『市民科学者として生きる』(高木仁三郎・著、岩波新書)
<☆>
今年は成田空港開港から30年目だそうである。また、先日の中国四川省の大地震で、建物の倒壊などによって多くの核物質が行方不明になっているという。 . . . 本文を読む
『雪』(中谷宇吉郎・著、岩波文庫)
<☆>
そろそろ雪の季節も終わろうとしている。いまは関東平野の片隅に住んでいるが、北陸の山沿いの田舎町に生まれ育った者として、なじめないことが二つある。 . . . 本文を読む
『天文学者はロマンティストか?』(縣秀彦・著、NHK出版生活人新書)、『新しい太陽系』(渡部潤一・著、新潮新書)
ちかごろ天文関係の本を買うことはめったになくなった。それ以外に読むべき本がふえて、純粋に自分の興味だけで読みたくなる本を買う余裕―同時に読む余裕も―なくなってきたということだろう。天文に興味がなくなったわけではない。そもそも自分の原点の一つは、あきらかに天文に対する興味にあったと思 . . . 本文を読む
『恋する天才科学者』(内田麻理香・著、講談社)
『カソウケンへようこそ』から約3年、内田麻理香さんの新著だ。最近はテレビ番組(「おもいっきりイイTV」や「世界で一番受けたい授業」)にも出演されて、知名度もますます上がってきているように思う。しかし、料理の科学的ウラワザ紹介のような「カソウケン」的なネタだけが内田さんの領分ではない。専門的な科学を一般の人たちにも楽しく伝えたいという思いが、内田さ . . . 本文を読む
『いのちの食べかた』(ニコラウス・ゲイハルター・監督)
この映画は畜産学を専攻している友人から薦められた。一言でいえば、自分の想像力が試される映画だった。われわれが日々口にしている肉、魚、卵、野菜、果物などの食材が、どのようにして作られているかを撮ったドキュメンタリーだ。セリフやナレーションはまったくない。映像がたんたんと進んでいくだけだ。機械化された工場で整然とされていく牛、豚、鶏たちの . . . 本文を読む
『科学を短歌によむ』(諏訪兼位・著、岩波書店)
ときどき短歌や俳句をよんでみたいと思うことがある。実際に作ってみたこともある。しかし、長続きがしない。そもそも才能もないし、あきっぽいからなのかもしれない。それでも、人の作ったものを読むのは好きだ。実に的確に情景を描写していて感心させられる。文は人なりというが、ときに文章よりも三十一文字や十七文字のほうが作者の思いを雄弁に語ってくれる。本書は科学 . . . 本文を読む
『フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』(国立新美術館)、『ファーブルにまなぶ』(国立科学博物館)、『大ロボット博』(国立科学博物館)
先日、思いがけず仕事が休みになった。予定外の休日を休息に使うか、あるいはもっと有効に使うか迷ったのだが、結局、国立新美術館と国立科学博物館とをハシゴすることにした。
国立新美術館では“フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展”を見た。「牛 . . . 本文を読む
『星の使者』(ピーター・シス・文・絵、原田勝・訳、徳間書店)
この『星の使者』はガリレオ・ガリレイの生涯を描いた絵本である。ガリレイは望遠鏡を自作し、月面のクレーターや太陽の黒点、さらには木星の四大衛星を発見した。コペルニクスの唱えた地動説を擁護し、最後は宗教裁判にかけられ有罪となったことでも有名だ。とくに「それでも地球は回っている」とつぶやいたとされるエピソードは、多くの人が知っているにちが . . . 本文を読む
『オスとメス=性の不思議』(長谷川眞理子・著、講談社現代新書)
なぜ性というものがあるのだろうか。性には、なぜオスとメスの二種類があるのだろうか。あるいは、なぜオスとメスの二種類しかないのだろうか。人間には男性と女性の二種類の性別があり、生物にも一般的にオスとメスの二種類があることは当たり前すぎて、あらためて考えてみる人は少ないかもしれない。けれども、自分はそんな当たり前のことに対して、ときど . . . 本文を読む
『遺体科学の挑戦』(遠藤秀紀・著、東京大学出版会)
『解剖男』、怪しげで忌まわしい感じがする。『人体 失敗の進化史』、刺激的だがエセ科学的な雰囲気も漂っている。そして『遺体科学の挑戦』、遺体を科学するとは、法医学かなにかの本だろうか。これはすべて同じ著者、遠藤秀紀氏の著書であるが、けっして怪しげでも忌まわしくもなく、しごく真っ当な科学の本である。しかし、法医学のような実利的な分野の本とは明らか . . . 本文を読む
『カソウケンへようこそ』(内田麻理香・著、講談社)
本当におもしろいです! まずはダジャレのセンスが光っています。とても東大院卒主婦のダジャレとは思えません。もちろんダジャレだけではなく、中身もわかりやすく為になります。知識が増えるだけでなく、お宅のカソウケンでも必ず役立つはずです。カソウケン版周期表もかわいい感じで見飽きません。
普通は科学嫌いの文系の人におすすめと書くのでしょうが、理科 . . . 本文を読む
『神の意志の忖度に発す』(村上陽一郎、豊田有恒・著、朝日出版社)
本書は村上陽一郎さんと豊田有恒さんとの科学史に関する対談録である。対談といっても、科学史の専門家である村上さんがSF作家である豊田さんに講義をするかたちになっている。もともと科学史に興味があったので、村上さんにはもちろん関心があった。豊田さんのSF自体はあまり読まなかったが、医学部をドロップアウトしてSF作家になったという経歴に . . . 本文を読む
『ダーウィンの足跡を訪ねて』(長谷川眞理子・著、集英社新書ヴィジュアル版)
歴史は時間軸で語られるが、そこで起こった出来事には必ず空間が関わっている。フランス革命は18世紀にフランスという地域すなわち空間で起こった出来事であるし、アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したのは1969年に月面という地球外の空間で行なわれたことだった。ここで語られているダーウィンの「進化論」は、たしかにフランス革命 . . . 本文を読む
『素数ゼミの謎』(吉村仁・著、文藝春秋)
アメリカに13年あるいは17年ものあいだ地中にて、一度に同じ場所で大発生するセミがいる。名づけて「素数ゼミ」。この「素数」は地中にいる期間の13あるいは17が素数(1と自分自身でしか割ることのできない数)であることからきている。それにしても、なぜ15や16や18ではなくて、13や17という素数なのだろうか。何年間かの周期で発生してくるセミを「周期ゼミ」 . . . 本文を読む
『さよならダーウィニズム』(池田清彦・著、講談社)
彼と親しくなったのは、ある大学院を受験しようと勉強会などに参加したのがきっかけだった。大学では社会学を専攻したとかで、自分から見れば人文社会科学関係の知識が豊富で、さらにコンピュータ(IT)にもなかなか詳しかった。政治にも一家言を持っていて、その面でも刺激を受けることが多かった。初対面で親しくなってからさほど日をおかないうちに、彼は「世界は何か . . . 本文を読む