有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS ASAP

2006-11-23 10:13:39 | 新着論文
Tandem Enyne Metathesis and Claisen Rearrangement: A Versatile Approach to Conjugated Dienes of Variable Substitution Patterns

プロパギルアセテートへenyneメタセシスを行い、得られたジエンに対して、Ireland-Claisenにて多置換共役ジエンを得る。

メタセシスとクライゼン転移の組み合わせ。
環状、非環状の共役ジエンをエンインメタセシスでつくり、従来困難な置換パターンの共役ジエンの合成を可能にしたとのこと。
また、共役ジエンに対してIreland-Claisenを行ったのは初めてとのこと。
4位置換3,5シクロヘキサジエン-ジオールの合成へ応用。

子引きができないんで、文中に出てくるmethylene-free ring synthesisの意味がわからずでした。Ru carbeneのビニリデンのことかなと類推して読み進めましたが?

Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2006, 45, 7083.

2006-11-20 20:11:43 | 新着論文
Intermolecular Oxidative Enolate Heterocoupling

分子間でのエノレートの酸化的カップリング。この反応を利用した(-)-burseherninの短段階合成の報告有り。

Baranのグループ。
アミドのエノレートと様々なエノレートをCu, Fe塩を用いることで酸化的にカップリング。凄いことに、エノレートはそれぞれ1等量づつ!
アミドは不斉補助基を用いることで不斉合成にも成功しています。しかし、基質により不斉がでたりでなかったりで、その理由は不明とのこと。
また短段階での3steps, 1 purification overall 41%収率で(-)-burseherninを合成しています。
この反応は酸化剤が非常にクリティカルに効いてくるとのことで、酸化剤の還元電位と反応性をまとめています。

不斉への展開も期待でき、マイナスのシントン同士でC-C bond形成反応と非常に優れた反応だと思います。
酸化剤の条件検討が大変そうなのですが、電気分解で行えないでしょうか?

Angew. chem. Int. Ed. Engl. 2006, 45, 7079.

2006-11-20 19:56:27 | 新着論文
Domino Cu-Catalyzed CN Coupling/Hydroamidation: A Highly Efficient Synthesis of Nitrogen Heterocycles

haloenyneへ銅-ジアミン触媒によって、BocNH2 or BocNH-NHBocのアミノ化、環化によって、ピロール誘導体、ピラゾール誘導体を得る。

Buchwaldのグループ。グラフィカルアブストをみたときインドール作れるぞと思ったのですが、このタイプの反応でインドール合成が報告されているらしく、それをもとにヘテロ環合成を展開したようです。
銅‐ジアミン系と、保護基としてBocの選択がクリティカルのようで、環化の選択性を決めているようです。
ハロゲン置換位置へのカップリングかアルキンへの付加かどちらが先か?という問いに、中間体のアルキン置換エナミンと不安定そうな中間体を取り出し、環化が進むことを確認して答えています。

原料合成が面倒くさそうだなぁと思いましたが、多置換ピロール合成としては面白い反応だと思いました。

JACS ASAP

2006-11-18 22:46:40 | 新着論文
Controlling Regiochemistry in Negishi Carboaluminations. Fine Tuning the Ligand on Zirconium

Negishi Carboaluminationのレジオ、収率の改善、反応温度を室温へ、溶媒をノンハロゲンのトルエンへと改善。メインはジルコノセンのCp配位子をBrintzinger ligand (インデニルのエチレン架橋)と変えたことによる

Lipshutzのグループ。
市販ジルコノセンで検討したり、溶媒の毒性を気にしたり、触媒量削減を考えたりと目線は工業化を向いているようです。
99:1以上の選択性でアルキンのメチルアルミ化を達成しています。ビニルアルミと様々なエレクトロフィルとの反応、Cuとのトランスメタル化‐共役付加、Ni触媒によるカップリング、最近サプリとして落ち目のCoQ10への誘導を報告。

塩メチ代わりにベンゾトリフルオライドを用いているのを久々に見ました。話しの流れとして蛇足なデータな気がしましたが、アメリカも規制がうるさいんですかねー

わからないのが、条件検討でBrintzinger ligand よりもよいCp配位子が見つかっているのに、以降の検討で使っていないことです。値段でしょうか?

あと、気になったこととして反応機構。アルケンへMe-ZrLが付加していますが、昔の根岸先生の論文を読んだとき、Me付加はZr-Al錯体が6員環を経由しているパスも考えていたような気がします。そのときはどちらを経由するかははっきりしていなかった書き方でもやもやした記憶があるのですが、あれから研究はすすんだのでしょうか?? 

The Wooden Periodic Table Table

2006-11-18 15:43:46 | 記事
2002年度イグ・ノーベル賞!Gray氏によるPeriodic Table Table

こりゃぁすごい
ガチで対抗するには日本化学界は、米粒や折り紙やガラス細工で周期表かな


帝人がバイオ燃料に参入、欧州に生産会社

2006-11-18 04:03:27 | 記事
帝人は植物を原料とするバイオ燃料事業に参入する。欧州で軽油代替となるバイオディーゼル燃料の生産会社を現地企業と共同で設立した。同事業を手掛けることで次世代の収益の柱と位置づける環境・エネルギー事業を強化する。温暖化ガス削減の規制を追い風に、国内主要企業がバイオ燃料事業に乗り出す動きが本格化してきた。

 バイオディーゼル燃料は、バイオエタノールとともに次世代のバイオ燃料の主力とされている。

日経新聞 2006年11月16日

三井物産>ブラジル国営石油会社ペトロブラスと同国での生産・輸出拡充に向けた事業化調査。ペトロブラス、ブラジル鉄鉱石大手リオドセとブラジルでのエタノール物流効率化に向けて事業化調査。
丸紅>サッポロビール、月島機械とタイでサトウキビを原料にエタノール生産。サッポロビール、大成建設などと堺市で建設廃材を原料にエタノール生産。
伊藤忠商事>ブラジル政府系企業とブラジル東部でのバイオエタノール、バイオディーゼルの生産工場建設。2010年目処に対日輸出。
トヨタ自動車>07年ブラジルでエタノールだけで走るカローラ。08年北米で混合比85%まで対応の小型トラック発売へ。
ホンダ>ブラジルで混合比20-100%対応のシビック、フィットを06年内に。稲わらや茎などから得たんールヲ製造する技術をRITEと共同開発。2,3年内に量産技術を確立
日産自動車>欧米でエタノール車販売を準備中
デンソー>エタノールによる腐食を防ぐ部品の開発強化
新日本石油>トヨタ自動車とバイオディーゼル燃料を共同開発。


JACS ASAP

2006-11-17 20:57:30 | 新着論文
Lewis Base Activation of Grignard Reagents with N-Heterocyclic Carbenes.
Cu-Free Catalytic Enantioselective Additions to ç-Chloro-r,â-Unsaturated
Esters


Grignard試薬をキラルなNHC-phenoxyの二座配位子で活性化することで、AAA(asymmetric allylic alkylations)により不斉四級炭素を構築。
基質はα-alkyl-γ-chloro-α,β-unsaturated estersで、筆者らによれば"To the best of our knowledge, this is the first
catalytic AAA method that involves Grignard reagents and affords
all-carbon quaternary stereogenic centers (Cu-catalyzed protocols
included)" とのこと

Hoveydaのグループ。カルベン配位子でGrignardを活性化まではわかるのですが、フェノキシ部位を入れてさらに立体を規制したり、反応性を制御というアイデァはどこからくるのでしょうか。Cu freeでの四級炭素構築を謳っていますが、NHCを典型金属試薬の活性化に使うというアイデアだけでもすごい論文と思います。
シクロプロパン化や、SN2が副反応としておこり、汚い反応なのかなと思いましたが、きっちりGC yieldでなくisolated yieldを出しています。中程度なのでよいのかと
Grignardは二級が副反応の反応性が落ちるため立体選択性がよくなるとのこと。

この反応性の制御はアート錯体と考えていいのでしょうか?
基質の置換基、試薬のarylへの展開や他の金属試薬の活性化など広がりのある仕事だと思います。

Mukaiyama Award

2006-11-16 02:01:21 | 記事
有機合成化学協会誌が届いたのでぱらぱらめくっていたら

標題の2007年の受賞者が
北大の谷野圭持先生
Princeton Univ.のD.W.C. MacMillan (CALTECだと思ってましたが移ったのを知りませんでした)

谷野先生はingenol, norzoanthamineの全合成、MacMillanはイミニウム触媒(MacMillan触媒)の業績
おめでとうございます!

Chem. Commun., 2006, 3296.

2006-11-16 01:51:37 | 新着論文
Skeletal diversity construction via a branching synthetic strategy

ジアゾアセテートのフルオラスタグを二炭素の出発原料に、DOSとへ展開。

1)カルベンのベンゼンへの付加、続くシクロヘプタトリエンへの異性化、アミンとの反応。
2)カルベンのベンゼンへの付加、ジエンへの付加反応
3)カルベンのアルキンへの付加、シクロプロペンへの反応

4)1,3-dipolar cycloaddition
5)α-deprotonation後の反応

とジアゾ部位をうまく使いDOSを行っています。

コンセプトが中心の仕事で詳細は後日報告とのこと。
ジアゾアセテートを利用した骨格の多様性が非常にうまく使われていて興味深かったです。

JACS ASAP

2006-11-12 08:31:39 | 新着論文
Stereoselective Lewis Acid-Catalyzed α-Acylvinyl Additions

シロキシアレンのルイス酸触媒(α-Acylvinylアニオン等価体)によるアルデヒドへの付加。生成物のα-AcylalkenylのZ選択性が高い。

Baylis-Hillman 反応では、共役付加-付加-脱離を経る為、β位の置換基と生成物のアルケンの立体に問題があるとのこと。
筆者らのグループは、nucleophileとしてシロキ氏アレンを用いることができると検討。収率、Z選択性でSc(OTf)3が最も良い結果を与えたとのこと。ルイス酸の種類がクリティカルに効いてくる様子。
不斉への展開も少しだけメンション。不斉のアレンを用いた場合ではイマイチ。不斉配位子をもつルイス酸を用いたらCr-salen錯体が良い結果を与えたとのこと。

配位子つきのScではダメなんですかね?金属の種類がストーリーとしてイマイチ理解しにくいので不斉への展開は同時に別で報告した方がよかったのかなと思います。
他のエレクトロフィルへの展開も期待します。