映画と音楽そして旅

主に懐かしい映画や音楽について…
時には新しい映画も…

  (21)タラのテーマ(映画 「風と共に去りぬ」)

2005-08-04 00:09:03 | 映画音楽
 誰にでも「古き良き時代」というものがあると思うが、この映画の舞台となったアメリカ南部の人々にとって「良き時代」とは地主と奴隷による階級社会が形成されていた頃である。
 裕福な地主の家に育ち自尊心が高く、我ままな性格の娘スターレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー〕が、南北戦争という歴史的な変革の時代を背景に、次々と起こる苦難の半生を持ち前の勝気な気性で乗り切って行く壮大な物語だ。 
 幼な馴染みのアシュレー(レスリー・ハワード)を忘れられないまま,愛のない結婚をするあたりは彼女の気持がよく判らない。気位が高く自信家の彼女はアシュレーがいとこのメラニー(オリヴァー・デ・ハヴィランド)と結婚したときにはじめて涙を見せる。
 戦火にあったアトランタの町からの脱出や、メラニーの出産の場面で見せた勇気には感動を覚えた。なにもかも北軍兵士に奪われて、空っぽになった邸宅で彼女は神に誓う。
 二度と飢えはしない!たとえ盗みをしようと、人を殺めようとも!
 生きるために盗みに入った北軍脱走兵を彼女はためらうことなく射殺する。敵だった北部の資本家と取引したり、大して好きでもなかったパトラー船長(クラーク・ゲーブル)と結婚するが…すべてが終って彼女に残ったのは…ふるさとのタラの赤い土 明日に希望を託そう…すべては風と共に過ぎ去ったのだ…
南北戦争により古い体制は崩壊して南部にも新しい時代が訪れてきた。
 この映画が公開された頃の日本の状況もよく似たものだった。敗戦により古い体制や価値観は消滅して、明治維新以来の大変革の嵐がやって来た。スターレット・オハラの生き方…その良否はともかく戦後の混乱の中で必死に生きた人々には、大きな感動と勇気を与えたようだ。
 女優ヴィヴィアン・リーのインパクトがあまりにも強烈だったため、私にはパトラー役のクラーク・ゲーブルの存在が薄く見えた。それよりも私はメラニー役のオリヴァー・デ・ハヴィランドに興味を持った。彼女は当時の私のお気に入り某大女優の姉だった。しかもこの姉妹は仲が悪かったので、本気でケンかをすれば、どちらを応援すべきか?大真面目で迷ったほどだが、その後はどうなったのかは聞いていない。
 原作は読んでいないがこの作品は南部人の視点から見た物語のようで、奴隷解放に努めた北部人が悪玉扱いであったり多少は違和感もあった。
 ラストシーンは彼女の固い決意を象徴するように、主題曲「タラのテーマ」が流れて約4時間の映画は終ったが、最初は疲れたばかりであまりよく理解出来なかったようだ。
 テレビの再放送やビデオがなければ、多分永久に消化不良(今でも完全消化といえないが…)のまま終ったかも知れない超大作であった。
                            たそがれ