをIOCができるはずありません。開催国が中止を決めれば、物理的に開催は不可能です。実際、昨年に1年延期を決めた時も日本側からの提案でした。IOCがどうかより、都や政府が主体的に判断できるということが重要です。
―中止になれば日本側が多額の請求を受けるから、言いだせないとの声もあります。
開催都市契約には、都やJOC、組織委は「いかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする」とあります。つまり、IOCに向けられた請求や訴訟を開催都市が引き受けるとの一方的な規定になっています。このことから、中止になれば多額のお金を請求されると言う人たちがいます。
しかし、心配には及びません。まず、開催都市契約では中止の際の違約金についての条項がありません。そのため、IOCとの違約金はないと言えます。さらに、IOCやそこに莫大(ばくだい)な放映権料を払っている米NBCも中止に備えて保険に入っています。仮にNBCが放映権料を日本側に請求してきたとしても、限定的なものでしかないでしょう。
■企業イメージに大きな傷をつけてまで賠償請求に踏み切るスポンサーがどれだけあるのか?
―国内のスポンサーはどうでしょうか。
スポンサー各社は、これまでにテレビCMに東京五輪のエンブレムを表示してイメージ向上に活用したり、「観戦チケットが抽選で当たる」などと商品の販売促進をしたりしてきました。スポンサーになったことで得られるメリットの大半は、開催前の現時点ですでに回収済みと言えます。もし損害が発生したといっても、一体どうやってそれを算出するのか疑問です。
さらに言えば、東京五輪は世論の8割が反対しています。見込んでいた収益が上げられなかったからといって、企業イメージに大きな傷をつけてまで、賠償請求に踏み切る企業がどれだけあるでしょうか。そもそも開催をすれば国民の命と健康が脅かされるから、国民の多数が反対しているわけです。中止にしたら損をするからと、国民の命と賠償金をてんびんにかけること自体、おかしな話なのです。
―新型コロナ以前から東京五輪の問題点を指摘してきましたね。
ボランティアへの待遇の悪さや酷暑問題、当初予算から大きく膨らんだ大会経費など見直すべき問題が多くありました。そこにコロナ危機が加わり、開催は不可能になったと言ってきました。大会プレーブック(規則集)によると、選手たちは隔離された空間で競技だけをすることになります。ホストタウンの受け入れは続々と中止になり、地域住民との交流はほとんどありません。海外観客の受け入れも断念したことで、開催を契機にしたインバウンド(訪日外国人旅行者)も見込めない状態です。
感染状況が深刻な国では、五輪予選に出場できない選手さえ出てきてしまいました。もはや、多様な文化の交流やフェア精神といった五輪の価値を発信できる大会にはなりえません。一方、開催をすれば、選手を含めた大会関係者9万人超が入国します。4月の入国者数(速報値で約4万7千人)を五輪だけで大きく超えます。さらに、1万5千人の選手や選手にじかに接するスタッフには毎日PCR検査をします。多くの医療関係者が懸念している通り、医療体制に負担をかけることは明らかです。東京五輪はもはや、国民にとってリスクでしかないと思います。中止にするほかありません。
<プロフィール> ノンフィクション作家・元博報堂社員 本間龍さん(ほんまりゅう)
ノンフィクション作家、元博報堂社員。著書に、東京五輪のボランティアへの待遇や商業主義を批判した『ブラックボランティア』、あらゆるメディアで「原発安全神話」がふりまかれてきた構造を告発した『原発プロパガンダ』など。
投稿者によって、タイトル付けを行いました。コラム・インタビュー記事を載せ、投稿者のコメントは割愛します。
次号/党首討論・共産党志位委員長「五輪中止を!国民の命をギャンブルに掛けるな!」
前号/松尾貴史氏コラム◇東京五輪の開催は日本の堕落を世界に見せつけることになる
ROUND7 国民の命を守るため東京オリンピックの中止を!編 21
元博報堂・本間龍氏コラム◇五輪中止は莫大な賠償金が掛かるからできないは嘘!
■本間龍氏へのインタビュー記事|開催都市契約では中止の際の違約金についての条項がない
―IOC(国際オリンピック委員会)委員から「菅首相が『中止』を求めたとしても大会は開催される」など、開催国を軽視した発信が目立ちます。
IOCと東京都、JOC(日本オリンピック委員会)が結んだ開催都市契約では、大会を中止する権利はIOCが有しています。しかし、だからといって、都や大会組織委員会、政府が大会返上や中止の意向を示しても意味がないという話ではありません。菅首相は「開催はIOCが権限を持っている」と繰り返してきました。しかし、開催国が中止を決めればIOCは追認するしかないでしょう。
開催国の意向を突っぱねて、軍隊を送ってまで無理やり開催させるなんてことをIOCができるはずありません。開催国が中止を決めれば、物理的に開催は不可能です。実際、昨年に1年延期を決めた時も日本側からの提案でした。IOCがどうかより、都や政府が主体的に判断できるということが重要です。
―中止になれば日本側が多額の請求を受けるから、言いだせないとの声もあります。
開催都市契約には、都やJOC、組織委は「いかなる第三者からの請求、訴訟、または判断からIOC被賠償者を補償し、無害に保つものとする」とあります。つまり、IOCに向けられた請求や訴訟を開催都市が引き受けるとの一方的な規定になっています。このことから、中止になれば多額のお金を請求されると言う人たちがいます。
しかし、心配には及びません。まず、開催都市契約では中止の際の違約金についての条項がありません。そのため、IOCとの違約金はないと言えます。さらに、IOCやそこに莫大(ばくだい)な放映権料を払っている米NBCも中止に備えて保険に入っています。仮にNBCが放映権料を日本側に請求してきたとしても、限定的なものでしかないでしょう。
■企業イメージに大きな傷をつけてまで賠償請求に踏み切るスポンサーがどれだけあるのか?
―国内のスポンサーはどうでしょうか。
スポンサー各社は、これまでにテレビCMに東京五輪のエンブレムを表示してイメージ向上に活用したり、「観戦チケットが抽選で当たる」などと商品の販売促進をしたりしてきました。スポンサーになったことで得られるメリットの大半は、開催前の現時点ですでに回収済みと言えます。もし損害が発生したといっても、一体どうやってそれを算出するのか疑問です。
さらに言えば、東京五輪は世論の8割が反対しています。見込んでいた収益が上げられなかったからといって、企業イメージに大きな傷をつけてまで、賠償請求に踏み切る企業がどれだけあるでしょうか。そもそも開催をすれば国民の命と健康が脅かされるから、国民の多数が反対しているわけです。中止にしたら損をするからと、国民の命と賠償金をてんびんにかけること自体、おかしな話なのです。
―新型コロナ以前から東京五輪の問題点を指摘してきましたね。
ボランティアへの待遇の悪さや酷暑問題、当初予算から大きく膨らんだ大会経費など見直すべき問題が多くありました。そこにコロナ危機が加わり、開催は不可能になったと言ってきました。大会プレーブック(規則集)によると、選手たちは隔離された空間で競技だけをすることになります。ホストタウンの受け入れは続々と中止になり、地域住民との交流はほとんどありません。海外観客の受け入れも断念したことで、開催を契機にしたインバウンド(訪日外国人旅行者)も見込めない状態です。
感染状況が深刻な国では、五輪予選に出場できない選手さえ出てきてしまいました。もはや、多様な文化の交流やフェア精神といった五輪の価値を発信できる大会にはなりえません。一方、開催をすれば、選手を含めた大会関係者9万人超が入国します。4月の入国者数(速報値で約4万7千人)を五輪だけで大きく超えます。さらに、1万5千人の選手や選手にじかに接するスタッフには毎日PCR検査をします。多くの医療関係者が懸念している通り、医療体制に負担をかけることは明らかです。東京五輪はもはや、国民にとってリスクでしかないと思います。中止にするほかありません。
<プロフィール> ノンフィクション作家・元博報堂社員 本間龍さん(ほんまりゅう)
ノンフィクション作家、元博報堂社員。著書に、東京五輪のボランティアへの待遇や商業主義を批判した『ブラックボランティア』、あらゆるメディアで「原発安全神話」がふりまかれてきた構造を告発した『原発プロパガンダ』など。
投稿者によって、タイトル付けを行いました。コラム・インタビュー記事を載せ、投稿者のコメントは割愛します。
次号/党首討論・共産党志位委員長「五輪中止を!国民の命をギャンブルに掛けるな!」
前号/松尾貴史氏コラム◇東京五輪の開催は日本の堕落を世界に見せつけることになる