みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

木がずらり

2005-11-28 | 一年めぐり/四季の絵本
tuperatupera・作/ピエブックス・刊


tuperatupera(ツペラツペラ)は、
亀山達矢さん・中川敦子さんの2人組ユニットで、
2002年から活動しているそうです。

この「木がずらり」 一番はじめはどこで見たのか
さっぱり思い出せないのですが、
ほしいなぁと思ったころはもう手に入らず。
でもこのほど、「魚がすいすい」の発売と同時に、
好評だったこちらの絵本も、再度手にとることが
できるようになりました。

この絵本、ちょっと変わった形態で、
じゃばら絵本になっています。

 こんな感じ。

いろんな木とともに、その木にあったイメージの言葉が
一言添えられています。
「とんがり」「そっくり」「うっとり」「ほんのり」
・・・という具合に。

木の形容ばかりではないけれど、「り」で終わる言葉でまとめ、
とても読みやすく心地よい。

でもこの絵本、絵をゆっくりながめるだけでもステキです。

よくよく見れば、春からだんだんと夏秋冬に季節はめぐり、
いろんな14本の木が描かれています。
表の最後は雪景色。
でも裏返して見ていくと、亀が「ゆっくり」歩き、そしてまた
季節はめぐり、「ちょっぴり」春を感じるのです。

こういう何気ない地味~なテーマ、大好きです!
派手さはなくても、それぞれの木の物語が想像できるのが好き。
だいたい「木」が好きなので、気づけば木の絵本は案外
持っています。

自分のうちに「木」があったらいいなぁ、特にりんごの木。
ずっとそう思っていました。
それは、ペチシカの『りんごのき』やミラ・ローベの
『りんごの木の上のおばあさん』にあこがれていた
せいかもしれません。
ずっと実のなる木がいいなぁと思っていたけれど、
北海道美瑛町の「ほおずき」という宿に泊まるように
なってから、実の有無はともかく、
自分ための自分の木があったらいいなと思うように
なりました。
そこのおとうさん、自分の娘のためにそれぞれ木を植え、
「**の木」と小さくぶらさげているのですよ。
なんてステキ!
娘の成長とともに、木もどんどん大きくなっていくわけです。
でも、あこがれはしても実際は難しい・・・。
夢がかないそうもない私は、あちこち木を見て回ります。

 
三本の木 / 哲学の木(H14撮影)


メルヘンの木 / 一本杉(H14撮影)

美瑛~富良野にかけて点在する木ですが、どれも
表情が違うので、毎度見たくなってしまうわけです。

今年行ったとき、三本の木の真ん中と右側の木の間に、
小さな小さな木が育っていて、
なんだかまるでうちの家族と同じだなとう
れしくなってしまいました。

ちなみにこの「哲学の木」「メルヘンの木」は
実際こう呼ばれている木です。
名づけ親は誰でしょうね。
哲学の木なんて本当にそうよね~と、妙に感心して
しまいます。

さて、tuperatuperaの『木がずらり』に
戻りますと、この絵本の原画はコラージュになっています。
ちょっと見てみたいゾと思っていたら、
どうやら12/19~29まで青山ブックセンターで
原画展をしているようです。
行く時間と体力があったら、見てみたいナー。
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おふとんのくにのこびとたち

2005-11-26 | 心があたたかくなる絵本
  おふとんのくにのこびとたち 
おちのりこ・作/でくねいく・絵  偕成社

昨日もちらりと書いたこの絵本、文字のほとんどない
絵本です。
出久根さんの絵?と思ってしまうほど、印象が違う
絵ですが、そこはさすが!絵が物語ってくれています。

熱があって今日は一日寝ているように言われた
ひさこちゃん。
つまんないなぁと思っていると、ムクムクお布団に
山ができてきて、どこからともなく
小人さんたちがやってきます。

最初は自分たちで盛り上がって楽しんでいた小人たち。

ひさこちゃんが楽しくなって、うふふと笑ったその息で、
ごちそうも焚き火もみんな吹き飛んでしまいます。
あぁ・・・どうしよう、どうしよう。

小人たちは、大事業にとりかかります。
いったい何をはじめたのでしょう?

じっくり見ればみるほど楽しいしかけがたくさん。
コマわりの絵で次々に明らかになっていきます。・・・・
ひさこちゃんの熱は、そうして無事さがるのです!

すごーい!
こんなにわくわくしてしまうお話に出会ったら、
ちょっとばかり熱が出て、寝ていなくちゃならなくなっても
全然平気ですね。

このお話、おちのりこさんの実話に基づいているのだとか。
熱を出して寝ていたおちさんをおとなしく寝かせるため、
お母さんが

「こびとさんのおうち、ここと ここと こっちにも」と

掛け布団をちょいとつまんでみせ、自分も病弱で何日も
お布団の中にいなければならなかったこと、
そのときこうして遊んだことを話されたのだそうです。
なんて素敵なお母さん

寝ているといえば、我が家も風邪っぴきが約2名。
大変しつこく、コハは一週間たっても鼻・のどが
すっきりしません。
おまけに私も撃沈。
寝たくても、コハが「わたしが起きているのに
寝ているとは何事よ?」と言わんばかりに泣いて
怒るので、寝てもいられず。

今日はたまりかねて、あなたの風邪は鼻から? の
市販薬を買いました。
すごく効いてる気がする。
明日になったら、ひさこちゃんみたいに治っていると
いいなぁ。


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ペンキや

2005-11-25 | とびきり好きな絵本

 
梨木香歩・作/出久根育・絵


梨木さんは、これまた好きな作家さんですが、
梨木さんの理論社絵本シリーズのうち、この「ペンキや」は
思わず装丁買いした絵本です。

なんともいえぬこの表紙の男の人。
表情があるのかないのか、なんとなく惹きつけられる目鼻口。
いやに細くなっていく手足。
白いペンキで、何を塗っているんだろうと思わせる手つき。
この絵は見たことあるよなーと思っていたら、前にやはり
装丁買いした「ルチアさん」の絵だ!と思い至りました。

出久根育=でくねいくさん。’69年生まれ。
2002年からチェコのプラハに在住。
この「ペンキや」がプラハで描いた第1作目とあります。
チェコに住んでいるで合点がいきました。
確かにただよう東欧の香り。
ドゥーシャン・カーライの雰囲気にも似ているような・・・。

このお話は、とっても透き通った透明感を感じるお話だなぁ
と思います。
ペンキやのしんやのまっすぐさも、色を塗るという仕事に
対する向き合い方も、しんやの母親の生き方も、
みんなまっすぐで邪念がなくて美しい。
色でいえば”白” 。
でも、ただうすっぺらな白じゃなくて、すべてを含んだ白。

しんやが亡くなった父親のお墓を訪ねるため乗った
船の中で、不思議な女の人から、いつかこの船を
塗ってくれないかと頼まれます。
この船を?と問い直すと、

 「ええ ユトリロの白で おねがいね」
 「そう喜びや悲しみ 浮き浮きした気持ちや 寂しい気持ち
  怒りやあきらめ みんな入った ユトリロの白 世の中の 
  
濁りも美しさもはかなさも」 

と言い残して女性は消えてしまうのです。
この”ユトリロの白”は、絵本の最後につながるキーワードに
違いないのに、私にはイメージができない
その方面に暗くて、ユトリロの絵を観にいったことが
ないのです。

江國香織さんの『日のあたる白い壁』を引っ張り出して
きてみると
ユトリロ、ありました!

ユトリロといえば、思い浮かぶのが孤独な白、
寒くさびしいブルーグレーだとあります。

ユトリロはアルコール中毒の治療のひとつとして、
絵をはじめたこと
それもほとんど独学で絵を学んだとあって、
そういう経歴も孤独と憂愁のイメージになるのだろう、と。
中にひとつだけ載っている「雪の積もった村の通り」
というユトリロの絵は、白が基調なのに、どことなく
黄色みがかったあたたかさを感じます。
ユトリロ展があったら、ぜひ行ってみよう!
生で絵の印象を味わってみたい。
ひそかに思っています。
そうすれば、この絵本もより一層楽しめそうな気がして・・・。

それにしても、梨木さんの不思議なお話と、
出久根さんの印象深い絵。
なんとぴったりなんでしょう。

出久根さん、2003年にはプラティスラバ絵本原画展の
グランプリを受賞され、今ますますご活躍の画かきさんです。
受賞作の「あめふらし」(パロル舎)も、最近出たロシアの
昔話「マーシャと白い鳥」(偕成社)も
まだ読んでいないのですが、
今日は「おふとんのくにのこびとたち」(偕成社)を入手!
こちらは、またちょっと印象が違うわくわくするような絵本です。

コメント (4)
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たべるトンちゃん

2005-11-20 | ユーモラスな絵本
またまたうれしい絵本の復刻です。函の画像がこちら。

函をとると、こんな感じです。

この絵本、昭和12年に発表されたものを、オリジナルに
近い形で復刻したものだそうです。
もう、待っていました!
なぜってこの絵本、オークションサイトなどでは、
本当に高値でやりとりされていましたから。
実際に手にとって見てみたかった。

それで・・・見てみましたとも!
トンちゃんの、とどまるところを知らない食欲は、
なんともシュールでどこかぬけていて、
それでいて憎めない。
なんともいえぬいい味を出しています。

”おにはのごみ”から”せきたん””しゃぼんみづ”
なんでもかんでもおさめていきますよ。
寝てもさめてもお腹がすいていて、ゆめさえも
食べることばかり。

  が かなお イピッダ
  よ たイチ イピッダ
         イピッダ

呪文じゃありません。
旧仮名遣いで、右から読んでみてください。
お腹がすいてしかたのない、トンちゃんのつぶやきなのです。

これを見ていると、うちのおチビさんを見る思いです。
本当によく食べる。
今日も熱を出しているのに、食べることはまず忘れない。
きっと明日には回復することでしょう。

この絵本には、作者初山滋さんの息子、斗作氏の別紙
あとがきがついていて、初山滋の人となり、エピソードが
紹介されています。
それによれば、かなりマイペースでいたずら好き、
お酒をちびちびやりながら版木を彫り続けている方だった
とあります。
刷り上げた版画には執着がなく、すてき!とほめられれば、
「そうかい、あげるヨ」とあげてしまうこともあったとか。
うわ~、ほしい!

氏が、この絵本を評して『新鮮なるクラシック』と
言われているとおり、70年前のものとは思えないほど、
新鮮なマンガです。
『たなばた』の初山滋のイメージが強い人は、
本当に同じ人の作品?と思うかもしれない。
そんな愛すべきトンちゃんです。
最後はちょっと切ないトンちゃんの結末です。
 

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かあさんまだかな

2005-11-17 | 韓国/アジアの絵本
冬のソナタからはじまって、つい最近最終話が
放送された、宮廷女官チャングムまで、
気づけばずいぶんと韓流ドラマを見ています。

恋愛ものはともかく、チャングムは楽しかった!

近いのに、なかなか触れることのない韓国という
国について、とても興味を持ちました。
たとえば、食事の風景。豪華な宮廷料理の数々。
女官たちがライオンのたてがみのように大きく
結わえている頭髪。美しい衣装。 
韓国の素晴らしい文化を感じるドラマでした。

ドラマや映画のみならず、絵本のほうでも
韓国の絵本がどんどん日本で出版されています。
民話調のお話だけでなく、創作ものも紹介されはじめ、
いかにも韓国!ではない絵本も目にとまるように
なってきました。

つい最近の新刊『かあさんまだかな』は、
表紙の小さな男の子が、お母さんを電車の停車場で
待ち続けるお話です。

テキストは少なく、絵が本当に美しい!
人々の洋服や町並みは、一昔前の懐かしい感じの
韓国の雰囲気がただよっています。
何ページごとかにはさまれる風景の絵は、
ジョン・バーニンガムのようだなぁというのが
第一印象。
細い線と色彩が、実に美しいのです。

そしてなんといっても圧巻なのは、最後の見開き
3ページにわたる、文字のない絵だけのページ!

最後のページに小さく小さく描かれている幸せを
見つけたとき、ホッと安堵の気持ちが押し寄せ、
なんとも言えない余韻の中で絵本を閉じるのです。

この絵本、国立のペンギンハウスの新刊講座で
紹介してもらったものです。
そのときは迷ったあげく買わずに帰ったのですが、
どうしても気になって仕方ないので、
取り置きをお願いした絵本です。

フレーベル館初の韓流絵本だそうですが、この先も
素敵な絵本を出してくれそうな予感がしてうれしいなぁ

ちなみに文:イ・テジュンさんは1904年生まれで、
童話や児童文学を数多く執筆されているそうです。
細やかな感情を、詩的な文章で描写していて、素敵。
絵:キム・ドンソンさんは1970年生まれというから、
まだ30代
アニメ、ポスターなどのイラスト分野でも活躍している
らしいです。(表紙カバー紹介より)
このペアで、まだこの先絵本が出る可能性もあるのでしょうか?
要チェックです。

素敵な絵本を翻訳してくださったチョン・ミヘさんと、
出版社のフレーベル館、紹介してくれたペンギンハウスに
感謝しますー。
コメント (2)
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マシュリカの旅 ふたたび

2005-11-13 | とびきり好きな絵本
今日、待ちに待ったPRECIOUS BOOKSさんからの
メール便が届きました!
ちらっとあけてみたものの、さっと閉じて今に至る。
なぜって、ゆっくりじっくり味わいたかったから・・・
です。
用が終わり外出先から戻ってきて、ようやく
手にとりました。

あー、とても素敵~~ 感動です。
出版元の”編集工房くう”さんと編集スタッフの、
この絵本への思いが、実にひしひしと感じられる
絵本にしあがっています。

ほぼA4版(幅はもう少しありますか)の原書から、
今回出された翻訳本はB5版強の大きさになっています。
中には、編集スタッフからのコメントとして、
今回の出版にあたり、パレチェク夫妻の了承を得て、
レイアウトなどいくつか変更を加えたこと、
原書ではなかったリボンの名前を「マシュリカ」と
名づけたことなどが明記されています。
なるほどー。
原書にあったカット、翻訳本にしかないカットなど、
思わずこっそり見比べてみました。

仕上がりはとても素晴らしいの一言です。
印刷は、原書の色を忠実に再現しようとされた努力が
にじみ出ているように思います。
こんなにメッセージ性の強い、素敵なお話だったのねと、
あらためて感動です。
できるだけ多くの人に、手にとってもらえたらいいな。   

               

ベロニカの髪に結ばれているリボン=マシュリカは、
風にとばされ遠くへ行ってしまいます。
行くさきざきで出会ったのは・・・
  
いじわるで悪ぶっている風/ 
トゲを武器に強がっているアザミ/
弱虫で迷子になった子牛/ 
実をつけないはずかしがりやのリンゴの木・・・

その後も、それぞれ悩みを持つカタツムリ、ウサギ、鳥、
リスの3姉妹に次々出会うのです。
でも、マシュリカがかける真の励ましの言葉で、
それぞれみんな問題を解決していく。

マシュリカは言います。 

「魔法のききめが あらわれたのは、みんな じぶんで 
 なにかをしたから」

私は個人的に”鳥のページが好きです。

「あなたは、空を飛びたいの?
 それとも 鳥かごの中を歩きまわるの?
 さぁ、どっち?」

私も一緒にマシュリカに叱られている気分になってくるから
不思議。
そう、考えていたってはじまらないよ。
やらなくちゃ!と言われているような気持ちになるのです。

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『ありがとうのえほん』

2005-11-09 | 心があたたかくなる絵本
突然・・・いきなりブログというものをはじめてみん・・・と
思い立ち、右も左もわからぬまま、絵本とその周辺+日々の雑事
について書き綴ってみることにしました。

今日は、フランソワーズさんの新刊から。
ここのところのフランソワーズ本出版ラッシュは、ファンとしては
とても喜ばしい。
願わくば、細く長く出版され続けてほしいということに尽きます。

今回の3冊同時出版(『ありがとうのえほん』『おおきくなったらなにになる
わたしのすきなもの』)で、即購入を決めた人はどのくらいいるのでしょう?
とても選びきれないラインナップではないですか。
私ももちろん即買い!

中でも「ありがとうのえほん」は、感謝の気持ちが素直にフツフツと
わいてくる素敵な絵本で、とても気に入っています。
フランソワーズさんのピンクって、とっても優しい色。
ピンクだけじゃなく、グリーンも赤もふかふかの羊毛のような、
心がまぁるくなる色。

毎日の生活の中で、ちょっとした感謝の気持ちを持つか、
不平を持つか・・・どうせなら、「ありがとう」と気持ちよく、
にこにこしていたい。
そんな気にさせてくれる絵本です。

そういえば、昔よく母に、「ため息つくと、幸せがその分逃げるよ」
と言われたなぁ。
気付けば、ため息よーくついています。
・・・。ほんとにこれはいけません!
今日も一日、ありがとう。


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