有機化学にっき

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JACS ASAP

2005-07-02 11:18:44 | 新着論文
Cyclotrisilenylium Ion: The Persilaaromatic Compound

cyclotrisilenylium ionの合成、単離、構造決定。
筑波大学、関口先生のグループです。すべてゲルマニウムの三員環カチオンは1997年に銅グループより報告されていますが、ケイ素のものは同様な合成スキームでは達成できず、今回達成することができました。得られたシクロトリシレニウムイオンは、アニオンとの相互作用のないフリーなカチオンであり、予想通り芳香族性を有していることが、結晶構造、NICS計算で得られています。

鍵となったのは、ケイ素上の置換基でtBu3Siを選択したことのようです。全てtBu2MeSiではカチオンとしたとき転移が起こってしまう(JACS, 2000, 122, 11250)のを、前駆体のシクロトリシレンの置換基の変換よりクリアしました。
何回か読んだのですが、なぜtBu3Siがよいのか?はわかりませんでした。結晶構造で前駆体のシクロトリシレンのSi=Si結合長が伸びているので、HOMOが上がっているのでカチオンを生じやすいのか、発生したカチオンが立体的に転移に不利ななのか?
保護基をわずかに変えただけで大きく変わるという例はたくさんありますが、高周期の化学では統一的に理解できていません。
以前学会で、反応屋の方、構造化学の方それぞれに、なぜこの置換基がよかったのですか?と聞いたところ、どちらも「いろいろやっています」と結果論だけで答えられてしまいました。質問の仕方が悪かったのですが、どういう質問の仕方をすれば思考プロセス、実験の進め方をきけるのでしょうか? 極論では実験報告をみせてくれということになってしまう質問をエッセンスだけで聞くには・・・?

より平面性が難しくなりそうな高周期7員環カチオンができるのはいつごろでしょうか

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