映画と音楽そして旅

主に懐かしい映画や音楽について…
時には新しい映画も…

(22) 別れのワルツ(映画「哀愁」)

2005-08-07 00:42:49 | 映画音楽
 大人と子供の境界線を彷徨っていた私を、映画や音楽の世界に引き込んだのは5歳年上の従姉のU子だった。大阪に住んでいた彼女は余程退屈していたと見えて、たまに訪れる私をしばしば映画に誘った。
 いつまでも私を子供扱いすることにはやや不満だったが、子供のフリをしている方がトクな事に気づくと、私は従順な弟分らしく映画や食事のお供をすることに決めた。
 当然のことながら私に映画の内容の選択権はなく…というより全然知らなかった…という方が正確かも判らない。私はもし尋ねられたら当時人気抜群だった「アチャコ青春手帖」と答えるつもりだったが、U子は何も聞かずに近くのローカルな映画館か、電車でミナミに向かうのだった。U子は私を子供扱いするくせに見るのはラブストりーが多く、私も興味や好奇心もあって大人の世界へと少しづつ近づいていった。
 この映画で私がまず関心を持ったのは主演男優のロバート・テイラーだった。第一次大戦当時のイギリス軍将校の凛々しいというか、カッコいいというか、今まで見慣れてきた日本軍将校の地味な格好に比べれば雲泥の差に感じた。
 主演女優のヴィヴィアン・リーはいかにも悲劇のヒロインといった印象だったが、このイメージが後年に観た「風と…」のスターレット・オハラの強気で気ままな性格と一致せず、まだ発達途上の私のお脳は大混乱した。その後の「欲望と言う名の電車」ではまた違う感じの女性を演じて「風と…」に続く再度のアカデミー賞を獲得したそうだ。病魔のため五十代の若さで他界したが、「美人薄命}とは彼女の為に用意された言葉のように感じられた。
 主題曲の「別れのワルツ」はどんなシーンだったのかな?もう一つは「アンニー・ローリー」だっかな?などとこのあたりになると、記憶がだんだんと曖昧になってくる。
 ロバート・テイラーが気に入ってその後、「クオ・ヴァディス」という作品を観た。帝政ローマ…暴君ネロの時代を背景に、迫害を受けていたキリスト教徒の娘と、ローマ軍の隊長の恋物語だが、ここで私はデボラ・カーというスターに出会った。V・リーと同じイギリス人で…と書き出すとまた止まらなくなるので又の機会にしょう。
 戦死したはずの恋人が生きていて、せっかく再会できたのに何故彼女は、死を選ばねばならなかったのか?私にも大体判ったつもりだったが、念のためU子に聞いてみた。U子は
少し困った表情で「いずれ大人になったら判る…」といって何も教えてくれなかった。
 この映画で描かれた戦争がもたらした悲劇的なラストは、多くの女性たちの涙を誘い、ウォタールー・ブリツジでのファーストシーンは、後年のNHK人気ドラマ「君の名は」のヒントになったといわれる。
 私が観た映画では初期のものだったため、消化不良の代表のような作品だったが、もう一度大人の視点から落ち着いて見直したい作品の一つでもある。
                                 たそがれ