終戦直後の色丹島を舞台に、ソ連の占領に伴い激変した島民の暮らしをとある家族の視点で描いたアニメ映画・ジョバンニの島がテレビで放映されました。丸山穂高議員の発言のように4島返還は戦争などの大変動でもない限り難しい。しかも、安倍首相の発言と反比例するようにプーチン大統領はロシア国内世論もあり年々消極的になっているようです。世界を見渡せば親日国だらけなのに隣国・韓国、北朝鮮、ロシア、中国とは紛争しています。維新の会のロシア大使館への謝罪ではありませんが、機嫌を損なわないように曖昧模糊な外交をしてきたためでしょう。日本人全体で敵対する外国に対してただ、謝罪するのではなく❝自国の立場をしっかりと認識し、日本の国益とは何か、ということを意識する❞ことが重要で、そこを国政選挙の争点にすべきです。
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北方領土をめぐる発言で物議を醸した丸山穂高衆議院議員が、ℕ国へ入党することになった。N国党という現象そのものについては、改めて考察したいと思うが、今回は丸山議員本人の行動や発言に対する、日本言論空間の反応に疑問を呈したい。
丸山騒動はいわゆる「戦争発言」から始まっているが、丸山氏は北方領土の島民の方に対し、「戦争で北方領土を取り返すのは賛成ですか、反対ですか?」と尋ねた後に、「戦争をしないと、どうしようもないじゃないですか?」といった趣旨の発言をした。そして、「戦争」という言葉を使ったことで非常に強い批判を受けた。
■問題は「戦争」という言葉を使ったことではない
しかし、筆者からするとこの発言がマズかったのは、戦争という言葉を使ったからではない。「戦争に賛成か、反対か」→「戦争をしないと領土を取り戻せない」という論理構造が根本的におかしいのである。
「戦争に賛成か、反対か」と聞かれれば、ほとんどの人は「反対」と答えるに決まっている。そして、「戦争しないと領土を取り戻せない」となれば、たいていの人は、戦争は当然嫌だから、北方領土を取り返すことを諦めかねない。つまり、大多数の人は、たくさんの人が死ぬ戦争をしてまで、領土を取り返したいと思わないので、「戦争をしないと取り戻せない」という発言は、「取り返すこと自体を諦める」ことにつながりかねないのである。
そもそも、現実的に考えれば、戦争しなくても北方領土を取り返すことが可能だ。それには、日本が国力を高めて強い国になり、ロシアが弱くなればいいのである。そして、ロシアが弱くなったところで、多面的な働きかけ(例えば、経済的な援助や、軍事力を背景とした領土返還の要求など)を行い、北方領土を取り戻せばいい。以上の理由から丸山発言は大問題なのだが、これよりも何百倍、いや、何千倍も大きな問題なのは、この発言に対する日本の言論界の反応である。いや、むしろあの発言のおかげで、もともと「おかしい状態」にあった日本の言論界の問題点があらわになったとすら言える。
確かに前述したとおり、発言は当然批判されるべきだが、メディアや政界による総攻撃はさすがに度を越していると言わざるをえない。発言は間違っているとはいえ、それは若さや経験不足、国際情勢に関する理解不足によるものだと見ていいだろう。
これに対する批判のあるべき姿とは、例えば「戦争するしかないと軽々しくいうのではなく、真面目に北方領土を取り返す方法について考えるべきだ」というものではないだろうか。そしてその批判は冷静な形で本人に伝えるべきで、大々的なバッシングはまったく不必要ではないか。
■現在の日露交渉が完全に間違っている
さらにおかしいのは、丸山バッシングの中身である。バッシングは主に3点に集中していたといってよいだろう。それは、「戦争という言葉を口にしたこと」「日露交渉に影響を及ぼしかねないこと」「ロシアが不快な思いをする」という3点である。
まず戦争という言葉を口にしたことは、これほどバッシングされるべきことだろうか。「戦争しか方法がない」という発言を批判するならわかるが、戦争という言葉を口にしたこと自体を批判すれば、それこそ真面目な議論ができなくなる。当然戦争は非常に悲劇的なものであり、何としてもそれを避けたいという思いは誰にでもあるであろう。
しかし、国際情勢や二国間関係、まして、領土問題といった難しい問題を考えるうえで、戦争という現象を無視することはできない。戦争とは絶対に避けなければならない極端な手段ではあるが、議論や考察の中で戦争という現象も含めて、さまざまな要素を考慮しなければならない。だから戦争という単語を使用しただけで人をバッシングすることは間違っている。
次に、丸山発言は日露交渉に影響を及ぼすかもしれないという点についてだが、そもそも日本人の多くは、今の形の北方領土に関する日露交渉が完全に、根本的に間違っていることをわかっていない。
日本側は最初から大幅な譲歩をする姿勢を取っているのに対して、ロシアは強硬路線を貫いている。この状態が続くと、交渉は必ず、日本の一方的な大幅な譲歩とロシアの一方的な勝利という結果でしか終わらない。つまり、現在の日本の姿勢は自国の国益を大きく損なうものなのである。
では、日本はどうしたらいいかと言うと、日本は直ちに現在の交渉を中止し、「北方領土は4島ともに、日本の固有の領土であり、その所属は交渉の対象ではない」という本来の姿勢に戻るべきである。仮に丸山発言が日露交渉の頓挫に貢献するのであれば(一議員の発言がそこまでの影響力を持つことはありえないが)、それはむしろ結果として日本の国益にかない、歓迎されるべきものなのである。
3点の中で最もおかしいのが、「ロシアの機嫌が損なわれる」という批判だ。そもそも、なぜ「問題」なのか。それは、ロシアが74年も北方領土を返さずに不法占領しているからである。ロシアが北方領土を占領しなければ、この問題は存在しない。またロシアが北方領土を返せば、この問題は自然と解決する。
■なぜロシアに謝罪する必要があるのか
ロシアが悪意で日本の領土をずっと返していないからこそ、この問題も連綿と続いているのだ。つまり、北方領土問題ではロシアは100%悪く、日本は100%の被害者である。だから、日本国内で北方領土問題について議論する際、ロシアに一切配慮する必要はない。「ロシアが怒るかもしれない」という理由で丸山議員をバッシングすることは、「ロシアにも義があるかもしれない」という誤ったメッセージを世界に送るおそれがあるのだ。
以上の3点を冷静に考えれば、日本のメディアや政界の丸山発言に対する反応が、いかに異常かがわかるだろう。政界では自民党から共産党まで丸山議員を批判した。最もひどかったのは、丸山議員はそれまで所属していた「日本維新の会」の幹部が、ロシア大使館へ謝罪しに行ったことである。
ロシアへの謝罪は本当に言語道断、許すまじき暴挙である。日本の領土を不法占領して返さないのはロシアなのに、そのロシアに対して日本人が謝るとはどういうことか。自国の領土を不法占領している国に対して謝ることは、独立国家の国政政党の振る舞いではない。それはいわば、植民地支配を受けている国の現地人の代表が、宗主国の総督府へ謝りに行ったようなものである。維新の会がその後、日本の代表的な親露利権屋を参議院選挙に擁立し、当選させたことを考えれば、この行いは理にかなっていると言えるのだが……。
日本人は外国に配慮する前に、まずは自国の立場をしっかりと認識し、日本の国益とは何か、ということを意識しなければならない。それは自国の領土を占領している国に関することであればなおさらである。
グレンコ・アンドリー :国際政治学者、日本研究者