1. はじめに
2020年4月に全面施行される改正健康増進法の施行令に関するパブコメの募集が1月19日を期限として始まっている。施行令というのは、国会で可決された法律の実際の運用の詳細を所管官庁が定めるものだ。ただ、実際には与党国会議員の同意が得られないものを定めるのは難しいと思われるので、彼らの意図を反映したものとなるのだろう。
法律自体は受動喫煙の防止をいう意味では全く不十分なもので、屋内の公共の場所は全面禁煙という世界の常識からもかけ離れたものとなっている。しかし、その点については、今回はひとまず横に置こう。一方で、その施行令の内容によっては、さらなる骨抜きになるのか、少しはマシなものになるのかが大きく異なってくる。
多分、裏では、ここまでにかなりギリギリの攻防が行われたはずで、パブコメで集まった意見がどこまで反映されるかは解らない。一方で、これまでの例を踏まえれば、おそらくタバコロビー側は組織的に大量のパブコメを送ってくると思われるので、それをもって「国民は規制を緩めることを望んでいる」との口実にされないよう、良識を持った国民がしっかりした規制を求める意見を送付しておくことは大切である。
その際の材料として頂けるよう、私が気になった点を纏めておきたい。なお、下記リンク先の「健康増進法施行令の一部を改正する政令案等(概要)」を参照した。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180293&Mode=0
2. 喫煙を主目的とする施設の要件(リンク先資料(2)①)
喫煙を主目的とする施設の要件の一つとして以下の規定がある。
>ii 喫煙を主目的とするバー、スナック等
>・ たばこの対面販売(出張販売を含む。)をしていること
>・ 設備を設けて客に飲食をさせる営業(「通常主食と認められる食事」を主として提供するものを除く。)を行うものであること
私が飲食店の全面禁煙に拘るのは、通常の社会生活を送っていれば必ずしも常に自分で飲食店を選択できる訳ではないことから、飲食店を公共の場所として全面禁煙にしない限り受動喫煙を防止することはできないと考えるからだ。一方で、喫煙者だけが喫煙を目的として集まる施設を否定するものではない。
しかし、上記の要件はその場所で「タバコの出張販売」を行っている体裁さえ作れば、かなり広い範囲の一般の飲食店を喫煙店として残すことができてしまうように見える。
「タバコの出張販売」とはすでにタバコの小売の許可を得ている業者が、許可を得ている場所以外の場所に出張して販売することで、一応、許可は必要なようだが、既存店との距離等の条件は無いようで、事実上、いくらでも出店できそうだ。
また「通常主食と認められる食事」を主として提供するものを除く飲食店とは、風営法関連においてはバー・ダイニングバー・ガールズバー・ダーツバー・居酒屋・立呑み屋・バル等のかなり幅広い業態を含むものとして運用されているようで、健康増進法でも似たような範囲を指すことになると思われる。
これらを踏まえると、例えば居酒屋の店員がタバコ小売業者の出張販売員を兼務しているということにして「出張販売」の許可を得るような方法で、かなり広い範囲の飲食店を「喫煙可」にすることが可能であるように見える。
本来、「喫煙を主目的とする施設」の要件なのだから、例えば売り上げに占めるタバコの割合が一定以上であることや、客全員がタバコを購入する必要があることなどの「喫煙が主目的」であることを担保するための何らかの条件を付けないと、規制の大きな抜け穴になるのではないか。
3. 喫煙専用室等の技術的基準(リンク先資料(3)②)
これについては、論点がいくつかあるので順番に見ていこう。
① 加熱式タバコ専用喫煙室に面積基準
今回、紙巻タバコの喫煙室については、その中での飲食は認められないということなったので、飲食店側にとって喫煙室の面積を小さくしようというインセンティブが働く。一方で、加熱式タバコの喫煙室は、その中で飲食もできるということから、極端な話、9割が喫煙室ということも出来てしまう。
先ほど書いたように、通常の社会生活を送っていれば常に飲食店を自分で選択できる訳ではなく、取引関係や会社の上下関係等によって、そのような飲食店の利用を事実上強要される人が出てくる。
「加熱式タバコ専用の飲食可能な喫煙室」を法が認めてしまった以上、そういう被害が避けられない状況となってしまっており、そのことは極めて遺憾ではあるが、せめて、法にある通りそれが飲食店の「一部」であることをしっかり担保することが重要だ。
原案ではこの点には全く言及が無いが、例えば、面積の上限を店舗の面積の1割とする等の規定が望まれる。
② 出入口の気流の速度
本来、気流がどうあれ飲食店内に喫煙室を設置した段階で店内の空気は汚染されるので、虚しい議論であることは承知している。ただ、最低限、紙巻タバコ用、加熱式タバコ用共、原案の「毎秒0.2m」は死守して欲しい。
これを、ここでわざわざ書くのは、最近、JTの親密メディアで「加熱式タバコ専用の喫煙室にまで毎秒0.2mを求めるのは過剰だ」というような記事を頻繁に見るからだ。タバコロビー側はここを崩したがっており、彼らが組織的に送付するパブコメがこの点に集中する可能性がある。
やっとネット上でも浸透してきたようだが、加熱式も紙巻と同様に有毒ガスを発生させており周囲に有害だ。加熱式タバコ用の喫煙室の基準を緩めることのないようコメントしたい。
③ 加熱式タバコ喫煙室を用いたフロア分煙
これは象徴的なので、メディア等でも大きく取り上げられたが、論点としては上記の①、②の合わせ技である。すなわち、広大な飲食可の喫煙室ができてしまうこと、気流の規制の対象外になっていることが問題であり、当然、反対すべきものである。
④ 経過措置
あまり注目されていないが「※3」に経過措置についての記載がある。しかし経過措置の内容も、期限も現時点では全く記載されておらず、また政治的圧力によって大きな穴が開けられてしまうリスクが大だ。経過措置を削除するか、内容・期限を明確化するようコメントしたい。
これらの論点も踏まえ、ぜひ皆様にはパブコメを送付して頂きたい。下記のリンク先の一番下に「意見提出フォーム」がある。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180293&Mode=0
2020年4月に全面施行される改正健康増進法の施行令に関するパブコメの募集が1月19日を期限として始まっている。施行令というのは、国会で可決された法律の実際の運用の詳細を所管官庁が定めるものだ。ただ、実際には与党国会議員の同意が得られないものを定めるのは難しいと思われるので、彼らの意図を反映したものとなるのだろう。
法律自体は受動喫煙の防止をいう意味では全く不十分なもので、屋内の公共の場所は全面禁煙という世界の常識からもかけ離れたものとなっている。しかし、その点については、今回はひとまず横に置こう。一方で、その施行令の内容によっては、さらなる骨抜きになるのか、少しはマシなものになるのかが大きく異なってくる。
多分、裏では、ここまでにかなりギリギリの攻防が行われたはずで、パブコメで集まった意見がどこまで反映されるかは解らない。一方で、これまでの例を踏まえれば、おそらくタバコロビー側は組織的に大量のパブコメを送ってくると思われるので、それをもって「国民は規制を緩めることを望んでいる」との口実にされないよう、良識を持った国民がしっかりした規制を求める意見を送付しておくことは大切である。
その際の材料として頂けるよう、私が気になった点を纏めておきたい。なお、下記リンク先の「健康増進法施行令の一部を改正する政令案等(概要)」を参照した。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180293&Mode=0
2. 喫煙を主目的とする施設の要件(リンク先資料(2)①)
喫煙を主目的とする施設の要件の一つとして以下の規定がある。
>ii 喫煙を主目的とするバー、スナック等
>・ たばこの対面販売(出張販売を含む。)をしていること
>・ 設備を設けて客に飲食をさせる営業(「通常主食と認められる食事」を主として提供するものを除く。)を行うものであること
私が飲食店の全面禁煙に拘るのは、通常の社会生活を送っていれば必ずしも常に自分で飲食店を選択できる訳ではないことから、飲食店を公共の場所として全面禁煙にしない限り受動喫煙を防止することはできないと考えるからだ。一方で、喫煙者だけが喫煙を目的として集まる施設を否定するものではない。
しかし、上記の要件はその場所で「タバコの出張販売」を行っている体裁さえ作れば、かなり広い範囲の一般の飲食店を喫煙店として残すことができてしまうように見える。
「タバコの出張販売」とはすでにタバコの小売の許可を得ている業者が、許可を得ている場所以外の場所に出張して販売することで、一応、許可は必要なようだが、既存店との距離等の条件は無いようで、事実上、いくらでも出店できそうだ。
また「通常主食と認められる食事」を主として提供するものを除く飲食店とは、風営法関連においてはバー・ダイニングバー・ガールズバー・ダーツバー・居酒屋・立呑み屋・バル等のかなり幅広い業態を含むものとして運用されているようで、健康増進法でも似たような範囲を指すことになると思われる。
これらを踏まえると、例えば居酒屋の店員がタバコ小売業者の出張販売員を兼務しているということにして「出張販売」の許可を得るような方法で、かなり広い範囲の飲食店を「喫煙可」にすることが可能であるように見える。
本来、「喫煙を主目的とする施設」の要件なのだから、例えば売り上げに占めるタバコの割合が一定以上であることや、客全員がタバコを購入する必要があることなどの「喫煙が主目的」であることを担保するための何らかの条件を付けないと、規制の大きな抜け穴になるのではないか。
3. 喫煙専用室等の技術的基準(リンク先資料(3)②)
これについては、論点がいくつかあるので順番に見ていこう。
① 加熱式タバコ専用喫煙室に面積基準
今回、紙巻タバコの喫煙室については、その中での飲食は認められないということなったので、飲食店側にとって喫煙室の面積を小さくしようというインセンティブが働く。一方で、加熱式タバコの喫煙室は、その中で飲食もできるということから、極端な話、9割が喫煙室ということも出来てしまう。
先ほど書いたように、通常の社会生活を送っていれば常に飲食店を自分で選択できる訳ではなく、取引関係や会社の上下関係等によって、そのような飲食店の利用を事実上強要される人が出てくる。
「加熱式タバコ専用の飲食可能な喫煙室」を法が認めてしまった以上、そういう被害が避けられない状況となってしまっており、そのことは極めて遺憾ではあるが、せめて、法にある通りそれが飲食店の「一部」であることをしっかり担保することが重要だ。
原案ではこの点には全く言及が無いが、例えば、面積の上限を店舗の面積の1割とする等の規定が望まれる。
② 出入口の気流の速度
本来、気流がどうあれ飲食店内に喫煙室を設置した段階で店内の空気は汚染されるので、虚しい議論であることは承知している。ただ、最低限、紙巻タバコ用、加熱式タバコ用共、原案の「毎秒0.2m」は死守して欲しい。
これを、ここでわざわざ書くのは、最近、JTの親密メディアで「加熱式タバコ専用の喫煙室にまで毎秒0.2mを求めるのは過剰だ」というような記事を頻繁に見るからだ。タバコロビー側はここを崩したがっており、彼らが組織的に送付するパブコメがこの点に集中する可能性がある。
やっとネット上でも浸透してきたようだが、加熱式も紙巻と同様に有毒ガスを発生させており周囲に有害だ。加熱式タバコ用の喫煙室の基準を緩めることのないようコメントしたい。
③ 加熱式タバコ喫煙室を用いたフロア分煙
これは象徴的なので、メディア等でも大きく取り上げられたが、論点としては上記の①、②の合わせ技である。すなわち、広大な飲食可の喫煙室ができてしまうこと、気流の規制の対象外になっていることが問題であり、当然、反対すべきものである。
④ 経過措置
あまり注目されていないが「※3」に経過措置についての記載がある。しかし経過措置の内容も、期限も現時点では全く記載されておらず、また政治的圧力によって大きな穴が開けられてしまうリスクが大だ。経過措置を削除するか、内容・期限を明確化するようコメントしたい。
これらの論点も踏まえ、ぜひ皆様にはパブコメを送付して頂きたい。下記のリンク先の一番下に「意見提出フォーム」がある。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495180293&Mode=0