みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

サキサキ

2007-01-31 | なるほど!/哲学する絵本
ふだんの朝、家事をしているときや車の移動では、
ラジオを聴いていることが多くて、時々”短歌”を
耳にします。
へぇ~、こんなのも短歌っていうんだ
というような、生活感あふれるわかりやすいものばかり。
もしかしたら自分にも作れるかも・・・なんて、あやうく
勘違いしてしまいそうな気安さです。
 五 七 五 七 七 の
短い言葉の中に、思いのたけをこめて詠む。
それも、きどらない普段の言葉で詠むのが、どうやら
はやっているようです。

サラリーマン短歌、携帯短歌、 枡野浩一さんの
短歌入門書”かんたん短歌”など(←糸井重里さん命名
らしいです。さすが・・・回文になってる!)
いろいろあるみたいですね!

そんなわけで、少し気になっていた短歌ですが、
昨年末「めくってびっくり短歌絵本」のシリーズを
新刊で教えてもらいました。

  『サキサキ
    オノマトペの短歌 
     種村弘・編  高畠那生・絵 岩崎書店

オノマトペは、「さくさく」とか「ぴたり」とか
音や状態をあらわす言葉のことで、
この編には、オノマトペの短歌が、14首おさめられています。

 君かへす 朝の敷石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ
                        北原白秋 

 たとへば君 ガサッと落ち葉すくふやうに 
       私をさらつて行つてはくれぬか
 
                        河野裕子

 サキサキと セロリ噛みいてあどけなき 
       汝を愛する理由はいらず

                        佐々木幸綱

擬音がぴりっと利いて、とても素敵♪
白秋や啄木などの有名方から、今活躍中の若手まで、
掲載の歌はさまざまです。 
「めくってびっくり短歌絵本」というシリーズの名のとおり、
左のページをめくるとさらに絵が広がり、歌についての
一言二言も添えられています。

このシリーズ、それぞれ絵が違っていて、それも楽しそう。
とりあえずこの「サキサキ」を見てみたかったのは、
高畠さんの絵が興味深かったからです。
父の純さんとはずいぶん作風も違っていて、それも
びっくりですが、高畠さんの作品にはいつも大概、
青や緑やグレーの顔色の悪い(しかも鼻筋の通った)
顔の人が出てくるんですよね。
それが気になっていて、今回もいるかしらと興味深くて・・・
で、やっぱりいましたよ!

他シリーズもおもしろそうです。まだまだ続刊でしょうか。
 『そこにいますか』 日常の短歌

 『君になりたい』 恋の短歌

 『ぺったんぺったん白鳥がくる』動物の短歌

そうそう、わたしが『サキサキ』で一番気に入った歌は
これです! ↓ ↓

 痩せようと ふるいたたせるわけでもなく 
       微妙だから言うなポッチャリって

                       脇川 飛鳥
プププ・・・ほんとにそうなのです~~。
1979生まれの若手。代弁に思わず拍手!                     
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ある日のコハ本(バスにのって)

2007-01-30 | 子どもと楽しんでいる絵本
昨日書いた、コハのお気に入り荒井絵本の
もう一冊が、『バスにのって』です。

  荒井良二 作・絵  偕成社

この絵本の雰囲気、流れている空気がたまりません。
わたしもこの絵本、実は大好きなんです!

照りつける太陽
晴れ渡った青い空
そよっと吹く風
大きなにもつを背負って砂漠を歩く男
そこに突然あらわれるバス停

その人は、そのバス停でバスを待ちます。
ただひたすらに、バスを待ちます。
微動だにせず? 待っているように見えます。
ふとつけたラジオから流れるのは

 トントンパットン トンパットン

耳慣れない、でも一度聞いたらしみつきそうな音楽。

大きなトラックや、馬や自転車に乗った人が通り過ぎ、
いつの間にか日が暮れて、夜になっても
バスはきません。
新しい朝がやってきて、大きなお日さんが顔を出しても
やっぱりバスはこないのです。

   きません きません
   バスは きません・・・・・・・・・・・・
  
          トントンパットン
          トンパットン
                  あっ!

このページ、2人で顔を絵本にくっつけては
うれしがって見入ります。
何度も読んで、知っているのにね。
でも、念願のバスがはるか遠くに見えるのだから、
そうしないといけない(笑)

「あれ、寝ちゃったね」 「あ、ボール!」 
「ナニがのってる?」 「乗れないの?」・・・・
次々間にはさまる会話も、毎度同じ。
それでも楽しくて。

迫力ある構図で遠近法のきいたバスが描かれ、
あっという間に去っていく。
バスの運転手のそっけない表情に、おもわず笑って
しまいます。

はぁ~~、のびのびする!
自分のちまちました思いなんて、どうってことないじゃない!
というくらい、あっけらかんとした世界です。

バスに乗れないなら、歩いていこう。
あれだけ待ったのに・・・とか、
あの運転手はなんだ!?・・・とか、
うらみがましいことはひとつもなく。

 トントンパットン トンパットン なのであります。

いいなぁ。いいなぁ。こういうの、いいなぁ。

そういえば先日聞いた、深津高子さんという方の
お話を思い出します。

 「ブータンから来た人が言ったのね。
  ブータンでは、バスが来なければ3日待てる。
  時計を作る技術はないけれど、
  時間はたっぷりあるって。」

目から鱗がおちました。時計だけあったってね・・・。
トントンパットン トンパットン でいかなくちゃ。

この絵本の紙質もとても気に入っています。
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ある日のコハ本(かいくん)

2007-01-29 | 子どもと楽しんでいる絵本
コハさん、2歳8ヶ月。
最近のはまりごとは、はさみ。

 
こんな持ち方だけど、案外、器用に扱います。

そして、最近よく読む本といえば、
3びきのくま』や『三びきのやぎのがらがらどん
ぐりとぐら』『そらいろのたね
しょうぼうじどうしゃじぷた』・・・などなど
長めのお話も次々とお気に入りに。

     

2冊読み終わると3冊目を、3冊読んだときは
4冊目を要求する知恵も働かせて、なるべく多く、
なるべく長く読んでもらいたい作戦に出てきます。

そんな最近の頻発本が、荒井良二さんの絵本。
2冊借りた絵本が、ただ今 同時大ヒット中。
その一冊が、これです ↓↓↓

  『かいくんのおさんぽ
   中川ひろたか・著 荒井良二・絵  岩崎書店

かいくんがおさんぽしていると、
いろんなものが飛んできては、かいくんにくっつくのです。
川のそばでは、魚がピョーンと 頭に。
パンやさんのそばでは、ドーナツがピョーンと 目に。
海のそばでは、いかがスッピーンと 胸に。
おしるこやのそばでは、おもちがモッチーンと 口に。

そのたびにいろんな動物たちが、
 いいぼうしだね
 いいめがねね
 いいネクタイだね
 いいマスクだね・・・・と、うらやましがっては欲しがり、
そのたびにかいくんは、まったく執着なく、快く
あげてしまいます。
ぼうしはしっぽになっちゃうし、めがねはネックレスに・・・
わけがわからないまま、去っていくさまが淡々としていて
実にユーモラス。

そのありえない設定と、擬音の楽しさ、
くっついたものを、次々欲しがる動物たちとのやりとり
ぼそっとつぶやく動物たちの言葉に、
コハさんすっかり夢中です。
何度も読んでいるうちに、フフフと笑っていたりして。
2歳児にもだじゃれ的センスって、あるんですね・・・。

もちろん、ところどころに描かれる、乗り物や馬にも釘付け。
(↑なにせ、車好きですから♪)

最後にやってきた森の中で、
(飛んでは来なかったけれど)木の上にいたもの・・・
これがまたいいのです。
動物たちがいくら欲しがっても、やっぱりこれは
あげられないでしょ。

荒井さんの描く緑は、どこまでも続いていそうな森。
でもうっそうとした感じはなくて、どこか明るい森。
そんな森なら、木の上から、陽気なギターの音が
聴こえてきても不思議はない気がします。

絵本日和』のうっちゃんや、『Plants books』 の
ペンギンブルーさんが書かれていて、
ずっと読んでみたかった絵本です。
でも荒井良二さんの絵本って、棚にそろっていることが
少なくて、借りるのにずいぶんかかったんですよね。
借りてみたら、あら~楽しい。
わが町の図書館のこの絵本が、ずいぶんぼろぼろなのも
納得です。

荒井良二さんの開放感漂う独特の空気がとても心地よくて、
のほ~ほんとしたのんびりさが、最高♪
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ボッケ

2007-01-24 | ユーモラスな絵本
以前、リブロポートというところから「レナレナ」
という絵本が出ていました。

         

江國香織さんが「絵本を抱えて部屋のすみへ」の中で 
書かれていたので、知っている方もいると思うのですが。
                    
ほんとにほんとに風変わりなので、立派に大人に
育ってしまった人には、たぶんすこぶる不評に違いない
絵本なのです。
「・・・出ていました」というのは、ただいま絶版中だから。
江國さんが書かれていても、どこからも再販されることが
ないのが、ちょっとさみしいところ。
それほど、私個人としては、惜しいと思っている絵本です。

左には、前半16こま、後半8こまのこまわりの絵
右には、その絵を淡々と説明する、手書き文字。
登場人物といえば、マッチ棒のように、体も髪も
細ーいイメージの女の子レナレナと、その他少しの小動物。
登場人物が誰たるかとか、持ち物とか、そんなことの
詳しい説明はいっさいありません。

見開き1ページずつのお話は、子どものころ、
もしかしたら考え、実行したこともあるかもしれない
不思議でおかしな世界です。

ミミズを引越しさせてあげるために、専用の箱を
用意したり・・・
味見した雨水がおいしくて、雨水でお茶を飲もうと、
雨水をためたり・・・
小箱の中に、つめのきりかすをしまってあったり・・・。

はっきり言って、今だったら顔をしかめたくなるような
ことばかりです。
なめたペロペロキャンディーの棒を髪につきさして
遊んだ上、地面にさして、ミミズの壁にしてあげるなんて
最高だけれど、今じゃ絶対にやらないこと。
でも、どこかでこんなことを楽しんでいる自分もいる。
そしてほんの少しだけ、ちょっとやってみたい気持ちと
素直にうらやましい気持ちが混じるのです。

あー、ここまでが前置きです!

そんな突拍子もない絵本をこよなく愛していたら、
同じ作家さん、同じ翻訳家さんの訳の絵本「ボッケ」に
出会いました。

    ボッケ
   ハリエット・ヴァン・レーク 作/ 野坂悦子 訳
             朔北社

表紙のインパクトある絵の丸い目に、見つめられました。
作者を見て、中を見て・・・ 絶対読みたくなりました。

レナレナ同様、ボッケとその友達リーは、何者なのかは
さっぱりわかりません。

 むかしむかし、どこにもいない 女の子が いてね。
 でも、きっと もうすぐ でてきてくれる。
 もし でてきたら、その子のなまえは「ボッケ」
 ヤナギの木のなかに すむと おもうよ。
   タッタタラー!
   ボッケです!

こんないきなりの登場で、木やカラスと話したり、急に
コブタに変身したり、ワラジムシにのれるくらい
小さくなったり、空飛ぶ手段に長い髪を妄想したり・・・
一段とシュールな感じがアップしている気がします。
不思議な不思議なおはなしの世界。

この作者のハリエット・ヴァン・レークさん、
オランダの方なので、2/1~大丸ミュージアム皮切りの
『オランダ絵本作家展』にも展示があるようです。
(それもレナレナです!)
ちなみにこの作家展は、徳島、ハウステンボス、兵庫、
帯広ほか、全国巡回予定だそうですよ。
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ふつうのくま

2007-01-22 | 心があたたかくなる絵本
 『ふつうのくま
           佐野洋子・作  講談社

チーズをおなかいっぱい食べるだけで、幸せになれる
ねずみ。
はちみつやドーナツをどんなにお腹いっぱい食べても、
食べれば食べるほど、さみしくなるくま。

くまの家の床下にすんでいるのがねずみで、
2人はときどき、ピクニックに出かけたりするのです。
春風にふかれながら、チーズの匂いにうっとりし、
今の今が幸せだと断言するねずみ。
同じ春風にふかれ、はちみつがおいしいと思いながらも
やっぱり満たされない思いに、さみしくなるくま。

くまがさみしいわけは、空を飛んだことがないから・・・
なのです。

それは、先祖代々伝わる赤いじゅうたんのせい。
ずっと祖先のおじいさんが飛んだと伝え聞くだけで、
結局くまのお父さんでさえ、飛ぶ勇気がもてずに
戸棚にしまったままだった赤いじゅうたんのせいです。

くまは、いつか飛んでみたいと思いながら、
その勇気がもてず、思い悩んで葛藤の毎日を
過ごしているのです。

次第に固まるくまの決意。
その来るべき日に、一生懸命行かせまいとして
声をかけるねずみは、とても健気です。
今日はその日じゃないかもしれないし、
もどってこなかったらどうするのって、
ねずみだって必死なのです。
でも、くまの決意が固いことを悟ると、

 「きみは けっしんがついたの?」
 「うん」
 「けっしんがつくって どんなきもち?」
 「こちんこちんのしんぞうが できあがるみたい」

日常の小さな喜びに満足しているねずみにとっては
くまの挑戦がとてつもなく無謀に思えるに違いないけれど、
くまのゆれる気持ちだって、切ないほど伝わってきます。

”こちんこちんのしんぞう”は、あっという間に、
”溶けたバターのようにぐにゃぐにゃ”に
なってしまうのですもの。

結局のところ、くまに本当の勇気があったのかどうか、
それはわからないけれど、まっくろだったくまが
まっしろになって帰ってくるほど、
大きな冒険だったことは間違いないです。

最後の2人の会話はとても何気なく、それでいて
お互いの本当の気持ちがぽろっと出ていてすてきです。
「いまのいまが しあわせだね」

これって本当です。
           

ペンギンハウスの大人の絵本部屋で、今日は佐野洋子さんの
本を読みました。
「いまのいまが しあわせだね」を実感するのは、
何か変化があるとき、より実感するものなのかな。
今日の参加メンバーとは何度も顔をあわせて
親しくなった方たちで、絵本を通して、
そんなつながりがもてることも、なんだかとても
ありがた~く思うのでした。

ふと思えば、今日は8度目の父の命日でもあって・・・。
おじいちゃんのために食後はりきって作っていたケーキ。
(わたしじゃないんですヨ ^^)

  例のたかこさんレシピ本から初ケーキ
          おじょうず

わたしは、やっぱりねずみかなぁ。

明日母に報告の電話してあげなくちゃね。

              
 この絵本、以前、文化出版局から出ていたのは桃色表紙だったんですよ♪
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ベアベアくんシリーズ

2007-01-19 | 子どもと楽しんでいる絵本
先日のおはなし会で読むために、図書館から
借り出していた『ベアベアくんのおかいもの



たいへんコハが気に入って、その後シリーズのうちの
1冊を購入し、今も2冊図書館から借りている
お気に入りシリーズです。

これ、新刊で紹介してもらったときから、
気に入るだろうな~と思っていたんですよ。
なにせ、右ページは全部、1枚折り込みになっている
簡単なしかけで、左ページは、3~4択の設問に
なっているのです。

ベアベアくんは、毎日お買い物に行きます。
月曜日には、パンやさん。
火曜日にはペットショップ・・・。
ベアベアくんの買うものは何かな?
一週間、いろんなところに順にお買い物に行って、
日曜日は買ってきたりんごを食べながら、買ってきた
本を読んでくつろぐベアベアくん。

シリーズ通して、同じつくりになっています。

ベアベアくんのおようふく』では、
”まいにちあさはやく きるものをえらびます。
 なにをきるのかな?”


寒い日、雨の日、雪の日、風の日・・・ベアベアくんの
着るものを選び・・・

ベアベアくんのいちねんかん』では、
”まいにちちょこっとずつ あそびます。
 なにをしてあそぶのかな?”


雪のふる冬の日、花々うらうら春の日、
お日さまかんかん夏の日、落ち葉ちらちら秋の日・・・・
ベアベアくんが使う遊び道具を選び・・・

ベアベアくんのいそがしいあさ』では、
朝起きると、昼までにすることがぎっちりの
ベアベアくんのすることを選びます。
8時に朝ごはん。9時にお絵かき。10時におやつ。
11時に外遊び・・・。



どれどれ?と選ぶ楽しみと、ペラッとめくる楽しみの
両方がドッキングされて、
だんだん答えが即座にわかるようになってきた今も、
相変わらず、楽しいらしいのです。

レイのしかけ絵本「じぶんでひらく絵本」や
マトリョーシカの日々のkayoさんの絵本
どれにしようかな? わたしのいちばん
どれにしようかな? ぼくのいちばん」で
ペラッとめくる絵本や、どれどれ?と選ぶ楽しさの絵本に
すっかり親しんでいるコハには、またたまらないシリーズと
なりました。

         

この絵、がまくんとかえるくんのシリーズの
アーノルド・ローベルの絵なんですよー。
作風の違いに、ちょっと驚きますよね!
訳はきたやまようこさん。
注目している新風舎から出ています。


『ベアベアくんのおかいもの』
『ベアベアくんのいそがしいあさ』
『ベアベアくんのいちねんかん』
『ベアベアくんのおようふく』
 ハリエット・ジーファート/文 アーノルド・ローベル/絵
  きたよまようこ/訳  新風舎 
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空とぶじゅうたん

2007-01-18 | ドキドキ/五感を刺激する絵本
復刊ドットコムでしばらく前に話題になっていた
この絵本が、新装版で復刊されたのが秋。
ようやくじっくりと読むことができました。

 『空とぶじゅうたん1

 『空とぶじゅうたん2
  新藤悦子・文/こみねゆら・絵  ブッキング

中東各国で織られるじゅうたんと、その地に
暮らす女性の恋物語の短編集。
1巻に3話、2巻に2話 おさめられています。
そのラインナップは、

 1、糸は翼になって (ヤージュベディル絨毯)
     トルコ西部 ヤージュベディル遊牧民の話

 2、消えたシャフメーラン (クルド絨毯)
     トルコ東部 クルド人の話

 3、砂漠をおよぐ魚 (ムード絨毯)
     イラン東部 イラン人の話

 4、ざくろの恋  (トルクメン絨毯)
     アフガニスタン西部 トルクメン人の話

 5、イスリムのながい旅 (イスファハン絨毯)
     イラン中央 イラン人の話

まず手にとってみてびっくりするほど、
こみねゆらさんの絵が美しい。
オリエンタルな雰囲気がたっぷりで、その地で織られる
緻密な絨毯柄が、それぞれのお話のはじめに
描かれています。
そして、お話を囲む飾り枠は、その絨毯柄の一部。
美しい柄の中に織り込まれる伝統や言い伝えが、
文中でもさりげなく紹介されています。

巻頭には、中東の地図が載せられていて、
話の舞台となる地が確認できるようにもなっています。
一口で”絨毯”と言っても、織りにも模様にも
土地土地の特徴があって、どの絨毯もそれぞれ魅力的!
そんな絨毯に寄り添うように、切ないお話が展開されて
いくのです。

作者の新藤さんは、自身も中東を旅されたり、
実際に住んで絨毯織りを習ったりしたそうで、
その実体験から来る感覚的な思いが、お話の中にも
よくあらわれているように思います。

日本にいると、中東の絨毯のイメージは高級で、
一度床にしいてしまえば、動かすこともない
どっしり重いイメージですが、実際かの地では、
”持ち歩き可能な、ポータブルな敷物として”
今も使われているようです。(あとがきより)

新藤さんのあとがきの中で、
実際の絨毯織りの体験が語られるくだりで、
たてかけられた織り機の、最後のたて糸を切った
瞬間のことばは、とても暗示的なのです。

 ”半年間織り機に固定されていたじゅうたんは、
  ひらっと宙に浮いたのです。
  まるで、命を与えられて、生き物になった
  ようでした”

たて糸に結ばれるひとつひとつの糸に込められる思いは
きっと、半年分の重さ以上のものでしょう。
縛られるものから解き放たれる開放感、自由へのあこがれ・・・
そんなものが、ひらっと浮いた絨毯に込められている
ように思えてしまいます。

おはなしはどれも切ない思いが残りますが、とりわけ
恋する相手と再会するために、300年を生きなければ
ならなかったファルザネの話(5、イスリムのながい旅)が
とても印象的でした。

こんな丁寧で美しい絵本が復刊されて、とてもうれしい♪
どうぞ多くの方に読んでいただけますように・・・。
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チャルカの幻燈会

2007-01-17 | 講座・おはなし会・企画展 他
 

12月に東欧雑貨のチャルカさんで、ちょっとしたものを
通販したときに、1枚のちらしが同封されていて、
あ~これは書かなくちゃと思ってたのに・・・
こんなに差し迫ってきてしまいました。

今日はお知らせです。

大阪のチャルカにて、ハンガリーのディアフィルムの幻燈会が
あるんです。
日にちは、1/26(金) 27(土)
2/2(金) 3(土) 9(金) 10(土) 11(日)
 16(金)17(土)
上映時間 19:00開場 19:15スタート

ディアフィルムというのは、ハンガリーでは一般的な
”静止画を映写機の光を通して壁に映す家庭用の紙芝居フィルム”
なんだそうです。
その上映作品というのが、2本だてで、その一つがマレーク・
ベロニカの『ボリボン

 

ぬいぐるみのお腹をジョキジョキ切っちゃって、
そのままほったらかしにして遊びに行ってしまうガビの
お話ですが、幻燈会で流れるものは、絵本とは少し
違うところもあるとか。
ベロニカさんがディアフィルム用に描き下ろされ、
ガビとジュリの兄弟ふたりの登場となるようです。

うぅぅぅ・・・・見たいっ。でも、大阪なんですよ~~。
お近くの方、ぜひぜひ。

以前、同じベロニカさんの「ラチとらいおん」のディア
フィルム幻燈会を観たことがありますが、それはかわいくて
もう一度観たいといまだに思っているくらいの感動もの
だったので、こちらも期待大です。
本当は、飛んで行って見たいくらいなんですけど・・・

もう一本のほうも、ご紹介すると。
ベネデク・エレク/作 ジュライ・リービウス/絵
『風のお姫さま』
”ハンガリー各地の民話収集に情熱をかけた巨匠 ベネデク・
 エレクの名作”とあります。
見聞を広めるために旅に出たヤーノシュ王子が、妖精の国で
出あった姫さまは、風のように走るのが速かった。
姫より早く走れればお嫁にもらえるといわれ、運試しを
することに・・・・。
んー・・・どこかで聞いたことがある展開です。
こちらもよさそうですね!

ハンガリーの伝統的な手作りお菓子を用意してくださってる
そうで、そちらも興味津々。
問い合わせは、直接電話にて、ということのようです。
チャルカ:06-6537-0840
HPはこちら 

もし、行かれた方があったら、ぜひ様子を教えてくださいね♪
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いかりのギョーザ

2007-01-15 | ユーモラスな絵本
ギョーザの絵本です。
ギョーザとかカレーとかキムチとか・・・におってきそうな
絵本は、とりあえず開いてみたくなりませんか?

 『いかりのギョーザ
 苅田澄子・文  大島妙子・絵  佼成出版社

このフライパン、ただものではありません。
ガスでも電気でもなく、怒っている人の怒りが、
フライパンの熱源になるのです。

怒りのパワーで焼いたギョーザは、えもいわれぬ
おいしさで、それを食べるとたちまち誰もが
ニッコニコ。
怒っている人を求めて、次々ギョーザを焼くも
食べるとみんな、穏やか~な気持ちになってしまって
とうとう怒っている人がいなくなってしまいます。

フライパン、どうする?
もう、極上のギョーザは食べられないのか!?

         

怒りのパワーを熱源にする発想が楽しくて、
おもわず笑ってしまいました。
大島さんの絵が、いつもながら楽しいです。

この作者、苅田さんが年賀状で「絵本を出しました」
とお知らせくださって、さっそく本屋さんに見に
行ったのでした。

彼女と知り合ったのは、14,5年前の東北
遠野の民宿・曲がりや(馬やつきの宿)でした。
寝台をつかったのんびり旅で、その頃好んで、
男女別相部屋の安めの宿に泊まっていたんですよね。
夫婦であとから、同室になった人のことを語るのが
楽しくて・・・。
苅田さんはそうして同じ宿に泊まった方で、
遠野の夜に、絵本がお互い好きだという話や、
遠野や花巻の話などをしたのでした。
以来、ずっと年賀状のやりとりが続いています。

年賀状でのいきなりの出版報告には少々驚きましたが、
またここで、夢をかなえつつある人の、
プラスのパワーをいただきました。

年初から、こいつぁー縁起がいいやね。

この絵本は、毎日新聞の小さな童話大賞ももらってる
そうです。
まだ年末に出たばかりの新刊です。
もし見かけることがあったら、見てみてくださいね!
コメント (24)
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1月のおはなし会

2007-01-14 | 講座・おはなし会・企画展 他
1/13(土)地元図書館でのおはなし会。

1月のテーマは『いらっしゃい!』
新年からイメージされるものの連想ゲーム。
やってくるといえばお客さん、
お客さんといえば、いらっしゃい・・・ということで、
思わず「いらっしゃい!」と言いたくなるようなおはなしを
集めてみました。

例によって、推薦者の色が出ている選書です。


★未就園 ちびっこ向け

    『おもちぶとん』  

    『おしょうがつさん
  * 図書館には、ハード版もありました

   手遊び 『いっちゃんといっちゃん』
         
   
    『すべりだい』 おおの麻里
                  こどものとも0.1.2  200612月号

    『ベアベアくんのおかいもの

   紙芝居 『ぴょんぴょんむらのケーキやさん』
        すとうあさえ/アンヴィル奈宝子 童心社  
   
          


★園児 ちょっと大きい子向け

    『十二支のはじまり

   紙芝居 『くまたのねんがじょう』
         わたりむつこ/山本祐司 童心社

   手遊び 『おもちつき』
  
    『うえへまいりまぁす

    『あしたうちにねこがくるの

    『てんぱたんてんぱたん


   パネルシアター 『北風小僧の寒太郎』
    
    モノクロの歌パネル。雪はチュールにはってかぶせます。
    あのサブちゃんの歌ですよ~。

だいたいわたしの持ち寄った本がわかろうというものですが
今回、友人がパネルを引き受けてくれたので、わたしは
久しぶりにパネルシアター担当からはずれ、
「十二支のはじまり」と紙芝居「くまたのねんがじょう」と
おもちつきの手遊びをやりました。

おもちつきの手遊びは、いろんなバージョンがあるらしい
のですが、2人向かい合わせになってやります。
これ、かなり楽しいのです。こどもたちの目もキラ~ン

今回のおはなし会、年初だというのに、10組以上の
親子が来てくれる盛況ぶりで、とても楽しい会に
なりました。
プログラムにはさんだアンケートには、
家庭での絵本の選書のコツについての質問や、
ヒーローものに興味がいっている子どもに、
どんな絵本でひきつけたらいいのかわからない
といった悩みまで・・・
絵本との出会いや付き合いを、
おはなし会だけで終わらせないで、
家庭へつなげるためにはどうしたらいいかと、
ただ今模索中です。

今回、後半部はちょっと長めのプログラム。
前半からずっと聞いてくれる親子がほとんどで、
子どもには長いと思うけれど・・・、
お母さんがうれしそうに聞いてくれていたのが
印象的でした。

今回使った絵本の中で、図書館本はすべて陳列し
借りられることを伝えたら、ほとんど全部借りて
帰ってくれましたしね。 うれし~♪
うちでまた読んでもらえる幸せ・・・これこそ、
大事にしたいとこですよね。


    『ベアベアくんのおかいもの
この絵本シリーズ、ただ今、コハのはまり本ですが、
長くなってしまったので、また別途書きたいと思います。
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セーターになりたかった毛糸玉

2007-01-13 | とびきり好きな絵本
セーターになりたかった毛糸玉
 津田直美・著  ブロンズ新社

ベッドに入ってから、大きくなったら何になろう?
と考えることがあるように・・・・

 「だれもいなくなった 暗いお店のなかでも
  毛糸玉たちが
  自分たちの将来について
  いろいろな夢を語りあっているのです。」

とはじまるこのおはなし。
夜、ひそやかに語られる夢って何だろう?

どうやら、毛糸として生まれたからには、一度は
セーターになってみたいと憧れるものらしいのです。

このおはなしは、セーターになることを夢見ながら、
なかなか願いのかなわない、一つの赤い毛糸玉の
波乱に満ちたドラマです。

10個の赤い毛糸玉は、セーターになるべく
おばあさんに買い取られ、希望通りセーターに
編み上げられていきます。
5コなくなったとき、胴体完成。
さらに3コなくなったとき、両そで完成。
さらに1コなくなったとき、ゴム編み部分も編みあがり、
セーターはすっかり完成してしまいます。
悲嘆にくれたのは、残ってしまった最後1コの毛糸玉。
自分の不運を嘆きます。

それからは、山アリ谷アリの毛糸人生のはじまり。
孫への手袋として、「身を落とした」ことを嘆きつつ
次第にその状況にもなれ、幸せを感じる”山”時代。
その後やってくる試練の”谷”時代。
最後は、形は違えど、救われる思いにホッとします。
人間の人生だって、同じようなものかもしれない、と
ちょっぴり思ってみたりする。

このおはなし、ペンギンハウスの店長さんから教えて
もらってとても気に入ったものの、当時、
まったく入手不可本で、本当に手をつくして探しました!
ちょっと思い出深い絵本。
すっかり、ストーリーの運びと絵に、やられてしまったのでした。
思えば、この絵本が、津田直美さんの絵本を集めるきっかけ
だったんですよね。
今は、版元がかわってブロンズ新社から、復刊されています。
版型も少し小ぶりになって、加筆もされているらしいです。

毛糸やスープやお風呂など・・・あったかさの漂う絵本って、
結構好きなものが多いなぁ。

冒頭の絵本横にあるのは、手袋人形です。
この作り方も、絵本の中でかわいい絵つきで紹介あり。

            

以下、余談ですが・・・。
お正月休み、けっこう気合を入れて編んだ、かぎ針あみの
コハのチュニックワンピースが、ようやく編みあがりました!
さっそくうれしがって、しょっちゅう着せているわたし

 
取りかかりは、去年の3月。


↑この絵本(編みものばあさん/これもいい!)の記事を書いたら、
唐突に編み物がしたくなって、これから春という時期に
毛糸を買いにいってしまったものなんです。
家族の予言どおり、案の定、ひと夏ほっぽってまして・・・。
ようやく完成です。 
ふ~~。
でも、かぎ針は楽しい
次は・・・シーズンまたぐの覚悟で、帽子とモチーフかな!?

参考本はこちら。 「ベビーニットの本
             

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ある日のコハ本

2007-01-11 | 子どもと楽しんでいる絵本
年末からの慌しさとははまったく無縁なコハルは、
この何週間かで、絵本への興味がより増したようです。
ただ今、2歳7ヶ月。

帰省時、何冊か絵本を持ち帰って、いつものように
夜寝る前読んでいたのですが、
実家を経つ前日、何を思ったかわたしの弟に親しげに
近寄っていき、絵本を見せながら文を語り始めるでは
ないですか!
一同、あれまぁ~、びっくり!

その絵本というのが、

    「つきよ」    長新太  教育画劇

 バスなのね」  中川ひろたか/100%Orange
                         ブロンズ新社 
 ふねなのね」 中川ひろたか/100%Orange
                         ブロンズ新社

もう3冊とも大のお気に入りなので、ほぼ全文(つきよは
口がまわらぬところもありますが・・・)頭には入っていた
ようなのです。

 (「つきよ」の以前の記事→ の下のほうに)

弟・・・3*歳にして、2歳児に絵本を読んでもらったと
喜んでいました。
ふだん自分がしてもらっていることを、自分も誰かに
してみたくなったのか・・・おかしーと思いながら
よいおじさん孝行になったわね♪ と笑ったのでした。

「バスなのね」「ふねなのね」はのりもの好きのコハには
たまりません。

「バス」になっているのは、縦に並んだイスたち。
運転手さんは律儀にバス停で止まり、乗客の乗り降りを
待ちます。

「おおりのかたは、おしらせください」
  ・・・・・・・・・・・・
「ブー!」 ← くまが上をむいて自分の鼻を押す仕草

「ピピ、 つぎ、とまりまーす」

これが最高に楽しいんです!コハともども、毎度プププ・・・。
うさぎが落としたりんごの行方だって、見逃せません。

「ふねなのね」もつっこみたくなるシーンがいくつもあって
楽しい絵本。

   ふねなのね
   かわなのね

とはじまって、出てくるのは船に見立てた箱とわにと男の子。
わになのに、
川にいたのに・・・
波にのまれて助けて~なのねと、思わずつっこみたくなる展開。
さらりと流れていくおはなしが、またなんともいい余韻です。

両方とも見立て遊びに違いないのに、コハルはいっしょに
バスに乗り、ふねに乗り、なんだかとても楽しそう。

この2冊、ことり文庫さんで買った、クリスマスの
プレゼント絵本です。
(ちなみに、ねーさんへは、アリソン・アトリーの文庫本
西風のくれた鍵」と、こうめさん特製のリネンのブックカバー)

                    

ここのところのコハのお気に入り絵本については、
まだたくさん書きたいものがあるので、
また近いうちに書きたいと思います。

あ・・・でも季節モノだけは今がいいですね。

今月号の こどものとも0,1,2と年少版に
コハさん、大変くいついてます

 

 「かんかんかん」         こどものとも0.1.2
 「おなかがいたいこねずみ」   こどものとも年少版

食べ過ぎてお腹が痛いと訴えることが多い人なので
気持ちがよくわかるんでしょうか。
0.1、2のほうは、楽しいのりものの連続です。
母としては年中・年長版もよかったので、
今月は4冊とも買ってしまいました!(今月のこどものとも
コメント (18)
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年のはじめに。

2007-01-08 | ケの日のこと
         

         

         

     

         

     ながら


  ・・・・・・・・・・・・・・・
 

 
         今年も

 
   よろしくお願いします。


昨日ようやく帰京し、早くも明日からは学校スタートです。
今年は暖かくて穏やかな、よいお正月だったな。
みなさまはどう過ごされたでしょう?

わたしは両実家へ行き、食べては飲み、食べては寝て・・・
少し本を読み、編み物をして、
清く正しいお正月を過ごしてきました。

結果
・・・・ 3キロ増! 

あ~。
毎年繰り返されるこの体重増加は、いかがなもんでしょう。
いた仕方ないとはいえ、少しは自制しましょうよ>自分!
という感じです。
永遠のダイエッターとしては、今日から粗食生活に
入らねばいけないところ。
でもいただきもののおいしいお菓子や、おもちや果物が
山盛り状態。あーつらいです。


新年早々のできごと。
普段出かけない初売りなどに出かけて
結局何も買わなかった代わりに
お気に入りのマフラーを落としてしまいました。
少しだけカシミアの入った、色の美しいイタリア織りの
マフラーだったのに・・・。
すっかり気落ちし、他の心配ごととあわせて
胸を痛めていたところ、
夫がイチローの言葉を教えてくれました。

 自分がコントロールできないことは気にしない。
 コントロールできることだけに集中したい。


細かい表現は違っているかもしれないのですが、
思わず感動するほど、納得してしまいました。
極めている人の言うことって、どうしてこんなに
達観しているんでしょう。
わたしも自戒をこめて、今年はこういう心持でいたいと
思います。

最後に、みなさまにも、気持ちが晴れ晴れするような絶景を!

 

昨年末12/29に、東名高速のサービスエリアから見た
富士山です。
本当にしみじみい~い山ですね!

今年もどうぞよろしくお願いします

コメント (25)
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