みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

山ねこせんちょう

2006-03-30 | ユーモラスな絵本
 
柴野民三・文 茂田井武・絵  銀貨社

ただ今、第?期かのダイエット中につき、
いつでもお腹がすいています。
食べないダイエットはできないので、
三度三度はきちんと食べるけれど、内容と
量と調味料を調節中。

だから、この山ねこのくいしんぼぶりには、
半分あきれつつ半分うらやましさも交じる。
いいなぁ・・・・そんなに食べられて。

この絵本、最初のはじまりから、シュールさ
全開です。
なにしろこの山ねこ=ボンシイクの最初の言葉が、

 「やれやれ、やっとぬいあがった」 で、

何を縫っているのかといえば、自分のお腹なのです。
それも食べ過ぎてはちきれてしまったお腹です。
13年と13ヶ月13時間もかかって、
やっと縫ったお腹。
その間なにも食べていないので、やっぱり
お腹がすいています。

自分のホテルを売ったお金で、旅に出て、
世界のごちそうを食べてやろうと考えたボンシイク。
汽車にのって、まずひとりパクリ。
そして、その荷物をパクリ。

この手ののみこんでいくお話は、他にも
ありますよね。
でも、恐ろしさや残酷さはなく、どこか
おかしさがこみ上げる。
悪意なくぺロリと飲み込んでいくのです。
そして自在に吐き出せるところがすごい。

セリフだって、ふるっています。
船を世話してくれた人にだって、感謝の言葉を
のべつつ

 「たいへん せわになった。
  おれいに たべてやろうか」

としゃらっと言うのです。

嵐にあって船をなくしても、へこまないどころか、
伴侶を見つけアイディアひとつで商売繁盛、
なんとたくましい。
まったく・・・ナンセンスでシュールな絵本です。

ボンシイクや奥さんになったメノドンモイダ、
船で回ったいろいろな国=コネラド国、アガイタ国、
ヤニンヤニ国。
名前のセンスがまたいいですよね~。
ノウイウコ、ヨイクトモシタワ
(わたしもとくいよ、こういうの!)


このえばなし文庫シリーズは、他に奈街三郎・
茂田井武コンビでも何冊かあって、コマワリ漫画風の
懐かしい感じが、また新鮮で楽しい絵本です。


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ぼんさいじいさま

2006-03-28 | 木葉井悦子の絵本
木葉井悦子 ビリケン出版

昨日に引き続き、桜の出てくるお話&木葉井さんの絵本。

桜って、散り際のハラハラとはかなげな様子が”死”を
連想させるのか、”死ぬこと”と結びついている絵本が
案外、多いなぁと思います。

じいさまのように、毎日のおつとめをつつがなくこなし、
自分で納得してこの世とお別れできたら、
なんて幸せだろう。

じいさまの庭が素敵です。
縁側があって、広い庭には、にわとりやねこや馬がいて、
じいさまの宝物のぼんさいが、階段状にたくさん並んでる。
裏山の弁天さまにお供えをし、動物たちにえさをやり、
ぼんさいに水をやり、縁側にすわってパイプを一服。
毎日きちんと暮らすのです。
この繰り返しのなんと尊いこと・・・。

中でもじいさまの一番大切な、しだれ桜のぼんさいを
うっとりながめていたところへ、

「ヤッホー じいさま」 「・・・お迎えにきました」

小さなひいらぎ少年が手をふっています。

最初はわけのわからぬじいさまも、「きょうのことは
ずーっと前からきまっていました」という少年の言葉に
抵抗するでもなく泣きわめくでもなく、あっさり納得。
かっこいいまでに、潔いのです。
なんでしょう、こう胸の奥がキュンとするような、
チクッとするような感じは。

ちいさくなったじいさまとひいらぎ少年は動物たちに
別れをつげ、手をつないでゆっくり裏木戸を
出て行きます。
最後のページで、桜の葉が舞う中、じいさまと
ひいらぎ少年がゆっくり消えていく様を見ると、
鼻の奥がツーン・・。
こんなふうになりたいな。なれるかな。

予定されたその日まで。
今はまだ、毎日一生懸命、生きるだけです。


この絵本、まだ数年前に復刊されたばかりですが、
bk1ではすでに取り扱い不可になっていてびっくり。
地味な絵本ですが、余韻たっぷりなんですよ!


コメント (4)
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やまのかぜ

2006-03-27 | 木葉井悦子の絵本
  
木葉井悦子・作/絵 架空社

桜の開花話がちらほらと聞こえはじめて、近所を
見てみれば、2,3分~5分咲きというところ。
ここらあたりは、都心より昼夜の温度差があるから、
満開になるには、もうちょっと時間がかかりそうです。

桜って、不思議な木ですよね。
桜がいつ咲くか、咲けば咲いたでいつ見頃か、
天気予報にまで桜前線予報があったりして、
こんなに日本人の心をわしづかみにしている花も
ないのでは?と思います。
満開の桜もいいけれど、ハラハラと散る桜吹雪も、
そのあとに出てくる青々とした青葉もいい。

なぜだかわからないけど、わくわくする気持ちが、
ストレートに伝わってくるのが、この絵本です。



古い木の株で目を覚ましたカエルのおなかを、
やまのかぜがさすっていく。
  「ぐっ もう そろそろだな」
でっ でっ でっと歩き出すと、途中で昼ねを
しているでんでんむしにあった。
「もうそろそろだよ」と声をかけ、
一緒にでっ でっ でっ。

カマキリが虫を食べているとき、口の中を
やまのかぜが通りぬけていった。
  「はあ もう そろそろだな」
たーれり たーれり たーれりと歩き出すと、
地面から出てきたモグラにであった、
「もうそろそろだよ」と声をかけ、
一緒にたーれり たーれりと歩き出す。

川で遊んでいる女の子も、迷い犬も、フクロウも
そのほかたくさんの鳥・動物も、みんな
「もうそろそろだな」と感じて山へ向かいます。
突然ものすごい風と雨と雷をうけ、みんな大喜び。

「やまのかみさまの おむかえだ」

激しいお迎えがすんで、登りきった先には・・・


すばらしいですーー。
絵にみとれます。


私も女の子や動物たちと、ぽんぽこ踊って
しまうよぉ。
ひっそりと、気持ちの中でだけど。

木葉井さんの絵を見ていると、魂を感じるのは
なぜだろう。
魂がゆさぶられる感じがするのです。
生きていることがとても肯定的にとらえられる。
それが人間であっても、動物・虫であっても、
わけへだてなくみんないとおしい・・・
そんなオーラがただよっています。

そして、山へ登るときの擬音語 だばこん だばこん
でっでっ たーれり たーれり すわっ すわっ も、
木葉井さん独特でとても楽しい。あー、愉快。

ネズミをねらって降下してくるフクロウの目が、
写真で見る木葉井さんの目に似ていて、
どっきりします。

前にもここで、「バオバブのこアビク」を書きましたが、
最近復刊が続いている木葉井さんの絵本の中でも、
特に好きな1冊です。

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どうぶつにふくをきせてはいけません

2006-03-23 | ユーモラスな絵本

ジュディ・バレット・文/ロン・バレット・画
 ふしみみさを・訳
 朔北社

タイトルも印象的ですが、表紙に”動物が動物の
オシャレについて考える会”推薦のシールが
はってあります。
え?そんな会あるんだ!とちょっとびっくり。
(↑訂正 ふふ、これはウソらしい・・・
  ふしみさんに、偽者ですと教えてもらいました
  そんなことにはみんな気づく!? 
   

表紙をめくると、見返しは深い赤。何か期待感大です!

 どうぶつに ふくを きせてはいけません。
 なぜなら・・・・

いろんな動物が登場し、服を着せてはいけない理由が
語られます。

それがおかしい。

ヤマアラシやヘビったら、あららだし、
ねずみやヒツジやトナカイは、ご愁傷様という感じだし。
ヤギにいたっては、オヒオヒ・・・だし。

どうご愁傷様かといえば、ひつじはセーターを着込み、
マフラー・帽子をして、ぜーぜー息もたえだえ。
汗だくなのです。
ブタだって、ネクタイを食べ物の中に、
べったり漬け込んで、目はどこ向いてるの?
という様相だし、
首に6本のネクタイをしめたキリンなんて、
まがぬけています。

やっぱり服はいらないよなぁ。

それに最後のオチで、ぞうとの対比で出されちゃった
おばさんはまったく立つ瀬なし。

これはまさに、絵あってのナンセンス絵本です。
文だって、ほんの2,3行の簡潔そのものだし、
余白や色のまとめ方もちょっとおしゃれな感じ。
もう絵を見て、ぷぷぷと笑ってしまいます。
一番のお気に入りは、なんといってもニワトリ。
ぜひ、ぷぷぷと笑ってください。

コメント (8)
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ねどこどこかな?

2006-03-22 | 心があたたかくなる絵本
 
ジュディ・ヒンドレイ・作/トール・フリーマン・絵
谷川俊太郎*覚和歌子・共訳   小学館

はじめてこの絵本を見たとき、この絵が好きと思った。
「ねるとこ」でも「ベッド」でもなく「ねどこ」なのが
またいいと思った。
絵にひかれて絵本を手にとることが多い私です。
開いてみると、見返しの模様がまたステキでは
ないですか!
買いだなっと即断した絵本です。

 おひるね うたたね どこがいい

ハチのように、バラの花びらのベッドで眠るのも
いいけど、風がふいたら、とんでしまいそう・・・。

カエルのように、どろにつかって眠るのもいいけど、
ちょっとひんやりしてきそう。

こうもりのように、ぶらさがって眠るのもいいけど、
頭に血がのぼりそう。
寝入ったとたんに、足が離れてドシーンなんてね。

私はやっぱり、ふかふかのお布団がいいなぁ。
お日さまをいっぱい浴びて、ふかふかになった
お布団で寝るのが一番いいかなぁ。
でもこれって、花粉症のいる我が家にとっては、
ほんの短い間の、究極の幸せです。
秋~冬にかけてのね。
今はもっぱら布団乾燥機のお世話にならねば
なりません。
でも、乾燥機ではお日さまのにおいがない
ですからね~。さみしい

ソファでうつぶせになってしまっている
ベビーちゃんのおしりが
妙にかわいくてキュートです。
よくこうやって寝ていますよね~。

ほわほわほわーーんとしてきます。
コメント (2)
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編みものばあさん

2006-03-18 | とびきり好きな絵本
  
ウーリー・オルレブ・作/オーラ・エイタン・絵
もたいなつう・訳  径書房(こみちしょぼう)

困ったもので、コブシのつぼみがふくらんで、
もう咲いているものもあるというのに、
まだ編みものをしていたい気分です。
手芸やさんに行って、春まで大丈夫そうな
毛糸を見つけたし、
ちびっこ向けの、簡単なワンピースを作る予定。
それも、かぎ針でです。
うーん、間に合うかな。
何せ、編み図と首っ引きな私なので、応用は
ききませんが、ただ■に編むだけなので、
なんとかなるかな、いやしたいゾ・・・
と意欲だけは満々。

そこへくると、この編みものばあさんは
すごいのです。

 編みぼうを かちかちならして おばあさん
 ベッドに マットに
 まくらに 毛布
 そして シーツを 編んでから
 ついでに おまるも 編みあげた

壁も窓もカーテンも、ポットもカップもお菓子も
編みます。
そして大事なふたりのかわいい子どもも。
 
 編みぼうを かちかちならして
 おばあさん
 にこにこ心と めそめそ心
 いたずら心も どっさりと
 ふたりの子どもに 編みこんだ

おばあさんは、黒い毛糸でちょっぴり暗闇を編み、
二人をベッドに入れてから、ふわふわ毛糸と
ねむりの糸でやさしい夢までも、編みこむのです。
心や夢までも編みこんでいくなんて、素敵。

でも、世の中毛糸でできた子どもなんて
認められない!と周りには受け入れてもらえません。

なのに有名になるにつれ、手のひらを返したように、
保護しにかかるお役人に怒ったおばあさんの強さには、
思わず目をみはります。
「なんにも のこして あげないよ!」とぜーんぶ
ほどいてしまうのですから。

権力や理不尽なことに対する反発。
すごい意思。そして頑固さ。
私もこんな頑固ばーさんになりたい!

♪編みぼうを かちかちならして おばあさん♪
以下、とても心地よいリズムが続きます。
ついつい口ずさんでしまう、不思議な感じ。
地味な感じの絵本なのに、とても印象深い
絵とお話です。

文を書いたウーリー・オルレブは、ユダヤ人で、
第二次世界大戦で父を捕虜にとられ、母を銃殺される
という体験をしておられます。
この絵本のおばあさんの頑固さに、ふと
そうした辛い経験をされたオルレブさんの思いを
感じてしまいます。
はっきりした意思表示をすることで、伝えたかったこと・・・。

この絵を描いているオーラ・エイタン、
時にはオラ・アイタンになっていたりして、
検索しにくい方ですが、
他の絵本とまったく違う絵に、はじめ同じ人が
描いたの?と思うほどびっくり!
他のものも好きだけど、この繊細な線画も大好きです。
なんといっても、色がないのがいいし、ページの
枠飾りが毛糸になっている遊び心も楽しいです。
この絵本、かなり好きな絵本です。
コメント (2)
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からすのカーさんへびたいじ

2006-03-13 | とびきり好きな絵本
夫婦って、15年やっていてもまだお互いのことが
よくわかっていない部分があって、時々えっ!?
というようなことがあります。
まぁもともとは他人ですから、「知る」努力が
必要だし、えっ!?の部分はお互いさまなのです
けどね・・・。
さすがに性格は、お互い一応知り合えている
(と思う)ものの、行動パターンについて、
いまだ戸惑うのですよねー。

たとえば、小さい人が寝ているからちょっと静かにしてねと
言っているそばから、ドアをバターンと閉める、とか。
ものを落とす、とか。
スーパーの袋をくしゃくしゃさせる、とか。
だいたいにして、音について鈍感です。
もぉぉ!とすごんでみせても、まるで悪気なし。

『からすのカーさんへびたいじ』


オールダス・ハクスリー文/バーバラ・クーニー画
   じんぐうてるお訳  冨山房


この絵本を読んでいたら、思わずクスッと笑ってしまう
シーンがありました。
そして、我が家も似たところありだな、と思わず苦笑。

からすのカーおくさんは、毎日卵を産むのに、
買い物に出かけている間に、決まって卵がなくなって
しまいます。
ある日少し早めに帰宅したカーおくさんは、
卵を飲み込んでいるへびに遭遇。
「ひどいじゃないの!」「なんでそんなことするの?」
へびは、反省の色もなく「あーごわん あーごわん」
と言いながら巣穴へもぐってしまいます。

帰宅したカーおくさんが嘆き悲しんでいるところへ、
カーさんが帰ってきて、
「ひどく きぶんが わるそうじゃないか。
 また、たべすぎかい?」と一言。

こういう一言が命取りなのにね・・・。

案の定、カーおくさんは
「鈍感! 無神経!」とわっと泣き出してしまいます。
一部始終を話し、カーさんはふくろうの知恵を
拝借しに行きます。
その時も、感情的になっているカーおくさんは
「あなた こわいのね!」
と、すぐに行動を起こさない夫を非難。

結局、思慮深い行動と、ふくろうの知恵のおかげで、
無事へびをしとめ、カーおくさんは気のすむまで、
長々と説教をします。
以来、安心して卵を産み、へびはものほしざお
としておしめを干される立場になっています。

おかしい・・・。おもしろい! 笑えます。

この絵本はたしか、松井るり子さんが著書の中で
紹介されていた記憶があって、たまたま図書館で
目に付いたので借りてみた絵本です。
こんなにおもしろい絵本とは。

松井さんのところでは、あまり反省していない
場合のごめんとして
「あーごわん」がはやっていたといいます。
何度も楽しんで読んで、そこから引用して遊べるのは、
同じ楽しみを共有した仲だからこそですよね。 
いいな~そういうの。

あまり楽しい絵本だったので、欲しくなって
検索してみれば、今は手に入らないものになっています。
あー、出会う時期が遅かった!
絵本はよくそういうことがあるので、後悔しないよう、
気に入ったものは、さっさと買い求めないと。
これが、絵本道楽になる所以です。

追記:この秋、重版かかって手に入るように
なっています。(2006・9月)

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