トランプ前大統領復帰の鍵を握っているのが「投票抑圧」だ。 前回の大統領選挙は「不正選挙」だったと根拠
のない主張を続けるトランプに同調する共和党は、郵便投票の制限、身元確認の厳格化、投票所の削減、投票時間
の短縮など、ありとあらゆる手段を使ってライバル陣営の投票を阻もうとしているようです。今年に入ってその勢
いはさらに加速しているという。民主主義の根幹を揺るがす、トランプ大統領再選を止めるには「医者からの悪い
知らせだけだ」 ということのようです。
以下抜粋コピー
国家安全保障会議(NSC)の元高官でトランプの副補佐官も務めたフィオナ・ヒルは CBSニュースの番組に出演し
彼女によれば、熱狂的トランプ支持者による昨年1月の連邦議会議事堂襲撃は、民主党政権を2024年に転覆させる
ための「ドレス・リハーサル(本番前の舞台稽古)」だったというのだ。 今は姿を潜めている極右勢力がトラン
プの扇動に呼応して中間選挙や次期大統領選に向けて活動を活発化させると。
● 陰湿で卑劣な 投票抑圧の企て 実は、暴力よりももっと卑劣で陰湿な企てがすでに進行している。「投票抑圧」
だ。 前回の大統領選挙は「不正選挙」だったと根拠のない主張を続けるトランプに同調する共和党は、郵便投
票の制限、身元確認の厳格化、投票所の削減、投票時間の短縮など、ありとあらゆる手段を使ってライバル陣営の
投票を阻もうとしている。 米ブレナン司法センターによると、昨年だけで全米50州のうち49州で440本以上の
投票規制強化法案が提出され少なくとも19州(ほとんどが知事や州議会多数派が共和党)で投票を抑圧する法律が
成立している。今年に入ってその勢いはさらに加速しているという。 南部ジョージア州では、郵便投票申請書が
自動的に有権者に配布される制度が廃止、写真付き公的身分証(ID)の提示が義務化された。IDを所持していない
黒人やマイノリティーの民主党支持者を投票が排除する狙いだ。 テキサス州では車の中からでも投票できる
「ドライブスルー」投票も禁止されている。 新型コロナ大流行で多くの州で郵便投票などでの投票がしやすく
なるように規則が変更された。それが民主党に追い風となりトランプ敗北につながったと共和党はみているのだ。
対抗する民主党のバイデン大統領も、もちろん黙ってはいない。「投票権は民主主義の出発点だ」として不公
平な投票抑圧を厳しく批判している。しかしバイデン政権の弱みは、共和党の企てを阻止する決定的な手段を持
っていないことだ。 司法省は複数の州を提訴したが、大統領在任中にトランプが選任した3人を含む保守派
の判事が多数を占める最高裁で却下される可能性が高い。 それならと、民主党は連邦議会で州政府の動きを
封じる包括的な投票権法案を提出したが、こちらも上院での成立は絶望的だ。 重要法反可決には最低60票が必要
だが民主党の現有勢力は50議席。そのうえ身内の民主党議員2人が造反しているからだ。 トランプ前大統領の 次
期大統領就任が濃厚に 「共和党の愛国者たちの勢いは止められないぞ!民主党の社会主義者たちを落選させ
る!」 中間選挙を目指してアリゾナ州で今年初めての大規模集会を16日開いたトランプは、そう怪気炎を上
げた。聴衆の数は約1万人。トランプ熱は日本で想像する以上にまだ熱いのだ。 2月下旬にトランプが立ち上げ
る新しい保守系のソーシャルメディアプラットフォーム“TRUTH Social”(真実のソーシャルメディア)を運営す
るSPAC(米特別買収目的会社)の時価総額も先月、24億ドルを上回った。 11月8日に実施される中間選挙で
は、連邦議会上院(任期6年、定数100)の約3分の1に当たる34議席と下院(任期2年、定数435)の全議席が争
われる。 アフガニスタン撤兵の混乱やコロナ感染拡大、記録的な物価上昇などでバイデン大統領の支持率が
40%程度と低迷している民主党の旗色が悪い。 歴史的に見ても、アメリカでは大統領就任から最初の中間
選挙で与党がほとんど敗北している。よほどの逆転劇がない限り、今年も与党民主党が負ける確率は極めて高
いと大方の専門家はみている。バイデン大統領の不人気と露骨な投票抑圧が相まって共和党の圧勝ということ
も十分考えられるのだ。 そうなれば、復讐に燃えるトランプが次期共和党大統領候補に選ばれることは
現時点で確実だろう。それほど共和党はトランプに恐怖支配されている。大統領再選となれば、2024年に敗
北するのは他ならぬアメリカの民主主義だ。選挙そのものの信頼性が失墜するからだ。 昨夏、「あなたの再
出馬を阻むものはなにか」と保守派ケーブルテレビ番組で質問された75歳のトランプは、赤茶けた顔に笑みを
浮かべながら次のように答えていた。 「医者からの悪い知らせだけだ」
(国際ジャーナリスト・外交政策センター理事 蟹瀬誠一氏)