みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

黒グルミのからのなかに

2007-10-19 | なるほど!/哲学する絵本
また不思議な絵本に出会いました。
この表紙絵を見たとき、胸騒ぎに似たような、わさわさした
気持ちがわ~っと押し寄せてきて、思わず吸いこまれて
読みました。
このポール少年が持っているものは、旗ではなくて、カマ。
死神が持っていた、背丈よりずっとずっと大きいカマなのです。
おさえられた色と絵が、何か不安な気持ちを増幅させます。

 『黒グルミのからのなかに
ミュリエル・マンゴー/文 カルメン・セゴヴィア/絵
  ときありえ/訳    西村書店

ある朝起きてこない母さんを心配して見にいくと、もうすぐ
わたしは死ぬ、あの人が迎えにくるから、とお母さんは言います。
到底受け入れられないポールは、薬を買いに行く途中に、
大きなカマを持った老婆(死神)に行きあい、
とっさにとびかかって、老婆を黒グルミの中にとじこめてしまいます。
死神をとじこめた黒グルミを海にほおりなげ、
うちに帰って見ると・・・
お母さんはぴんぴんしていて、何もなかったかのように元気な姿に。
けれど、そこから世の中の歯車が完全にくるってしまったのでした。

卵は割れない。
野菜もひきぬけないし、麦も刈れない。
魚はつってもみんな海にもんどりうってしまうし、
牛もおいかけるたび逃げてしまう・・・。
あらゆる命が、終わらなくなってしまったという事実。

少年にとっては、母を失いたくない一心でしたことだったけれど・・・。
ひとつの命が終わり、また次の命の糧となる、
死があるからこその生なのだと、あらためて考えさせられます。

スコットランドの民話をもとにして書かれたのだそうですが、
とても印象深いおはなしです。

ずっと若い10代、20代のときは、死は本当に遠い世界だと
思っていたけれど、本当はいつだって遠いことではないのかも
しれないと思います。
生は裏を返せば、死を意識することにもつながるんだと、思う。
いかに生きるかということ。

          * * *

今週来週と、とてもハードでゆとりなく、気持ちもかさつきがち。
オーバーフロー気味で、外に出る一方なのはいけません。
中に取り込むこともしないと・・・。

明日のおはなし会の工作で使うかぼちゃたち♪
昨日の夜なべ仕事です。



ついでに、コハとこんなことも。
楽しいおしゃべり相手。



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みんなわたしの

2007-06-11 | なるほど!/哲学する絵本
またまた、すてきな詩集に出会いました。
ずっと気になっていながら、手に取ったのははじめて♪
「クシュラの奇跡」のドロシー・バトラーさんが、
子どもや孫たちに聞かせるために、書き写していたノートから
精選した楽しい詩集です。

  ー幼い子どもにおくる詩集ー
ドロシ・バトラー/編 岸田衿子・百々佑利子/訳
 ミーガン・グレッサー・絵

第一印象ばっちり。表紙の絵好みです。
中をめくってもその期待を裏切らず・・・。
読み進めたら一層気に入りました。
書き留めたくなるような、かわいい詩がいっぱいです。

      おわり
 
 ぼくが 一つのとき 
 ぼくは はじまったばかり 
   ぼくが 二つのとき 
   ぼくはしんまいみたい 
     ぼくが 三つのとき 
     ぼくはまだ ぼくらしくない 
       ぼくが 四つのとき 
       ぼくは たいしたことない 
         ぼくが五つのとき 
         ぼくはかつやくしはじめた 
 でも いまは六さい ぼくは なんでも しってる 
 だから これから ずっと 六さいだと おもうな
  
                A.A.ミルン


             

      ちいさな こびと 
  
  いつだか こびとにあったっけ 
  かぜに ゆれる ゆりの のはらで 
  なぜ ちっちゃいのと きいてみた 
  なぜ おおきく ならないのって 

  こびとは ちょっと しかめつら 
  わたしを じろじろ みて いった 
  「ぼくには ぼくに ぴったりの おおきさ 
   きみが きみに ぴったりなのと おなじ!」 

             ジョン・ケンドリック・バングズ


どちらもすてきすぎる真実・・・。
わたしもこれから六歳になろうかな 
    

  これ、なーんでしょ?

  フフ
      キャベツくん! でした

ことり文庫のこうめさん、手作り品です。
しっかりズラ仕様。(ちゃんとくっついていますが!)
実物大は、グリンピースほどの大きさで、
みんなお顔が違います。
ことりさんでは、雨の日サービスがあるのですよ。
目下キャベツくん3つ。 雨つぶビー玉数個。
これがコロコロとびんいっぱいになったら、うれしいな。

ことりさんで、またまたネットのお友達に会いました。
何度経験しても、ドキドキの瞬間。
なにせ、出会いの瞬間が、コハ尻丸出しでしたから~~
余計にどきどき・・・。

littleblueさんの「絵本に感すること」に、コハの足
出演中です。(^^; アリガトー。
かっこよく映っているんですよ。
落ち着きのなさは画像がものがたってますけどね。

ふふふふふふ、なんだか楽しい気分が続いている月曜日・・・。
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はる・なつ・あき・ふゆいろいろのいえ

2007-05-09 | なるほど!/哲学する絵本
おひさしぶりです。
GW以降、師走でもないのに追われまくっていて
気ぜわしくへとへとな毎日でした。・・・
というか、今なお現在進行形ですが、
書きたい本もたくさんあるので、今日こそ!


はる・なつ・あき・ふゆ いろいろのいえ
 R・デュボアザン/作 やましたはるお/訳 BL出版

以前、ことり文庫さんへ行ったとき、こうめさんから
デュボアザンの新刊がでるという話を聞いて、
「おうちの本らしい」というのを「おもちの本」と
聞き間違えたんですよね。
デュボアザンとおもちがとっさに結びつかず
しばし考えてこんでしまった絵本。(←情けなーい・・・
ようやくじっくり楽しみました。

デュボアザンの絵と色彩が美しかった!
家族で探している家が古い家というのもいいし、
それをみんなで直して住もうというのもまたステキです。
外国ではそれも当たり前なのかもしれないですけれどね。

ボロボロだった戸や石段は、それぞれ職人さんに
整えてもらったものの、よろい戸と壁のペンキ塗りは
みんなでやろうということに。

家族4人が、それぞれ提案する色合いと、四季の様子が
とてもマッチしていておしゃれです。
ペンキやさんで仕入れてきた基本の3色から
それらを混ぜると、どんな色になるかを実験。
その後びゅんびゅんごままで登場して、お父さん、
なかなかやるなーという感じです。

結局どんな色になったかは、科学的な要素も入った
納得の色!
よろい戸と壁の色合わせも、どんな季節にもぴったり・
しっくりくるステキな色にしあがりました。
昔すみついていたふくろうの斜めの視線が楽しいです♪

初版1956年に書かれたものと思えないほどです。
デュボアザン、やっぱりいいですね~
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わたしはわたし

2007-02-08 | なるほど!/哲学する絵本
   わたしは こういうわたしなの 
   かんがえかたも わたしなの 
   わらいたいとき わらい 
   さけびたいとき さけび 
   はねたいとき はねる 
   うたいたいとき うたい 
   なきたいとき なく 
   そう わたしはいま ないている 
   わたしは さみしいわたしなの


  『わたしはわたし
 バルブロ・リンドグレーン/詩
 エリクソン、ヘグルンド、ランドストローム、オラウソンーセル、ラメル/絵
 木村由利子/訳   文化出版局

スウェーデンの女流作家バルブロ・レンドグレーンの詩に
5人のイラストレーターが絵をつけた詩集。

日常の観察から生まれたかわいい詩や、
漫画のような詩、ユーモラスな詩や、哲学的な詩まで
いろんな詩にいろんな絵がつけられていて、
ある意味ぜいたくな詩集だと思います。

詩って、ときどきふと読み返したくなるものですね。

わたしが一番はじめに手にした詩集は、
父がこの詩いいだろう!と教えてくれた、山村慕鳥だった
気がします。

 おうい雲よゆうゆうと
 馬鹿にのんきそうじゃないか ・・・・・

この素朴さが好きで、時々思い返します。

「わたしはわたし」の中から

なれるのなら きになりたい 
こころから なりたい 
あれのに ひとりたち 
ひとのように かんがえる 
かぜのふく いみを 
ほしのまたたく わけを


この詩はこのあと、いわになりたい うみになりたい
と続くのですが、最初がやっぱりとても好き。
なんだか、今日はそんな感じの夜なのです・・・。

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サキサキ

2007-01-31 | なるほど!/哲学する絵本
ふだんの朝、家事をしているときや車の移動では、
ラジオを聴いていることが多くて、時々”短歌”を
耳にします。
へぇ~、こんなのも短歌っていうんだ
というような、生活感あふれるわかりやすいものばかり。
もしかしたら自分にも作れるかも・・・なんて、あやうく
勘違いしてしまいそうな気安さです。
 五 七 五 七 七 の
短い言葉の中に、思いのたけをこめて詠む。
それも、きどらない普段の言葉で詠むのが、どうやら
はやっているようです。

サラリーマン短歌、携帯短歌、 枡野浩一さんの
短歌入門書”かんたん短歌”など(←糸井重里さん命名
らしいです。さすが・・・回文になってる!)
いろいろあるみたいですね!

そんなわけで、少し気になっていた短歌ですが、
昨年末「めくってびっくり短歌絵本」のシリーズを
新刊で教えてもらいました。

  『サキサキ
    オノマトペの短歌 
     種村弘・編  高畠那生・絵 岩崎書店

オノマトペは、「さくさく」とか「ぴたり」とか
音や状態をあらわす言葉のことで、
この編には、オノマトペの短歌が、14首おさめられています。

 君かへす 朝の敷石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ
                        北原白秋 

 たとへば君 ガサッと落ち葉すくふやうに 
       私をさらつて行つてはくれぬか
 
                        河野裕子

 サキサキと セロリ噛みいてあどけなき 
       汝を愛する理由はいらず

                        佐々木幸綱

擬音がぴりっと利いて、とても素敵♪
白秋や啄木などの有名方から、今活躍中の若手まで、
掲載の歌はさまざまです。 
「めくってびっくり短歌絵本」というシリーズの名のとおり、
左のページをめくるとさらに絵が広がり、歌についての
一言二言も添えられています。

このシリーズ、それぞれ絵が違っていて、それも楽しそう。
とりあえずこの「サキサキ」を見てみたかったのは、
高畠さんの絵が興味深かったからです。
父の純さんとはずいぶん作風も違っていて、それも
びっくりですが、高畠さんの作品にはいつも大概、
青や緑やグレーの顔色の悪い(しかも鼻筋の通った)
顔の人が出てくるんですよね。
それが気になっていて、今回もいるかしらと興味深くて・・・
で、やっぱりいましたよ!

他シリーズもおもしろそうです。まだまだ続刊でしょうか。
 『そこにいますか』 日常の短歌

 『君になりたい』 恋の短歌

 『ぺったんぺったん白鳥がくる』動物の短歌

そうそう、わたしが『サキサキ』で一番気に入った歌は
これです! ↓ ↓

 痩せようと ふるいたたせるわけでもなく 
       微妙だから言うなポッチャリって

                       脇川 飛鳥
プププ・・・ほんとにそうなのです~~。
1979生まれの若手。代弁に思わず拍手!                     
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世界あちこちゆかいな家めぐり

2006-09-07 | なるほど!/哲学する絵本
 
小松義夫 文・写真/西山晶 絵
福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集

世界にはいったい、自分の知らない生活様式が
どれくらいあるんだろうと、ときどき思います。
今の日本で、便利な電化製品に囲まれて暮らしていながら、
ときどきそんなことを考え、
たまにTVで、世界ウルルン滞在記などを見ると、
へぇ~と関心したりびっくりしたり。

この絵本に出てくる、世界あちこちの家にも
本当にびっくりさせられます。

表紙のおうちは、トーゴの土のお城です。
トーゴって、アフリカのナイジェリアの隣りの隣りなんですね。

写真のページのあとには、絵でうちの内部が
図解されていて、
室内の様子がよーくわかるようになっています。

この土の城、1Fは家畜がいる場所で、
モロコシなどの粉をひく作業もここで。
家の左下にあいている穴は、家畜が出入りするためのもの。
階上には、人が寝たり、食物が貯蔵できたりする場所があって、
屋上ではマメやトウガラシを干します。

このうちに住んでいるのは、おばあさん、お父さん、
2人のこどもと、そのお母さん、
3人のこどもと、そのお母さん、総勢9人。
ほんとに、実に機能的に作られているんですね。

他にも、モンゴルのゲル、中国福建省の土楼(どろう)、
インドネシア・スンバ島のとんがり屋根の家、
ルーマニアの屋根に目がある家、
セネガルのロートのような屋根の家、
チュニジアの地下の家・・・などなど、いろんな家が
いっぱい。
でもどの国のどの家も、その風土や環境にあった
機能性ばっちりの家であることに、感心してしまいます。
そして、どのうちにも余分なものってあまりなくて、
生活に密着した調度品や生活用品を見るのも
お楽しみです♪
ぜひ、続きを出してもらいたいな~。

           

見ているだけで楽しい家の絵本といえば、これも↓
相当楽しいです。

 ジョージ・メンドーサ/ドリス・スミス
                福原洋子  フレーベル館

今の季節なら、風にそよぐ「いもむし」のおうちがいいなぁ。
本ばっかりの我が家のために、わたしもねずみの
エロイーズさんに、すてきな家を設計していただきたいワ。
コメント (2)
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