みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

おばあさんになった女の子は

2007-02-05 | ドキドキ/五感を刺激する絵本
  『おばあさんになった女の子は
石井睦美・text 宇野亜喜良・illustration 講談社

宇野さんの絵を見ると、いつだって素通りできなくて
つい手にとってしまいます。
なんともいえないこのインパクト。
けだるそうで、ぼってりした唇に、少しうるんでいるような目
ありえないほど大きなストライプのリボンを頭にくっつけ
大きなストライプのタイツをはいている女の子。

この女の子=はるかは、母親の絵本を読んでいます。
出てくるのは、昔女の子だったおばあさん。
時がたって昔の思い出をたどっているおばあさんです。
おはなしのおしまいでしみじみその顔を見て、
はるかは、満ち足りている顔をしていると思いました。
でも、「あきあきしたわ」という声がして、
よくよく声のもとをたどれば、絵本の中のおばあさんの声。

 「あなた、はさみでわたしを切りぬいてくれないかしら。
  もう何十年もこのページでおばあさんでいたの。
  すっかりあきたわ」

はるかに望みをかなえてもらったおばあさんは、1ページ、
また1ページと前のページにもどるたび、少しずつ若返り
とうとう念願のページにたどりつきます。
その思いとは。
3年前、愛を伝えるために旅立っていき、その地で死んで
いこうとしている恋人を、しっかりと抱きしめること。
旅になんか出なくたって、わたしにはちゃんとわかってた。
そうさめざめ泣いた元おばあさんは、しっかり恋人を
抱きしめます。

はぁ~、ちょっとうっとりです。
年をとったからこそ、あのときこうしていればの思いも強くなる。
でもそれを素直に行動にうつしてしまうおばあさんが、
なんだかうらやましいです。
意地なんて、これっぽっちもないのね。

もしやり直せるなら・・・・
もしあの時代に戻れるなら・・・
いくつもの「もし」を考えた時期もあったけれど、
今の自分は、それら全部をひっくるめて成り立っているのかも
しれないと思ったら、汚点や失敗もむだではない気が
してきます。
でもこんなふうに素直な気持ちで、過去の一時期に戻れるならば
ちょっと戻ってみたいのも、ホントの気持ち。
どんな感じなんでしょうね!

切り抜かれ、すっかりお話がかわってしまった絵本を
はるかは、静かにパタンと閉じます。
元おばあさんがずっと恋人と一緒にいられるように・・・。
じわじわと余韻が広がる、不思議なお話です。
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8 コメント

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素通りできなくて。 (ペンギンブルー)
2007-02-06 00:30:07
>宇野さんの絵を見ると、いつだって素通りできなくて
>つい手にとってしまいます
そうですね、私、この絵本素通りできなくて、書店で立ち読みしましたよ(立ち読みかよ!って突っ込まれそうですが...^_^;;;)
なんだか、女の子だなぁって思うんです。本当に。女の子の世界。
この絵本に出て来るおばあさんだって”女の子”、そう女の子は、何才になっても”永遠に女の子”なんですよね。
ストーリーにうっとり、同感です!
そうですね、私も”あの時こういていれば”って、思った事も多々ありましたが、結局、今の自分を形成してるのは、過去の自分で、
過去の積み重ねで、今の幸せがあるんだと思ったら、
私は、戻りたいとかは、全く思わなくなったんですよ。
でも「我が人生に一点の悔いなし」っていうのとも違う。
染みだらけの人生ですが、愛しく思っているという感じです。
でも、素直に恋人を抱きしめにいったおばあさん、その一途さ、
大好きです。
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うーん・・・・ (マーガレット)
2007-02-06 07:15:05
絵本も素敵だけど、私はフラニーさんのコメントにグラッときてしまいました。

<もしやり直せるなら・・・・
もしあの時代に戻れるなら・・・
いくつもの「もし」を考えた時期もあったけれど、
今の自分は、それら全部をひっくるめて成り立っているのかも
しれないと思ったら、汚点や失敗もむだではない気が
してきます。

こんなことをすらっといえるのが、とても頼もしくかっこいい!
あの頃に行って見たい・・・と最近特に思ってしまう私にとってとても含蓄のある絵本とコメントでした。

返信する
私も・・・ (nao-yuuka-ayuchan5)
2007-02-06 16:06:41
この方の絵本は素通りできない!
先日、『悪魔の・・・』ってタイトルだったかな???
りんごのお話を読みました。
こちらは、悪魔のおじいさんが登場してましたが、
独特の世界観ですね!
引き込まれるような感じでした。
この絵本も、とても気になります!読んでみたいな♪
「あの頃、こうしてれば・・・」なんてこと、私も沢山あります。
でも、今、こうして自分があることにも満足です^^
あ~、この不思議な世界を覗いてみたいな!早速、この本探してみますね^^
返信する
●ペンギンブルーさんへ (フラニー)
2007-02-06 22:13:20
ペンギンブルーさんもやっぱり呼び止められましたか!
わたしも表紙の女の子と目があって、立ち読みしないわけにはいかなくなり、しばらくしてからやっぱり・・・と求めてしまいました。
宇野さんの絵、好きなのかそうでもないのかわからないけど、惹かれてしまうんですよ。

このお話の女の子的要素って、けっこう永遠かもしれませんね。女子って感じかな。
そしてそしてペンギンブルーさん、まったく同感!
自分の生きてきた過去に満足しているわけではないけど、いとおしく思えるようになってきた自分がいますよ。
まだ日野原先生あたりからすれば、半分も生きていない若輩なので、これからまだまだがんばらねば♪
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●マーガレットさんへ (フラニー)
2007-02-06 22:20:17
ほんとうですか!あら~ありがとうございます。

わたしは20代まで自分がなかなか出せない人で、苦しくて・・・
だからあまり戻りたいと思わないのかもしれません。
戻れるなら、10代後半のいい時期に・・
30代になってから、もっとスでいいといろんな人から学んで、40代に突入した今は、もっともっとはじけそうです(笑)

あ、ここでなんですが、「なわとび」!手に入ってしまいました♪
コハとたびたび楽しんでいます。教えてもらえてよかったです。すごく楽しい本ですねー♪
延々数えながら見入っています!ありがとうございます。
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●nao-yuuka-ayuchan5さんへ (フラニー)
2007-02-06 22:33:14
やっぱり見入ってしまいますよね。
りんごの出てくるお話、たしか舟崎さんの文のでしたっけ・・・。わたしもちらっとだけ見たのです。
(あれ?こっちはちらっとだけ
宇野さんはいろんな方と組んで、絵を描かれているみたいですね。

今いる自分に満足・・・えらいですね~
多分nao-yuuka-ayuchan5さんは、私より全然若いのに、そういえるのがすてきです♪
この女の子の不思議な絵本、本当についぐいっとひきこまれるので、またぜひ。
チヒロは、今ひとつ「わからん」と言ってましたけどね(←そりゃ、恋の経験もないから・・・)
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Unknown (harry)
2007-02-07 08:24:31
こんちは (^^)/
よみた~い!これ、絶対読んでみたいです。
宇野さんの絵、私も惹かれます。
「ゆきおんな」(川村ひろし・文)の絵も宇野さんですけど、おぼろな感じがとてもいいです。
ゆきおんなの顔がまたこわ~~~い!

私もね、同じ感想ですよ。
今までの失敗は、用意されたもの。
あれがあったから、あのイヤな経験があったから…
そういう思いを何度も感じたことがあります。
神様が用意してくれた試練。
ちょっとおおげさかな。
「秋桜」じゃないけど、
♪笑い話に時が変えるよ、心配いらないと笑った
みんなそれぞれ、カンヌの赤絨毯を歩いてるんですよ。
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●harryさんへ (フラニー)
2007-02-07 22:17:03
こんにちは。軽やかな感じを受けるのは、もしやお仕事もひと段落でしょうか。
宇野さんの絵、「おぼろ」って絶妙でまさにぴったりの表現ですね!
こわーいけど、目をそらすわけにはいかない感じ。
「ぼくはへいたろう」も、前にこどものともで出ていたのとビリケン出版のでは、宇野さんの絵がまるで違っていて、やっぱり絵に相当な思い入れを感じます。
どんな方なんでしょうね・・・←興味津々・・・

そして・・・カンヌの赤絨毯!く~、なんていいたとえなんでしょう。
秋桜の歌詞も身にしみます。
(この秋桜、いつもこみあげるものがあって歌えませんよー)
こう感じるのも、いい意味で年を重ねたってことでしょうか。
真っ只中にいると、なかなかひいてみられないですもんね。よーしステキなばあばを目指さないと!
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