みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

やせたぶた

2006-02-21 | ユーモラスな絵本
  
きじまはじめ作・ほんだかつみ絵 
  福音館書店(絶版)

この絵本はとても古い絵本で、今は手に入らないもの
なので、画像をのせていいものかどうか迷ったのですが・・・
手元にあるので、一応小さくのせてみます。

表紙の絵の通り、一頭だけ明らかにやせているぶたが、
仲間からさんざんな目にあわされ、その処遇に
耐えかねて、賢くて自転車に乗れるさるの博士の
ところに相談をしにいきます。
このさるの博士は、さんざん考えたあげく、
自転車の空気入れでぶたのおしりから空気を入れるという、
荒業に出ます。
賢いんだかなんだか・・・・!?

やせたぶたのフータローは、もうみんなから
やせっぽちと馬鹿にされることもない、立派なぶたに
なりましたが、難点は軽いこと。

帰り道、くじゃくのエミコにばったり会い、
風が強いから、まるまる太っているあんたに
つかまってれば、だいじょうぶねと言われ、
「うん」と答えるフータロー。

そんな見栄をはったのがいけなかった・・・。

直後、風が台風並みに吹き荒れ、あっという間に
フータローとエミコは、富士山よりも高くに
飛ばされてしまうのでした。

あんたみかけによらず軽いわね、と悪態をつきつつも、
これからどうなるのか心配するエミコに、フータローは
 
「おひさまに ぶつかって やけしぬよ」と一言。

エミコもすかさず、

「ふん、それじゃあ、あんたは さしずめ とんかつね」

と応酬します。まるで漫才だわ・・・。

結局、軽いがために2人?は助かることになるのですが、
そんなこんなで、フータローはやせたぶたのままで
いることにしたのでした。
じぶんは じぶんさ! というわけです。

この絵本には色がなく、太いタッチの黒い線だけで
描かれていますが、コミカルなお話だからこそ
この絵だなぁと思います。
91年にリブロポートから出ていたようですが、
その後絶版。
おもしろいお話だから、どこかの出版社さんから
出ないかしらと密かに思ったりしています。

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エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする

2006-02-13 | とびきり好きな絵本
  
エリナー・ファージョン作/シャーロット・ヴォーク絵
  石井桃子訳 岩波書店

このお話、ファージョン作品集の「ヒナギク野の
マーティン・ピピン」の中で、マーティンが語る
お話の一つなのですが、シャーロット・ヴォークの絵が
ファージョンのお話の世界にぴったりよりそって
ステキな絵本になっています。
淡い色彩、とりわけ落ち着ついた緑色と、
独特の線画が、とてもいいのです。

シャーロット・ヴォークの「ねこのジンジャー」や
「でんしゃがくるよ!」は、親子でよく読んだ
絵本だったので、きっとこの「エルシー・・・」も
という期待が大きかったのです。期待通り!
これは、出てすぐに買い求めました。

少女、エルシー・ピドックは、小さいながらに
なわとびが上手で、すぐに誰も真似できないほどに
上達します。
7歳になると、その評判はケーバーン山の
妖精たちにも届き、エルシーは、
アンディ・スパンディという妖精のなわとびの師匠から
三日月の晩ごとに、なわとびの技を教わることになります。
あっという間に習得する数々の飛び方。
どんな飛び方?と思うのもありますよ。

 高とび するりとび 羽根のような軽とび 
 長とび 強とび
 みんなでそろってとび!
 おそとび 爪先とび 二度ぐるりぐるりとび
 早とび おさめとび 心配ごとははねとばせとび!

一年間通って技を習得したエルシーは、アンディから
ごほうびのつなをもらいます。
片方の柄は、さとうのキャンディ。
もう片方の柄は、アマンド入りあめんぼう。
どれだけなめても小さくならないあめつきのつなです。

それからのエルシーは、次々と技とびをしては人を驚かせ、
その評判は広く知れ渡りました。
 
そして三日月の晩に、ケーバーン山に登ってなわとびを
するというしきたりを作ったのもエルシーでした。
でもいつしか時は流れて、エルシーがなわとびの名手
だったことを知る人もいなくなります。

そんな折、新しい領主がやってきてケーバーン山の
立ち入りを制限するという一大事が発生。
村の人と領主との交渉で、ある取り引きがなされ、
最後にこの危機を救ったのが、エルシー・ピドック
なのでした。

二重とびが1度しかできないという長女に、
「お母さんもエルシーほどじゃないけど、昔はなわとび
 好きだったよ。二重とびだって10回はできたしねー。」
などと自慢し、なわとび持参で実演したところ・・・・
あー、ショック!
3、4回でつまずいてしまって、ちっともとべないのです。

エルシーはすごいなぁ。

目をつむって眠りながら、今でもケーバーン山で
とんでいます。
   
 アンディ、スパンディ、さとうのキャンディ、
     アマンド入りあめんぼう!
 おまえのおっかさんのつくってる晩ごはんは
     パンとバターのそれっきり!

と歌いながら。

絵本といってもテキスト量はかなりあるので、
長いお話を好んで楽しめる子どもと一緒に
楽しみたいなぁと思います。

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おこちゃん

2006-02-11 | ユーモラスな絵本
 
山本容子・作  小学館

あの美しき銅版画家、山本容子さんの自伝的絵本です。
自分のことを「よおこ」と聞き間違えたことから、
「おこちゃん」と呼ぶようになったとか。

その”おこちゃん”の日常が、生き生きと
描かれています。
私はなぜか、まわりの大人たちもすごいなぁ!と
感動します。
私だったら、すぐムキになってキキーッっと
怒りそうなことばかりしているのですもの。
でも、お母さんがおこちゃんのおしりを
ペンペンしているところもあって、ちょっと
親近感がわきます。

おこちゃんは、黒タイツに赤ふんどしで
若乃花や力道山の真似をしてみたり・・・
あんまり気持ちよくて、お風呂の湯船で
うんちしたり・・・
ありの行列を台所まで導くべく、
お砂糖をまいてみたり・・・
いちじくの木がさみしそうだからと、
おもらしパンツの花でうめてみたり・・・

極めつけは、お絵かきのエピソード。
キリンは草を食べるからと、緑色のキリンを描き、
海はいろんな色に染まるからと、
ピンクの海を描いたおこちゃん!ステキ

今に至る素養はすでにここから見えているのか・・・
と思います。
それにしてもなんとのびのびした、
子どもらしい子どもでしょう。

この文体、どうもこう・・・♪ぞうさん♪の節に
あわせて、歌いたくなってしまいます。
かなり字余りですが、ページはじめは無理やり
歌って読んでいます。

じっくり絵を見ていくと。
洗濯の脱水を手ではさむ器具(なんというのでしょう?)
で絞っているのとか、
若乃花・力道山とか・・・
相撲観戦しているTVが観音開きの扉つきだったりとか。
昭和30~40年代を感じるものも出てきて、楽しいです。

     表紙裏もキュート 

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すきまのじかん

2006-02-08 | とびきり好きな絵本
  
アンネ・エルボー作 木本栄 訳 ひのくま出版

「すきまのじかん」って知っていますか?
なんてナイスな呼び名でしょう。
「あかりをともすほど、くらくもなく」
「ほんをよんだり、ぬいものをするほど
あかるくはない」時間。

あぁ、私はこのすきまのじかんが好きだなぁと思います。
うちのリビングや台所からふと外に目をやれば、
高尾の山が見えます。
「すきまのじかん」が少し夕闇に入り始める頃、
山と空の境目周辺がいろんな色で染められて、
本当にステキ。

この絵本では、「すきまのじかん」「たいようのじかん」
「やみのじかん」が擬人化されています。

かつて「たいようのじかん」のあとには、すぐに
「やみのじかん」がやってきましたが、
太陽も月もお互いのことが嫌いでいがみあってばかり。
そこへこっそり「すきまのじかん」はもぐりこむことに
したのでした。

すきまのじかんは、よあけのおひめさまに恋をし、
毎朝こっそり見に出かけるようになりました。

ストーリーといえばこれっきりですが、擬人化された
それぞれの絵が、イメージとぴったり。

アンネ・エルボーの「おつきさまはよるなにをしているの?」
というお話もそうですが、普段あまり考えていないけれど、
そういえばそうよねぇというところをついてきます。


「たそがれは逢魔の時間」・・・そういえば、
子どもがもっと赤子の時代、なぜかわけもわからず、
たそがれ時になると大やんちゃをしたりしたなぁ・・・。

日本でいえばそんな時間も、ベルギー生まれのアンネ・
エルボーが言えば「すきまのじかん」となるのですね。
もとの題名はどんななのか?それにしても妙訳です。

          

この絵本は、3年前のホワイトデーに夫からもらったもの。
ホワイトデーのお返しはずっと絵本ですが、最近じゃぁ
選ぶのに一苦労している様子です。
何度も本屋と自宅の本棚を見比べたりしているようだし。

でもこうやって、自分以外の人からもらった絵本が、
とても好きな絵本だったりすると、やっぱりうれしい
今年はどうかな?とチョコをあげる前から、
チラリ考えています。
コメント (6)
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人魚ひめ

2006-02-06 | とびきり好きな絵本
  
ハンス・クリスチャン・アンデルセン 文
ヨゼフ・パレチェク 絵
石川史雅訳  プロジェクトアノ

お姫さま話は数あれど、こんなに切ないお話は
他にあったでしょうか。
白雪姫だって、シンデレラだって、ねむりひめだって、
最後にはハッピーエンドになっていくというのに、
この人魚ひめの悲哀はどうでしょう。

いとしの王子さまのために声をなくし、
ひどい痛みをこらえながら王子さまの近くにいる
というのに、結局想いが実ることはなく、
自分の命もあわと消えていくのですから。

この悲しくて美しい人魚ひめのお話が、
ヨゼフ・パレチェクさんの絵で出版されました。
表紙の絵がとても印象的で、その美しさに吸い込まれます。

中ももちろん、美しいです。
絵画のような絵とテキストの上下に配されたカットは、
ゆっくり細部までみて味わいたいです。
人魚ひめが失望の中、船上で踊るテキストのページは、
人魚ひめのたましいがすっぽりなくなって、
ぬけがらになって落ちていく絵で、思わずゾクッとします。

テキストは総ルビで、慣れるのに時間がかかりましたが、
これは小さな人にも読んでもらいたいという配慮から
でしょうか。
でもこれはやっぱり読んでもらって、絵を眺めながら、
お話を味わってもらいたいなぁと思います。

パレチェクさんの絵本は、「おやゆびひめ」や
「はだかの王さま」など、またいろいろ手に入る
ようになってきましたが、
私は今回のこの人魚ひめと、以前ブログにも書いた(2005 11/13)
「マシュリカの旅」がやっぱり好きです。

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