厚労省案もかなり固まってきたようだ。飲食店の全面禁煙化という世界で当たり前の法律が国会で議決できないという今の日本の状況は極めて遺憾であるが、最後の条件闘争の中で少しでも受動喫煙被害を減らすために主張すべきポイントについて書いておきたい。
まず、現状の厚労省案を復習しておこう。飲食店は原則禁煙とした上で、喫煙店とする場合には以下の条件を課している(飲食店以外はどうでも良いので割愛)。
1.喫煙店への20歳未満の立ち入り禁止
2.喫煙店を選択できるのは以下の条件を満たす店のみ
① 客席100平米以下
② 個人または中小企業(資本金5,000万円以下)が経営
③ 既存店のみ(新規は不可)
④ 喫煙店であることの標識の掲示
これに対して受動喫煙防止議連は「スナック・バー以外は店舗面積にかかわらず、原則、屋内禁煙とするべき」と主張している。
個人的には受動喫煙防止議連を応援する者ではあるが、もっと実質的な「実」を取れる戦い方があるのではないかと思っている。その為の論点を示したいと思う。
1.「喫煙店への20歳未満立ち入り禁止」について
この条項自体は大変、良く出来ていると思う。これによって、ファミリー層の顧客を想定している店、高校生・大学生のアルバイトに依存している店は自主的に禁煙店化されることになるだろう。
おそらく、スナック・バーの大半と居酒屋の相当部分は「喫煙店」を選ぶだろうが、それ以外はかなりの割合で「禁煙店」を選ぶことになるのではないだろうか。
この条項については「一旦、喫煙店と決めたら、フラフラすることは許さない」、すなわち時間帯や曜日などで「喫煙店」の看板を出したり、引っ込めたりする運用は認めない、という点を明確化して頂きたい。そうすれば、中間領域の飲食店の禁煙店化はさらに促進されるだろう。
2.「個人または中小企業が経営」について
この条項も今の日本の政治力学を踏まえて、よく考えられた条項だと思う。
ただ、この条項は運用によってはザル法になりかねない。例えば、大企業が資本金5000万円以下の子会社を設立して、そこに自社の店舗を譲渡すれば規制の対象外になってしまう。規制に実効性を持たせるためには、資本金5000万円を超える大企業を親会社を持つ中小企業は大企業扱いであることを明確化する必要がある。
また、フランチャイズチェーンの扱いにも課題がある。チェーン店によっては同じ看板を掲げていても、個人や中小企業によるフランチャイズ店であることも多い。大企業によるチェーン店だから大丈夫だと思って行ってみたら、実はフランチャイズ店で喫煙店だったなどということになれば目も当てられない。混乱を避けるために、大企業のフランチャイズ店については個人や中小企業であっても規制の対象とするべきだ。
3.「喫煙店であることの標識の掲示」について
これについても幾つか注文を付けたい。
まず、店頭に「喫煙店」の掲示が必要なのはもちろんであるが、「喫煙店」であることが店の前に立って初めて解るのでは困る。例えばビルの飲食店街であれば、ビルの入口の店舗一覧の看板の所で解る必要があるし、ロードサイド店舗であれば車で駐車場に入る前に解る必要がある。
これらを考えれば、喫煙店はその全ての看板において、その面積の3分の1は喫煙店であることの表示とするよう義務付けるのが有効だと思う。また、駅構内などに店の広告を出す場合も同様である。
また、雑誌やガイドブックなどで紹介される場合も、何等かの識別手段が必要である。一番良いのは、喫煙店は商号の中に必ず「喫煙」の文字を入れることを義務付けることだ。例えば「喫煙バー○○」、「喫煙居酒屋××」などのように。これも是非検討頂きたい。
4.優越的地位の濫用等に対する歯止め
そもそも飲食店を全面的に禁煙化する必要があるのは、世の中では実質的に個人が飲食店を選択できないことが多いからだ。例えば、取引先の接待で接待される側が喫煙者であれば禁煙店はセットしにくいし、企業においても部長が喫煙者の部署の忘年会も喫煙店で開催されることが多い。
日本以外の全ての国のように飲食店が全面禁煙化されていれば、こんなことは議論する必要もないのだが、どうしても喫煙店を残すのであれば、この点は真正面から議論する必要がある。
やるべきことは、自分が喫煙者であるからと言って喫煙店で接待を受けることは優越的地位の濫用であり、また非喫煙者の社員を喫煙店での忘年会に参加させることはパワハラであるということを法によって明確化することだ。
もちろん、こういうことは水面下に隠れてしまいやすいので、全て取り締まることは難しいが、それが「悪」であることを法律で明確にしておくことは一定の歯止めになる。
この点はぜひお願いしたい。
5.まとめ
はっきり言って書いていて気分が悪くなる議論だ。日本が他の全ての国と同じように当然のように飲食店の全面禁煙化が実現するのであれば全て不要な議論なのだから。
とは言え、理不尽を噛みしめながらも、少しでも世の中が良い方向に変わっていくことを願って書いた。これらの論点が一人でも多くの人と共有できれば嬉しく思う。
まず、現状の厚労省案を復習しておこう。飲食店は原則禁煙とした上で、喫煙店とする場合には以下の条件を課している(飲食店以外はどうでも良いので割愛)。
1.喫煙店への20歳未満の立ち入り禁止
2.喫煙店を選択できるのは以下の条件を満たす店のみ
① 客席100平米以下
② 個人または中小企業(資本金5,000万円以下)が経営
③ 既存店のみ(新規は不可)
④ 喫煙店であることの標識の掲示
これに対して受動喫煙防止議連は「スナック・バー以外は店舗面積にかかわらず、原則、屋内禁煙とするべき」と主張している。
個人的には受動喫煙防止議連を応援する者ではあるが、もっと実質的な「実」を取れる戦い方があるのではないかと思っている。その為の論点を示したいと思う。
1.「喫煙店への20歳未満立ち入り禁止」について
この条項自体は大変、良く出来ていると思う。これによって、ファミリー層の顧客を想定している店、高校生・大学生のアルバイトに依存している店は自主的に禁煙店化されることになるだろう。
おそらく、スナック・バーの大半と居酒屋の相当部分は「喫煙店」を選ぶだろうが、それ以外はかなりの割合で「禁煙店」を選ぶことになるのではないだろうか。
この条項については「一旦、喫煙店と決めたら、フラフラすることは許さない」、すなわち時間帯や曜日などで「喫煙店」の看板を出したり、引っ込めたりする運用は認めない、という点を明確化して頂きたい。そうすれば、中間領域の飲食店の禁煙店化はさらに促進されるだろう。
2.「個人または中小企業が経営」について
この条項も今の日本の政治力学を踏まえて、よく考えられた条項だと思う。
ただ、この条項は運用によってはザル法になりかねない。例えば、大企業が資本金5000万円以下の子会社を設立して、そこに自社の店舗を譲渡すれば規制の対象外になってしまう。規制に実効性を持たせるためには、資本金5000万円を超える大企業を親会社を持つ中小企業は大企業扱いであることを明確化する必要がある。
また、フランチャイズチェーンの扱いにも課題がある。チェーン店によっては同じ看板を掲げていても、個人や中小企業によるフランチャイズ店であることも多い。大企業によるチェーン店だから大丈夫だと思って行ってみたら、実はフランチャイズ店で喫煙店だったなどということになれば目も当てられない。混乱を避けるために、大企業のフランチャイズ店については個人や中小企業であっても規制の対象とするべきだ。
3.「喫煙店であることの標識の掲示」について
これについても幾つか注文を付けたい。
まず、店頭に「喫煙店」の掲示が必要なのはもちろんであるが、「喫煙店」であることが店の前に立って初めて解るのでは困る。例えばビルの飲食店街であれば、ビルの入口の店舗一覧の看板の所で解る必要があるし、ロードサイド店舗であれば車で駐車場に入る前に解る必要がある。
これらを考えれば、喫煙店はその全ての看板において、その面積の3分の1は喫煙店であることの表示とするよう義務付けるのが有効だと思う。また、駅構内などに店の広告を出す場合も同様である。
また、雑誌やガイドブックなどで紹介される場合も、何等かの識別手段が必要である。一番良いのは、喫煙店は商号の中に必ず「喫煙」の文字を入れることを義務付けることだ。例えば「喫煙バー○○」、「喫煙居酒屋××」などのように。これも是非検討頂きたい。
4.優越的地位の濫用等に対する歯止め
そもそも飲食店を全面的に禁煙化する必要があるのは、世の中では実質的に個人が飲食店を選択できないことが多いからだ。例えば、取引先の接待で接待される側が喫煙者であれば禁煙店はセットしにくいし、企業においても部長が喫煙者の部署の忘年会も喫煙店で開催されることが多い。
日本以外の全ての国のように飲食店が全面禁煙化されていれば、こんなことは議論する必要もないのだが、どうしても喫煙店を残すのであれば、この点は真正面から議論する必要がある。
やるべきことは、自分が喫煙者であるからと言って喫煙店で接待を受けることは優越的地位の濫用であり、また非喫煙者の社員を喫煙店での忘年会に参加させることはパワハラであるということを法によって明確化することだ。
もちろん、こういうことは水面下に隠れてしまいやすいので、全て取り締まることは難しいが、それが「悪」であることを法律で明確にしておくことは一定の歯止めになる。
この点はぜひお願いしたい。
5.まとめ
はっきり言って書いていて気分が悪くなる議論だ。日本が他の全ての国と同じように当然のように飲食店の全面禁煙化が実現するのであれば全て不要な議論なのだから。
とは言え、理不尽を噛みしめながらも、少しでも世の中が良い方向に変わっていくことを願って書いた。これらの論点が一人でも多くの人と共有できれば嬉しく思う。