みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

青い花

2006-06-16 | ドキドキ/五感を刺激する絵本
今日は朝から、本降りの雨です。
梅雨なんだから仕方ないですけれど、朝の色合いの
暗さには、やっぱりちょっと気分がさがります。

 
安房直子/作 南塚直子/絵  岩崎書店


この絵本に出てくる傘やの主人は、若いけれど腕の
たつ人で、たくさんの傘の修理も、せっせと
勤勉に働いて、夜までにはすっかり直してあげます。

いつもの3倍ものお金を手にした傘やさんは、
屋根の修理、二階の窓に白いカーテン、
油絵の具一箱と、新しいギターと・・・
買いたいものを思い浮かべ、次の日買い物に出かけます。

そこで出会ったのが、雨が降っているのに、
傘もささないで、ぽつんと立っている小さい女の子。
水色の服を着たその子に、

「かさをもってないのかい」と2度聞いた傘やさん

うなずく女の子に、

「そりゃあ、いけないなあ」
「いくら子どもだって、じぶんのかさをもたなくちゃあ」

と、その女の子に傘を作ってあげることを思いつきます。

女の子がたくさんの布切れの中から選んだのは、
傘やさんが欲しかった、白いカーテンの3倍もの
値段の、青いきれでした。
傘やさんは、いい傘が作れる、と思いました。

傘やさんは、自分の本来の買い物のことを忘れ、
とびきり上等の青い傘を作ることで胸をいっぱいにして、
女の子と別れ、大急ぎで歩きました。

女の子の選んだきれの青は、
ある日の海の色だったり、
雨上がりの青い空の色だったり・・・。
”小さな青いやねの家にすっぽりと こもっている
ような”不思議な気持ちを味わいながら、
傘やさんは、傘を作り上げました。

次の日、出会った曲がり角で、女の子に傘をわたし、
女の子が喜んでさして帰ってから・・・。
不思議なことがおこりはじめました。

        

忙しいって、こころをなくすと書きますが、
この傘やさんが、あまりの忙しさに、
心をなくしたまま、たくさんの傘を作ってしまった
ことに気づいてぞっとする場面。
わたしもときどき、体験します。

気づけてよかったね。


『青』が印象的なこの絵本。
安房さんのどこか不思議なお話の雰囲気が、
南塚さんのやわらかい絵で、うまく描かれていて
この絵本はとても好きな一冊。
あじさいが咲きはじめる、今日のような雨の日に、
読み返したい絵本です。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この本未読です (ruca)
2006-06-16 15:58:02
フラニーさん、こんにちは。

とってもきれいな「青」色ですね。

もうそれだけで、心惹かれます。

傘やさんの結末も気になるし。
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●rucaさんへ (フラニー)
2006-06-16 23:33:33
安房さんのお話って、独特の余韻と、色とか匂いとか

感覚に訴えるものが

残る気がするのですが、この絵本も「青」のイメージが深く残るお話ですよー。

傘やさんのその後も、ぜひぜひ追ってあげてください。
返信する
こんにちは。 (マーガレット)
2006-06-16 23:36:04
フラニーさん、遊びに来てくださってありがとうございました。



安房さんの不思議な世界。私もだいすきで時々引き込まれたくなると読みます。今の季節にぴったりのお話ですね。あじさいの精がうちにも来てくれないかな?

返信する
●マーガレットさんへ (フラニー)
2006-06-17 00:03:22
わぁ、同時刻にPCに向かっていたのですね!

びっくりしました。

マーガレットさんも安房さんのお話、お好きなんですね。

「花豆の煮えるまで」を読んで、わたしはよく花豆を煮たくなります。

マーガレットさんのお庭には、あんなに素敵な、いろんな色の

あじさいの精たちがいるじゃないですかっ!
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おはようございます☆ (こうめ)
2006-06-17 08:51:50
安房さんの童話に絵をつける人の中では、

この南塚直子さんがいちばん好きです。



繊細で、色がぱぁーっときれいで。



このお話も、好きです。

最初はおはなしで読んで、でもこの絵本、

ほんとうにすてきにできてますよねー

小学生の頃、自分の傘を選ぶのってとっても特別でした。

何色にするかは、特に重要で、

ひとつの傘を、ずーっと使って。

こわれたら修理してもらって使っていましたよね。

ほんのひととき、傘屋さんになりたいって

言っていたこともありました。なつかしいなー



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●こうめさんへ (フラニー)
2006-06-18 23:00:41
わたしも安房さんと南塚さんのコンビの絵本は、雰囲気があって、気に入っています。

前にこうめさんが言われていたように、文章だけで十分世界が広がる

安房さんのお話だけど、絵がつくなら、こんな感じが好きだなぁと、思うのですよね。



こうめさん、傘やさんにもなりたかったのか・・・。

この時期になると、傘への思い入れも一段と強くなって、むかし

使っていたお気に入りの傘のことも、思い出しますね!
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