みぃちゃんの頭の中はおもちゃ箱

略してみちゃばこ。泣いたり笑ったり

野生の横顔

2007年01月10日 18時37分31秒 | いのち
hato021.jpg: 雨上がりの夕日を浴びるキジバト
D70s with SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC Macro thru Kenko Pro1D Protector (W), Manual exposure (F=7.1, SS=1/30s), ISO200, WB=Shade (+0), f=70mm (35mm-equivalent: 105mm)

(前回から続く)

まだ飛ばないだろう、まだ飛ばないだろうと高をくくっていたそのとき、鳩は、大きく翼を広げたかと思うと、ぐいっと体を伸ばし、くちばしで空気に切れ込みを入れました。

黒い塊が猛々 (たけだけ) しい羽音を響かせ、雨上がりの静寂を、読み終えた新聞紙のように引き裂いていきます。

鋭い飛跡は何の迷いも見せずに伸び続け、灰色の舗装道路を越えて別の家の屋根で止まりました。

冬の冷たい雨が降りしきる中、ベランダの柵に止まって動かない鳩を見つけてから3時間が経っていました。

ベランダが気に入って動かないキジバトを観察し続けるうちに、私の心の中で、目の前にキジバトがいることが当たり前になっていました。友達になったような気分でいました。

そんな独りよがりな甘えを見透かしたかのように飛び立ったキジバト。野生の顔をしていました。

残された住宅街が、いつものざわつきを取り戻し始めました。

(「冬の雨しのぐキジバト」終わり)