明日への道標~みんなが幸せになるために

さあ、また書き始めよう。どうしても伝えたいことがあるから。

受動喫煙防止に対する厚労省案について

2018-02-17 | 政治
厚労省案もかなり固まってきたようだ。飲食店の全面禁煙化という世界で当たり前の法律が国会で議決できないという今の日本の状況は極めて遺憾であるが、最後の条件闘争の中で少しでも受動喫煙被害を減らすために主張すべきポイントについて書いておきたい。

まず、現状の厚労省案を復習しておこう。飲食店は原則禁煙とした上で、喫煙店とする場合には以下の条件を課している(飲食店以外はどうでも良いので割愛)。
1.喫煙店への20歳未満の立ち入り禁止
2.喫煙店を選択できるのは以下の条件を満たす店のみ
① 客席100平米以下
② 個人または中小企業(資本金5,000万円以下)が経営
③ 既存店のみ(新規は不可)
④ 喫煙店であることの標識の掲示

これに対して受動喫煙防止議連は「スナック・バー以外は店舗面積にかかわらず、原則、屋内禁煙とするべき」と主張している。

個人的には受動喫煙防止議連を応援する者ではあるが、もっと実質的な「実」を取れる戦い方があるのではないかと思っている。その為の論点を示したいと思う。

1.「喫煙店への20歳未満立ち入り禁止」について
この条項自体は大変、良く出来ていると思う。これによって、ファミリー層の顧客を想定している店、高校生・大学生のアルバイトに依存している店は自主的に禁煙店化されることになるだろう。

おそらく、スナック・バーの大半と居酒屋の相当部分は「喫煙店」を選ぶだろうが、それ以外はかなりの割合で「禁煙店」を選ぶことになるのではないだろうか。

この条項については「一旦、喫煙店と決めたら、フラフラすることは許さない」、すなわち時間帯や曜日などで「喫煙店」の看板を出したり、引っ込めたりする運用は認めない、という点を明確化して頂きたい。そうすれば、中間領域の飲食店の禁煙店化はさらに促進されるだろう。

2.「個人または中小企業が経営」について
この条項も今の日本の政治力学を踏まえて、よく考えられた条項だと思う。

ただ、この条項は運用によってはザル法になりかねない。例えば、大企業が資本金5000万円以下の子会社を設立して、そこに自社の店舗を譲渡すれば規制の対象外になってしまう。規制に実効性を持たせるためには、資本金5000万円を超える大企業を親会社を持つ中小企業は大企業扱いであることを明確化する必要がある。

また、フランチャイズチェーンの扱いにも課題がある。チェーン店によっては同じ看板を掲げていても、個人や中小企業によるフランチャイズ店であることも多い。大企業によるチェーン店だから大丈夫だと思って行ってみたら、実はフランチャイズ店で喫煙店だったなどということになれば目も当てられない。混乱を避けるために、大企業のフランチャイズ店については個人や中小企業であっても規制の対象とするべきだ。

3.「喫煙店であることの標識の掲示」について
これについても幾つか注文を付けたい。

まず、店頭に「喫煙店」の掲示が必要なのはもちろんであるが、「喫煙店」であることが店の前に立って初めて解るのでは困る。例えばビルの飲食店街であれば、ビルの入口の店舗一覧の看板の所で解る必要があるし、ロードサイド店舗であれば車で駐車場に入る前に解る必要がある。

これらを考えれば、喫煙店はその全ての看板において、その面積の3分の1は喫煙店であることの表示とするよう義務付けるのが有効だと思う。また、駅構内などに店の広告を出す場合も同様である。

また、雑誌やガイドブックなどで紹介される場合も、何等かの識別手段が必要である。一番良いのは、喫煙店は商号の中に必ず「喫煙」の文字を入れることを義務付けることだ。例えば「喫煙バー○○」、「喫煙居酒屋××」などのように。これも是非検討頂きたい。

4.優越的地位の濫用等に対する歯止め
そもそも飲食店を全面的に禁煙化する必要があるのは、世の中では実質的に個人が飲食店を選択できないことが多いからだ。例えば、取引先の接待で接待される側が喫煙者であれば禁煙店はセットしにくいし、企業においても部長が喫煙者の部署の忘年会も喫煙店で開催されることが多い。

日本以外の全ての国のように飲食店が全面禁煙化されていれば、こんなことは議論する必要もないのだが、どうしても喫煙店を残すのであれば、この点は真正面から議論する必要がある。

やるべきことは、自分が喫煙者であるからと言って喫煙店で接待を受けることは優越的地位の濫用であり、また非喫煙者の社員を喫煙店での忘年会に参加させることはパワハラであるということを法によって明確化することだ。

もちろん、こういうことは水面下に隠れてしまいやすいので、全て取り締まることは難しいが、それが「悪」であることを法律で明確にしておくことは一定の歯止めになる。

この点はぜひお願いしたい。

5.まとめ
はっきり言って書いていて気分が悪くなる議論だ。日本が他の全ての国と同じように当然のように飲食店の全面禁煙化が実現するのであれば全て不要な議論なのだから。

とは言え、理不尽を噛みしめながらも、少しでも世の中が良い方向に変わっていくことを願って書いた。これらの論点が一人でも多くの人と共有できれば嬉しく思う。

君子豹変して、加藤厚労相を全力で応援したい

2018-02-08 | 政治
ここに来て、厚労省の新しい受動喫煙対策案(加藤案と呼ぼう)が徐々に明らかになってきている。これに対して、世の中からは「自民党案丸のみだ」「骨抜きだ」「これじゃ意味が無い」などの厳しい言葉がぶつけられている。

だけど、私はそうは思わない。加藤案は現在の状況も踏まえて、極めてよく考えられた案だと、高く評価している。その理由を説明したい。

受動喫煙対策の主戦場は飲食店だ。その飲食店に関する加藤案の大きなポイントは以下の点だ。
1.喫煙店への20歳未満の立ち入り禁止
2.喫煙店を選択できるのは以下の条件を満たす店のみ
① 客席100平米以下
② 個人または中小企業が経営
③ 既存店のみ(新規は不可)

そして、その最大のポイントは上記の「2-③」、すなわち、「新規の喫煙店は認めない」という点だ。

皆さんは、飲食店の寿命について調べたことはあるだろうか。調査によって多少バラツキはあるが、多く見積もったものでも2年生き残るのが50%、5年で20%、10年生き残るのはせいぜい10%だ。

要するに2年後には半分、5年後には8割、10年後には9割の飲食店は入れ替わっているのだ。ここで「新規の喫煙店は認めない」という条項が強く効果を発揮してくる。

これを前提に、今後のシナリオを考えてみよう。

今、8割方の飲食店は喫煙店である(「分煙店」を含む)。加藤案が実現すれば、まず施行時に今の喫煙店の半分程度は禁煙店に転換するだろう。そうなると喫煙店:禁煙店の割合は4:6になる。

そして、その2年後に2:8、5年後なら1:9、10年後は0.5:9.5にまでなる(若干、丸めています)。それと同時に、喫煙店が圧倒的少数になれば、喫煙店は「特殊な店」という位置づけになっていくので、そこで忘年会をやったり、商談をしたりして非喫煙者が付き合わされる機会も減って行くだろう。

加藤案は一見、喫煙派の完全勝利に見えるし、多くの報道もそう報じている。しかし実際は相手に勝たせているようで、実は勝っているという、なんとも元財務官僚らしい巧妙な案なのだ。

むしろ、30平米以下のバー、スナックが喫煙店として未来永劫残ってしまう塩崎案よりも、厳しい案なのではないかとすら思う。

加藤案は喫煙派が「勝った、勝った」と喜ひながら着地する所がミソなので、このエントリーを書こうかどうか迷っていた。ただ、加藤案の最大のポイントである「新規の喫煙店は認めない」という所が注目を集めないまま有耶無耶にされて欲しくなかった。だから、このエントリーを書いた。

加藤案がそのまま国会で承認されることを強く願いたい。ガンバレ、加藤厚労相!


P.S.
Twitter上で、全ての飲食店に新規開業の飲食店の生存率を適用するのは適当でないのではないか、とのコメントがあったので、もう少し調べてみました。

帝国データバンクによると2016年に休廃業・解散した飲食店の業歴は以下の通りだそうです。なお、後ろの括弧内は比較のために「開業年10年当たり」に私が換算したものです。
10年未満  21.7% (21.7%)
10年〜30年未満 35.1% (17.6%)
30年〜50年未満 27.7% (13.9%)
50年〜100年未満 15.0% (3.0%)
100年以上     0.4%  (N/A)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p170302.pdf

メカニズムは正直よく解りませんが、年を経るにつれて生き残っている飲食店は減っているはずなのに、休廃業・解散に占める割合の減少が緩やかな気がします。例えば、10年生き残る飲食店は1割未満のはずなのに、「50年〜100年」の所の数字ですら「10年未満」の1割より大きいのですから。

精緻な議論は、もう少し詳しいデータが無いと難しいですが、年数を経れば飲食店の経営が目に見えて安定するというものでもなさそうです。

それを考えれば、本文の割り切りも一定の合理性があると思いますが、如何でしょうか?