中国各地で公務員らの給与削減や未払いが相次いでいるが、民間企業では、それ以上に過酷な賃下げを実施している可能性が高い。
現役世代が塗炭の苦しみを味わう中で、深刻になるのは高齢者の介護の問題だ。
日本以上に高齢化が急速に進む中国は、実は1980年代から高齢者の自殺大国だったことはあまり知られていない。
急激な高度成長で出稼ぎに出る子どもたちのために、儒教精神のひとつ「親孝行」の価値観は急激に失われ、そして高齢者が人知れず死を迎えてきたのが中国だ。
その悲惨な状況は、今回の経済崩壊でさらに深刻化しかねない。
中国政府は2013年7月、改正「老人人権益保障法」を施行し、国民に対して、離れて暮らす高齢者を定期的に見舞うことなどを義務付けた。
親孝行のための休暇を従業員に与えるよう企業に求めるなど、地方政府が中心となって様々な施策を講じてきたが、法律施行後10年が経過した今、効果はまったくないどころか、親孝行の精神自体が絶滅しかかっている有様だ。中国でも2016年5月から北京市を始め16都市で介護保険制度が試験的に導入されている。享受できるサービス内容は日本とほぼ同様だが、対象が「主に都市従業員基本医療保険に加入した者」に限られている。
老人が増え続ける日本の介護問題も大変だが、「豊かになる前に高齢化が始まった」中国の深刻さはその比ではない。「全土で『介護難民』があふれる」事態が現実味を帯びている。
中国では1980年代から農村部の高齢者の自殺率の高さが問題になっていた。
「中国全体の自殺率の3倍以上だ」とする調査結果がある。
子供たちが都市部に出稼ぎに行くことが多い農村部で、体の自由が効かなくなった高齢者が自殺をしてしまうケースが後を絶たないからだ。
今回の不況で中間層は大打撃を被っており、都市部で今後、高齢者の自殺が急増するのではないかとの不安が頭をよぎる。給与が下がり、頼みの綱の不動産価格が下落する状況下でこれまでのように親の介護費用を捻出する余裕がなくなってしまうからだ。 中国は高齢者に自殺を強いる社会になってしまうかもしれません。